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東芝は「存続の危機」に終止符を打てるか? いま原発事業で成長戦略を描くって… 綱渡りが丸見えの「決算見通し修正」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48617
2016年05月10日(火) 町田 徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
大型連休の最中、東芝は、不祥事に伴う存続の危機にピリオドを打ち、経営を立て直そうと二つの幕引き策を繰り出した。
4月26日に公表した2016年3月期決算見通しの修正と、5月6日発表の綱川智副社長の社長昇格人事の二つである。この中には、虎の子「東芝メディカルシステムズ」の売却収入を利用して、債務超過を招きかねない火種だった米原発子会社ウェスチングハウス(WH)の「のれん代」の一部を償却する決算処理方針をようやく盛り込んだ。
昨年、経営破綻の危機を脱却するため、急きょ起用された室町正志社長や小林喜光指名委員長(社外取締役、三菱ケミカルホールディングス会長)らの奮闘と苦心の跡が伺える打開策である。従来の東芝の対応からは考えられない思い切った対応だ。
しかし、これで安心というわけにはいかない。東芝単体の決算は欠損が生じる見通しで株主にそっぽをむかれかねない資本対策が急務だし、売却が叶わなかった“出がらし事業”を寄せ集めても東芝が掲げる高成長を実現することは困難だからだ。しかも、肝心のWHの減損処理が中途半端とあって、将来に禍根を残しかねない。
■東芝が変わり始めた?
まず、連休の谷間の5月6日、新社長を電撃的に発表した緊急記者会見を紹介しよう。室町社長に代わって経緯を説明した小林委員長はまず、
「指名委員会は独立社外取締役5名で構成されており、昨年9月以来、11回開催。うち8回で社長候補者の議論をした。これと別に、内外の候補者10名程度の面談も実施、検討を続けてきた」
と、早くから新社長選びに取り組んでいたことを明らかにした。言外に、粉飾決算の露呈によって、歴代の2社長と共に退任した田中久雄前社長の後を受けて、会長から社長に就いた室町社長を混乱収拾のためのワンポイント・リリーフと考えていたことを示したのだ。
そして、3月18日に「2016年度事業計画(の進捗状況)」、4月26日に2016年3月期決算見通しの修正を公表したことを受けて、「事業構造改革に一定のメドが付いので、新体制に移行することが適当と判断した」と説明。
そのうえで、「経営企画担当の執行役として事業構造改革に一定のメドをつけた実行力、3月に発表した事業計画をとりまとめた構想力などを評価して、綱川智氏(代表執行役副社長)を社長とする案が最適である」と、選任理由を述べた。
東芝新社長の綱川智氏
あえて、小林委員長がこうした説明をしたのは、「指名委員会などを設置して形を整えただけ。魂が入っておらず、コーポレート・ガバナンスがまったく機能していない」という強い批判を念頭に、東芝が変わり始めたことを印象付ける狙いがあったのだろう。
不祥事や危機に直面した企業は、トップに外部の人材を招く例が少なくない。だが、外部登用者は当該企業の実態を把握するのに長い時間を必要として、その間に無用な混乱を招くことも珍しくない。しがらみに捉われない適任者さえいれば、内部昇格の方がそうしたリスクが小さいのは事実だ。
しかも、綱川氏は、グループの虎の子「東芝メディカルシステムズ」を育て上げ、同社の社長を勤めた経歴の持ち主だ。小林指名委員会が白羽の矢を立てたのも頷ける。
このほか、現在空席の会長に、綱川氏と同期(1979年4月)入社で、原子力部門などの経験が長い志賀重範副社長を、室町社長を特別顧問に充てる人事案も発表された。社長、会長人事は、6月の株主総会後の取締役会で承認を得て実施される予定だ。
■綱渡りが丸見えの「決算見通し修正」
もう一つの収拾策は、2016年3月期の連結決算見通しの修正である。
主因は、キヤノンへの東芝メディカルシステムズ、そして中国の美的集団股份有限公司への家電事業子会社「東芝ライフスタイル」の売却だ。2つの子会社売却によって、東芝の連結売上高は、今年2月に公表した見通しに比べて7000億円少ない5兆5000億円に縮小する。
加えて、これまで3300億円を計上してきたWHののれん代のうち2600億円を償却するため、連結ベースの営業損失が同じく2600億円膨らみ6900億円に達するという。
