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正規雇用9割のフランスと非正規4割の日本は何が違うのか(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/16/hasan108/msg/708.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 5 月 18 日 08:01:15: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

正規雇用9割のフランスと非正規4割の日本は何が違うのか
http://diamond.jp/articles/-/91321
2016年5月18日 永田公彦 [Nagata Global Partners代表パートナー、北九州市立大学特任教授] ダイヤモンド・オンライン



 正規雇用労働者が9割を占め、「同一労働・同一待遇」も保障されるフランスに対し、日本では非正規雇用労働者の割合がついに4割を超え、正規・非正規間の格差問題が深刻化しています。そこで有効な格差是正策を講ずるためには、その背後にある日本人社会の文化特性を考慮する必要があります。今回は日本の「周りに流される」「個人の権利より組織に対する義務」という2つの文化に着目します。


■正規雇用を死守するフランス


 図1は、フランスで、雇用形態別の構成比が30年間でどう推移したかを示したものです。黄色の無期限雇用契約(CDI = Contrat à Durée Indéterminée)が日本の正規雇用、左の有期限雇用契約(CDD = Contrat à Durée Déterminée)が非正規雇用の契約社員やパートに近いものです(なお、近いといっても基本的に異なる点も多く、これらについては後述します)。


 この図で注目されるのが、無期限雇用労働者(CDI)の割合が76%前後と、ほぼ横ばいで推移している点です。仮に、この図の右にある非給与所得者(個人事業主や自由業従事者等)を除き、給与所得者だけをとって見ても、無期限雇用労働者(CDI)の割合は1984年の94%から2014年の86%と徐々に減っているものの、何とか10人中9人の線を死守していると言えるでしょう。



出所:INSEE、2016年2月9日


■非正規増加の背後にある
 日本人社会の文化特性


 一方、総務省「労働力調査」によると、日本の正規雇用労働者の割合は、同じ30年間で、85%から62%へと右肩下がりで、逆に、非正規雇用労働者は右肩上がりに増え続け、その割合はついに4割を超えています。


 正規雇用を何とか死守するフランスに対し、日本では、国や大多数の事業主(企業、官公庁等)そして社会全体が、この正規から非正規へのシフト、両者間の待遇格差、その結果生じる日本社会の二分化と二極化を、あたかも容認してきたかのようです。


 では、なぜ日本では、わずか30年の間に、このように正規雇用が減り非正規雇用が増えたのでしょうか?その理由については、これまで様々な機関から多くの研究報告が出されています。しかし、その多くは、経済面(国内景気の長期低迷、市場のグローバル化による国際競争の激化や情報通信技術の高度化による人件費抑制圧力)、労働政策面(派遣労働法改正による労働規制緩和等)、社会面(若者を中心にした働き方に関する多様化、高齢労働者の増加、長時間労働など日本的労働慣行の弊害等)からの考察です。


 こうした経済・産業・社会の構造変化とこれに対する政策面からの分析結果はどれも理があり否定するものではありませんが、筆者は、あえて文化面から、この現象をとらえたいと思います。日本人社会には、世界から称賛される素晴らしい文化価値観が多くあります。筆者は、著書「日本人こそ見直したい、世界が恋する日本の美徳 (ディスカヴァー携書)」でも、こうした文化価値観を様々な世界の声を代弁するかたちで紹介しています。しかし、こうした美徳の中には、場面や状況に応じて、社会に対しネガティブな結果をもたらすものもあります。今回はそのうちの2つに着目します。


■周りに流される日本人


 この30年間、日本社会の二分化と二極化を助長してきたものとして挙げられるのが「周りに流される」文化です。「周り」とは、世の中で広く言われていること、場の空気、社会のルール、マスコミ報道、組織の権力者、上司や同僚、競合他社の動きなど、自分の身の周りにいる人物、情報や雰囲気です。


「流される」とは、自分の信念、主義、主張や考えを持たず(または持っていても表に出さず)、周りに盲目的に(または意図的に)従うことです。この文化特性は、状況に応じ「付和雷同」「寄らば大樹の陰」「長いものには巻かれろ」「横並び発想」「同じて和ぜず」等の言葉に置き換えることもできるでしょう。


 ここで補足しておくと、こうした言葉にはネガティブな印象があるため、日本人を批判しているとお叱りを受けるかもしれませんが、筆者は決して全ての日本人がそうだと言うものではありません(現に「周りに流されない人」を筆者は多く知っています)。


 しかし、海外から外国製の眼鏡をかけて日本人社会を見ると、欧米を中心とした民主主義国といわれる国々と比べ、日本には、こうした周りに流される人たちや場面が多いと強く感じます。また、「赤信号皆で渡れば怖くない」的に、周りに流された結果、社会に迷惑をかける、又は集団犯罪に至るケースも多々あります。「ライブドア事件」「オリンパス事件」「東芝事件」等はその好例です。


 このように、筆者は、30年もの間、日本で非正規雇用労働者が増え続け、正規と非正規の労働者間格差が是正されずにきたのは、国や大多数の事業主(企業、官公庁等)そして社会全体が、この状況に対し、良心の呵責や怒りを覚えつつも、「周りに流され続けてきた」からであると思えてなりません。


