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実母と義母が同時に要介護に…増加する多重介護、こうすれば無理なく行える!
http://biz-journal.jp/2016/04/post_14828.html
2016.04.23 文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー Business Journal
40歳代後半から50歳代の方からのご相談を受けると、高い確率で質問されるのが親の介護について。その多くは、「親が要介護状態になったら、どうすればよいか」といった実際に介護を行う以前の、漠然とした不安感からくるものなのだが、それが現実のものとなったとき、そしてそれが「多重介護」であった場合、どうすればよいのだろうか?
■50歳代前半で6割が介護を担う可能性大
多重介護とは、高齢者や障害者など複数の人を同時に介護すること。たとえば既婚者であれば、自分と配偶者の両親が存命なら、そのうちのひとりが要介護になる確率は50歳代前半で6割、50歳代後半で9割ともいわれている。
実際、全国60歳以上の男女1,000人に対する調査では、介護経験者に直近で介護をしていた時期を聞いたところ、全体で22.6%が「現在も介護をしている」と回答した。これを年代別でみると60代は24.7%、70代以上は15.1%が、現在も進行形で介護をしているという。
仮に、介護者にきょうだいがいれば担い手も複数になるが、夫婦がひとりっ子同士で、さらにそれぞれ遠方に居住しているともなれば、問題は単純ではない。
※出所「シニアの介護に関する調査」(2016年3月)ネオマーケティング
■介護者の4人に1人が多重介護を抱えている
多重介護を行っている人は、現在約20万人。10年後には5割増加するという推計データもある(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(2012年推計)」等、各種統計を基に、株式会社東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部渥美由喜氏が作成)。
また、10年に一般社団法人日本ケアラー連盟などが約2万世帯に実施した調査でも、介護者の4人に1人が複数介護との結果もある。このような多重介護のケースは今後も増加する可能性が高く、とりわけ昨今の非婚・少子化の状況を鑑みると、ひとりっ子の“おひとりさま”による多重介護が増えることは間違いない。
頼りにできるきょうだいがいないひとりっ子は、「なんでも一人」という状態に慣れ親しんでいるがゆえに、介護も一人で抱え込んでしまう傾向が強いという。
実は、我が家の娘もひとりっ子。夫は次男、私は長女で、きょうだいは複数いるため、ずっと甥っ子たちとの交流を欠かさず、将来に備えて、「困ったことがあれば、きょうだいのように助け合うように」と言い聞かせてきた。
■多重介護の“予測できないことが同時に起こる”難しさ
東京在住のAさん(61歳)は、フリーのカメラマン。父親は数年前に亡くなり、母親(85歳)は要介護2で愛媛県の自宅でひとり暮らしをしている。さらに、Aさんの妻の母親(90歳)も要介護状態だ。実母と義母の介護を積極的に行うAさんは、介護生活についてこう語る。
「私は母と離れて住んでいるので直接的な介護はできません。実家の近くに、弟夫婦が住んでいるので、掃除や洗濯など日常生活の面倒は、弟の妻がしてくれています。それでも、母には毎日電話をして体調を聞いたり、担当ケアマネジャーさんと相談して、ケアプランを決定したりするのは私がやっています。もうそろそろ、自宅でひとり暮らしをするのは心配なので、入所できそうな施設を探しているところです。
近くに住む義母の介護は、私と妻、妻のきょうだいで分担しています。義母は、妻のきょうだいと同居していますが、みんな仕事を持っていますのでね。私はフリーランスで比較的仕事の時間の融通もききますから重宝されています(笑)。もちろん、訪問介護サービスや訪問看護、デイサービスなんかも使っています」
通常の介護に比べ、多重介護の難しさは、「予測できないことが同時に起こること」だ。Aさんの場合も、実母と義母の体調が急に悪化し入院することになったときに、どちらを優先させるべきか慌てたという。
「私の場合は、多重介護といっても、一緒に介護をしてくれる家族がいますのでね。これがひとりだったら途方に暮れたでしょう」
■もしも、多重介護になったらどうするか?
多重介護のように同時多発的に要介護者が出た場合、とにかくひとりがすべてを引き受けるのは絶対避けたい。ほかにも一緒に介護を担ってくれる人がいないかを真剣に考えてみることが大切だ。前述のAさんも、「確かに、自分の親も妻の親も要介護状態で、最初は正直しんどいなと思いましたよ。でも、ある程度それがルーチンワークになってみんなでやれば、そんなに負担と感じなくなるものなんです」と話す。
Aさんのように公的介護サービスを上手に活用しながら、家族や周囲が役割分担しながら介護を無理なく続けられるようなシステムづくりを心掛けるのがベストだ。
その際に、介護方針など重要な事柄に関する「キーパーソン」を誰にするかをあらかじめ明確にしておくことも重要である。キーパーソンを決めておけば、役割分担も比較的スムーズにいきやすい。
とくに、専業主婦の妻など、メインの介護の担い手になりがちだが、夫の親については、嫁の立場からキーパーソンにならないほうが無難。とかく女性は、「いい娘」「いい妻」「いい嫁」として自分ががんばらねばと問題を抱え込みがちだ。
だが、どんなにがんばっても嫁の立場では角が立つことが少なくない。さらに、「夫の親を優先。妻の親は後回し」など対処法によっては、離婚やトラブルの原因となりやすい。要介護度や利用できる地域資源、協力者などの状況を見ながら、どちらの親であっても気持ちは主体的にかかわりあっていくことが肝心だ。
■平均介護期間は5〜10年が目安
そして介護は一生続くわけではない。生命保険文化センターによると、平均介護期間は59.1カ月で約5年。ただ、この結果は、現在も介護を継続している人も含まれおり、10年以上も15.9%を占めている。
一方、健康寿命と平均寿命から推定する見方もある。健康寿命とは、日常的に介護を必要としないで、自立した生活ができる生存期間のこと。14年の日本人の平均寿命は女性86.83歳、男性80.50歳で、ともに過去最高を更新。それに対して、13年の健康寿命は女性74.21歳、男性71.19歳となっている。健康寿命と平均寿命の差は、女性12.62年、男性9.31年と考えると、平均的な介護期間は10年前後ともいえる。
■親の介護に携わることができたのは私の“財産”のひとつ
この期間を長いとみるか短いとみるかは人それぞれだが、いずれにせよ、親の介護を考えることは、将来の自分自身の介護や在り方につながる。
自分や夫の両親や祖父母まで介護したというB子さん(55歳)は、次のように語る。
「本当に、本当に大変でしたが、大人になってから両親と一緒にいる時間が持てたし、介護を最後までやり切ったという事実は、私の何よりの財産であり宝です。でも、子どもには絶対に親の介護をしようとするな、と言っていますけどね」
結婚しなくても、子どもやマイホームを持たなくても、生きている限り、人は老いていくもの。どうせいずれ介護が必要になるのであれば、いかにお互いが快適にその期間を過ごすかを考えてみてはどうだろうか。
(文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー)
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