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マンション価格、昨年の2割増で平均5600万!販売好調バブル崩壊、前年比4割減の異常事態
http://biz-journal.jp/2016/05/post_14976.html
2016.05.06 文=編集部 Business Journal
マイナス金利は不動産各社に追い風になる。なぜなら、不動産各社は借金をして投資用の不動産を買っているため、金利低下のメリットを享受できるからだ。そのうえに、住宅ローン金利が下がれば販売にもプラスに働く。日本銀行が1月末にマイナス金利の導入を発表すると、東京株式市場で不動産関連銘柄が買われた。だが、実際には逆風が吹きつけている。マンションの販売が減少しているのだ。
■首都圏マンションの1月の契約率は58%に落ち込む
マンション建築で業界首位の長谷工コーポレーションの株価は、マイナス金利導入発表後の2月1日に1339円の高値をつけたが、2月24日には一時891円まで急落。年初来の安値を更新した。その後も1000円前後で推移している。マンション販売の減速が伝わったためだ。
不動産経済研究所が発表した全国マンション市場動向によると、2015年の発売戸数は14年比6.1%減の7万8089戸。前年実績割れは2年連続となった。最大市場の首都圏は14年比9.9%減の4万449戸だった。全国のマンションの平均価格は4618万円で14年比7.2%上昇。調査を始めた1973年以降で最も高くなった。それまでの平均価格の最高はバブル期の91年の4488万円だった。建築作業員の人件費や資材の高騰を理由に販売価格が上昇したが、これが消費者の購買意欲を鈍らせる結果になってしまった。
さらに衝撃的な数字がある。
同研究所がまとめた16年1月の首都圏でのマンションの新規発売戸数は、前年同月比11.0%減の1494戸、2月は13.9%減の2237戸、3月も39.6%減の2693戸と4カ月連続で減少した。2月単月では、91年以来25年ぶりの低水準となった。東京23区は17.9%減、23区以外の東京都内は実に42.7%減と大幅な落ち込みとなった。
中古マンションの値上がりも止まった。不動産調査会社の東京カンテイによると、2月の東京23区の販売希望価格(70万平方メートル換算)は1月と同水準。1月まで19カ月連続で上昇していたのが頭打ちとなった。都心ほど上昇余力がなくなっており、都心6区(千代田、中央、港、新宿、渋谷、文京)の2月の価格は7111万円で、前月比0.4%下がった。2カ月連続の値下がりだ。不動産業界では「売り手と買い手の希望価格の差が広がっている」と分析する。
1月の首都圏の新築マンションの契約率は58.6%と前年同月より16.3ポイント低下。好不調の分かれ目とされる70%を2カ月連続で下回った。50%台はリーマン・ショック時とほぼ同じ水準である。
3月の新築マンションの1戸当たりの平均価格は5638万円で、10カ月連続で上昇した。15年の平均価格(4618万円)を2割以上、上回ったことになる。
首都圏では販売価格の値上がりが影響してマンションの売れ行きに急ブレーキがかかったのである。株安による逆資産効果も影響した。長谷工は首都圏のマンション建築の3割を占める最大手だ。業績の先行き懸念から長谷工株が売られたとみられている。
■業績は絶好調
長谷工の業績は好調だ。16年3月期の連結決算の売上高は前期比19.9%増の7700億円、営業利益は56.9%増の670億円、純利益は57.7%増の450億円の見込み。このままいけば、過去最高益を更新する。
マンションの施工が好調で業績を押し上げた。16年3月期の民間分譲マンションの受注高は4365億円で、前期より122億円増える模様だ。15年12月現在、野村不動産のプラウドシティ大田六郷の632戸、積水ハウスのグランドメゾン江古田の杜の531戸、野村不動産のオハナ淵野辺ガーデニアの516戸などの受注残がある。
