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世界一の電気自動車大国になった中国 EVが次世代自動車の主役になるのか?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160515-00010001-wedge-bus_all
Wedge 5月15日(日)12時10分配信
日本ではハイブリッド車の人気に隠れてあまり目立たない電気自動車(EV)だが、欧米、中国ではハイブリッドよりもEVとプラグインハイブリッド(PHV)に人気がある。その背景にはEVとPHV購入への政府による支援政策がある。
米国で大きな受注数が話題になったテスラ・モーターズの新型EV「モデル3」だが、政策による補助金支給も人気の理由の一つだろう。カリフォルニア州では3万5000ドル(約380万円)のモデル3に、国と州を合わせて1万ドル(107万円)もの助成が受けられる。欧米諸国の政策支援の目的は気候変動を引き起こす二酸化炭素(CO2)排出量の抑制だ。中国政府の目的はPM2.5による大気汚染対策だ。
米国だけではなく、他国でも同様の政策がある。ドイツでは購入支援のため大きな補助金が導入された。オランダは2025年からガソリン、ディーゼル車の販売を禁止する法案を検討中だ。中国では中央政府と地方政府の補助金に加え、都市部では高倍率の抽選に当たらなければ取得できないナンバープレートが、EVとPHVには優先的に与えられることもある。
このため、欧米、中国ではEVの販売は伸びている。中国は2015年には世界最大のEV市場になり、世界のEV生産の3分の1を担う世界最大の生産国になった。急速に成長した中国のEV市場では補助金詐欺による台数の上乗せもあった。
■中国では補助金詐欺も
中国ではEV/PHV、燃料電池車は新エネルギー車(新エネ車)と呼ばれ、購入に際しては大きな補助金が支出されている。中央政府によるものだけでも最大5万5000元(93万円)。さらに多くの地方政府が追加の補助金を支出している。補助金だけではなく、大都市では抽選によるために入手が難しいナンバープレートが優先的に割り当てられる、あるいは登録税が軽減されるなどの支援策も導入されている。
例えば、北京市では2014年に小型車には13万枚のナンバープレートが割り当てられ、抽選倍率は100倍を超えていたが、2万枚が割り当てられた新エネ車のナンバープレートには余りがあった。新エネ車購入が登録上は有利だが、充電場所の問題もあり、誰でもEV/PHVを購入できるわけではない。北京市ではナンバープレート目当てにPHVを購入したものの、結局ガソリン車として利用することを防ぐためにPHVを新エネ車の対象外にしている。
政策支援により、中国では2015年のEV/PHV乗用車の販売が前年比233%増の18万8700台になり、11万6000台の米国を抜き世界一になった。EVバスなどを含めると33万台以上の販売だ。しかし、この販売数には補助金だけを目的にしたものが含まれている。EVメーカーが自社系列のリース会社などに車を販売したことにし、リース会社が補助金を受け取る方法だ。実際には車が販売されていないケースが地方ではかなりあると言われ、中央政府が調査を行っている。
中国政府は2020年に新エネ車の目標を500万台にするとの目標を立てているが、補助金を徐々に削減し2021年以降は廃止する予定だ。補助金の予算額を新技術の研究、開発支援に振替るとしている。中国で販売されているEVの40%は2人乗りの3メートル以下の小型車とされているが、普通車で力をつけて来ている企業も出てきており、中国政府の支援がさらに競争力の強化につながると考えられる。
■世界最大の市場になった中国
詐欺があったものの、中国市場は世界最大のEV/PHV市場になった。生産メーカーの国別シェアでも、中国が33%になり、世界一になった。図の通りだ。中国では第2のテスラを目指すEVベンチャー企業だけでも10社以上あると言われ、製造が比較的簡単なEVの製造業者が筍のように出てきている。
そんななかで、力を付けているメーカーも出てきた。昨年6万2000台を販売した最大メーカーBYD(比亜迪汽車)は南米などに続き、豪州への輸出を開始すると発表した。輸出されるE6モデルは、タクシー主体に利用される予定だが、価格は8万豪ドル(640万円)と報道されている(注:中国での販売価格より60%以上高いので特別仕様車の可能性が高い)。
中国メーカーは技術力を付けるため技術者の引き抜きも行っている。BMW社にて、iシリーズのEV開発に携わっていた複数のエンジニアが辞職し、中国最大のインターネット関連企業テンセントが後押しするベンチャーEV企業、フユーチャ・モビリティーに移籍すると報道されている。また、テスラの製造担当副社長と生産担当副社長の辞任も報道されている。去就は未定とのことだが、中国メーカーに移籍する可能性もあるのかもしれない。
日産自動車のゴーンCEOは、同社のリーフが中国市場では思ったほど売れないことに触れ、中国のEV製造コストは25%安いが、リーフと同じ航続距離を達成できるとコメントしている。世界の自動車、環境政策の展開次第では、中国メーカーが急速に世界市場に進出してくる可能性もある。
モデル3が米国で人気のテスラも、なぜか中国市場では苦戦している。「対生物兵器モード」と呼ばれる特殊なエアーフィルターをテスラのモデルは備え、大気汚染のひどい中国では車内の空気が外よりも800倍綺麗になるとアピールしているが、それでも中国では売れていない。
■人気を集めるテスラの新型車
