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もはや日本で増えない設備投資をそれでも増やす法
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投稿者 軽毛 日時 2016 年 4 月 28 日 10:39:10: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層
【第207回】 2016年4月28日 熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]
もはや日本で増えない設備投資をそれでも増やす法
熊野英生・第一生命経済研究所経済調査部 首席エコノミスト
日本経済成長のために
「設備投資が必要」は本当か?


日本の経済成長率を加速させるためには、設備投資の増加が不可欠だ。しかし、その定説は本当に今の日本に当てはまるのか
 日本の経済成長率を加速させるためには、設備投資の増加が不可欠である。特に経済の好循環を考えるときは、企業が稼いだ収益が国内設備投資に振り向けられてこそ、内需拡大が力強さを増す。裏を返せば、これまでは企業収益が増えても、国内設備投資が増えないので、内需が弱々しかったとも言える。

 こうした言い分は、マクロ的な観点に立ったときの成長条件なのであるが、個々の企業にとっての合理性と必ずしも一致しない。たとえば、企業経営者が株主から高い利益率を追求することを求められているとき、経営者は国内での設備投資を増やそうとするだろうか。人口が趨勢的に減少していく国内ではなく、海外事業を拡大することでROE(株主資本利益率)8%以上を目指すことになる。国内に設備投資を増やしたいという政策的な意図とコーポレート・ガバナンスの強化は、必ずしも一致しないのである。

 さらに言えば、日本のような成熟した経済では、もはや設備投資を増やして供給力を強化することの必要性が薄れている。国内設備投資が実質GDPに占める割合は、1990年代初頭からほぼ一定で推移しており、ここにきて低下しているわけではない。総固定資本形成対GDPで見ると、先進国はおおむね16〜22%程度で推移している。日本はG7諸国の中でまだ高い方である。経済が成熟すると、それほど設備投資は増えず、供給能力を思うように増やせなくなるという宿命があるように感じられる。

 つまり、「成長加速のために設備投資が必要だ」という需要サイドの理屈は、成熟化した経済では非常識化する。供給能力の増強についての必要性が薄らぐという供給サイドの事情によって、成長力は制約されるということだ。

 個々の企業にとっては、有形固定資産残高を増やさなくても、研究開発や人材投資を増やす方が収益性を中長期的に高めることに貢献する。事業拡大をスピーディに進めたければ、M&Aを行うという方法もある。「設備投資が必要だ」という発想自体が、すでに古いパラダイムだという批判も可能である。

 政府やエコノミストたちは、「それでも設備投資は必要である」というマクロの成長観を捨てることができない。筆者もミクロとマクロのジレンマはあるとしても、それを解決したいと思っている。

 そうした観点から考えると、無理な設備投資ではなく、企業が必要とする設備投資の増強を目指すという目標を達成する余地はあるのだろうか。筆者は、その点について次のように考える。

 たとえば、現時点で旺盛な投資ニーズが存在する分野があることは、企業向けのアンケートで示されている。日銀短観(2016年3月調査)では、最も生産・営業用設備が不足しているとされる分野として、「情報サービス」が挙げられている。「情報サービス」とはインターネット事業者を含んでおり、広くIT関連分野において企業がもっと設備投資を増やしたいと考えていることがわかる(図表1参照)。

◆図表1:設備不足感の強い業種(上位)


出所:日本銀行
ドローンや立ち乗り二輪車
中小企業で強い投資ニーズ

 非常に興味深いのは、そうしたニーズが特に中小企業で強いことである。スモールビジネスほど、ネット事業を中核にして新しい事業展開を目指しているという理解もできる。

 こうした傾向は、新しい技術を組み合わせて、新規需要を掘り起こせるという期待感を反映したものだと考えられる。ここでの新規需要とは、新しい技術を使って掘り起こせる潜在的ニーズと言い換えることができそうだ。

