黒田日銀総裁、ヘリコプターにバズーカ搭載か 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に出席するためワシントン入りした黒田日銀総裁(15日)By JACOB M. SCHLESINGER 2016 年 4 月 19 日 20:18 JST 日本銀行の黒田東彦総裁は16日、ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューに応じ、自らが「バズーカ」と呼んだ大規模な金融緩和策をさらに強化するために「ヘリコプターマネー」の採用を検討するか質問を受けると、破顔一笑して両手を空から紙幣をばらまくようにひらひらと動かしてみせた。同総裁の下で日銀が取り組む大胆な金融緩和は、総裁就任から3年たつが、ひいき目にみてもまちまちな成果しか挙げていない。 黒田総裁の答えは「ノー」だったが、この実験主義者の総裁はその可能性を一応検討したことを明らかにし、はっきりと認めないながらもそうした考えを実行するかもしれないことをにじませた。 「ヘリコプターマネー」とはマネタリストとして知られる経済学者ミルトン・フリードマンが1969年に編み出した概念で、ベン・バーナンキ前連邦準備制度理事会(FRB)議長がFRB理事時代にデフレ克服策として採り上げ有名になった。中央銀行が金融システムを経由せず、あたかもヘリコプターから紙幣をまき散らすように現金を直接消費者にばらまく手法だ。この手法は、財政当局と連動して採られる可能性が高い。財政当局は減税や大規模な歳出計画を実行し、中央銀行がその債務を直接まかなう形になるだろう。 黒田総裁は40分間のインタビューで3回、そのような手法に着手する意図はないと断言した。その根拠として総裁は、世界の先進諸国においては中央銀行と財政当局はお互いに独立したものという習わしがあり、その一線は越えないとの考えを繰り返した。2013年の就任時には慎重な前任者が神棚に上げておいた禁忌を次々と破った黒田総裁だが、その彼ですらあえて触れることをしない政策を示した形となった。 それでもインタビュー全文の書き起こしを詳しく読むと、ヘリコプターマネーの議論を続けるにつれ、黒田総裁が興味深い一連の事実を示したことが分かる。まず、金融緩和の名の下で日銀はすでに財務省が新規に発行する国債の2倍以上を市場から買い入れており、事実上、無制限な国債発行を保証している。次に、これにより政府は「過去最大規模の予算を組む」ことができた。そして、日銀の「金融政策は名目と同時に実質金利にも強い圧力をかけている」と総裁は語った。つまり、日本政府は公的債務が国内総生産(GDP)比200%を超える世界最高水準にあるにもかかわらず、膨大な資金をただで調達できるということだ。 財政政策と金融政策はすでにこのような目標達成に向けて事実上協力し合っているので、要するにヘリコプターマネーは「必要ではない」と黒田総裁は結論付けた。 だが、ヘリコプターマネーが市場や経済、消費行動を一新して本当に効果を挙げるには、日銀がすでにやっているように中央銀行が財政支出をまかなうだけでなく、ヘリコプターマネーをやっていると明言し、政府に返済を決して求めないと約束するしかない。さもなければ、人々は将来大幅な増税があると考える他はなく、それを踏まえた行動をするだろう。 黒田総裁はそれを良く承知している。総裁は金融政策を語る際、手段だけでなく言葉にもかなり力を入れている。政策効果は、どのような行動をとるかと同時に、その行動をどのように表現するかで左右されると考えている。また、黒田総裁にはリフレ政策が窮地に追い込まれたように見えると、否定したと思われた路線を変更してきた実績がある。日本のインフレ率が低迷し続けるならば、黒田総裁の言葉に耳を傾けるだけではいけない。総裁の手の動きにも注目すべきだ。 関連記事 マイナス金利政策の次に来るもの、それはヘリコプターマネー 円高阻止、介入以外に手立て無しか 黒田総裁インタビュー:一問一答(英語) 円高、物価上昇の足かせに=黒田日銀総裁インタビュー https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NP391_0418KU_M_20160418120619.jpg
Business | 2016年 04月 19日 20:33 JS
