Business | 2016年 04月 18日 19:17 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス焦点:日銀、供給網への震災影響を注視 実態把握急ぐ [東京 18日 ロイター] - 日銀は、熊本地震の発生で企業のサプライチェーンに影響が出ていることなどを注視し、被害状況の把握を急いでいる。影響が長期化すれば、企業や消費者のマインドにも悪影響を与え、金融政策判断に波及する可能性も否定できないためだ。また、地域の金融取引などに支障が生じないよう万全の体制を敷く。 <総裁も十分に注視と発言> 熊本県を中心に相次ぐ地震で経済的な影響が広がっており、トヨタ自動車(7203.T)は部品調達の支障から九州以外の生産ラインの一部を停止。電機メーカーでも操業停止になっている企業が相次ぎ、一部のシンクタンクは4月の鉱工業生産が1%ポイント程度低下するとの見通しを示している。 このため日銀は、生産設備のき損や供給網の障害がどの程度の規模になるのか実態把握に全力を挙げるとともに、日本国内における生産活動全体や輸出などにどのような影響が出るのか分析を急ぐ方針。 黒田東彦総裁は15日、ワシントンで開かれたG20(20カ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議終了後の会見で、熊本地震が日本経済に与える影響について「十分に注視し、関係当局と連携しながら適切に対応していきたい」と語った。 <懸念されるマインドへの悪影響> 日銀は2011年3月の東日本大震災の発生当時、3日後に開催した金融政策決定会合において、2日間の予定を1日に短縮して追加緩和を決定。企業マインドの悪化や金融市場のリスク回避姿勢の強まりが実体経済に悪影響を与えることを未然に防止するため、リスク性資産を中心とした資産買入基金(当時)の5兆円増額を決めた。 その後、被災地の復旧・復興に向けた資金需要の高まりに対応するため、「被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーション」の導入を決めている。 今回も懸念されるのは、企業や家計のマインドへの悪影響だ。東日本大震災では福島第1原発の事故も加わり、先行き不透明感の強まりに伴うマインドの悪化が企業の設備投資や個人消費を慎重化させる要因になった。 18日の東京市場では、G20会合後の為替をめぐる日米間の温度差が意識されたこともあり、日経平均.N225が前週末に比べ500円超の下落となった。 外為市場でもドル/円JPY=EBSがいったん108円割れとなるなど投資家のリスク回避姿勢が強まっている。 <地元金融円滑化へ万全の体制> 地震発生直後の15日、九州財務局と日銀熊本支店は、銀行や信用金庫、信用組合、証券会社などに対して金融上の措置を適切に講じるよう要請。被災者が預金通帳を紛失した場合でも、本人確認ができれば払い戻しに応じることや、災害によって支払いができない手形・小切手の不渡報告の掲載・取引停止処分への配慮を行うことなどを求めている。 日銀によると、熊本支店や銀行間の資金決済を行う日銀ネットに被害は出ていない。余震に対する警戒が続く中、引き続き地域の金融取引などに支障が生じないよう、万全の体制を敷く。 (伊藤純夫 編集:田巻一彦) http://jp.reuters.com/article/boj-watcher-kumamoto-quake-idJPKCN0XF10N?sp=true Business | 2016年 04月 18日 19:38 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス アングル:下げ渋るドル/円、介入警戒・日銀緩和の思惑で
