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「首相官邸 HP」より
日本経済、2期連続マイナス成長で危機的状況突入か…株価下落速度が史上3番目
http://biz-journal.jp/2016/05/post_14998.html
2016.05.07 文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト Business Journal
足下の経済動向について、筆者は非常に危機感を抱いている。背景には、年明け以降の株価の下落速度が歴史的に見ても非常に大きかったことがある。実際、過去2カ月間のピークからボトムまでどの程度株が下がったかを下落速度が大きい順に並べ替えると、過去最速の下落速度を記録したのが2008年のリーマン・ショックであり、その次が1990年代前半のバブル崩壊となる。実にその次が今回の年明け以降の株下落であり、2000年以降のITバブル崩壊を凌ぐ落ち込みという意味でも、非常に大きなマーケットの調整が起こったことがわかる。
さらに1年前との比較で見ても、1年前の日経平均株価は1万8000円台から1万9000円台へと、上昇基調にあった状況に対して、逆に今年は大きく値を下げたということで、真逆の動きになっている。
こうした状況は、すでに実体経済にも影響が出ている。事実、街角景気指数とされる景気ウォッチャー調査を見ると、現状・先行き判断DIとも8カ月連続で好不調の分かれ目となる50割れとなっている。時期的に見ても、チャイナショックを発端としたマーケットの去年の夏以降の混乱というのが大きく影響していることが推察される。
また、経済成長率を見ても、2015年10−12月期はマイナス成長となっている。さらに経済成長率は鉱工業生産の変化率と関係が深く、これを見ると生産計画ベースで1−3月期の鉱工業生産が前期比マイナスになっていることからすると、場合によっては経済成長率が2期連続でマイナス成長となる可能性もあり、非常に厳しい状況といえる。
さらに厳しい状況としては、アベノミクスの根幹はいかに好循環で賃金を上げるかというところだが、そこに赤信号が灯っている。
春闘の賃上げ率の先行指標として、労務行政研究所が2月初旬に公表した賃上げ率を見ると、去年よりも下がる予測になっているが、これは調査期間が去年12月から年明けの1月前半までだったことからすれば、恐らく実際の賃上げ率はさらに下がる可能性が高いと考えられる。17年ぶりの水準まで賃上げ率が上がった去年でも、毎月勤労統計ベースの名目賃金上昇率が+0.1%だった。それよりも賃上げ率が今年下がるということは、今年の名目賃金はマイナスの可能性が高い。つまり、このまま放置しておくと、今年の日本経済は相当厳しいことになることが想定される。
■取り組むべき課題
以上を勘案すると、年前半に取り組むべき課題としては、需要刺激策が非常に重要だと考えられる。先般のG20でも、国際協調によりこの世界経済の難局を乗り切るために、すべての政策手段を用いるという政策協調がされたこともあり、日本もこれにある程度追従すべきだと考えられる。
すでに昨年度の補正予算というかたちで政策がまとめられており、このメニューについて全般的な方向性は一定の評価ができる。ただ、事業総額を見ると3.5兆円にとどまっており、これは内閣府の試算によれば来年度のGDPを+0.4%程度押し上げるということになっているが、第一生命経済研究所の計算によれば同+0.3%程度であり、非常に力不足である。このため、方向性としては、これをさらに拡充するという方向が良いのではないかと考えられる。
一方、公共事業について、よく建設現場で人手不足ということをいわれてきたが、建設労働者の労働需給判断DIを見ると、不足感は解消してきており、マイナス金利の面でも、今、安倍政権始まって以来、もっとも機動的な財政政策の効果が出やすい時期になっていると考えられる。
このため、公共事業も一定割合は増やす必要があろう。具体的には、熊本地震復興を筆頭に、介護施設や保育所の増設の部分については昨年度の補正予算では不十分であるため、そうした方向性の増額も考えられるだろう。また、国内の空港整備や港湾インフラといった日本全体の国際競争力が増すような公共投資であれば、国民にも理解される可能性が高いと考えられる。
さらには、数年前にトンネルが崩落した事故もあったように老朽化インフラの整備も重要である。日本のインフラは50年以上前に建っているものが多くを占めるため、老朽化インフラ整備については、本気で取り組めば甚大な需要が存在する。こうしたメニューを上手く取捨選択して、いかにワイズスペンディング(賢明な支出)というかたちがとれるかが重要であろう。
■目安は需要不足
具体的に必要な規模については、ひとつ目安となるのは足下の需要不足である。去年の10−12月期時点で年換算8.6兆円となっているため、昨年の補正予算の規模も加味すれば最低でも5兆円規模は必要と考えられる。
さらに、ESPフォーキャスト調査に基づくエコノミストの予測の平均成長率が実現した場合、今後の日本のGDPギャップがどうなるかを予測すると、消費増税が織り込まれているため一旦は駆け込み需要で縮小するも、その後は反動減でマイナス7兆円のデフレギャップに逆戻りすることになる。
デフレ脱却を重視するのであれば、次の消費増税も織り込んだかたちで日本経済を考えると、17年度いっぱいまでは厳しいことになる。逆にデフレ脱却よりも財政再建ということを前向きに打ち出すのであれば、消費増税という選択肢もあるため、ここはどちらを重視するかによって重要な決断になってくるのかと思われる。
(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト)
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