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山崎元のマルチスコープ
【第423回】 2016年4月27日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
金融マンに相談するな!入社1年目の「お金」の教科書
お金の「賢者」は初月給をこう使う
4月25日が初の給料日だったという新入社員は多いだろう
今週初の4月25日(月曜)は、25日が給料日だという会社に入った新入社員が初月給を受け取った日だ。近年は25日以外の日を給料日とする会社も増えて来たので、必ずしもこの日が人生のファーストペイデイとは限らないが、初めて給料を手にした新入社員の皆さんは、何を思っておられるだろうか。
他方、本媒体の「僚誌」ともいうべき『週刊ダイヤモンド』は現在発売中の4月30日・5月7日の合併号で、「お金の賢者と愚者」と題する大特集を組んでいる。
この特集の「賢者」と「愚者」は、必ずしもお金持ちが前者で、貧乏人(特集内では「庶民」と呼ばれている)が後者という訳ではなく、生活全般の満足度が高い人が賢者で、満足度が低い人が愚者とされている。初任給をもらったばかりの新人サラリーマンも賢者を目指すことができるし、しばらく保存しておきたくなるような資料性の高い記事・ページが幾つかあるので、初任給の効果的な使い途として、この号の購入をお勧めする。70ページを超える大特集なので、連休中にでも読んでみるといい。
本稿では、特に新入社員に知ってほしいこの特集の内容紹介と、この特集では取り上げられていないけれども新入社員に是非知っていただきたい「お金の扱い方」についての補足とを行いたい。
もちろん、新入社員であるかないかで、金融商品の損得が変わったりする訳ではないので、新入社員以外の読者のご参考にもなるはずだ。
銀行との付き合い方
さて、初任給を現金で受け取るという方は、さすがに少数派だろう。大半のフレッシュマンは、初任給を給与振り込み用の銀行口座で受け取ったのではないだろうか。また、入社に際して、新たに給与振り込み用の銀行口座を開設された方もいるだろう(少なからぬケースで、会社の取引銀行に「売られる」場合もある)。
銀行口座を持つこと自体は悪くないし必要なことでもあるが、ここで幾つか注意がある。
先ず、銀行が発行してくれるキャッシュカードにクレジットカードの機能が付いてくることがあり、そこまでは許容しても構わないのだが、この決済を決して通称「リボ払い」ことリボルビング払いにしてはいけない。リボ払いとは、1万円とか2万円といった毎月の決済額を決めてカードの支払いを行う仕組みだ。カードで大きな買い物をしても、直ちに銀行口座の残高が減らないので安心だと思う方がいるかもしれないが、未決済となった残高はカード会社に対する借金となって、たとえば年利15%といった非常に高い金利で利息を取られる。
金利が馬鹿馬鹿しい高さであることの他に、特に新入社員には、「借金への入り口」として、小口の借金をする癖を付けてしまう可能性があるので、要注意だ。そもそも、カード機能は付けなくていいし、付けたとしてもお金の管理が上手にできるようになるまで使わない方がいい。
付けなくてもいいのがクレジットカード機能だが、是非利用できるようにしておきたいのが、インターネットバンキングだ。ネット専業の銀行でなく、普通の銀行の総合口座でも、インターネットを通じて残高照会や、振込などがいつでもできるようになり、振込の手数料も店頭で行うよりも割安になる場合が多い。
銀行の支店に行って余計な時間を食うケースの幾つかが避けられるし、銀行で余計な金融商品のセールスをされない点でもいい。