世界の各中銀、マイナス金利で準備管理のリスク強まる=調査 [ロンドン 19日 ロイター] - 先進国におけるマイナス金利が、世界の各中央銀行で準備を管理するマネジャーに対し、準備として保有する資産価値の安定面で一段のリスクを背負わせている実態が19日公表された調査で明らかになった。 出版社セントラル・バンキング・パブリケーションが77人のマネジャーを対象に調査した。各マネジャーが管理する準備の合計額は6兆ドルに及ぶ。 報告書によると、調査対象者の約8割が、マイナス金利のトレンドが準備管理戦略に影響を及ぼしていると回答した。 日本や多数の欧州市場におけるマイナス金利は、一部通貨から資本を引き揚げて、これまで投資する機会があまりなかった市場への移動をマネジャーらに強いている。 HSBCの中央銀行およびソブリンウェルス・パブリックファンド部門グローバル責任者、クリスチャン・デセグリーズ氏は報告書の中でコメントし、「準備マネジャーは急速に進化するとともに先例のない環境の中を航海している。この結果、多数が過去1年間でポートフォリオに大幅な変化を加えた」と指摘。「特にマイナス金利は広範囲な投資インプリケーションを含んでおり、より長期の商品利用、容認する信用リスクの拡大、新たな資産クラスや通貨へのシフトにつながっている。準備通貨としての人民元利用も目を見張るペースで広がっている」という。 調査によると、約32の中銀が人民元に投資しており、国際通貨基金(IMF)が特別引き出し権(SDR)構成通貨に人民元を採用する決定を下す前である1年前の20から増えた。 http://jp.reuters.com/article/global-centralbanks-reserves-idJPKCN0XG1CQ 中銀の緩和策、限界に近づく=UBS会長 UBSグループのウェーバー会長(パリ、3月) By TOM FAIRLESS 2016 年 4 月 19 日 19:22 JST 【ワシントン】スイス金融大手UBSグループのアクセル・ウェーバー会長は、欧州と日本の中央銀行の金融緩和策は限界に近づいていると警告した。欧州中央銀行(ECB)の緩和策をめぐり激しさを増している議論にドイツ連邦銀行(中央銀行)の前総裁が加わった格好となった。 ウェーバー会長は当地で開かれた国際通貨基金(IMF)・世界銀行春季会合の合間に、「現在は追加金融緩和のコストと副作用がその正味の効果を上回る状況にあるのかもしれない。特に欧州、そして日本ではそれが言える」と述べた。 マイナス金利が可能なのは「ごく短期間、さらにゼロに極めて近い水準である場合に限られる」と指摘。ECBの債券買い入れ策が経済成長とインフレを押し上げられるかについては懐疑的な見方を示した。 ドイツでは現在、ECBが昨年12月に総額1兆5000億ユーロ(約186兆円)規模へ拡大した債券買い入れ策に対する批判が高まっている。 関連記事 マイナス金利、ユーロ圏にとってプラス=ECB副総裁 ECB、インフレ押し上げへ全力尽くす=ドラギ総裁 https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NP729_0419we_M_20160419035453.jpg
FX Forum | 2016年 04月 19日 16:46 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:遠のく円安再開、介入でも効果は限定的=植野大作
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト [東京 19日] - 日本の為替介入をめぐる市場の詮索トークが乱立している。きっかけは、安倍晋三首相の発言だ。5日、安倍首相は米紙のインタビューに対し「恣意的な為替介入は控えるべきだ」などと発言した。市場に流れた直後から、日本政府による為替介入への期待と警戒が一気に後退、11日には一時107.63円と1年5カ月ぶりの円高・ドル安が進んだ。 3月29日にイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が早期の利上げ再開に慎重な見方を示し、市場心理がドル安優位に傾いていたタイミングで、日本の総理大臣が「為替介入の可能性を否定した」と受け止められるコメントを配信してしまったことで、国内外の短期筋が安心して円高投機を仕掛けやすくなり、ドル安・円高が一気に加速した。 わずか10営業日で6円を超える円高は、さすがにスピード違反の感が否めない。安倍首相の発言が伝えられた後には、麻生太郎財務相、菅義偉官房長官などの主要閣僚のほか、匿名の財務省幹部らが相次いで「過度の為替変動」をけん制、「場合によっては必要な措置をとる」との発言を連発したため、ドル安・円高の流れは淀んでいるが、上値が目立って軽くなりそうな雰囲気は漂ってこない。 市場の円高心理を助長するような発言を、安倍首相がなぜこの時期にしたのか、背景はよく分からない。