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かねてから「日経平均1万4000円割れ」の懸念を指摘していた筆者。円高定着の懸念が高まってきたことで、比較的早く現実のものになる可能性も(写真:AP/アフロ)
私が「日本株はもう一段下がる」と考える理由 再び強まる円高圧力、米国株にも黄信号
http://toyokeizai.net/articles/-/116566
2016年05月03日 江守 哲 :エモリキャピタルマネジメント代表取締役 東洋経済
4月27・28日の日銀金融政策決定会合での政策導入見送りは、市場に大きなショックを与えている。5月2日の日経平均株価は前週末比518円安となり、辛うじて1万6000円は維持したが、3日からの3連休の期間中に再び円高が進む可能性があり、海外市場の動向には引き続き注意が必要である。
■残念ながら日経平均1万8000円回復は「夢物語」に
市場のショックが大きくなった原因は、今回の決定会合で新たな政策導入が決定される可能性を示唆する一部の報道であった。市場の期待が膨らんだことによる反動で、下げ幅が大きくなったとの指摘もある。
しかし、冷静に見れば、株価上昇を正当化できる材料はほとんどなかったのであり、政策導入に関係なく、上値は限定的になっていただろう。というのも、日経平均採用銘柄の1株あたり利益(EPS)はすでに1100円を割り込んでいたからだ。
標準的な株価収益率(PER)を15倍とした場合、日経平均株価の中心的な水準は1万6500円となる。たとえPER16倍まで買われても、上値は1万7600円である。筆者は毎日配信している有料メルマガで、「1万7600円以上は超割高であり、売り場である」と明確に指摘していた。
実際、筆者は会合前の戻り局面で1万7600円までの戻り局面ですべての買いポジションを利益確定し、ポジションを解消した状態で決定会合を迎えた。出来れば売り持ちにして決定会合を迎えたかったが、万が一政策導入が行われ、割高を買う投資家が出てきた場合に備え、1万7600円での売りポジションの構築を見送ったのである。結局、政策導入は見送られ、28日の市場ではランチタイムに先物価格が急落し、その後の現物市場でも売りが殺到したことで、1万7000円を大きく下回るところで引けることとなった。
それでもなお日本株には割安感はない。今後はEPSの下方修正が必至の情勢であり、1100円のEPSを前提として考えることはできない。いずれ1050円程度まで調整が進む前提で考えているが、その場合にはPER15倍で1万5750円、16倍でも1万6800円である。1万7000円以上はもちろん、1万8000円以上はもはや夢物語である。
むしろ、14倍まで売られた場合には、1万4700円まで下落する可能性があることになる。この水準は、2月12日につけた1万4865円に近く、当面の下値のターゲットになろう。
一方、今後の日本株の水準を決めるのはドル円相場の水準である。本欄でも何度も取り上げているドル円と日経平均株価との関係で推察される、日経平均株価の理論値は、ドル円が107円で1万5720円、106円で1万5480円である。つまり、現在の1万6000円水準の日経平均株価は、ドル円からみるとまだ割高である。
逆に、前述のように日経平均株価が1万4700円まで下落する場合、ドル円は103円程度まで下落している可能性が高い。市場がドル円と日経平均株価の関係を注視する状況が変わらない限り、このような為替と株価のマトリックスが機能し、円高が株価を抑える状況が続くだろう。
■再び円高圧力が強まる懸念、米国株にも黄信号
為替市場については、円高圧力が再び強まる可能性が高まっている。米国の半期為替報告書での「監視リスト」入りを材料視する向きもあるようだが、それはあくまで表層的な材料でしかない。
もっとも重要なことは、本欄で繰り返しているように、米国が事実上のドル安政策を遂行していることである。筆者は、米国がこのスタンスを変えない限り、円高是正は不可能と考えている。したがって、麻生財務相が「円売り介入は可能」と発言しても、市場の反応は限定的にならざるを得ない。まして、円高のトレンドを変えることはできない。筆者は、株高を誘導する円安への期待や希望を持つことは全く無意味であり、市場の大局的なトレンドを重視すべき状況にあると考えている。
また、ここにきて米国株にも不透明感が出始めている。米国の経済指標に軟調なものが見られ始めていることが、これまでの市場環境と異なる点である。米連邦準備制度理事会(FRB)も指摘するように、米国経済にややかげりが見られ始めている可能性がある。米国の主要企業の第1四半期(1〜3月期)の決算内容は、事前予想ほどは悪くなかったことや、ドル安や原油価格の回復を背景に、今後は業績回復への期待が膨らんでいるとの指摘もある。
しかし、季節は「Sell in May」である。景気に不透明感が出始める中、これまで利益を確定したいと考える投資家が増えてもおかしくないだろう。米国株は、1−4月のパフォーマンスが芳しくない場合、5−10月も良くない結果になるケースが多い。今年は年初からの下落からかなり戻したものの、全般的にはさえない展開だったと言える。パターンとしては良くないことから、5月売りが加速してもなんら不思議ではない。
一方、金価格が急伸している。ドル安に加え、投資家のリスク回避姿勢が投資資金を新市場に向かわせているのだろう。原油価格も下げ渋っている。本欄でも指摘しているように、今後4年間の投資パフォーマンスは「コモディティ>株式」になるとみている。
賢明な投資家はすでに気づいているだろうが、株式投資に固執していると、せっかくの投資機会を逸することになろう。今年のこれまでのコモディティ相場の推移は、GW明けに急伸した1994年や2009年の動きに似ている。いまこそコモディティ市場に注目すべきと考えている。
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