銀行の店頭で売っている投資信託や一時払いの保険などの運用商品は、ほぼ全てが、「金融論的には、買わない方がいいと断言できる」商品だ。理由は手数料が高すぎるからであり、それだけで十分だ。
理由を知りたい方は、「お金の賢者と愚者」特集の78ページから79ページを読むといい。79ページには、投資信託の残高トップ10の商品の手数料水準とその内訳(販売会社、運用会社等の取り分の配分)が表になって載っているが、たとえば、販売手数料3.24%に加えて、運用管理手数料(年率で継続的に掛かる手数料)を年間1.65%も支払うといった、高水準の手数料の商品が載っているが、銀行の店頭では(注:証券会社でも売っているが)このような商品を売っているのであり、こうした場所には近づかない方がいい。
また、社会人一年生には、「給料の高い銀行員が相談に時間を使うということは、先方がその給料分以上の儲けを期待しているからだ」という当然の経済常識を理解してほしい。
もう一つ申し上げて置くと、銀行を給与の受け取りその他に利用するということは、自分の経済活動のかなり重要な部分について、情報を銀行に晒すということなのを理解しておきたい。
端的に言って、銀行はお金の運用に使うには、顧客の情報を知りすぎた手強すぎる相手であり、加えて、銀行員が積極的に売る運用商品には、良い物がほぼ皆無なのである。
買ってもいい運用商品リスト
さて、新社会人に、いきなり注意事項を伝えるのは、「気を付けてほしいから」という気持ちからではあるのだが、少し、後ろ向きだったかもしれない。
これからお金を稼ぐことが楽しみになるように、「買っていい商品」をお伝えしよう。
リスクを取って運用する商品で、一般人が買ってもいいと思われる商品のリストは、『週刊ダイヤモンド』(4月30日・5月7日合併号)の80ページの「これなら買ってもいい!低コストの投信ETF20」の中にある。
ここにリストアップされた商品は、相対的に概ね良心的だが、敢えて絞ると、日本株についてETF(上場型投資信託)の「上場インデックスファンドTOPIX」、外国株について「<購入換金手数料なしニッセイ外国株式インデックスファンド」の2つを覚えておくといい。商品の内容やどこで買えるか等は、インターネットで検索して調べてみよう。
現在、前者は約14万5000円、後者は1万2000円あれば、最小単位を購入できる。資産運用の勉強用に少額だけ投資してみるのは、経験に対する有効な投資になるかもしれないので、フレッシュマンにお勧めしておこう。尚、日本株の購入単位が前記のETFで大きすぎる場合は、「<購入換金手数料なしニッセイTOPIXインデックスファンド」なら、1万円しない金額で一口買える。投資の配分は、大雑把には日本株と外国株(先進国株)を半々に、もう少し厳密には4対6くらいの比率で持つのがいい(外国株の方が多い)。
リスクを取る商品としては、この2つ。加えて、リスクを取りたくない場合の商品としては「個人向け国債変動10年型」(銀行預金よりも安全で、かつ将来の金利上昇リスクに強く、しかもマイナス金利政策導入後は利回り面でも有利になった)。新入社員であってもなくても、運用商品は、この3つ、敢えてもう1つ加えると銀行の普通預金(1人、1行、1000万円までの預金保険の制限は守るべきだが)の4つを覚えておけば、それでいい。
多くの人は、余計な商品を覚えるから(金融マンに勧められて知るのだろうが)余計な手数料を払ったり、不適切なリスクを取ったりするのだ。
その他、新入社員に言いたい7か条
さて、『週刊ダイヤモンド』(4月30日・5月7日合併号)の「お金の賢者と愚者」特集では直接触れられていないが、新入社員に伝えておきたいことを補足しておこう。フレッシュマン諸氏には、父親か大学の先生の「教えたがり」にでも付き合うような気分で読んでいただけるといい。
(1)本業に注力!