「伊勢志摩サミットの議長として為替介入に関わる原則論を述べたに過ぎない」「人民元の管理フロート制を続ける中国政府に対して、けん制球を投げるつもりだった」「米大統領選の間は介入を手控えるのが無難との認識が日本政府内にあり、それを素直に話してしまった」など、市場の解釈は様々だ。 ただ、首相の発言によって変化した市場心理を、閣僚や事務方の火消しコメントで復元するのは恐らく無理だ。「綸言(りんげん)汗の如し」とはよく言ったもので、首相発言の前後を比較すると、ドル円相場の変動レンジは数円程度下振れしている。この先、ドル円相場のトレンドが自然体で上向きに転じない限り、政府が実際のドル買い・円売り介入に踏み切る時期や条件について、為替市場では十人十色の詮索トークが飛び交いそうだ。 <1ドル=100円前後で介入実施なら日本単独か> そこで改めて15日に公表された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の声明文をみると、「為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与えうることを再確認する」「通貨の競争的な切り下げを回避することや競争力のために為替レートを目標とはしないことを含む、我々の以前の為替相場のコミットメントを再確認する」などの見解が示されている。 例によって、各国政府による独自解釈の余地が十分に残されている。周知のように、G20声明には各国の金融・財政・為替政策の運用に対して罰則規定などを伴った法的拘束力はない。日本で為替政策を所管する麻生財務相が「過度の変動なのでやむを得ない」と判断すれば、為替介入に踏み切る可能性はあるだろう。 実際、過去約25年分の介入実績を調べると、財務省が円売り・ドル買いを実施した日の円高値の平均値は105.2円だった。この水準を割ってくると、市場の一部で円売り介入への期待や警戒が明滅し始めるだろう。政府が介入実施の是非を判断する際には、為替相場の「水準」と同時に「速度」も重要になりそうだが、直ちに節目の100円を割るような動きが加速すれば、両条件が整ったと判定される可能性もある。あくまで私見だが、105円割れは介入警戒のイエローゾーン、100円割れはレッドゾーンだと考えている。 ただ、1ドル=100円前後の水準で日本が円売り介入を実施した場合でも、米国が協調介入に応じる可能性はかなり低そうだ。米国が日本の円売り介入にドル買いで協力した最近の事例は、東日本大震災の1週間後、2011年3月18日の1ドル=80円前後だった。14日以降に相次いで発生した熊本地震の影響はまだ見極めの段階にあるが、15日に閉幕したG20の後、米国のルー財務長官は最近の為替市場について「円高は進んだが秩序的」との見解を示している。もしも100円前後で介入する場合は、日本単独になりそうだ その場合、安倍首相が「控えるべきだ」と言った「恣意的な為替介入」ではないと説明するのは難しく、米国内の一部勢力などから「言行不一致」などの批判を受ける可能性が高い。間が悪いことに、現在米国では大統領選挙が佳境を迎えている。これまでの発言履歴などからみて、共和党の候補者指名を争っているトランプ氏やクルーズ氏は、間違いなく何か言ってくるだろう。 日本の為替政策に対するトランプ氏などの「口撃」がメディアを通じて喧伝された場合、民主党で指名獲得が有力視されているクリントン氏はもちろん、現職のオバマ大統領やルー財務長官も立場上コメントを求められる可能性が高い。恐らく好意的な発言は期待し難く、日本の単独介入の場合は一時的な円安効果があっても長続きしにくいだろう。 また、政府が「円安方向への相場誘導が目的の介入ではない」との建前を貫くためには、ドル円相場の水準を問題にしたのではなく、「スピード違反」を戒めたと言わざるを得ないが、それなら単なる「スムージングオペ」だと市場に解釈される。介入金額の多寡に応じて、一時的な水準訂正は促しそうだが、永続的な円安効果は期待できそうにない。 いまさら指摘するまでもないが、古今東西の為替介入の歴史を眺めると、いつの時代も相場のトレンド転換に成功するのは「最後に実施された介入」だけだ。大規模な介入を反復して実施すれば一定期間は市場心理を制圧できるが、外部環境が自然体でのトレンド転換を促さない限り、市場の気の流れを変えられないのは、近年スイスが実施した「無制限フラン売り介入」の失敗事例をみても明らかである。 <ドル円反転の条件が整うのは来年春頃の見通し> ちなみに、近年日本で実施された円売り介入前後の効力持続期間を調べてみると、2010年9月に行われた2.1兆円の単独介入は15営業日、2011年3月の0.7兆円(日本担当分)の協調介入は83営業日とやや長めだったが、11年8月の4.5兆円の単独介入は3営業日しかもたなかった。 