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ローソンの店舗(撮影=編集部)
ローソン、3位転落で地盤沈下深刻…ファミマにすらことごとく敗北、玉塚社長不信広まる
http://biz-journal.jp/2016/04/post_14820.html
2016.04.22 文=編集部 Business Journal
流通業界は激変の時代に突入した。今年9月1日、コンビニエンスストア3位のファミリーマートと同4位のサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングスが経営統合する。2位だったローソンを抜き、最大手のセブン-イレブン・ジャパンに国内店舗数で肉薄する「新ファミマ」が誕生する。
これを受けて、2位の座から滑り落ちるローソンが動いた。三菱商事出身の竹増貞信副社長が6月1日付で社長兼最高執行責任者(COO)に就任する。玉塚元一社長は会長兼最高経営責任者(CEO)に就く。
玉塚氏は「競争が激しい事業環境の中で成長するには、筆頭株主の三菱商事を巻き込み総力戦に持っていかなければならない」と語る。
ファミマとサークルKサンクスの経営統合は、伊藤忠商事が主導した。ローソンは三菱商事出身の竹増氏のもとで、三菱商事と一体になって2位奪還を目指す。
玉塚氏は2014年5月、ローソン社長に就いた。このトップ人事を、関係者の多くは意外感をもって受け止めた。ローソンの親会社である三菱商事の当時社長だった小林健氏(現会長)をはじめとする経営陣が、玉塚氏の経営手腕に疑問を持っていることが知られていたからだ。
玉塚氏は12年間経営トップにあった新浪剛史氏が事業再生会社、リヴァンプからスカウトしてきた。新浪氏の強力な後押しで社長の椅子に就いたわけだが、この時すでに、三菱商事は“ポスト玉塚”を見据えた人事を行っている。
代表権のある副社長に竹増氏を送り込んだのである。竹増氏は大阪大学経済学部を卒業して三菱商事に入社後、畜産畑を歩いた。当時の上司は、今年4月に三菱商事の社長になった垣内威彦氏である。14年5月にローソンに移る直前には、小林氏の業務秘書を務めていた。
竹増氏は小島順彦社長(現・取締役相談役)時代に広報部報道チームのリーダー。05年から広報の責任者、10年4月に小林副社長秘書、同年6月に小林氏が社長に昇格するとともに社長秘書になっている。
ローソン副社長になってからは、14年に買収した成城石井やシネコン運営会社、ユナイテッド・シネマのほか、参入を計画していた銀行業務の開拓などを担当してきた。加盟店のオーナーとの関係が深いわけではなかったので、コンビニ事業に携わったのちに社長に昇格するとみられていたが、時期が早まった。新ファミマの誕生で、ローソンは業界第3位に転落するという緊急事態を迎えたからである。
■三菱商事と一体で海外展開を強化
新体制では、CEOの玉塚氏が主力の国内コンビニエンスストア事業、COOの竹増氏は主に海外や新規事業、M&A(合併・買収)を管掌する。一般にはCOOが本業を担い、CEOが海外やM&Aを含めたグループ運営全体を統括することが多いが、今回の人事はまったく逆になる。竹増氏はコンビニ事業にもかかわるため、玉塚氏の役割はかなり狭められる。
竹増氏の喫緊の課題は、出遅れている海外事業を三菱商事との連携で強化することだ。
ローソンの店舗数は2月末時点で、国内は1万2395店だが、海外は758店だ。セブンの海外店4万140店、ファミマの5869店に大差をつけられている。
ローソンは、フィリピンでの出店を加速する。昨年、フィリピンのスーパー大手ピュアゴールド・プライス・クラブと合弁でPGローソンを開業した。現在は20店だが20年までに500店に増やす目標を掲げている。
5〜10年以内に海外の店舗数を国内以上にしたいというのだが、そう簡単なことではない。ファミマは韓国での合弁を解消し、タイでも苦戦が伝えられている。日本のコンビニは東南アジアに展開しているが、実際にうまくいっているといえる国は少ない。最後発のローソンが順調に海外展開できる保証はどこにもなく、見通しはかなり厳しい。
■三菱商事と伊藤忠商事の代理戦争
新体制のミッションは新ファミマから2位の座を奪還することにある。だが、竹増新体制の発足前に、強力なカウンターパンチを食らった。
ファミマは4月5日、日本郵政グループと金融や郵便・物流など幅広い分野で提携した。国内外のファミマの店舗をネット通販の配達拠点に活用したり、店内に日本郵政の荷物を受け取れるロッカーを設置したりする。
この提携の最大のポイントは、ゆうちょ銀行とATM(現金自動預け払い機)事業で提携することだ。ファミマ=サークルKサンクス連合の国内店舗数は2月末現在1万8006店。セブンは3月末現在1万8613店で、店舗数では肉薄したが、ATMの設置台数では大きく水を開けられている。セブンは全店舗にセブン銀行のATMを設置、強みを発揮している。
ゆうちょ銀行のATMは2万7244台で国内最大を誇る。ゆうちょ銀行のATMを設置できれば、集客の大きな柱になる。ローソンもセブンに追いつくために、ゆうちょ銀行のATMが喉から手が出るほど欲しかったが、ファミマに競り負けた。
実は、水面下でローソンとファミマの間で、ゆうちょ銀行のATMの争奪戦が繰り広げられていたのだ。17年1月から、ゆうちょ銀行はファミマの店舗に3500台を設置する。新生ファミマは強力な武器を手に入れることになる。
ローソンvs.ファミマの実態は、伊藤忠商事と三菱商事の代理戦争である。新生ファミマの持ち株会社、ユニー・ファミリーマートホールディングスの社長になる上田準二氏は、伊藤忠の畜産部門の出身。ローソン新社長の竹増氏もまた三菱商事の畜産部門出身。上田氏vs.竹増氏の畜産(食肉)対決という見方もできる。
(文=編集部)
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