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日産の販社の多くが営業担当総出で顧客対応に当たっている(記者撮影)
現場から悲鳴、日産「軽販売半減」の巨大衝撃 三菱自動車の燃費不正で販社が混乱している
http://toyokeizai.net/articles/-/116895
2016年05月08日 木皮 透庸 :東洋経済 記者
「まったくの想定外で、とんでもない出来事だ」。首都圏で事業展開している日産自動車の販売会社の社長は、三菱自動車の燃費不正問題を強い口調で憤った。
三菱自動車と日産で共同開発し、日産が販売していた軽自動車の「デイズ」と「デイズルークス」の燃費不正が4月20日に明らかになって以降、日産の全国の販売店では2車種の販売を停止した。4月の日産の軽自動車販売は5574台と前年同月比51.2%減少。軽自動車全体では前年同月比7.5%減で、三菱自動車も44.9%減らしていることから、対象車種の販売停止が大きく響いたといえる。
日産の販売店では4月20日、日産本社からの連絡を受けて、店頭にあった展示車やパンフレット類を全て撤去。ユーザーへの電話や訪問での連絡に追われた。三菱自動車が記者会見を行った翌日に訪れた都内の日産販売店では、営業担当が全員出払っている状態で、メカニックが顧客の対応にあたっている有り様だった。
■日産の軽自動車販売は好調だった
日産が「デイズ」と「デイズルークス」を発売したのは、2013年6月。発売後1か月で月間販売目標8千台の4倍近い3万台を受注し、日産の軽自動車史上最高の受注ペースを記録した。2015年度の販売台数は約14万台と発売から2年が経っても勢いを保っており、軽自動車の販売ランキングではホンダ「N-BOX」、ダイハツ「タント」に次ぐ3位に入った。この2車種で日産の国内販売全体の約4分の1を占める稼ぎ頭にまで成長していた。
軽自動車と登録車を合わせた日産の国内シェアは約13%(2015年度)と以前に比べ振るわないが、2%台と主要8社の最下位である三菱自動車に比べれば、はるかに販売力がある。それゆえ、日産が販売した不正対象車両は46万8千台と三菱が販売した「ekワゴン」「ekスペース」の約3倍に上る。台数だけを見れば、販売現場の混乱ぶりは日産の方がより深刻だ。
前出の首都圏の日産販社では、「デイズ」「デイズルークス」は年間販売の17~18%を占めるが、東北や九州といった地方では一家に2台保有という世帯も多く、新車販売の3割から4割を軽自動車が占める販社も珍しくない。東北地方の日産販社社長は、「お客様対応に追われて販売どころではない。お客様をなくさないよう頑張るだけ」と、現場はまさに非常事態モードだ。
売れ筋だった「デイズ」だが、イメージは地に堕ちた(撮影:尾形文繁)
日産の販売店では、「デイズ」や「デイズルークス」の納車待ちで下取り車を既に売却してしまった顧客に対して、レンタカーや代車を無料で貸し出すなどして経済的な負担が発生しないよう対応しているという。
日産の販売会社が必死になっているのには別の事情もある。日産の国内販売では目立った新車投入がこの2年近くなく、2015年度下半期に予定されている主力車種の新型車投入を待つ状態にあった。各販売会社ではこれまで、オプションや車検、保険の販売に力を入れることで、新車販売の落ち込みをカバーしようとしてきた。しかし販売台数の4分の1を占めるような車種をショールームに並べられないとなると話は別だ。
■販売再開できたとしてもイメージダウンは必至
5月2日から国土交通省は問題車種4車種の燃費の再試験を実施している。三菱自動車は実燃費との乖離値は「5〜10%」としているが、調査結果次第では、車の生産や販売に必要な「型式指定」が取り消される可能性もある。仮に「型式指定」が取れて販売を再開できたとしても、イメージダウンは避けられず、「3〜5割ぐらい販売が落ちる」(ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹アナリスト)との見方もあり、販売会社にとっては茨の道は続く。
日産は元々、軽自動車の開発や生産ノウハウに乏しく、「デイズ」「デイズルークス」では、開発や生産は協業相手の三菱自動車に委ね、商品企画とデザインに関わってきた。両社は2015年10月、第3弾となる軽自動車では車両の設計開発を三菱自動車に替わって日産が担当することを発表。日産の環境技術や安全技術力を搭載することで商品競争力を引き上げるのが狙いで、生産は引き続き三菱自動車の水島製作所(岡山県倉敷市)で行う予定だった。ただ、今回の燃費不正により、両社の提携関係が今後どうなるかは不透明となった。
首都圏の日産販社社長は、2000年と2004年に起きた三菱自動車のリコール隠しを引き合いに、「三菱の販社には大規模リコールの経験があるが、日産の販社には経験値がない」と頭を抱える。2017年3月期の予算計画も急ピッチで作り直しているが、対象車種の販売停止期間がどのぐらいになるか見当もつかず、「仮の計画にしかならない」とこぼす。
期待の新車投入を待つ中で起きた今回の問題。前例のない事態をどう乗り切るか、日産の販社は苦しい舵取りを強いられている。
日産自動車の会社概要 は「四季報オンライン」で
http://shikiho.jp/tk/stock/info/7201
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