11年10月31日から5日間で実施された累計9.3兆円の介入だけが相場の転換に成功したが、実際にはその後鮮明になる日米金融政策の印象格差に伴う自然体での潮流変化が起きるまでの時間稼ぎに寄与したに過ぎない。 足元のドル円相場を取り巻く環境をみると、52週移動平均線などの長期トレンドが下向きに転じてまだ日が浅い中で、米大統領選挙絡みの不透明感が払拭(ふっしょく)できない状況が続いており、米国による利上げ再開の時期についても市場が確信を持つに至っていない。「テクニカル」「政治」「ファンダメンタルズ」の3要素は、日本政府による介入実施の有無にかかわらず、しばらく「ドル円=右肩下がり」の大局観を支持している。 ドル円相場が反転するためには、1)前年同期の水準が大きく下がってそれほど無理に上がらなくても52週線が上向きに転じるのに必要な日柄調整が進む、2)米国で大統領選挙が終わって非現実的な政策から距離を置く新政権が発足する、3)ドル高の負担から解放された米国経済が拡大基調を鮮明にして「健全な利上げ期待」が蒸し返される、などの諸条件が整う必要がある。 早ければ来年の春頃になりそうだが、実際の時期は今後の市場環境次第で前後しそうだ。醒めた市場観察を心掛け、すう勢転換のタイミングを見極めたい。 *植野大作氏は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト。1988年、野村総合研究所入社。2000年に国際金融研究室長を経て、04年に野村証券に転籍、国際金融調査課長として為替調査を統括、09年に投資調査部長。同年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画、12月より主席研究員兼代表取締役社長。12年4月に三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社、13年4月より現職。05年以降、日本経済新聞社主催のアナリスト・ランキングで5年連続為替部門1位を獲得。 http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-daisaku-ueno-idJPKCN0XG0KT Business | 2016年 04月 19日 18:46 JST
全国百貨店売上高、3月は2カ月ぶりに減 インバウンドは13%増 [東京 19日 ロイター] - 日本百貨店協会が19日発表した3月の全国百貨店売上高は、店舗数調整後で前年比2.9%減の5277億円と、2カ月ぶりにマイナスとなった。訪日観光客の免税売上高は同13.2%増と伸びが徐々に鈍化。特に、ブランド物などの一般物品売上高は同7.6%減と、38カ月ぶりのマイナスとなった。 3月は、特に中旬以降の気温が低く、春物衣料の動きが鈍かったことが主力の衣料品の落ち込みにつながった。円高・株安による消費マインドの落ち込みもあり、全体の売上高は前年3月実績に届かなかった。 一方、訪日外国人の免税売上高は同13.2%増の157億円と38か月連続のプラスとなった。客単価は13.6%減となった一方で、客数が31.0%増と伸びた。 客単価減には消費スタイルの変化が影響している。一般物品売上が前年割れとなる一方で、化粧品や食品などの単価の低い消耗品の売り上げが伸びている。百貨店協会では「リピーターの増加で、高額品のまとめ買いから、良いものを選んで買うようになっている」と分析。今後については、客数増が客単価低下を補って「伸びが続く可能性がある」としている。 調査対象の百貨店は82社・237店舗。東京地区は前年比1.1%減と、12カ月ぶりにマイナスとなった。 *内容を追加しました。 (清水律子) http://jp.reuters.com/article/departments-idJPKCN0XG0FR Column | 2016年 04月 19日 18:20 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:英国のEU離脱、銀行員だけではない失業リスク
Dominic Elliott [ロンドン 15日 ロイターBREAKINGVIEWS] - 英国の欧州連合(EU)残留を支持する1つのまっとうな理由として、失業が増加する不安がある。英金融サービス部門のロビー団体「ザ・シティUK」は、英国が離脱する場合、2020年までに金融部門で10万人が失職する可能性があることを明らかにした。 それだけであれば対応できるかもしれない。ただ銀行業界以外の人が心配すべき理由は、その本当の衝撃がもっと広範囲なことにある。 ザ・シティUKの代行としてプライスウォーターハウスクーパース(PwC)が計算したような大きな数字は、人を欺くこともあり得る。それによれば、英金融部門には120万が雇われている。