[東京 18日 ロイター] - 週明けのドル/円JPY=EBSは、原油安・株安・相場に対する日米当局の見解不一致などドル/円の売り材料が並んだが、下げ渋りの様相を見せた。東日本大震災後に協調介入があったことへの連想から介入警戒感が意識されたほか、日銀追加緩和への思惑も根強かったためだ。 ドル/円の本格的な反発には米早期利上げ観測の再浮上が必須との声は多いが、投機筋の円買いポジションが膨らんで短期的な反発リスクも高まってきており、神経質な相場が続きそうだ。 <弱い地合いが政策期待蒸し返し> 18日の東京市場では、実需筋や個人投資家が様子見姿勢を強める中、短期筋を中心に108円を挟んだもみ合いが続いた。108円を何度も割り込んでは値を戻し、底堅さが意識された。年金筋によるドル買い/円売りも観測され、相場の支えになったようだ。 前週末には、ルー米財務長官の円安けん制発言が伝わって、日本当局による為替介入への警戒感が後退。そこに産油国会合での増産凍結不発が判明し、原油先物が急落。熊本地震による製造業の業績懸念からリスク回避の円買いも加わるなど、ドル売り/円買い材料が並び、本来ならばドルが急落してもおかしくない弱い相場環境だった。 市場では、107.63円の年初来安値を早々に割り込んでもおかしくなかったとの見方も浮上していた。 こうした弱い地合いが、かえって28日に予定される日銀金融政策決定会合での追加緩和や、円売り介入、財政出動への期待感を強める作用を果たしている面もありそうだ。 クレディ・アグリコル銀行・外国為替部長、斎藤裕司氏は「原油安で上値は重いが、政策発動期待で下値も限定的だろう」と指摘している。 <熊本地震で為替介入への思惑も> ドル/円をサポートする要因の1つである為替介入は、米国からけん制されたばかり。だが、熊本地震の発生によってあらためて意識されている。2011年3月の東日本大震災後のドル/円急落時に、7カ国(G7)による10年半ぶりの協調介入があったためだ。 地震発生の3月11日高値83円付近から、ドルは下落基調をたどり、17日には76.25円まで下押しした。 G7財務相・中央銀行総裁は18日午前の臨時電話会議で、協調した円売り介入に合意し、同日午前9時に介入を実施。79円前半で取引されていたドル/円は、81円前半に約2円上昇。4月6日にかけて85.53円に上値を伸ばした。 市場では、足元の相場でもドル/円の下押しが今後急激に強まるようなら「為替介入の十分な理由になり得る」(邦銀)との見方が出ている。 一方、日銀の追加緩和については、上場投資信託(ETF)購入枠の拡大といった質的緩和による株高経由の円安が期待されている。 今月の金融政策決定会合は、米連邦公開市場委員会(FOMC)の直後となるため「FOMCでドル買いの流れが出るかどうかが重要だ。いい流れになれば、日銀の追加緩和による円売り効果も強まりそうだ」(国内金融機関)との思惑が聞かれる。 <大型連休への警戒感も> もっとも、足元のドル/円は下げ渋りの一方で上値も重く、「なかなか底が固まらない」(邦銀の外為ディーラー)との声も聞かれる。原油安・株安の流れが欧米市場に引き継がれるようなら、下押しが強まりかねないとの警戒感も出ていた。 為替介入や追加緩和は、過去の例を参考にしつつ、短時間しか効果が持続しないとみられがち。東日本大震災後の為替介入でドル/円は85円台に戻した後に失速し、再び下落基調に回帰した。 日銀が追加緩和に乗り出し、円安効果が出た場合でも、28日夜には1─3月米国内総生産(GDP)が発表される。米アトランタ地区連銀が公表済みの経済指標に基づいて算出するGDP予想「GDP NOW」では、前期比0.3%増と低調だ。実際に弱い数字となれば、ドル売り/円買いが再燃しかねない。 日本では、翌29日以降に大型連休を控え、緩和効果の持続力が途切れやすいとの見方もある。むしろ国内勢が不在となることで海外投機筋による仕掛け的な円買いが出やすいとの観測もある。「連休中の円高を警戒する必要がある」と、外為どっとコム総研の調査部長、神田卓也氏は指摘する。 目先の下値メドは年初来安値107.63円付近とされる。これを割り込むと、2011年の安値75.31円から昨年高値125.86円のフィボナッチ・リトレースメント38.2%押しに当たる106円程度や、心理的節目となる105円まで目安が見当たらないとみられている。 105円を割り込むようなら、投げ売りが出やすく下げが加速するとみられている。その先には100円の大台が間近に迫る。