まずは本業の仕事を覚えることに時間と努力を投資せよ。
会社は最終的に頼りにならない。頼むべきものは、自分の「稼ぐ能力」しかない。できれば、職住接近で投資できる時間と体力を確保せよ。ウィークデイで当面の仕事を覚え、土日の一方、の半日くらいは仕事で「他人に対する差」をつけるための勉強に使うくらいの心掛けがあるとなお良い。
週刊ダイヤの特集と少々異なる意見だが、若い時分(20代)は副業よりも本業に時間を投資する方が投資効率が良い。
また、社会人大学院で人生を変えようとするのは無駄だ。社会人大学院卒の学歴は転職市場での人材価値のアップには役立たない。むしろ「本業の仕事が暇だった人(もっと優秀な人なら、会社は忙しく仕事を与えたに違いない)」という程度に解釈される。また、人脈は大学院に行かなくても作れる。
(2)収支の合う生活ペースを掴め
収入の範囲を超えない支出のペースを早く掴め。
ペースを掴むための一つの方法としては、カードを使わずに現金で生活し、ATMの利用は月に2回、計画している生活費の半分ずつを下ろすスタイルをお勧めする。お金を下ろして半月経たないうちに、またATMに駆け込んでいるとすれば、支出のペースが速すぎるということだ。
新入社員を大らかに見てやるとすれば、1年間、遅刻せず、借金せず、挨拶ができるようになれば、ひとまず合格だ。
1年目から、計画的な貯蓄の習慣が付くといい。少額であっても1年目から貯蓄するのも、もちろんいい心掛けだが、最初からそこまでお利口でなくてもいい。
(3)ダメな会社は辞めていい
合わない会社・仕事だと分かった場合は早期に転職してもいい。「石の上にも3年」は無用な忠告だ。職業人生にとって、3年の時間は無駄にするには、あまりに惜しい。ただし、28歳くらいまでに、自分の本業となる職に就いていたい。それまでの数年は、試行錯誤が可能な期間だ。
ただし、次の就職先が確保できる前に辞めるのは「絶対にいけない」。無職の期間ができると人材価値が下がるし、次の給与交渉に不利だし、焦りが出てますます求職活動が上手く行きにくくなる。
(4)民間生保の生命保険には関わるな
独身の新入社員は、生命保険に入る必要はない。生命保険が必要なのは、貧乏な夫婦に子どもができた時に、掛け捨ての死亡保障保険に10年程度(最大20年)入る場合だけだ。ネット生保で保険料の安いシンプルな保険を探せ。
一言で言うなら生命保険は「損な賭け」なのだ。できるだけ関わらないのが経済合理的だ。
がん保険などの医療保険も同様だ。会社の健康保険に入っていれば必要ない。理由は、健康保険には高額療養費制度(←知らない場合、検索して調べよ)が付いているからだ。
(5)確定拠出年金は大きく利用せよ
会社に確定拠出年金制度があれば可能な限り大きな額で利用せよ。会社に確定拠出年金制度がない場合は、「個人型」の確定拠出年金を利用せよ。
確定拠出年金は、税金面での「得」が大きい。老後への備えは誰しも必要だし、確定拠出年金で賄える額以上に必要なのが普通だから、確定拠出年金は「できるだけ大きな額」で利用するのが正解だ。
なお、運用の選択肢は、「外国株式(先進国株式)のインデックスファンド」から考えるのがよい。
(6)さらに投資するならNISAを使え
さらに投資できる余裕が生じたら、NISA(少額投資非課税制度)を使え。NISA口座を銀行に開くのはETF(上場型投資信託)に投資できないので不利だ。NISAではTOPIX連動型のETFに投資することがベストの選択肢になる可能性が大きい(確定拠出年金の側で外国株式のインデックスファンドに投資すると、バランスがいい)。
(7)金融マンに相談するな
銀行員、証券マン、生保レディーは、いずれも、フレッシュマンが関わりを持つ必要のない人々だ。彼らは、顧客側を儲けさせるためではなく、自分たちの側が儲けるために、他人にアプローチする。本当に「有利に儲かる話」があれば、金融のプロ自身がそれを使うはずであり、他人に教えることなどあり得ない。
「無料相談」であっても、彼らに近づかない方がいい。彼らが繰り出す「ご提案」を素人がその場で全て的確に否定できるとは考えにくいからだ。
プロの大人を甘く見てはいけない!
http://diamond.jp/articles/-/90359
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