http://www.asyura2.com/16/hasan108/msg/631.html
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マイナス金利政策と喧伝されているが、実態は日銀当座預金積み増しに対するペナルティであり、日銀当座預金残高のほとんどにプラス0.1%の利息が付いており、金利引き下げ効果はあるとしてもマイナス金利という呼称は羊頭狗肉と言える。
銀行にとっては、日銀当座預金の付利がプラス0.09%といったレベルに下がったという話である。
現在の「ペナルティ金利」政策は、銀行に、ペナルティをできるだけ回避するつまらない行動を促しているだけで、狙った(日銀が説明した)効果は生まれず、中期的にはデフレを深刻化させるなど負の効果をもたらす。
現在のペナルティ版マイナス金利政策がいつまで続くかは、日銀が金融機関の貸し出しにもマイナス金利を適用する“真の”マイナス金利政策に踏み出すかどうかにかかっていると思う。
※参考
「日本銀行 金融機関の貸し出しにもマイナス金利を検討か?:銀行は日銀からの借り入れで“利得”、投機的借り入れを増長?」
http://www.asyura2.com/16/hasan107/msg/744.html
黒田総裁はマイナス金利をさらに下げることもできると説明しているが、日銀当座預金積み増しに対するペナルティを拡大する政策は、混乱をもたらすだけで効果がないことを彼らも知っている。
何より、積み増しに対するペナルティを拡大する気があるのなら、まずは、日銀当座預金に付けている付利0.1%(超長期国債の利回りに相当する高金利)を廃止するはずである。
「真のマイナス金利」政策に踏み出さない限り、実質的には銀行にとって日銀当座預金積み増しがペナルティにならない仕掛けに切り替えていくと思う。
物価目標を達成していない手前「量的金融緩和」の幕引きはできないだろうが(投資家も意味もなくうろたえる)、銀行や機関投資家の資産運用がもう少し滑らかになるよう、国債の買い取り額を少し減らしたほうが合理的な政策である。
※関連参照投稿
「中銀のマイナス金利、インフレ予想低下させ逆効果か:経済学の間違いで、利払いも費用=コストだから金利引き下げはデフレ要因」
http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/272.html
「マイナス金利政策の功罪(中)むしろデフレ回帰の恐れ 金融市場機能低下も 櫻川昌哉 慶応義塾大学教授」
http://www.asyura2.com/16/hasan105/msg/573.html
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[核心]大混乱防げても「大停滞」へ
改革遅らすマイナス金利 客員コラムニスト 平田育夫
何かと評判の悪いマイナス金利だが、日銀はこの政策を長く続ける考えとみられる。国債購入による量的緩和が限界に近いからだ。時機をみてマイナス金利を深掘りしデフレ脱却や国の債務軽減を狙うだろう。
多額の国債購入が長引くと、購入額を減らす時に金利が跳ね上がり経済の大混乱を招く恐れがある。新しい金利政策を使えば、その心配は比較的少ない。
だがゼロ以下の低い金利は財政規律を緩ませるほか、収益性の悪い企業の延命を助けるなど経済・財政の改革を遅らせかねない。大混乱を防げても「大停滞」に入るリスクが高まる。
日銀は4月末、政策の現状維持を決めたが、ある日銀OBは「日銀はいずれ、マイナス金利による収益圧迫を嫌う金融機関に配慮した措置をとり、新政策の定着を目指す」とみる。
3年前、黒田東彦総裁の音頭で始めた緩和策は大量の国債を買って市中にお金を供給。2年後に物価を前年比2%上昇させデフレを抜け出す筋書きだった。
この量的緩和は円安・株高や国債金利の低下をもたらした。しかし消費者物価は今年3月でも前年比0.3%下落と上がらない。上がらないから国債購入をやめる理屈が立たない。