それだけに105円に接近すれば、日銀のレートチェックや政府要人によるけん制発言が出やすいと警戒されている。 米商品先物取引委員会(CFTC)が15日発表したIMM通貨先物の非商業(投機)部門の取組(4月12日までの1週間)によると、円の買い越しは6万6190枚と過去最高水準に膨らんだ。 投機筋による下値攻めが意識される一方、投機筋には相場反発のリスクもつきまとっており、当面は神経質な相場展開が見込まれる。 SMBC信託銀行プレスティア・シニアFXマーケットアナリスト、尾河眞樹氏は「結局、ドルは米国が利上げしないと上昇しない」と指摘している。 米早期利上げをめぐる市場の思惑が後退する中で、6月利上げにも懐疑的な見方が出始めており、ドル/円の本格的な反転上昇にはまだ時間がかかりそうだ。 (平田紀之 編集:田巻一彦) http://jp.reuters.com/article/dollar-yen-forex-idJPKCN0XF14F?sp=true Business | 2016年 04月 18日 19:21 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 600兆円経済へ具体策を、構造問題にアベノミクス成果活用=首相 [東京 18日 ロイター] - 安倍晋三首相は18日の経済財政諮問会議で、600兆円経済の実現に向けた需要喚起策などの具体化を急ぐよう関係大臣に指示した。「アベノミクスによって経済再生と財政健全化の双方が着実に前に進んできている」としたうえで、人口減少や少子高齢化などの構造的課題には、アベノミクスの成果を活用して対処する考えを示した。 首相はまた、熊本地震に関し「政府としても全力を尽くしているが、経済界においてもそれぞれの立場でできる限りの手段を尽くしてほしい」と協力を呼びかけた。 http://jp.reuters.com/article/abe-economy-japan-gdp-idJPKCN0XF129 モルガン・スタンレー、1-3月期は53%減益 債券およびコモディティーの販売・トレーディング収入の落ち込みが響き、モルガン・スタンレーの1-3月期決算は減益となった
By JUSTIN BAER AND PETER RUDEGEAIR 2016 年 4 月 18 日 20:48 JST 米金融大手モルガン・スタンレーが18日発表した1-3月期(第1四半期)決算は53%の減益となった。世界経済に対する懸念が金融商品への投資意欲や合併・買収(M&A)の動きにブレーキをかけている。 1-3月期の純利益は11億3000万ドル(約1200億円)。前年同期は23億9000万ドルだった。 1株利益は0.55ドルと、トムソン・ロイターがまとめたアナリスト予想の0.46ドルを上回った。 収入は77億9000万ドルに減少した。アナリストの間では78億7000万ドルと予想されていた。 債券および商品(コモディティー)の販売・トレーディング収入は8億7300万ドル(前年同期は19億ドル)と大きく落ち込んだ。エネルギー価格の低迷が響いた。 ジェームズ・ゴーマン最高経営責任者(CEO)は、厳しい市況と顧客の取引の少なさに特徴付けられた四半期だったと述べた。「ある程度の市況回復が見られているものの、世界的な先行き不透明感が引き続き投資家の活動の足かせになっている」との見方を示した。 https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NN458_0413ms_M_20160413065427.jpg 新興国市場の予想外の上昇、利下げが後押し シンガポールドル紙幣 E By CAROLYN CUI 2016 年 4 月 18 日 19:55 JST 新興国による一連の利下げは各国の株式・債券相場の急上昇を後押ししており、年明け前にはほとんどの人が予想もしなかったリターンを投資家にもたらしている。 この1カ月間にインド、インドネシア、トルコ、ハンガリー、台湾の中央銀行が軟調な経済成長に刺激を与えようとして金利を引き下げた。 アナリストらによると、数カ月中にさらに多くの新興国がこれに続くかもしれない。