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なぜ、従業員の給料を上げても仕事への意欲が長続きしないのか
http://www.dhbr.net/articles/-/4274
2016年05月09日 ショーン・エイカー グッド・シンクCEO ダイヤモンド・オンライン
幸福学の第一人者ショーン・エイカーが、「社員同士による表彰システム」の効果を示す。仕事で貢献・努力をした社員に対し、別の同僚が称賛の意を表して「ポイント」を送る行為をデジタルで制度化すれば、従業員と顧客の満足度向上につながるという。
フォーチュン100に名を連ねる某企業の経営幹部が、私にこう言った。「会社に幸福促進プログラムは必要ない。社員が意欲を持つのは当然だ。そのために給料を払っているんだから」(この体験は拙著『幸福優位7つの法則』にも記している)。
未熟なリーダーが非常によく口にするこの言葉は、給料=従業員エンゲージメント(意欲、愛社精神)という考えが前提となっている。ところが、仕事の満足度と給料の関係を考察したメタ分析によれば、両者にはわずかな相関しかないこと、そして高いパフォーマンスを引き出す要因は給料以外にもさまざまにあることが示されている(英語論文)。
従業員の成功には「貢献への正当な評価」を受けること、そして「内発的動機」を持つことが重要だ。それは知られているのだが、これらをどうオペレーションにうまく組み込むかがカギとなる。
私が携わっている2つの調査研究では、幸福度と仕事の成果を高めるためにデジタルプラットフォームを活用する効果について、解明が進んでいる。たとえば、ソーシャル・レコグニション(社員同士で称賛・表彰を与え合うこと)のプログラムである。
かいつまんで説明すると、巧みに設計された「デジタル表彰システム」を活用することで、社員間での内発的な称え合いが広く行われるようになる。その費用対効果は高く、社員のパフォーマンスとエンゲージメントは著しく向上し、顧客ロイヤルティ(ネットプロモータースコア:仲間への推奨意図で測定)も向上する。
この調査研究の構想は、2015年のワークヒューマン会議(WorkHuman)で生まれた。私とともに登壇したアダム・グラント(組織心理学者)、アリアナ・ハフィントン(ハフィントンポスト創設者)、ロブ・ロウ(俳優)は、それぞれ専門分野は異なるものの、共通のメッセージを持っていた。「前向きで意欲的な従業員を育てるには、効果的かつ拡張可能なソリューションを見つける必要がある」ということだ。
私はある問いを胸に会議を後にし、1年がかりでその解明に取り組んできた。デジタル革命は、情報のスピードを速め、仕事量とストレスを増やしている。しかし、デジタルを幸福の促進に役立てることはできないものだろうか?
まずは、「称賛」と「表彰」をオペレーションに落とし込んで業務成果につなげる方法を探った。その一環で、ソーシャル・レコグニション・プログラムの提供企業として有名なグローボフォース(Globoforce)との協働を開始。同社との提携企業から数社を選び、称賛・表彰と業務成果との相関に関する大量の匿名調査データを共有させてもらった。現在、調査研究の成果は実を結びつつあり、より優れた社内表彰プログラムの策定や既存のアプローチの検証が可能になろうとしている。
最初の調査対象にふさわしいと思われた企業は、ジェットブルー航空だ。同社はJ.D.パワーの顧客満足度調査で、LCC部門のトップに11年連続で輝いている。その成功の一端は、ソーシャル・レコグニションへの注力にあると思われる。
グローボフォースはジェットブルーのために、社員同士で称え合うプログラムを開発した。模範的な仕事・努力や何らかの貢献をした同僚(およびリーダーやチーム)を指名・推薦できる仕組みだ。その成功談は社内のニュースフィードで全社に共有され、受賞者にはポイントが付与される。ポイントの使い方は自分で選ぶことができ、すぐ商品券に換えて食事に使ってもよいし、旅行やクルージングなどの各種オプション用に貯めておくことも可能だ。
このプログラムの興味深い点をいくつか紹介しよう。
●受賞者自身でポイントの使い方を選べるため、プラットフォームへの参加意欲が高まる。そして個々人に選択の自由を与えることで、ビーガン(完全菜食主義者)に報奨としてステーキのディナーが提供されたり、耳の聞こえない社員にiPodが贈られたりという問題を回避できる(どちらも実際に起こった表彰制度の失敗例だ)。
●報奨には選択の幅があるため、受賞者は自分にとって有益なものを選んで交換できる。
●表彰内容が全社で共有されるため、受賞者は投稿を見た多くの社員たちから祝福を受ける。そのうえ、ポジティブな行動に関するエピソードは他の社員にとってよき手本となる。