シンクタンクのセンター・フォー・シティーズとケンブリッジ・エコノメトリックスによれば、ロンドンのシティだけでも、2020年までに3%の雇用の成長が見込まれている。 これを英国全体の金融サービス業界にまで広げると、同期間中に3万6000の新たな職が生まれる可能性がある。これを差し引くと、英国のEU離脱は、今存在する6万4000の金融セクターの職を奪う可能性があることを意味している。これは全体の5%に当たる。悪い数字に聞こえるが、決して絶望的なものではない。 しかしながら、金融セクターだけに狭く焦点を当てすぎると、誤解を招く恐れがある。このセクターの購買力は、他の多くの産業での職を創出する。銀行や保険会社、そしてこれらの企業の従業員は、法律や会計サービスから家電、食料まであらゆるものを購入する。 ロンドン東部の金融街カナリー・ワーフでの朝のカフェや、住民によるクロスフィットでのトレーニングセッションによる労働市場への貢献度を具体的な数字で得ることは極めて難しい。しかし、それが取るに足りないものだということを意味する訳ではない。 問題は、他の業界での解雇がニュースで大きく取り上げられるかもしれないことだ。国際鉄鋼統計事務局(ISSB)によると、英鉄鋼業界は2015年に約1万6000人の労働者を抱えていた。価格下落が招いた危機によって、過去1年間でその全労働者の約4分の1が職を失った。この痛みは本物で、今も進行中だ。 英国のEU離脱を意味する「Brexit」が、金融セクターやそれ以外の業界で大きな人員削減を招くことはありそうに思える。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスが15日に発表した報告書によると、英国への海外投資は今後10年で22%減少すると試算されている。もちろん、ビジネスや投資が再び英国に戻る可能性も残っている。また、同時に苦しみが長引くということもあり得るのだ。 http://jp.reuters.com/article/brexit-employment-breakingviews-idJPKCN0XG0N4?sp=true FX Forum | 2016年 04月 19日 17:45 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:天気とサッカーと英EU離脱問題=田中理 第一生命経済研究所 主席エコノミスト [東京 19日] - 欧州連合(EU)残留・離脱を問う国民投票を6月23日に控え、英国の世論は真っ二つに割れている。15日に正式なキャンペーンが開始され、残留派と離脱派の論争は熱を帯びるばかりだ。 金融市場参加者の間では「英国民投票は無視できないテールリスクだが、さすがに離脱はしないだろう」との見方が引き続き支配的なようだ。各種の世論調査は離脱票と残留票が拮抗しているが、調査対象者の15%程度がまだ態度を決めかねている。 2014年のスコットランドの住民投票では、直前の世論調査で離脱派が残留派を逆転したが、態度保留者が無難な現状維持(残留)を選択したことで、最終的な投票結果は残留票が大きく上回った。しかも、昨年の総選挙でも事前の世論調査が実際の投票結果と大きく食い違ったため、世論調査の精度を疑問視する声も聞かれる。さらには、一貫して残留派の優勢を示唆するブックメーカーの賭け率に注目すべきとの見方も浮上している。 調査手法によって世論調査にはクセがある。昨年秋以降の世論調査を集計したところ、インターネット上で調査票に回答する「オンライン調査」では残留票と離脱票が拮抗しているのに対し、オペレータや自動録音メッセージに電話で回答する「電話調査」では残留票が15%ポイント程度リードしている。 英国では連日のように国民投票に関する世論調査が発表されているが、その8割超がコストの安いオンライン調査で、自ずと拮抗している調査結果が目に付くことになる。また、態度保留者の割合を比較すると、電話調査(約10%)の方がオンライン調査(約17%)に比べて少ない。 そこで、残留をメインシナリオに据える識者の多くは、「態度保留者の割合が少ない電話調査の方が実際の投票結果に近く、電話調査の結果を重視すべき」と主張する。さらに、国民の関心を集める今回の国民投票では、投票所に足を運ぶ有権者の割合(投票率)が高くなるとみられ、このことも残留派に有利に働くとの論調が多い。 こうした主張は一見もっともらしく聞こえるが、以下のように反論することも可能だ。質問者と直接会話する電話調査では、回答者が自分をよくみせようとの心理が働き、社会的に望ましいと考えられる回答(ここでは残留)を選びやすい。 また、実際には態度を決めかねている調査対象者も、何らかの意思表示をする無言の圧力を感じるため、電話調査の態度保留者の割合が小さく出る。