ただ、当期利益に3800億円の東芝メディカルシステムズ売却益、100億円の非継続事業特別益を計上するので、東芝ライフスタイルの売却に伴う特別損失300億円を差し引いても、連結最終損失は従来見通しより2400億円少ない4700億円に改善するとしている。
ちなみに、東芝の2015年12月末の純資産額は9465億円。修正前の2016年3月期末の最終損失は7100億円に達する見通しだった。この状態で、仮に、東芝メディカルシステムズの売却益が無いまま、WHののれん代を償却しようとすれば、東芝は連結ベースで債務超過に陥る危機にあった。たとえれば、破綻の半歩手前である。
同社は、2014年度第3四半期までの6年9ヵ月間に2248億円の税引き前利益の水増しがあったと昨年9月に有価証券報告書の訂正を行ったうえで、取締役会の過半数を社外取締役とする新しい経営体制を発足させて幕引きを図った。ところが、数年来、怠ってきたWHののれん代償却は頑なに拒んだ。
それゆえ、本コラム(2015年11月17日付「東芝にまた会計不祥事が発覚!口先だけの是正策、本気で『再建』に取り組む気があるのか?」)も含めて、東芝の決算処理は集中砲火を浴び、WHののれん代の償却は待ったなしとなっていた。
そうした中で、東芝は、公正取引委員会の正式承認が得られない段階で、東芝メディカルシステムズを特別目的会社(SPC)を介してキヤノンに譲渡した体裁を整えて、なんとか売却益の計上に漕ぎ着けた。綱渡りが丸見えの決算見通しの修正だったのである。
■過大な目標が実現できなければ…
だが、一連の幕引き策で危機を脱したと言える状態にはない。
第一に、東芝本体の財務危機である。
2016年3月期決算は、バランスシート上のWHの株式評価額(5600億円)を2200億円下げて3400億円とする決算処理をせざるを得ないことが響き、利益剰余金のマイナスが膨らみ、800億円程度の資本欠損が生じるという。これを早期に解消するには減資が必要だが、不祥事に揺れた東芝の減資を株主総会がすんなりと認めるか予断を許さない。
第二に、東芝が事業計画でエネルギー部門、中でも原子力部門に依存した成長戦略を描いていることだ。
2019年3月期に全体で5.5兆円の売上高を確保するとしているが、この35.3%にあたる1兆9400億円をエネルギー部門、その53.0%にあたる1兆200億円を原子力で稼ぐというのである。
実現には、2016年3月期(見通し)比で、エネルギー部門の売上高を1.2倍に、原子力部門の売上高を1.4倍に伸ばす必要がある。が、チェルノブイリ、スリー・マイル、東京電力・福島第一と未曽有の事故が続き需要が冷え込む中で、容易に実現できる目標ではない。
しかも、この過大な目標は、WHののれん代処理にも影を落とす。というのは、今回の償却額はのれん代全体の8割弱にとどまるからだ。過大な目標が実現できなければ、再び、連結ベースののれん代や東芝本体の株式評価額、その他の資産評価額などの見直しを迫られるリスクがある。
そもそも、今回、ようやく償却に踏み切った理由が、「WHを含む原子力事業の計画に大きな変更は無いが、東芝グループの資金調達コスト上昇を考慮した」(室町社長)というのも、唐突かつ不可解だ。
実際は、東芝メディカルシステムズの売却益で債務超過が回避できるメドが付いたので、償却に踏み切ったのではないか。
昨年に続き粉飾決算と認定されては、上場廃止などが避けられず会社が破綻してしまうので、とってつけたような理由を持ち出して、あたかも今回償却が必要になったと説明しているのではないか、との見方が市場ではもっぱらだ。
■新日本監査法人に意地を見せてほしい
粉飾決算の責任について、ある東芝関係者は昨年、自らの責任を棚に上げて「監査法人が見破れなかった責任が重い」と強弁、2016年3月期限りで新日本監査法人を担当から外すと豪語していた。実際、2017年3月期からは、あらた監査法人を起用するという。
監査する企業から監査報酬を受け取る監査法人の立場は、社会が期待するほど強くない。耳に痛いことを主張して、大口クライアントを失うことにならないか、常に怯えている会計士は少なくない。
とはいえ、決算に不正や甘さがないか、常に合理的な疑いを持つことが、会計士や監査法人の義務である。
どうせ首を挿げ替えられるのなら、新日本監査法人に意地を見せてもらいたいものである。責任を転嫁しようとしてきた東芝に対して、最も保守的な決算処理を求めて、徹底的なのれん代の償却や、保有株式・資産の評価替えを迫ってみてはどうだろうか。そういう姿勢こそ、東芝の過去との決別の一助になるはずである。
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