●「P2P」、つまり社員同士で褒め合う制度なので、業績考課とは異なり、純粋な感謝の気持ちを表しやすくなる。
●単なる昇給ではなく、リアルタイムの表彰で報いることには素晴らしい利点がある。昇給されればその金額が心理的に固定され、満足度は頭打ちとなってしまうかもしれない。しかしソーシャル・レコグニションには継続性と意外性があるため、そうなりにくい。
ジェットブルーのデータによると、表彰者の人数が10%増えるごとに、社員の定着率が3%、エンゲージメントが2%向上していた。
社員の離職は、企業にとって最も金銭的損失の大きい問題になりえる。諸研究によれば、1件の離職・補充にかかるコストは、計算の方法次第で給料の20%から150%に及ぶ。そのため定着率が3%上がれば、会社の規模によっては数千万ドルもの効果に相当するのだ。
さらに、ジェットブルーのデータによれば、意欲の高い乗務員はそうでない人に比べ、顧客を感動させる確率が3倍高い。そして顧客に称賛される回数でも、上位10%に入る確率が2倍である。したがって、表彰は社員の定着率だけでなく、顧客の満足度とロイヤルティにも影響を及ぼすのだ。
なお、前述したジェットブルーのエンゲージメント2%向上という数字は、他の事例と比べれば目立たないほうだ。シマンテックがグローボフォースのソーシャル・レコグニション・プログラムを実施したところ、従業員エンゲージメントのスコアは14%も向上している(英語サイト)。
表彰プラグラムを費用対効果の見地から分析すると、社員の定着率、エンゲージメント、顧客ロイヤルティの向上による財務的な効果が大きいことは明らかだ。それを裏付けるものとして、グローボフォースがフォーチュン500に名を連ねる別の業界トップ企業と協働した事例がある。基本給のアップと表彰機会の増加、それぞれが従業員エンゲージメントにどう効果を及ぼすかを検証した。
小額の昇給と、表彰制度への投資を比較したところ、エンゲージメント向上への効果は後者が前者の半分であったが、そのコストは前者のわずか5%であった。換言すると、表彰はエンゲージメント向上の半分を実現できる一方で、かかるコストは昇給に比べて95%も少ないのだ。
ただし注意すべきは、表彰制度をしかるべき昇給の代替にしてはならないということだ。両方を併用することで効果を発揮する。あらゆる会社が、いい仕事をした平均的な社員の給料を上げられれば、それに越したことはない。しかし、会社の資金は無尽蔵ではなく、多くの会社は株主の監視下にあるため、投資に見合う効果が問われる。従業員が正当に評価・称賛されていない今日では、表彰制度はなおさら重要だ。
1度の昇給による幸福感と、デジタル称賛システムがもたらすような高頻度・内発的な幸福感は、どちらがどの程度持続するのか。私は現在この問題を、インスティテュート・フォー・アプライド・ポジティブ・リサーチに所属する妻のミッシェル・ギーレンおよびエイミー・ブランクソンと共同で研究している。
我々の仮説はこうだ。1度昇給するだけでは、その給与水準はやがて「当たり前」と感じられるようになり、意欲の向上は長続きしない。したがって、同じレベルの意欲を維持するには、再び昇給する必要がある。この仮説は、内発的/外発的動機に関する過去のHBR記事"Does Money Really Affect Motivation?"とも一致する(英語記事)。一方、社員同士が褒め合うプログラムは継続的に行われるため、意欲のレベルが元に戻ってしまうことは起こりにくい。
企業が成長と拡大を続け、テクノロジーが進化し続けるにつれ、職場でも私生活でも助け合いのネットワークは分裂していくばかりだ。デジタル革命は仕事のスピードを劇的に速めているが、本記事で述べた研究は、デジタルが人々を再ふたたび結びつけるカギとなりえることを示唆している。
さらなる成功と幸福を目指してチームを導く人々は、その過程で称賛を必要としている。彼らが享受すべき、効果的で内発的な称賛を仲間同士で与え合うシステムを、テクノロジーによって生み出せるのだ。
HBR.ORG原文:The Benefits of Peer-to-Peer Praise at Work February 19, 2016
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ショーン・エイカー(Shawn Achor)
グッド・シンクCEO。ポジティブ心理学の第一人者。これまで50を超える国々で講義や研究を行い、顧客には多数のフォーチュン100企業のほか、NFLやNBA、米国防総省やホワイトハウスも含まれる。著書に『幸福優位7つの法則』『成功が約束される選択の法則』がある。
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