こうしてみると、残留派が優勢とする電話調査の結果はやや割り引いてみた方が良さそうだ。 結局のところ、どちらの世論調査の結果を信じるべきか明確な決め手に欠け、世論調査の結果は拮抗しているとしか言いようがない。さらに、一般に投票率が低いのは若年層と労働者階級だが、前者は残留支持の割合が多く、後者は離脱支持の割合が多い。投票率が上がった場合、残留派に有利に働くとは限らない。 <投票日の天気予報は「時々にわか雨と雷雨」> ここまで世論が拮抗していると、様々な要素が投票結果に影響を及ぼしかねない。いくつか具体的に考察してみよう。 投票当日の天候は投票率に影響するとみられる。6月は英国で最も晴天率が高く、日照時間が長いことが知られている。投票日程はこうした点を考慮して決まったことは言うまでもない。ちなみに、天気予報サイト「AccuWeather.com」の19日付けの長期予報によれば、投票当日のロンドン(有権者の約12%が居住)の天候は「平年並みの気温、曇りと晴れを繰り返し、時々にわか雨と雷雨」とある。 また、今回の国民投票は、英国に在住するコモンウェルス(インドやオーストラリアなど、英国の旧植民地だった53の独立国で構成される連邦)の出身者にも投票権がある。移民の増加が社会問題化した以降、コモンウェルス出身者のビザ取得要件が厳しくなっている。入国審査手続きもEU加盟国のパスポート保持者のような専用レーンは存在しない。一部のコモンウェルス市民はEU市民に比べて冷遇されているとの不満を抱えており、離脱支持に回る可能性がある。 こうした層が世論調査で正しく捕捉されているかは不透明だ。英テレグラフ紙によれば、英国在住のコモンウェルス市民は約89万人、コモンウェルス生まれの英国籍取得者は約130万人とされ、約4600万人の有権者の5%近くを占める。 キャメロン英首相が率いる残留キャンペーンは、貿易取引の縮小や多国籍企業の海外移転など、離脱時の経済的な損失の大きさを強調することで、残留支持を訴える。投票を前に金融市場に動揺が広がれば、残留派に有利に働く。ドイツやフランスの政府高官から最近相次いで、離脱時の対EU関係(単一市場へのアクセス)の再交渉が容易でない旨の発言が聞かれるのも、残留派への形を変えた側面支援と考えられる。 他方、主に保守党内のEU懐疑論者が率いる離脱キャンペーンは、離脱時も何らかの形で単一市場へのアクセスを確保することが可能とし、むしろ移民やテロに対する脅威を国民に訴える。このまま夏場に向けて欧州の難民危機が鎮静化に向かわなければ、EUの国境管理への不安が投票行動にも影響を及ぼしかねない。 英国でも最近、テレビ討論会が投票結果に与える影響が高まっている。英国放送協会(BBC)は投票日までに3回のテレビ討論会(5月19日、6月15日、6月21日)を予定している。どちらの陣営がより多くの態度保留者を抱え込むかが勝敗を左右しそうだ。 <6月末には音楽・サッカーの一大イベントも> パナマ文書の波紋も無視できない。英世論調査会社イプソスモリによれば、投票方針を左右する重要人物として最も名前が挙がるのは、離脱派のジョンソン・ロンドン市長(32%)を抑え、残留派のキャメロン首相だ(44%)だ。疑惑浮上後に首相の支持率が急落しているほか、残留支持で共同戦線を張る労働党が疑惑追及に意欲をみせている。キャメロン首相への不信感の高まりや残留キャンペーンの足並みの乱れが、有権者の投票行動に影響を及ぼす恐れがある。 投票日には2つの大きなイベントが予定されている。1つは6月22日から26日に英国南西部で行われるグラストンベリー音楽祭だ。世界最大の野外ロックフェスで毎年15万人以上の集客を誇る。恐らくリベラルな若者(主に残留支持)が多く参加する音楽祭は、ロンドンから車や電車で3―4時間の田園地帯で開催される。フェスの参加人数は有権者の0.3%程度とそれほど大きいわけではないが(投票当日の参加者はさらに小さい)、世論調査が拮抗しているだけに無視はできない。 むろん、フェス参加者の全員が英国民ではないだろうし、フェス会場と投票所をはしごすることも可能だろう。念のため、英国にも不在者投票制度があることは付け加えておく。 また、投票日はフランスのパリ郊外で開催される「ユーロ2016」サッカー欧州選手権とも重なる。英国からは、イングランド、ウェールズ、北アイルランドの3チームが出場する。幸い投票当日はグループリーグが終了した翌日で試合は予定されていない。サッカー観戦に釘付けとなり、投票所に行きそびれる事態は避けられそうだ。ただ、英国のEU残留よりも代表チームの活躍に関心を持つ熱狂的なファンが観戦疲れで投票所に足を運ばないことも考えられよう。 注目の投票日まで残すところ2カ月余りとなった。