3月31日に発表されたテスラのモデル3は、同社のイーロン・マスクCEOが「大衆向けの購入可能な車」と称した通り、最低でも7万ドルか8万ドルするそれまでの2車、モデルSとモデルXの価格を大きく下回り、3万5000ドルの販売価格となった。1回の充電で215マイル(346キロメートル)走行可能とされている。引渡しは2017年末からの予定だ。
販売開始後最初の1週間で予約金1000ドルを支払ったのは32万5000人以上と発表された。テスラは予約金などで工場の増設を行い、昨年の生産実績5万台を2018年までに50万台に引き上げるとしている。ちなみに今年の第1四半期の生産実績は1万5000台だった。
モデル3の販売を陰から支えているのは、米連邦政府と13の州政府などによるEVとPHV導入への支援政策だ。
■EVとPHV普及を支援する米国
米国ではEVあるいはPHVを購入すると最大7500ドルの税額控除が受けられる制度が2010年から導入されている。税の還付が受けられるが、納税額が7500ドル以上なければ、納税額までの還付となる。
米国で販売されている全てのEVは最大7500ドルが還付される対象だが、PHVはガソリンの使用も行われCO2の排出も想定されることから車種により還付額は異なる。例えば、Audi 2016 A3 e-tronでは4502ドルだ。販売台数が20万台に達したところで、その車種への補助金は打ち切りになるので、補助金を当てにしてテスラ・モデル3を予約した人のなかには補助金を貰えない人も出てくることになる。
さらに、地方政府による上乗せもある。例えば、カリフォルニア州ではEV購入者には2500ドル、PHVには1500ドルの現金による戻しがある。高額所得者は対象外だが、低所得者には金額が上乗せされる。
同様の制度は欧州諸国、日本などでも導入されている。中央、地方政府による支援が行われる理由は、CO2の排出抑制が簡単ではない輸送部門での排出抑制を効果的に進め、気候変動問題に対処するためだ。
■気候変動問題への対応にはEV、PHVと燃料電池車
気候変動を引き起こす温室効果ガスの大半を占めるCO2の20%以上は、全地球ベースでは運輸部門から排出されている。国によってその比率は異なり、米国のように車の使用が多い国では高くなり、中国のように国全体では、まだ自動車が普及段階にある場合にはその比率は高くない。表が示す通りだ。
CO2削減のためには様々な方策があるが、自動車からのCO2排出を抑制する方法は燃費向上策が主だったため、輸送部門からのCO2排出量の抑制は進んでいない。国際エネルギー機関(IEA)によると、何も対策を取らなければ輸送部門からのCO2排出量は、新興国での自家用自動車の普及もあり2030年に20%増、2050年に50%増になると予測されている。
輸送部門のCO2排出量を抑制する方法の一つは、生物由来のバイオ燃料を使用することだが、バイオエタノールとバイオディーゼル製造の原料となる植物育成のため使用される土地と水が、2億7000万人の食糧に相当する食物生産を阻害しているとの研究もあり、バイオ燃料の増産には疑問も出されている。
食物との競合を避け、CO2排出を抑制する一つの方法はEVとPHVを導入することだ。昨年12月に開催された気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)において、IEAは2030年にはEV/PHVと燃料電池車が全世界で20%のシェアを占め1億台に達する必要があると指摘している。
ただし、EV/PHVを導入すればCO2排出が抑制されるとは限らない。中国のように発電量の70%以上が石炭火力からとなると、1kWh当たりのCO2排出量が多くなり、EVの性能によっては、ほとんどCO2は削減されない。発生源が街中の自動車から郊外の発電所になり、大気汚染の解決には多少寄与することにはなる。
■欧州主要国もEVとPHVを支援
世界で最もEVとPHVのシェアが高い国はノルウェーだ。2015年のシェアは19%だ。2015年に欧州でEVとPHVが最も多く販売された国はオランダだ。前年比183%増の4万3300台販売されている。今年1月からのオランダの税制度改正前の駆け込み需要もあり、昨年12月には1万5900台が販売されたが、第1位は、約3700台を売った三菱自動車のPHVアウトランダーだった。
ノルウェーとオランダでEV/PHVの販売が多い理由は、政策支援にある。例えば、オランダでCO2排出量が多少多い通常のガソリン車を購入すると1万5000ユーロ(183万円)の登録税を支払う必要がある。フォルクスワーゲン・パサートPHVだと登録税は450ユーロ(55000円)だ。購入後に支払う道路税にも差がある。
オランダでは、2025年からガソリン、ディーゼル車の販売を禁止する法案も提出された。下院を通過し現在上院で審査中と報じられている。低地が多い国だけに気候変動対策に熱心ということもあるのだろう。
ドイツも今年5月からEV/PHVへの補助金を開始する。現在ドイツには約4500万台の車があるが、EV/PHVは5万台しかない。これを2020年に100万台にすることが目標だ。EVには4000ユーロ(49万円)、PHVには3000ユーロ(37万円)の補助金が支払われる。充電設備の増設に3億ユーロ(370億円)、政府機関のEV/PHV購入に1億ユーロ(120億円)の支出も行われる。
中国も、米国も、欧州諸国も自国メーカーのことが頭にあるのか、EVとPHV支援が政策の中心だ。燃料電池車、ハイブリッドでは圧倒的に力を持つ日本メーカーも、世界市場獲得のためには主要国の政策の方向をよく見極める必要がありそうだ。
山本隆三 (常葉大学経営学部教授)
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