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燃費不正問題で記者会見する三菱自動車の相川哲郎社長 (c)朝日新聞社
「また不正かよ」三菱自動車の“ヒラメ社員”体質を商事社員嘆く〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160518-00000156-sasahi-ind
週刊朝日 2016年5月27日号より抜粋
「人の三井」に、「組織の三菱」。グループの従業員は「結束が固い」と語り継がれてきた三菱自動車が、軽自動車の燃費の不正問題によって、日産の傘下に入った。
国内販売消滅の臆測も招いた今回の燃費不正。グループ企業からも、冷ややかな声が広がる。三菱車の海外展開を支えてきた三菱商事。ある社員は突き放す。
「また不正かよ、という感じ。三菱自の体質だと思います。足を引っ張りあい、上司ばかり見るヒラメ社員が多い。『親方日の丸』意識で、会社の外を見ずに、内しか見ていない。昨年度の決算で当社(商事)は赤字転落。三菱自の救済に動けば、株主代表訴訟にすらなりかねません」
商事は、三菱重工、三菱東京UFJ銀行とともに、三菱自を支えた「御三家」の一角。2000年と04年のリコール隠しで経営危機に陥った際は、御三家中心にグループで、計6千億円超の支援に踏み切った。
しかし、今や御三家の足元も火の車だ。
赤字の商事に加え、三菱重工は大型客船事業の特別損失などで純利益が前年比4割減。三菱東京UFJ銀行も、マイナス金利や最新の金融技術フィンテックへの対応など環境は厳しい。
同行の男性行員は「三菱グループうんぬんよりも、ユーザー目線でみてひどい話」と素っ気ない。三菱電機社員も「三菱車は世界中にスリーダイヤを宣伝してくれた。ただ、今回のように評判を落とされるのは、願い下げ」と迷惑顔だ。
危機管理コンサルタント会社リスク・ヘッジの田中辰巳氏は、三菱自に染みついたグループへの甘えの意識の問題点を指摘する。
「三菱グループの意識は『親方日の丸』と評されますが、三菱自動車はそれ以上に『親方日の丸の内』という甘えがあったのでしょう。何かあれば、丸の内の『家族』が助けてくれる。家族に面倒を見てもらえると思うから、ルールや規律を破ったりするのです」
こうした三菱自の姿は、小説にも描かれている。
00年代のリコール問題をモデルにしたとみられる『空飛ぶタイヤ』だ。
著者の池井戸潤氏は元三菱銀行員で、『下町ロケット』『ロスジェネの逆襲』など数々のヒット作を生み続けている。
空飛ぶタイヤの第五章「罪罰系迷門企業」には、「ホープ」と名付けられた架空の企業グループについて、こんな言葉がある。
「純粋培養されてきたような人間達が、どうしようもないほど危機感を欠落させたまま迷走を続けていることも事実だ」
縦割りや内向き志向など三菱自で問題視された企業風土は、ほかの企業でも起こりうる。国内外の企業経営に詳しいペイ・ガバナンス日本の阿部直彦氏は、警鐘を鳴らす。
「同じ企業に長い間勤めていると、社内の考え方で動きがちになる。その考え方は、世間からみてOKなのかOKでないのかを、重視しなくなる。東芝の不祥事もそうでしたが、燃費不正問題も『内部の論理』が勝ってしまった結果です」
時代の流れの変化もある。財閥系企業の実態に詳しい経済評論家の奥村宏氏は、こう指摘する。
「バブル経済崩壊後、(旧財閥の)三菱、三井、住友ともに中核の銀行が経営危機に陥った。三菱銀行は、三和や東海などほかの企業集団の銀行とも合併した。三菱は三井、住友に比べれば、結束力は強いものの、株式持ち合いは薄まり、各社はそれぞれ問題を抱える。損を被ってでも結束という状況ではない」
「最強」と囃された三菱グループ。奥村氏は最近、「三菱の強さを聞きたい」と米紙記者から取材を受けた。現状を説明すると、「記事にならなかったようだ」と奥村氏。もう「帝国」は崩壊したのかもしれない。
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