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3月10日に開かれた「みちのく未来基金」の記者会見。司会は同基金の奨学金を受けている学生だ
奨学金が若者の人生を潰す!大学卒業時に借金500万円、結婚や自宅購入の大きな障害に
http://biz-journal.jp/2016/05/post_15087.html
2016.05.15 文=石丸かずみ/ノンフィクションライター Business Journal
5月14日付当サイト記事『カルビーら、震災遺児に年間300万円を28年支援…「返済不要」に涙する親も』で、東日本大震災で親を亡くした震災遺児に対する「みちのく未来基金」について述べた。
http://biz-journal.jp/2016/05/post_15086.html
これは、11年10月にロート製薬、カルビー、カゴメの3社が合同で立ち上げ、その後、エバラ食品工業が加わった奨学金事業だ。一言でいえば、「震災遺児を対象とした、返済義務のない奨学金制度の運営団体」であり、年間300万円を上限として、両親もしくはどちらかの親を震災によって亡くした子供に対して、大学や短大、専門学校などの学費が卒業まで給付される。
さて、奨学金といえば日本育英会が代表的だ。
貸与型と給付型があり、貸与型は第一種奨学金(無利息)・第二種奨学金(利息付き)の2種類で、基本的に保証人(機関保証も可能)が必要となっている。給付型は、海外留学生が対象となる奨学金制度だ。ほかに、あしなが育英会なども存在するが、そのほとんどは日本の学生に対しては貸与型である。
「うちは恵まれた家庭ではありません。しかも、家から通えるところに大学がないような地方でした。大学に行くためには、奨学金と金融機関による教育ローンがどうしても必要。現在3年生ですが、利子も含めて、卒業と同時に500万円程度の借金を抱えることになるのです」
これは、九州地方の実家を離れ、現在は都心部の国立大学に通う現役大学生の言葉だ。大学を卒業した途端、年収を大きく超える借金を抱えることになるという。
現在、大学生の3人に1人は、なんらかのかたちで奨学金や進学のためのローンを抱えているという調査もある。これでは、卒業して就職後も借金が足かせになり、家庭をつくることや自宅購入などに二の足を踏みそうである。
「フランスに留学しました。理由は、日本の大学よりも圧倒的に大学に通う費用が安いこと、そしてなにより、大学の世界的な評価が日本の大学より高かったことです」(国内企業で法務関係のフランス語翻訳担当業務の女性)
総じてヨーロッパの大学は学費が低いが、入学にはそれなりの条件がある。そう、「大学に行くだけの高い学力を有しているかどうか」と「学士を取得することで社会に貢献できる人材であるか」という点だ。「高等教育は、それだけの権利を有する人に提供されるべき」というわけである。
■学費の高い日本から海外に人材流出の危険も
一方、日本はといえば、国公立でも学費が無料というわけではなく、比較的安い文系でも「私立大学の半額」にもならない場合が多い。その分、奨学金が充実しているかといえば、確かに各種奨学金制度や足りない部分を補填する金融商品があることはあるが、そのほとんどは貸与型、つまり卒業後に返済しなければいけないものだ。
「私は、父がEU(欧州連合)圏の出身で母が日本人。日本でインターナショナルスクールに通っていました。進学を考えた時、日本の大学は考えませんでした。大検も入試も英語では受けられないし、学費も生活費も高い。
そこで、フランスの大学への進学を希望しています。日本の大検のような試験を受け、その結果待ちの状況。学費はほとんどかからないし、授業も英語が主。国際的評価も高い。私は国際的な企業で働きたいのですが、おそらく同じような意思を持つ学生が各国から集まってくるでしょう。今からワクワクしています」(18歳の男性)
EU諸国の大学は、留学生に対しても学費を低く設定している。その背景には、優秀な人材を呼び込むという目的もあるだろう。そのため、学力が低い人は入学できないし、入学後も勉強をおろそかにすればすぐに落第してしまうような質の高い授業を行っている。
一方、アメリカやオーストラリアなどは大学の学費が日本以上に高い半面、返済義務のない給付型の奨学金が充実している。『学費が低い』か『給付型の奨学金』があれば、進学のための費用は低く済む。しかし、やはり「誰でも」というわけではなく、「優秀」な人材確保のための方策なのである。
日本は学費も高く、奨学金も貸与型。そうなると、優秀な人材は海外に流出してしまう可能性が高まりかねない。一方で、みちのく未来基金のように4つの私企業が合同で「完全給付型」の奨学金制度を立ち上げ、運用している現実がある。そして、同基金の存在によって、被災地である東北地方では優秀な人材がさらにレベルを上げて地元に戻ってくるという現象が起きている。
同じような活動を国レベルで行っていかない限り、日本から優秀な人材がどんどん流出していってしまうのではないだろうか。被災地の復興支援の中に、日本の教育現場の問題点が見えてきた。
(文=石丸かずみ/ノンフィクションライター)
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