 特に最近になって、これまで掘り起こせなかったニーズを掴むことが可能になる新技術が次々に現れている。具体的に例示すると、まずドローンを使って小口配送をする技術。翌日配送がスタンダードになっているのを、30分以内、あるいは2時間以内に短縮できるかもしれない。

 電動立ち乗りの二輪車で一般道を通行できるようになって、それが自転車やミニバイクに取って替わる可能性もある。立ち乗りではなく、高齢者でも安心して乗れる1人乗りの電動車もある。こうしたパーソナルモビリティは、一般の交通機関を使いづらいと感じている高齢者などの交通弱者が外出するのに、有用なのではあるまいか。

 すでに、都市の市街地から離れた郊外住宅地には、加齢が進んで自分で自動車を運転するのが危ないと感じている高齢層が数多く住んでいる。これらの人には、ゆっくりと安全に乗れるパーソナルモビリティがあれば利用してみたいという潜在的ニーズは大きいと考えられる。さらに近未来では、自動運転車の利用を行って遠出をしたいという願いが叶えられることだろう。

 ところが、そうした新しい交通手段は、道路交通法など既存のルールの中では必ずしも自由に利用することができない。新しい交通手段の普及のためには、全国を一律に規制緩和するのではなく、試験的に特区を設けて、実証実験を重ねていくことが現実的だろう。

 ただ、現時点では、そうした実証実験の範囲は思いのほか狭い。たとえば、2020年までに自動運転車の普及を目指すのならば、もっと広範囲で実証実験を行って、規制緩和のための経験値を増やすことが必要だろう。東京23区のどこかで自動運転車の利用が身近に感じられるようになったり、電動立ち乗りの二輪車の利用が一般化したりすれば、同じような特区を自分の自治体にも設けたいというところが次々に手を挙げることだろう。それが全国展開を促して、企業や自治体の設備投資、インフラ整備を加速させることだろう。

速くない改革のスピード感
国家戦略特区による規制緩和を

 筆者は、一例として交通手段の新しい技術について示してみたが、投資機会を掘り起こすためには、まだまだ挑戦的な試みを挙げることはできる。米国でライドシェア事業を展開するウーバー社のビジネスモデルを日本でも行うという試みである。そうしたビジネスモデルは、白タク営業を解禁することになりかねないという反対論はあるが、タクシーが通っていない地域でも、自動車に乗りたいという消費者の潜在的なニーズが存在することも確かである。

 すでに、民泊解禁への動きの背景には、空部屋をホテル代わりに貸し出すという“疑似白タク営業”が広がっていることに対抗して、制度化された民泊を普及しようという意図があったように思える。

 新しい技術を活用したビジネスチャンスへの挑戦は、おそらく日本で遅々として進まなくても、欧米で先に進んでいくことになろう。そうなると、「なぜ、日本だけ規制緩和が遅れているのか」という批判が巻き起こることになろう。

 安倍政権は、いずれにしても、新しい技術の登場に背中を押されて、利用を阻んでいる「20世紀型の規制」を積極に緩和していかざるを得ない。現時点で筆者は、安倍政権の取り組みについて評価するが、そのスピード感は必ずしも速いとは思っていない。特に、自動運転車やパーソナルモビリティは、もっと大胆に加速してもよい。
マクロの設備投資を増やすには、もっと幅広く新技術を利用できるように、国家戦略特区を利用して、規制緩和を進めることが有用だと考えられる。
http://diamond.jp/articles/-/90450  

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コメント
 
1. 2016年4月28日 19:41:47 : 6jC6Ok4X3M : r9HiorRuc1w[321]
企業を株主の手から従業員や社会への貢献を評価するシステムの元にに取り戻さないと先進国の経済が成長することは出来ないだろう。
経済の最終目標を働きたい人や才能の有る人だけが働けば、全人口が生活に困らない社会を作ることに置けば、イノベーションはその方向に進み、生産性は格段に上昇して働かなければ食えないなんていう、働けない人にとって致命的な社会を根絶出来るだろう、それが実現されれば経済成長なんて言葉は死語になるはずだ。

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