だが年80兆円も国債保有を増やせば、買える国債はやがて枯渇する。また日銀が国債を異常なほど高い価格で買い続けると、インフレ目標を達成し購入額を減らす時にこの“国債バブル”がはじけて金利が急騰し、経済を混乱させる。
リスク多くして功少なしというのか、日銀内にも量的緩和は「時間の経過とともに副作用が効果を上回る」(木内登英審議委員)との声があった。
お金の量より金利に照準を定めるマイナス金利策なら、量的緩和の限界を超え金融緩和を継続できる、と日銀は考えたようだ。
また菅野雅明JPモルガン証券チーフエコノミストは「量的緩和を縮小するとき、マイナス金利策で国債金利の上昇を抑え、経済混乱を防げるかもしれない」とみる。量的緩和の「出口」での痛みを和らげる狙いもあるのだろうか。
一方、裏の大きな狙いは公的債務の負担をより軽くすること。国債金利をインフレ率より低く保てれば国債の実質価値が年々減り、そのぶん国の負担は軽くなる。金利を抑えつけるので「金融抑圧」と呼ぶ。
これまでインフレ率が低いため債務軽減はあまり進まなかった。国債金利がゼロ以下なら実質マイナス金利が続き軽減効果が増す。マイナス金利国債の大半を買う日銀は損をかぶるので国への納付金が減る点は割り引く必要がある。それでも歳出削減や増税への抵抗が強いこの国で「皆が知らぬ間に債務が目減りする」なら為政者には魅力だ。
「世界的にインフレ傾向が強まらない限り、マイナス金利策、ゼロ金利策の下で、金融抑圧は今後、少なくとも20〜30年は続く」と河野龍太郎BNPパリバ証券チーフエコノミスト。
預金金利をマイナスにせず、現金に課税しなくても今の政策金利のマイナス0.1%を同0.5%程度にはできる見通し。それなりの効果はあろう。だが副作用も金融機関の収益圧迫などにとどまらない。
自民党の会合で最近「国債金利がゼロ以下という環境をいかし積極財政を」という声が出た。「国債金利がマイナスだから」という理由で財政楽観論が勢いづき、社会保障改革も後回しになれば、財政再建はさらに遅れる。
また貸出金利の低下は収益性の低い企業を温存させ新陳代謝を遅らせる。財政金融政策で景気がもつ間は規制緩和など痛みを伴う改革は足踏みするだろう。
米著名投資家のウォーレン・バフェット氏は日欧のマイナス金利について「(年金や貯蓄頼みの)退職者にとっても問題」という。預金金利などの低下は人々の倹約意識を強め消費低迷を長期化させかねない。
それに加え円がマイナス金利になるとドル資金への需要がさらに増し邦銀のドル調達金利を押し上げる。そのコストは国全体で負う。「停滞と消耗の時代」の到来か。低成長、物価低迷と財政再建は長引こう。
債券市場などの専門家、徳勝礼子氏は著書『マイナス金利』で、物価が低迷するなか、マイナス金利による金融抑圧で財政の辻つまを合わせていく形となれば「衰弱死的な経済」に至るとし、そうした展開は高インフレによる財政・経済の破綻が「いや応なく再生を強制する」のと比べ、むしろ怖いと警鐘を鳴らす。
つまりマイナス金利にも大リスクが潜む。日銀頼みそのものが限界に近い。
成長率低迷の大きな原因は実質0〜0.5%と低い潜在成長率にある。生産性の向上や労働力の流動化促進など供給面の構造改革で成長力を高めるのがカギ。それは政府の仕事だ。
ただし政府が見込む実質2%の成長は難しく、1%がせいぜい。インフレ目標の2%も過大で1%が現実的だ。その前提に立てば社会保障を中心に財政改革も着実に進めざるをえない。だが安倍晋三首相にとって経済構造改革や社会保障改革は二の次の印象である。
黒田氏は2018年春に任期末、首相は同年秋に自民党総裁任期末を迎える。マイナス金利の末路を両氏とも在任中に見届けないだろう。そのことが新政策への不安をさらに募らせる。
[日経新聞5月9日朝刊P.7]
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