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タカタ、倒産の現実味高まる…史上空前のリコール、自動車メーカーも巻き込まれ巨額損失
http://biz-journal.jp/2016/05/post_15119.html
2016.05.17 文=編集部 Business Journal
欠陥エアバッグ問題で窮地に立たされているタカタが、債務超過の危機に瀕している。
米高速道路交通安全局(NHTSA)は5月4日、タカタ製エアバッグを最大で4000万個、リコール(回収・無償修理)の対象に追加すると発表した。日本や欧州の規制当局はNHTSAの方針に追随すると考えられるため、リコールの対象は全世界で1億個を優に超える。国土交通省は国内で700万個の追加のリコールを指示した。
リコールにかかる費用は1個当たり1万円が目安とされており、1億個で1兆円規模になる。3月末には「リコール費用が2兆円を超える」というタカタ社内での試算が外部に流出して話題になった。
タカタの2016年3月末時点の自己資本は1245億円にすぎず、手元資金は15年12月末時点で656億円にとどまる。16年3月期にリコール関連の特別損失を160億円計上し、17年同期は140億円を計上するとしたが、これでは焼け石に水である。仮にリコール費用の2割をタカタ側が負担するとしても債務超過は避けられない。
大手自動車メーカーの対応も難しくなっている。マツダは4月27日に16年3月期連結決算を発表したが、タカタ製エアバッグのリコール対策費用として407億円を特別損失として計上した。
タカタとの取引が多く、タカタの第7位の大株主(1.2%、100万株を保有)でもある本田技研工業(ホンダ)は、近く16年3月決算を発表する。どこまでリコールの経費をタカタに負担させるかが焦点となる。
ホンダは世界で2000万個超のエアバッグ部品の追加リコールを行う。これまでのリコール対象を含めると、累計5000万個を超える見通し。ホンダは1社だけで全体のおよそ半分を占めることになる。ホンダは新たに発生するリコール費用が2000億円規模になるとみている。
日本の自動車メーカーは、円高、新興国の経済悪化による新車の売れ行き不振、熊本地震による部品供給のストップという三重苦にあるが、さらにタカタ危機が加わり、今や四重苦の状態だ。
米国の証券会社の試算によると、国内外の自動車メーカーが2月末までに引き当てたリコール費用の総額は6000億円強。今回、NHTSAが示した基準によって日欧メーカーが追加リコールを実施した場合、総額でリコール経費が1兆円を上回るという見通しは、決して荒唐無稽なものではない。
■タカタの第三者委員会はどう出る
タカタの基本方針は、自動車各社に支払いの軽減を求めることだ。巨額なリコール費用の負担に耐えられないからである。エアバッグのリコール費用は、現時点では自動車メーカーが一時的に立て替えているが、各社は費用の大部分をタカタに請求する方針としている。
リコールにかかった費用の負担割合に関する協議は、タカタの存続問題と切り離すことができないだけに、やっかいだ。
タカタは、企業法務に詳しい弁護士らでつくる第三者委員会「外部専門家委員会」を2月に設置した。タカタの再建に向けた計画を策定するが、裁判外紛争解決手続き(事業再生ADR)が有力な手法として浮上している。高田会長兼社長は8月をメドに退任し、経営陣を刷新。第三者委員会は新たなスポンサー企業を決めたいとしてきたが、5月11日に記者会見した野村洋一郎最高財務責任者(CFO)は、第三者委員会が策定中の再建案は「9〜10月に経営陣に提出される」との見通しを明らかにした。秋まで高田会長兼社長は留任する可能性が高い。
第三者委員会は、自動車メーカー各社に対してリコール費用の負担の減免を求めている。しかし、各社が減免を簡単に受け入れるとは考えにくい。それを見越した次の手段として浮上しているのが、法的措置ということになる。「事業再生ADRと会社更生法のせめぎ合いになる」と予測する法曹関係者もいる。
■株価は上場来安値を更新
タカタの16年3月期の連結最終損益は、130億円の赤字(前の期は295億円の赤字)となった。昨年11月時点では50億円の黒字を見込んでいたが、2期連続の赤字に陥った。ちなみに、この決算では追加リコールという緊急事態はまったく考慮されていない。
当然のことだが、株価は下がり続けている。4月8日に332円の上場来安値を更新し、昨年12月の高値977円から7割近く下落した。さらに5月6日には前営業日(5月2日)比57円安の316円まで売られ、5月10日には310円と下値を切り下げた。いまや株価が浮上する材料は皆無だ。
タカタ製エアバッグ最大のユーザーであるホンダの八郷隆弘社長が支援に後向きの発言をしており、NHTSAの追加リコールの方針がトドメを刺した格好だ。
■損保大手がタカタの取引信用保険の取り扱いを拒否
タカタへの納入業者が4月に入り、東京海上日動火災保険に「取引信用保険」を申し込んだが拒否されたとの情報が流れている。
取引信用保険は、企業間取引で納入先が倒産した際に売掛金を保証するもの。保険料は対象企業の信用力によって決まる。経営状態が悪化すれば保険料は高くなる。保険の引き受けを拒否されたということは、タカタの信用力が失墜したという証拠である。
これまでも、シャープや第一中央汽船を対象とした取引信用保険が損保から取り扱いを拒否されている。その後、シャープは台湾企業に身売りし、第一中央汽船は15年9月末に東京地裁に民事再生法の適用を申請、経営破綻している。タカタの窮状は各方面であらわになっている。
(文=編集部)
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