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三菱自:燃費不正は91年から、計測法で−目標は繰り返し上方修正
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-26/O67YIJ6JIJV501
2016年4月26日 12:06 JST 更新日時 2016年4月26日 17:43 JST ブルームバーグ
三菱自動車は燃費試験データ不正について、当初の目標燃費をその後の社内会議で繰り返し上方修正し、目標から逆算して車両走行時の転がり抵抗値を算出する操作をしていたと明らかにした。走行抵抗の測定法に関しては、1991年に指定された「惰行法」とは異なる「高速惰行法」での計測を同年から始めたことも発表した。
三菱自は26日、国土交通省に不正問題についての報告書を提出し、概略を発表した。燃費不正の対象と20日に公表していた軽自動車「eKワゴン」と「デイズ」については、2011年2月の燃費目標(26.4キロメートル/リットル)をその後の社内会議で繰り返し引き上げ、13年2月に29.2キロとした。
法規の定めと異なる走行抵抗の測定法に関しては、91年に高速惰行法で計測を始め、92年1月から走行抵抗から惰行時間を逆算する計測法をつくった。2001年1月には惰行法と高速惰行法を比較試験して、最大2.3%の差にとどまると確認していた。
三菱自は原因や責任については未解明であり、引き続き調査するとした。中尾龍吾副社長は会見で、燃費目標を上方修正した社内会議に社長以下、役員が出席していたことを明らかにした。転がり抵抗値は燃費目標から逆算して算出していたという。不正操作の対象車種数は全部カウントできていないと述べた。
三菱自の相川哲郎社長は会見で、顧客対応について決定できていないと述べた。どれだけ燃費が悪い方へいったのか、全体の数字が出せないと、具体的な補償をどうするのか決められないと説明。「買ったお客さんには何らかのことを考える」と話した。日産自向け車両の顧客に対する補償については、すでに日産自と協議していると述べた。米当局など海外の監督官庁にも報告する予定とした。
三菱自は軽自動車の型式認証取得問題について、外部の専門家による特別調査委員会を設置すると25日の取締役会で決めたと発表した。
これに先立ち、石井啓一国交相は26日の閣議後会見で、三菱自による不正について「極めて深刻な問題、厳正に対処する」と話した。自動車の型式審査で不正防止の具体策について検討していくと述べた。発表資料によるとタスクフォースは同省自動車局幹部などで構成し、メーカーが提出する走行抵抗値などの数値に関する不正の防止を目的とし、28日に初会合を開く。
三菱自の20日発表によると、燃費試験データで不正操作があったのは軽自動車「eKワゴン」と「eKスペース」、日産自動車向け「デイズ」と「デイズルークス」の計4車種で、合計62万5000台になる。不正による燃費の差は5ー10%という。これを受けて国交省は三菱自の名古屋製作所・技術センターに対して、20日から立ち入り調査していた。
一部報道後に株価急落
三菱自の燃費不正問題について、日本経済新聞が26日、1990年代から国の定めと異なる方法で燃費計算していたと関係者への取材で分かったと報道。不適切な検査は数十車種に上るとみられるという。三菱自・広報担当の井上徹二氏は報道に関してコメントを差し控えた。三菱自の株価は報道後に急落し、前日比で一時、13%安の420円まで下がった。
三菱自は27日に決算を発表する予定で、関係者によると、燃費不正で発生する費用の予測などが難しいとして今期業績予想の公表は見送る方向だ。
過去にはPHEV燃費基準で問題
三菱自は2000年代前半のリコール隠し問題で顧客の信用を失った。国内の燃費試験で不正行為が発覚した三菱自に対して、消費者からの風当たりが強まっている。企業の姿勢について怒りや疑問の声を投げかける顧客もおり、信頼を回復していくのは容易でない。
福岡県で個人タクシー会社を経営する斎藤修平さん(65)はガソリン代が高騰していた2年前、三菱自のプラグインハイブリッド車「アウトランダーPHEV」を「市販されている車で最も燃費がいい」という理由で約400万円で購入した。
実際に走らせると平均燃費は1リットルで15ー18キロ程度。カタログで大きくうたわれていた同60キロ超とは大きな隔たりがあった。燃費がカタログ値と実走行で違うのは承知しているとした上で、高い燃費数値をPRするばかりでなく顧客が購入する前に実燃費についても詳細に説明するよう本社に掛け合うべきだと販売店に指摘したものの、何も変わらなかったと話す。
今回の不正問題では、供給先の日産自動車からの指摘で発覚したことが問題とし、三菱自としての自浄作用のなさを痛感したという。斎藤さんは仕事で毎日使う自分の車について、今後、メーカー側から買い取りなどの提案があれば応じるとし、三菱車について「もう買うことはないと思う」と話した。
三菱自の村田氏によると、アウトランダーPHEVの発売当初は複合燃料消費率と呼ばれるPHEV独自の燃費基準を使用しており、燃費は1リットルで67キロだった。その後、国交省から自動車業界に対して分かりづらいと指摘があり、三菱自では14年9月末で使用をやめていた。村田氏は「お客様については誤解のないよう真摯(しんし)に対応していきたい」と話した。
海外販売も余談許さず
「燃費の改ざんについてどうしてくれるんだ」ー。東京を含む関東圏が担当の関東三菱自動車販売・総務課の野口正康氏は、不正の発表から一夜開けた21日朝に顧客からこんな電話を受けたと話した。現状を説明して謝罪すると相手の怒りもおさまり、販売店の苦労をねぎらう言葉をかけてくれたという。
不正のあった三菱自の軽自動車は店頭から撤去。現状では詳細について情報がなく、野口氏は「何をすればいいかわからない」と話す。問い合わせの電話はたくさんあり、一番不安を感じているのは顧客だとし、「客離れが起こらないように誠実に対応したい」と話した。
三菱自の国内販売台数は過去のリコール隠し以降、大幅に減り、日本自動車工業会のデータによると、昨年は約10万台と00年からでは8割超の減少している。今回の不正発覚で今後さらに国内販売を落とすだろうとアナリストらはみている。
今回の不正問題で対象車の生産・販売が停止になる中、アドバンストリサーチジャパンの遠藤功治アナリストは、軽自動車市場でスズキやダイハツ工業、ホンダなどの競合相手がシェアを奪う可能性があるとみている。野村証券の桾本将隆アナリストは21日付のリポートで、国内販売に関しては今後2、3年は従来の同社予想比で「大幅な減少は避けられないだろう」と指摘。海外に関しても予断を許さないとした。
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