■「個人の権利」より「組織に対する義務」の日本


 多くの日本人は、良くも悪くも、自分が持つ権利をあからさまに主張したり、新たな権利の獲得に向け自ら動こうとしません。それよりも、自分が所属する、または関係する組織(国、地域、職場、お客様企業等)から与えられた義務を、定められたルールに従順にしたがい、きちんと果たすことを優先します。たとえその義務を果たすことで、自分の権利が侵されるリスクを感じていても、その義務が不公正、差別的、理不尽、無意味なものと感じていてもです。さらに人によっては、その義務が違法なものとわかっていても、となるでしょう。


 このように日本人社会には、良かれ悪しかれ「個人の権利」より「組織に対する義務」を優先する文化特性があります。これが現れる典型例が、有給休暇の未消化、サービス残業の実施、前述の集団企業犯罪などです。また、「同一労働・格差待遇」もその典型例の1つです。正規雇用と非正規雇用の労働者が、同じような仕事を行う多くのケースで、こうした文化特性が現れます。


 非正規雇用労働者の多くが、賃金、各種手当、福利厚生等で正規雇用労働者より恵まれていない状況にありながら、同等の権利を要求することなく頑張って仕事をします。仮に、「正社員になりたい」「昇給・昇格したい」と願う人がいたとしても、こうした場面で、直接口に出して「公正な扱いではないから、正社員にしてほしい」とか「正社員と同じ待遇にしてほしい」と権利を主張せず、まずは、その与えられた組織の義務を果たし、その頑張りとか組織への献身度(組織に心・時間・エネルギーを捧げる程度)を認めてもらうことで、権利を得ようとします。


■「組織に対する義務」より「個人の権利」のフランス


 これが「個人の権利」が「組織に対する義務」と対等、または状況により優先する文化にある多くの欧州諸国では、事情が大きく異なります。例えば、フランスです。


 同国の雇用形態には大きく無期限雇用契約(CDI)と有期限雇用契約(CDD)があると前に示しました。また、前者が日本の正規雇用、後者が非正規雇用(契約社員やかパート)に近いと示しましたが、下記のように基本的に異なる点も複数あります。


(1)無期限雇用契約(CDI)・有期限雇用契約(CDD)ともに、フルタイムとパートタイム契約がある(パートの勤務時間要件は、一部例外を除き週24時間以上35時間未満)


(2)事業主は、一時的に発生する特別な業務や産休等で一時的に休暇をとる従業員の代替えケースでしか、有期限雇用契約(CDD)を結んではならない。また、その契約期間は1回の更新も含めて18ヵ月以内でなければならない(一部例外を除く)。


(3)事業主は、無期限雇用契約(CDI)と有期限雇用契約(CDD)との間で、各種手当、休暇、福利厚生、教育研修機会に関する権利について差別してはならない。


(4)事業主は、無期限雇用契約(CDI)と有期限雇用契約(CDD)との間で、「同一労働・同一賃金」の義務を負う


(5)事業主は、有期限雇用契約(CDD)の従業員に対し、雇用が不安定であることに対する手当として、契約期間中に得た額面給与総額の10%を、契約終了時(退職時)に、支払う義務を負う(つまり、同一労働ケースでは、無期限雇用契約[CDI]よりも有期限雇用契約[CDD]の従業員の方が賃金が高くなる)


 以上のように、フランスでは、無期限雇用契約(CDI)と有期限雇用契約(CDD)等に関する権利が法的に整備され保障されています。これは長い歴史の中で、労働者側が主張し勝ち取ってきた権利なので、従業員が放棄することは基本的にありません。たとえば、「同一労働・格差待遇」の状況で働こうとはしません。仮に、事業主がこうした状況で従業員を働かせていたら、これは違法行為にあたります。従って、従業員側は、自分の権利を侵されたと告発するか、仕事を受ける代償として昇給や昇格を要求します。


 以上、今回は、日本の正規・非正規問題の背景にある、日本人社会の2つの文化特性を取り上げ、フランスの状況と比較することで、これらを浮き彫りにしました。次回はこの格差是正にあたり、考慮すべき別の2つの文化特性に着目し、これを踏まえたパラダイムシフトを起こす必要性に触れます。


 

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コメント
 
1. 2016年5月18日 12:20:48 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[1521]

>正規雇用9割のフランスと非正規4割の日本は何が違うのか

最近は、多少改善したとはいえ、

フランスは貧富の差が大きい超格差社会な上に

正規労働者が強い既得権社会

当然、投資も雇用も低迷し、若年失業率は高まり、治安は悪化し、経済(企業活動)は衰退していくことになる

日本の場合、正規雇用の既得権は大企業労組に集中し、大企業は衰退していくことになるから

将来を悲観した少子高齢化要因が大きくて失業率は低くても、あまり楽観はできない


先進国も新興国も、いずれも無策でいれば大変だということだ

www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/today/rt150707.pdf
フランス地盤沈下がもたらす欧州危機
2015/07/07 - 図表:フランスの失業率推移

http://www.ecareer.ne.jp/contents/oversea/f04_3.jsp
深刻化する若者の失業率

http://r25.jp/business/00042549/
日本はマシ!?世界の失業率は?