「さすがに離脱はしない」と決め込むには、不確定な要素が余りに多すぎると考えるのは筆者だけだろうか。 *田中理氏は第一生命経済研究所の主席エコノミスト。1997年慶應義塾大学卒。日本総合研究所、モルガン・スタンレー証券(現在はモルガン・スタンレーMUFG証券)などで日米欧のマクロ経済調査業務に従事。2009年11月より現職。欧米経済担当。 *本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。 http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-osamu-tanaka-idJPKCN0XG0MY カーニー英中銀総裁、EU離脱ならあらゆる措置が選択肢に−調査 Jill Ward、Harumi Ichikura 2016年4月19日 19:36 JST Brexitなら英中銀は行動せざるを得なくなるとエコノミスト 離脱後に必要となる政策措置は不透明、量的緩和から利上げまで 債券買い入れ、為替介入、利下げ、あるいは利上げ。これらは英国が欧州連合(EU)離脱を決めた場合にイングランド銀行(英中央銀行)がとり得る措置の一部にすぎない。 ブルームバーグの月例調査によると、エコノミストの約90%が6月23日の国民投票でいわゆる「Brexit(英国のEU離脱)」が選ばれた場合、カーニー総裁は何らかの支援措置を打ち出さざるを得なくなるとみている。ただ、どのような措置になるのかはあまり明瞭でない。Brexitが及ぼす経済への影響がどれほど大きく、どのような形となるのか不透明なため、必要となる可能性がある措置は多岐にわたる。 ブルームバーグが調査したエコノミストの半数以上は、EU離脱なら英中銀の金融政策委員会(MPC)は利下げが必要になるだろうと回答。一方、ポンドを支えインフレ上昇圧力を阻むため利上げせざるを得なくなるかもしれないとの声も一部にあった。 また調査対象の34人のうち15人は債券買い入れの再開があり得るとみている。18人は小規模企業向けの融資用資金を提供する融資促進スキーム(FLS)拡大の可能性を挙げた。 国民投票に向け両陣営がつばぜり合いを演じる中、カーニー総裁は政治論争に巻き込まれた格好となっている。総裁は19日午後3時35分(日本時間同11時35分)から議会証言するが、予定表によれば、最初の質問は「残留のリスクは何か」だ。 原題:Carney’s Brexit Options Cover Everything From QE to Rate Hikes(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-19/O5VL9P6KLVR701 Business | 2016年 04月 19日 08:45 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 英国のEU離脱、直ちに金融・財政的な影響及ぶ=仏中銀総裁 [ニューヨーク 18日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのビルロワドガロー仏中銀総裁は18日、英国が欧州連合(EU)を離脱すれば直ちに金融・財政上の影響が及ぶとの考えを示した。 また、6月23日に英国で予定されるEU離脱の是非を問う国民投票の結果にかかわらず、EUは経済構造上の根深い問題から抜け出すためにさらに連携する必要がある、と語った。 ビルロワドガロー総裁はニューヨークで行われたビジネス・フォーラムで、英国がEUから離脱すれば「金融・財政上の影響が出る」と指摘。「英国には欧州が必要で、欧州も英国を必要としている」とし、「英国がEUにとどまることを強く望んでいる」と述べた。 総裁は、英国がすでにEU離脱に備えた対策に着手しているとも述べた。 また、欧州経済は、ドイツとスペイン主導で上向いているものの、深く根付いた構造上の非効率性が回復の足かせとなっていると指摘。 英国が離脱しようがしまいが、EUにはさらなる投資、需要重視の政策でのさらなる連携、より迅速な構造改革と雇用市場改革が必要だと語った。 総裁は、英国のEU離脱以外の欧州にとってのリスクとして、難民危機、テロリストによる攻撃の脅威、中国など新興国経済の成長鈍化を挙げたが、「それでも欧州経済の回復は続く」とした。 21日に予定されるECB理事会に絡んだ金融政策についての議論は控えた。ただ、原油価格は底打ちしたとみられ、このことは年内のインフレ率押し上げにつながるとの見方を示した。 