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[大機小機]マイナス金利と政策論の倒錯
経済学者の間ではマイナス金利に一定の効果を期待する声がある。マイナス金利によって現実の実質金利を自然利子率に近づけることができる、と考えられるからだ。自然利子率とは、需要と供給の差(需給ギャップ)が埋まり経済が完全雇用状態となる利子率を指す。完全雇用状態に近づければ不況を脱出できる。
最近出た日本経済研究センターのリポートでは、日本の自然利子率は供給要因によってマイナスになっていることが示された。現実の金利をマイナスの自然利子率に近づける政策がマイナス金利政策だといえる。
デフレが継続している経済では、マイナスの自然利子率を達成することは難しい。これまで日本では名目金利をゼロに据え置く政策が実施されていた。しかし、ゼロ金利でもデフレ下では借金の実質的な負担は上がる。実質金利、つまり名目金利から物価上昇率を差し引いたものはプラスだったのだ。
名目金利をゼロにしても実質金利はプラスで、マイナスの自然利子率より高かった。だから不況が終わらなかった。名目金利をマイナスにすれば実質金利を自然利子率に近づけられるので景気が回復するはずだ。これがマイナス金利を肯定する論理である。
しかし、この話は「倒錯」していないか。
日本の自然利子率が供給要因でマイナスになっているのはなぜなのか。高齢化や人口減、技術劣化によって長期的な経済成長がマイナスになるという予想があるからだ。長期的なマイナス成長の要因を放置して、短期の金利をマイナスの自然利子率に近づけるならば、確かに一時的には不況から脱出できるだろう。
だが、長期的な経済成長がマイナスになることは変わらない。経済が長期的に縮んでいくと予想されるので、自然利子率もマイナスのままだ。マイナスの自然利子率に合わせて政策を運営するより、自然利子率がプラスになるような経済政策が本筋ではないのか。
それには構造改革などの成長戦略に本気で取り組むしかない。こうした改革の具体案こそ政策論の中心にあるべきだろう。マイナスの自然利子率を所与の条件と受け入れて、それに合わせて単に需給ギャップを埋める政策を進めるのは、本末転倒の不健全な議論ではないか。
(風都)
[日経新聞4月28日朝刊P.19]
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