2011年10月時点の主要国失業率をワースト順に並べると、「フランス(9.1%)」「アメリカ(8.6%)」「イタリア(8.3%)」「イギリス(8.3%)」「ロシア(6.1%)」「ドイツ(5.8%)」「日本(4.5%)」。欧州で最も健全な経済大国であるドイツでさえ、失業率は日本より1ポイント以上も高いのだ。また、先進国共通の悩みである“若年層の失業率”も日本は25〜34歳が7.8%なのに対し、先に挙げた国々は軒並み10〜20%台。なぜ、欧米諸国は失業率、とりわけ若者の失業率はこれほどまでに高いのか?

「日本で失業率の上昇が社会問題化するずっと前から、欧米先進国はこの問題を抱えてきました。特に南ヨーロッパの国々、イタリア・スペイン・フランスなどです。それぞれ国によって事情は異なりますが、ヨーロッパ諸国は法律で定められる最低賃金が高水準であることや、社会保障費などの非賃金コストの高さが、新たに人を雇うことの障壁になっているといわれています」(『日本の二―ト・世界のフリーター』などの著書をもつ追手門学院大学経済学部・白川一郎教授)

景気が停滞し企業の雇用情勢が悪くなると全年齢層の失業率が上昇するが、特にその煽りを受けやすいのが若年層だという。

「高い賃金で雇わなければならないと法律で決められていると、企業は経験のない若者を高い給与で雇うよりも、経験のある中高年を同じ給与で雇う方が合理的と考えるわけです。若年雇用は労働市場への新規参入者として弱い立場にあるため、不況の影響を最も深刻に受けることになります。」


2. 晴れ間[1047] kLCC6orU 2016年5月18日 22:04:14 : xni5yVaf3k : Fxfse0RTtHo[169]
> ここで補足しておくと、こうした言葉にはネガティブな印象があるため、日本人を批判しているとお叱りを受けるかもしれませんが、....


投稿記事中のこの表現も日本社会の特質をよく表していますね。何かを言うと「お叱りを受ける」社会。筆者は自分への非難を避けようと、必死に予防線を張っています。

類似の現象ですが、「異なる意見」を述べると、言われた方が「お怒りでしょうが...」と反応することもあります。自分と「異なる意見」に対しは「怒る」という感情的な発想。これでは自分の意見を述べることもできません。何も言えないから黙ってしまいます。

こういう暗黙のコードで社会生活が営まれている、世にも不思議な文化の国が日本です。

*----------------------------*

それから、日本とフランスの労働問題の根本的な違いは、日本には真の労働組合運動が存在しないことです。日本にあるような大半の労働組合(非正規雇用者や非組織の職場で働く者が結集する「ユニオン」は除く) 、つまり組合費も給与から天引きされるような企業内組合は、欧州では「黄色組合」としかみなされません。
経営者の息のかかった労資協調組合で、正社員のみで構成されている。非正規雇用者や失業者(解雇された者も含む)は組合から排除される。そういうものは、本当の労働組合ではありません。

日本の労働組合は企業内にありますが、フランスの労働組合は企業の外にあります。妥協せず闘えるのは、そのためです。
組織率は低いですが、自覚的な人しか組合に入りませんから、意識と戦闘性は高いです。労働組合も複数ありますから、選択肢も多いです。

因みに、職業訓練も企業外で行われます。フランスの労働組合運動は、経営者に取り込まれる(経営者の支配下に置かれる) のを嫌がるのが伝統で、職業訓練は企業外の公的機関で行われます。「個人の独立性」(個人が企業に支配されないこと) というものが、昔からそうやって保証されてきました。

他方、日本の労働組合とやや似ているものとして「企業委員会」というのがあって、個別企業内の問題の解決や(社員旅行等の)親睦活動はここで行われます。

なお、フランスの労働組合の組織率が低い(8%未満)のは、政労使(政府・労働組合・使用者)の三者協議の制度が確立していて、雇用問題や社会保障等、労働条件等については、ここで決められるからです。ここで決まったことは、組合加盟の有無にかかわらず、全国・全国民に適用されるため、労働組合非加盟者も不利益を被ることはなく、等しく利益を得ます。

失業率は高いです。しかし様々な公的扶助もあるため、女性が売春に追い込まれることもありません。(売春婦の殆どは外国人。)

フランスで大きな反対運動が起きている労働法改悪法案は、解雇を容易にして雇用の流動化を図ろうとするものです。たとえオランド政権が緊急法令のようなものを出してこれを実施しても、フランス人は抵抗を止めるような人たちではありません。何しろ子供の頃から、フランス革命以来の革命伝統を学んできた人たちですからね。「不当」だと思うことには抵抗する。それが血肉になっているのでしょう。移民の子供も、中身はフランス人ですから同じです。「我慢の限界」を超えれば、暴動も起こします。(破壊活動を非難するのは当然ですが。)


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