http://jp.reuters.com/article/french-cenbank-chief-calls-uk-to-stay-in-idJPKCN0XF2LG ゴールドマン・サックス、1-3月期は60%減益 By JUSTIN BAER AND PETER RUDEGEAIR 2016 年 4 月 19 日 21:08 JST 米金融大手ゴールドマン・サックス・グループが19日発表した1-3月期(第1四半期)決算は、不安定な金融市場が主要部門の打撃となり、純利益が前年同期比で60%減少した。 1-3月期の純利益は11億4000万ドル(約1200億円)、1株利益は2.68ドル。前年同期はそれぞれ28億4000万ドル、5.94ドルだった。 収入も63億4000万ドル(前年同期は106億2000万ドル)と落ち込んだ。 トムソン・ロイターがまとめたアナリスト調査では、1株利益が2.45ドル、売上高が67億3000万ドルと予想されていた。 ロイド・ブランクファイン最高経営責任者(CEO)は「1-3月期の業況は幅広い困難を伴い、ほぼ全ての部門が逆風を受けた」と述べた。 投資銀行部門の収入は前年同期比23%減の14億6000万ドル。前期比では5%減少した。 ゴールドマン・サックス全体の営業費用は前年同期比29%減の47億6000万ドルとなった。
4月のドイツZEW景況感11.2、2カ月連続で上昇−ECB措置が奏功 Piotr Skolimowski、Jeanna Smialek 2016年4月19日 19:10 JST ドイツの欧州経済研究センター(ZEW)がまとめた4月の独景況感指数は2カ月連続で前月を上回った。欧州中央銀行(ECB)の追加刺激措置がドイツ経済に浸透しつつある兆候が明らかになった。 ZEWが19日発表した4月のドイツの期待指数は11.2と、前月の4.3から上昇。同指数は向こう6カ月の見通しを示す。ブルームバーグがまとめたエコノミスト調査では8.0への上昇が見込まれていた。 ECBはインフレ押し上げを目指し、債券購入や過去最低の金利を通じて流動性を供給している。ブルームバーグがまとめたエコノミスト調査によれば、ECBは夏明けに再び行動をとらざるを得なくなると見込まれている。今月21日の会合での追加措置は想定されていない。 ZEWのドイツの現状指数は47.7と前月の50.7から低下。ユーロ圏についての期待指数は21.5と、3月の10.6を上回った。 原題:German Investor Optimism Increases to Highest Level This Year(抜粋) Germany April ZEW Investor Confidence: Summary (Table)(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-19/O5VJCX6JTSEL01 農林中金、米サーベラスの英モーゲージ債20億ポンド余り購入−関係者 Alastair Marsh 2016年4月19日 19:29 JST
農林中央金庫は米投資会社サーベラス・キャピタル・マネジメントが発行した英モーゲージ担保証券(MBS)のうち、約20億ポンド(約3150億円)相当を購入した。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。 匿名を条件に語った関係者らによると、今月価格が決定された61億ポンド相当の証券の中で、農林中金は信用力が高めのものを購入した。サーベラスが発行したこのMBSは、同社が昨年買収した英金融機関ノーザン・ロックのモーゲージを裏付けとしている。ノーザン・ロックは金融危機時に経営破綻した。 日本国債がマイナス利回りで投資妙味が薄れているため、国内投資家は債券から海外のリスク資産へと投資先をシフトさせつつある。ブルームバーグの4月の調査によれば、日本の地方銀行11行のうち、8行が資産の再配分を開始したか検討中だと回答。中でも外国の債券と不動産の人気が高かった。 農林中金の広報担当者はMBSを購入したかについてコメントを控えた。サーベラスおよびトード・ポイント・モーゲージ・ファンディング2016-GR1と称するこのMBS発行を取りまとめたモルガン・スタンレーの関係者もコメントしなかった。 このMBSは欧州での資産担保証券(ABS)発行としては規模が約9年ぶりの大きさだと、事情に詳しい関係者は5日に明らかにしていた。 原題:Japanese Farmers’ Bank Said to Buy $2.9 Billion of Cerberus Deal(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-19/O5VLBFSYF01V01
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