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霞ヶ関一帯〔PHOTO〕gettyimages
広がる「官民格差」の実態 〜バブル後も公務員の給料は「右肩上がり」、各種手当でウハウハ 役人だけが幸せな国〔収入編〕
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48699
2016年05月23日(月) 週刊現代 :現代ビジネス
就職するなら公務員。高い給料と退職金・年金、休み放題、充実の福利厚生、そして仕事の責任は問われません。増税で国民に負担は強いても、自分たちの既得権益は死守する——それが彼らの行動原理だ。「官尊民卑」という時代遅れな言葉がふさわしい公務員天国の実態を暴く。
■バブル崩壊後も右肩上がり
今年1月、改正給与法が成立し、国家公務員の給与が2年連続引き上げられることが決まった。
「一般職の平均年間給与は6万円ほど増えて、667万円。本省の課長クラスで約15万円増の約1196万円になります。2年連続の引き上げは、24年ぶり、バブル期以来です」(経済ジャーナリスト磯山友幸氏)
'90年代初頭のバブル崩壊以後、日本経済はじりじりと後退し、失われた10年とも20年ともいわれる時代が続いてきた。民間企業の多くでボーナスや給料のカットが当たり前になり、もはや給料は「上がるもの」ではなく「下がるもの」というムードが定着しつつある。
だが、そのような右肩下がりの経済など、どこ吹く風というように余裕綽々と生きている人々がいる。公務員だ。
「民間に比べて著しく高い公務員の給与やボーナスをこのまま放置すると、日本という国は役人に食いつぶされてしまう」と危惧するのは、政治アナリストの伊藤惇夫氏だ。
「民主党政権は公務員の人件費を2割削減することを目標に掲げましたが、支持母体の連合労組の抵抗にあって、何もできませんでした。
現安倍政権においては、公務員制度改革や行政改革という言葉すら聞かれなくなった。『公務員天国』に対する批判はずっとありますが、その実態は数十年前から変わっていません」
実際、どれくらいの官民格差が存在するのだろうか。
昨年4月時点の国家公務員(行政職)の平均月収は40万8472円。もっともこの額には各種手当などが含まれておらず、実際には前述のようにさらに多くの額を受け取っている。
一方で民間企業の平均月収は29万3833円(国税庁「民間給与実態統計調査」より)。官民の格差はおよそ1・4倍である。
許しがたいのは、「財政赤字を穴埋めするために増税が必要」という論理を振りかざし、国民に痛みを強いる一方で、公務員は自分たちの給料だけ上げ続けてきたという事実だ。
実際、バブル崩壊時の'91年には国家公務員の平均月収は28万5790円と、民間企業の29万3000円より少なかった。それから四半世紀、日本経済を支えるサラリーマンたちが血のにじむような努力をしながらも、給料アップとは無縁で働いてきたのに対し、公務員はあたかも高度経済成長期にあるかのような「右肩上がり」を享受してきたのだ。
元財務官僚の橋洋一氏が、公務員の給料が決められるカラクリを解説する。
「公務員の給料は、人事院が決めています。人事院は、従業員50人以上、事業所規模50人以上の企業をサンプルに平均給与を算出し、それに基づいて国家公務員の給与を決めていると言っています。
しかし、これは国民を欺くテクニックです。
実際に人事院がサンプルにしているのは、後者の『事業所規模50人以上』の企業です。50人いる事業所が全国に10ある企業であれば、社員は500人以上いることになる。つまり、人事院は中小企業は初めから勘定に入れず、上位1~2%程度の大手一流企業だけを参考にして、公務員の給料を決めているのです。
政府は全社の給与データを把握しています。本来なら、民間企業すべての給与のデータをもとに公務員の給与を決めるべきです。ところが前者の平均値を参考にすると、公務員の給与は激減してしまう。それで既得権益を守ろうとカラクリをしかけているのです」
■各種「手当」でウハウハ
高給に見合う働きをしてくれるなら、公務員が一流企業並みの給与をもらっていても納得がいく。だが、仕事内容が同じであっても、官民の格差は埋めがたいものがある。
総務省の資料によると、都道府県の学校給食員は民間の調理師と比較して、約1・4倍の給料をもらっている。同じくバスの運転手の官民格差は1・43倍、守衛は1・83倍、用務員は1・86倍もの格差がある。
しかも公務員である限り、リストラにあう可能性はほとんどゼロで職の安定性が保証されている。これぞまさに「官尊民卑」以外のなにものでもない。
公務員たちは、自分たちの給料を低く見せることに必死だ。著書に『公務員の異常な世界』があるジャーナリストの若林亜紀氏が語る。
「毎年、6月・12月になると、内閣人事局から国家公務員のボーナス額が発表されますが、昨年6月は『1・975ヵ月分=62万円』と発表された。
しかし、人事院の給与報告書を見ると、平均月給が約42万円なので、ボーナス額は83万円になるはず。約20万円もズレがありました。
実は、62万円というのは管理職でない、つまりヒラの公務員のボーナス額なのです。事務系の国家公務員は全国に14万人いますが、このうち過半数が管理職以上でヒラは半分に過ぎない。発表されたボーナス額は、係長以下の若手の給与だけを反映している『まやかし』の数字なのです」
いかにも既得権益を守るために役人が考えそうな手だ。
加えて、公務員は各種手当も充実している。
「かつては、眼鏡を買っただけでもらえる『メガネ手当』や、親睦会に参加したらもらえる『元気回復手当』、映画を見たり野球観戦に行ったりするともらえる『観劇・観戦手当』など、信じられないような手当を支給している自治体もありました。
さすがにマスコミに報じられて批判が巻き起こり、廃止されたものも多いですが、いまだに民間の基準から考えるとクビを傾げたくなるような手当もありますね」(若林氏)
例えば「独身手当金」。これは結婚しない人が結婚祝いを受け取っていないことを穴埋めするための手当だというが、それならそもそも何のために「結婚祝い」を渡しているのか、わからない。
他にも「精神的緊張感を伴う」窓口業務について払われる「窓口手当」。悪質なクレーマーだらけの窓口ならわからなくもないが、実際にはそれほど緊張を強いる窓口があるとは思えない。このような不適切な手当は、たとえ廃止されても次から次へと新しく増設されるのでたちが悪い。
このように日本社会は、民間のサラリーマンからはあの手この手で血税をしぼり取りながら、自分たちの既得権益には目をつむる役人たちばかりが甘い汁を吸う構造になっている。
来年4月には消費税が8%から10%に増税される予定だが、それ以前にメスを入れるべき既得権益はまだまだあるはずだ。
「週刊現代」2016年5月28日号より
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