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image credit: Hyperloop Technologie
時速1100キロ超の交通システム「ハイパーループ」、年内に本格試験走行へ
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160506-00012053-forbes-bus_all
Forbes JAPAN 5月6日(金)20時30分配信
金属製のチューブの中を、空中浮上式の車両が超高速で走る――これが都市間を結ぶ交通機関の未来なのか。
ハイパーループというこの次世代交通機関の構想は、2013年、イーロン・マスクによって初めて公表された。目下開発が進められており、初となるフルスピードでの本格試験走行が年内に予定されている。ハイパーループ・テクノロジーズ(Hyperloop Technologies)のブローガン・バンブローガンCTOが、4月中旬にデトロイトで開催されたSAE(自動車技術者協会)の会議&見本市SAE World Congressで同社の取り組み内容について語った。
ロサンゼルスに本社を置くハイパーループ・テクノロジーズは、マスクが構想を発表した後に開発に名乗りをあげた企業のひとつで、その取り組みはほかの企業よりも進んでいるように見える。同社は現在、ネバダ州の砂漠地帯に全長3kmのテストチューブを建設中。2010年代が終わるまでには世界のどこかで商業化を実現したい考えだが、それまでにはまだ多くの課題が残っている。
ハイパーループの基本前提は、真空状態に近い、全長数百から数千kmの金属製のチューブ内を、乗客を乗せた車両が空中浮上(非接触)で進むという仕組みだ。車両は電磁推進装置を使って加速し、磁気浮上によってチューブの底面に接触することなく、浮いたまま滑って進む。チューブ内は超低圧で空気抵抗が最小限に抑えられるため、それ以上の推進力がなくても長距離を走ることができるのだ。だがこのコンセプトを大規模で実現するためには、やることが山ほどあり、多くのエンジニアを必要とする。
バンブローガンがSAE World Congressを訪れたのは、世界最大の交通技術者の集まりで創業15か月の自社の取り組みについて説明し、現在140人の開発チームの増員を図るためだ。彼自身はクライスラーでエンジニアとしてのキャリアをスタートし、カリフォルニアに移り、マスクが設立した宇宙船の開発・製造大手SpaceXで10年以上経験を積んだ。
ハイパーループ・テクノロジーズは、この新型高速交通機関のための基盤技術の開発に重点を置いている。しかし、全てを自社で行うのではなく、パートナーやサプライヤと提携し、それらのシステムに必要なハードやインフラのかなりの部分を提供して貰う考えだ。ハイパーループの優れた特徴の一つは、システムが地上でも地下でも、あるいは水中でも可能だということだ。
この構想はあまりにも斬新だ。そのため最初の商業化は、まずは貨物で信頼性と安全性を証明することに重点が置かれる可能性が高い。それが証明されない限り、乗客はこの新しい交通手段を利用しようとしないだろう。
■20〜30人乗りのコンパクトな車両で
チューブ内の気圧は約100Pa、つまり通常の大気圧の約1,000分の1だ。電磁推進システムによって巡航速度に達すれば、車両はカーブや高度の変化の回数によって20〜30マイル、電力供給がない状態で滑ることができる可能性がある。ハイパーループ・テクノロジーズでは、車両を浮上させ、摩擦をほぼ無い状態に維持する上で、継続的な電力供給を必要としない無電源電気浮揚システムと称するものを考案した。
最高速度は、チューブの軌道や地元の規制によって異なる。貨物については乗り心地は問題にならないため、乗客を輸送する際よりも速いスピードに加速されることになる可能性が高く、最大で時速700マイル(約1,127km)に達する可能性もある。
「ハイパーループを使えば、ミシガン州のデトロイトから100マイル(約160キロ)以上離れたイーストランシングまでの乗客輸送が約20分になる」とバンブローガン。「インターネットと同じような原理で、輸送をパケット化する。コンパクトな車両にし、10秒程度の短い間隔で発車する仕組みだ」は説明した。
乗客用車両は、最大限の柔軟性を実現すべく20〜30人乗りで設計が行われている。ハイパーループの線路は複数の都市を結ぶものになり、それぞれの目的地に到着したら、車両はその線路を外れたところにある乗降口につけることになる。
バンブローガンの言う「輸送のパケット化」というのはインターネットの仕組みによく似ている。ネットでは、異なるコンピューターに向かう小規模な個々のデータパケットが同じ伝送経路を進み、それぞれの目的地で別のラインに逸れていく場合がある。車両を比較的小さい規模にとどめることで、ハイパーループについても利用可能性を最大限にしつつ、同じことをしたいとバンブローガンは考えている。
1本のチューブの中で、車両は一方向にしか進むことができないため、双方向の移動を実現するには、各ルートに最低でも2本の並行したチューブを建設する必要がある。複数の目的地を結ぶ環状のチューブ1本というシステムも建設可能だが、利用者にとってはあまり望ましくない。
バンブローガンはまた、ものを動かすことに重点を置き、そのために使われる仕組みについてはさほど気にしない鉄道会社との提携についても言及。実現すれば、ハイパーループ・テクノロジーズはそれら鉄道の線路に近い既存の敷設用地を活用することができ、導入を劇的に単純化することが可能になる。
■建設コストは高速鉄道の6分の1?
バンブローガンによれば、双方向のハイパーループ・システムの建設コストは1kmあたり約1,500万ドル(約16.6億円)。もしもこの推定が正確ならば、サンフランシスコとロサンゼルスを結ぶ約643kmのシステム建設費は100億ドル(約1.1兆円)を下回る。同じ区間を高速鉄道で結ぶ場合、建設コストの現在の推定額は600億ドル(約6.6兆円)だ。
現在、ハイパーループ・テクノロジーズの資金調達額は約1億ドル(約111億円)に達しており、今後のテストが成功すれば、さらに多くの資金を調達できる可能性もある。
ハイパーループは、民間航空機よりも運営コストの点でもかなり強みがある。現在、座席マイルあたりの運航費は格安航空会社で約7〜8セント(約7.7〜8.8円)、従来型の航空会社で11〜12セント(約12.2〜13.3円)だ。バンブローガンは、ハイパーループの場合はこれが約1.6セント(約1.7)円になるだろうと推定する。
これらのコストが推定通りになるのかも、技術が予定通りに機能するのかも、現時点ではまだ分からない。だがハイパーループには、都市間で人や貨物を移動させる未来の複合輸送システムとして、とてつもなく大きな可能性があるのは確かだ。
多くの乗客を機体に乗せ、空を突っ切る航空機に比べて、乗り心地や利便性が改善される可能性も大きい。ハイパーループ・テクノロジーズが年内に行う予定の試験走行には、世界の注目が集まるだろう。バンブローガンのかつての上司であるマスクが最新の電気自動車を発表した時や、ロケットの洋上着陸を成功させた時のように。
Sam Abuelsamid
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