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コラム:黒田サプライズの代償=永井靖敏氏(ロイター)
http://www.asyura2.com/16/hasan108/msg/215.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 5 月 02 日 15:37:20: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

コラム:黒田サプライズの代償=永井靖敏氏
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yasutoshi-nagai-idJPKCN0XT07Z
2016年 05月 2日 14:08 JST


永井靖敏大和証券 チーフエコノミスト
 5月2日、大和証券・チーフエコノミストの永井靖敏氏は、市場の波乱につながる政策運営はボラティリティー上昇でリスクプレミアムが高まるという点で望ましくないと指摘。提供写真(2016年 ロイター)


[東京 2日] - 4月末に実施された日米金融政策決定会合は、どちらも現状維持という結果になったが、市場への影響は極めて対象的だった。米連邦準備理事会(FRB)は連邦公開市場委員会(FOMC)声明文で、相場への影響を最小限に抑えるための工夫を施した。一方、日銀の現状維持の判断自体は極めて妥当、と筆者は見ているが、結果として市場の波乱を招いた。

まずFOMCの声明文について見ると、エコノミストの間で見方が分かれている。「年内利上げの可能性なし」と考えていた人はハト派寄りの内容、「6月利上げの可能性あり」と考えていた人はタカ派寄りの内容、と自分の都合に合わせて解釈しているようにも見える。その意味で、次回利上げについて後者の見通しを持つ筆者の見方にもバイアスが入っているかもしれないが、どちらかと言えばタカ派寄りの内容と感じている。

先入観を排し、前回3月のFOMC声明文からの変更点をピックアップするなら、「FRBはバランスを取った」とした評価が一般的だろう。具体的には、経済活動に関する表現の下方修正と海外経済のリスクに関する表現削除で中立的な内容と解釈され、相場への影響は限定的だった。

ただ、前者については、「経済活動の成長が減速したように見える中でも、労働市場の状況は一段と改善したことを示している」と軽いタッチで描写している。米金融当局は、雇用の最大化と物価の安定を追及することが求められているが、前者については、すでに完全雇用に近い状況にある。声明文で金融政策の運営姿勢について「引き続き緩和的」と位置付けるなか、現在は雇用面から追加利上げの障害がない状況にあることを改めて示した、と筆者は見ている。

この見方に基づくと、米金融政策の先行きを見る上での最大の注目点は、物価の動きになる。FRBが注目する個人消費支出(PCE)コア価格指数(除く食品とエネルギー)の前年比上昇率は、2月時点で1.7%と、昨年7月のボトムの1.3%からの伸びが高まっており、目標の2%に近づきつつあった。ただ、FOMC後に発表された3月分が、1.6%に鈍化することが十分予想されていたため、FRBにも迷いが生じていると思われる。

世界的な低インフレ圧力が、米国にも波及しつつある可能性を完全に排除することはできない。市場が「次回利上げなし」を織り込むなか、FRBとしては、今後発表されるデータ次第で柔軟に対応できる体制を整えることが重要と判断したようだ。その結果、声明文をバランスの取れた内容にして、現時点では市場の思惑浮上を避けるべき、と判断した可能性がある。

<事前報道が示したサプライズ政策の弊害>

一方、日銀は、市場の波乱を誘った。「物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる」との判断に基づき、被災地金融機関支援オペの対象を、熊本地震の被災地の金融機関に拡大するのにとどめ、現状維持の決定をした。

「量」「質」「金利」という手段で、何らかの追加緩和が行われる、との見方が強まっていたことから、市場の波乱につながった。だが、「金利」については、今はマイナス金利の影響を見極めるべき時期にある。マイナス金利導入を決定したのは1月末だが、適用開始は2月16日、実際にコールレートが明確なマイナス圏で推移したのは4月18日からと間がないからだ。

「量」については、長期金利が、「物価安定目標は極めて長期にわたり達成できない」ことを示唆する水準まで低下するなか、一段の低下につながる政策運営を日銀が現時点で選択しなかったのは、理解できる。「質」については、上場投資信託(ETF)買い入れペースの引き上げを予想する向きもいたが、健全な政策運営とは言えない。

結果として波乱を招いたことに対し、市場との対話不足と批判する向きもあるが、今浮上した問題ではない。日銀は、これまでサプライズ効果を利用した政策運営を行ってきた。市場の予想を上回る規模、タイミング、仕組みを駆使した政策運営を行うことで、追加緩和観測が高まる効果も使ってきた。こうした経緯から、当然の判断に基づく政策運営がやがて失望を誘うことが、避けられない状況にあった。

市場の波乱につながる政策運営は、市場のボラティリティー上昇により、リスクプレミアムが高まるという点では、望ましくない。FRBが市場の波乱を避ける内容の声明文にした背景には、リスクプレミアムの上昇により、実体経済に悪影響を与えることを避けるべき、とした判断もあるだろう。

ただし、日銀は、市場の政策期待を用いた政策運営を実施してきた。追加緩和期待により、市場を一段と緩和的な状況にしてきたため、市場の波乱に伴うコストのみ注目した批判は、必ずしも妥当とは言えない。黒田東彦日銀総裁も決定会合後、市場が荒れたことに対する記者からの質問に対して、「市場との対話に特に問題があるとは思っていない」と発言している。

ただ、決定会合前、一部の報道機関から、貸出支援基金による貸出金利をマイナスにすることを検討する、とした記事が出た。マイナス金利での貸付は、日銀による財政政策(金融機関に対する資金供与)で、一種の「ヘリコプターマネー」とも言える。

実施すれば、日銀の政策運営が裁量的になるという問題が浮上するが、これまで日銀がサプライズを繰り返してきたことから「可能性はある」と筆者は考えていた。サプライズを伴う政策は、望ましくない政策に対する思惑を高めてしまう、という弊害はありそうだ。

<追加緩和なき物価見通し下方修正はサプライズ>

最後に、今回の決定会合に合わせて日銀が発表した経済・物価に関する最新の見通し、展望レポートについて補足しておきたい。

追加緩和の有無に関心が集まったため、さほど注目されなかったが、今回の展望レポートで、2016年度の物価見通しを0.5%と、1月時点の0.8%ポイントから0.3%ポイント引き下げたことは、筆者にとってサプライズだった。2%への物価安定目標達成時期についても、「2017年度中」と、これまでの「2017年度前半」から後ずれした。

2016年度の物価見通しは、筆者を含めた民間エコノミストのコンセンサスよりは依然高く、2017年度中に物価安定目標が達成すると予想しているエコノミストは極めて少ないため、やがて修正を強いられると考えていたが、修正と金融政策をセットにしなかった点がサプライズだ。

日銀は、今回の物価見通し下ぶれについては、すでに1月の時点でリスクとして認識し、事前に対処したため、追加的な措置は必要ないとしているが、追加緩和は見通し修正とセットにした方が分かりやすい。

「必要な政策措置を行えば、見通しを維持できる」「セットにすると、自らの政策運営の失敗を認めることにつながる」などの理由で現実にはセットにしにくいが、政策運営や見通し修正の説明には、なお工夫の余地がありそうだ。

*永井靖敏氏は、大和証券金融市場調査部のチーフエコノミスト。山一証券経済研究所、日本経済研究センター、大和総研、財務省で経済、市場動向を分析。1986年東京大学教養学部卒。2012年10月より現職。

 

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