15年マンションの新規供給戸数に占める長谷工の施工シェアは、首都圏では32.8%。14年より5.8ポイント増加した。大手ゼネコンがマンションの建設を手控えている影響もあって長谷工に受注が集中した。
大手ゼネコンはマンション受注を手控える
15年後半から、マンションの傾斜が社会問題になった。横浜市都筑区の傾斜マンションは4棟すべてを建て替える。建て替えの費用は販売主の三井不動産レジデンシャルや元請けの三井住友建設などが全額負担する。
横浜市西区のマンションでは全5棟のうち1棟が傾き、ほか4棟で鉄筋に切断の疑いが出てきた。こちらも全棟を建て替える。建て替え費用は販売主の住友不動産と施工した熊谷組が全額負担する。住友不動産が住民に全棟建て替えを提案したと報じられると熊谷組の株価が急落。2月29日に222円(高値は2014年9月4日の420円)と年初来安値に沈んだ。
マンションの傾斜問題が相次いだことで、大手ゼネコンはマンションの受注に慎重になっている。長谷工は他社がマンション施工を手控えていることからシェアを高め、来期も収益を伸ばしていく方針だ。「住友不動産の傾斜マンション全棟建て替え工事も長谷工が受注するのではないか」と見る向きもある。
しかし前述のとおり、首都圏のマンション販売は氷河期に入ったという厳しい見方が出始めている。
販売不振の原因は、販売価格の高騰だ。3月の1戸当たりの販売価格は5638万円。前年同月比の上昇は10カ月連続。これまでのピークだったバブル期の6100万円に近づいている。15年度(15年4月〜16年3月)の平均価格は5617万円。91年度(5822万円)以来、24年ぶりの高い水準となった。
日銀のマイナス金利導入で住宅ローン金利が低下するといっても、販売価格がこれだけ高騰してしまえば庶民は手が出せない。
在庫となっているマンションを売るために、価格を引き下げる必要が出てくるだろう。マンション販売業者の施工業者へのコスト圧縮の要求は、一段と厳しいものになるだろう。そのため、大手ゼネコンはマンションの受注に慎重になっている。採算スレスレで受注した物件が、欠陥マンションなどと指摘されたら大損失となる。全棟建て替えの恐怖が、ゼネコンの営業部隊を委縮させている。
長谷工はマンションが主力だ。土地の手当て、計画の立案から施工まで一貫して手掛けている。しかも首都圏でのマンションの一本足打法といっていい。マンション事業は中期的に見て、少子化で先細りする心配がある。首都圏のマンション市場はバブル崩壊前夜の様相を呈してきたという厳しい指摘もある。
■長谷工は高齢者事業を拡大
そんななかで、長谷工の業績が投資家から注目されるのはなぜか。
4月にも認知症を対象にしたデイサービス運営業者のふるさとを買収する。ふるさとは川崎、横浜市で50施設を持ち、重度の認知症の高齢者も受け入れている。買収額は30億円以内という。
長谷工は2つの子会社を通じて三大都市圏で高齢者向けの施設を37カ所運営している。20年までに都内や神奈川県、愛知県などで新たな高齢者施設を10カ所増やす予定だ。土地の有効活用を望んでいる所有者と組み、建設費は土地の所有者が負担し、完成後に長谷工がフロアを借りて高齢者施設を運営する。
老人ホームを運営しているのは、センチュリーライフと生活科学運営。両社合計で売上高は100億円に上る。4月に高齢者向け事業を統括する中間持ち株会社、長谷工シニアホールディングス(HD)を設立し、子会社3社を傘下に収める。
25年までに長谷工シニアHDの売上高を200億円、経常利益を売り上げの1割にする計画で、現在の2倍の規模に伸ばす目標だ。
マンション入居者の高齢化が進むことから長谷工はマンションの周辺部に老人ホームを開設する。自社開発した分譲マンションの入居者が定年退職した場合を想定。新たに高齢者向けの住宅を建設し、転居を促すことによってグループ全体で顧客を囲い込む考えだ。
(文=編集部)
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