そうなれば、MSCI新興国市場株価指数の2カ月間に及ぶ急上昇に拍車が掛かる可能性がある。同指数は一時2桁の下落率を記録したが、現在の年初来騰落率は6.6%高と、S&P500種指数の1.8%高を上回る。 シンガポール通貨監督庁(MAS、中央銀行)は14日、市場の予想に反して通貨政策を緩和した(MASは金融政策手段として金利ではなく為替レートを利用している)。この発表を受けて、シンガポール株式市場ではST指数が前日比0.8%上昇。一方、シンガポールドルは米ドルに対して1%下落した。 こうした動きは、今年の利上げペースを減速させるという米連邦準備制度理事会(FRB)の決断の影響が広範囲に及んでいることに加え、新興諸国が刺激策にかなり敏感に反応するのに対し、政策金利が0%を下回っている国もある先進諸国では緩和策の効果は限られていることを浮き彫りにしている。JPモルガン・チェースによると、新興諸国の政策金利は平均5.8%だ。 ニューヨークに拠点を置く資産運用会社エマージング・グローバル・アドバイザーズの副会長、エド・カーシュナー氏は、金利が高い地域での「金融刺激策には明らかなプラス効果がある」と述べた。 新興国市場の上昇は、FRBが着実に金融引き締めを行っていくと予想されていたこともあり、年明けには近年の下げ相場が続くのではと身構えていた投資家や政策担当者にとって新たな驚きとなった。 同時に、こうした上昇相場の持続性については多くの投資家が懐疑的だ。低迷する製造業生産高や重い債務負担といった経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)がこの数カ月で大きく変わったということはなく、バリュエーションの大幅な上昇は今後の上昇余地を制限した可能性がある。 FRBが最終的に追加利上げを決めとき、特にそれでドル相場が上昇したら、新興国市場の上昇は減速、あるいは停止してしまう可能性もある。 HSBCグローバル・アセット・マネジメントでグローバル新興国債券部門の責任者を務めるニシャント・ウパディヤイ氏は「今年の(新興国債券の)パフォーマンスの大半はすでに過去のものだと思う」とし、FRBが緩和的であり続ければ、新興国債券の後押しになるかもしれないと述べた。 FRBは昨年12月、9年ぶりに翌日物フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を引き上げた。その後、メキシコから南アフリカに至る国々が利上げで追随し、景気減速のリスクを冒してまで短期資金流出という打撃が生じるのを防ごうとした。 ところが、2月にリスク資産が世界的に上昇すると、新興国の高めの利回りが投資資金を引き寄せ始めた。国際金融協会(IIF)によると、新興国への投資資金流入は3月に370億ドルと、1年9カ月ぶりの高水準となった。 一方、世界の金融市場でリスク選好度が改善したことで、多くの新興国通貨が上昇している。その結果、急激なインフレ上昇を心配せずに利下げする余地が政策当局に生まれた。 JPモルガン・チェースのアナリストらは最近、年末時点の新興国の政策金利見通しを平均5.56%とし、昨年12月時点の見通し(5.75%)から引き下げた。ソシエテ・ジェネラルがまとめたデータによると、市場価格にはロシア、ポーランド、韓国、マレーシアでの追加利下げが織り込まれている。 ミレニアム・グローバル・インベストメンツのエコノミスト、クレア・ディソー氏は「金融緩和サイクルの範囲はおそらく拡大している」と話す。 緩和的な政策は、投資家が資金の流出や経済の混乱に脆弱(ぜいじゃく)だとみなしている国々に力を与えている。トルコ中央銀行は3月、翌日物貸出金利を引き下げた。トルコのインフレ率は中銀の目標値を依然として上回っていたので、この方針転換は多くの市場関係者を驚かせた。トルコ株式市場は年初来で約20%上昇している。 ロシアも近く利下げを始める、と予想する投資家もいる。ロシア中央銀行は3月に開いた直近の政策会合で政策金利を11%に据え置いたが、同国の足元のインフレ率は7.3%と、2年ぶりの低さに落ち込んでいた。ロシア株式市場は年初来で8%高だ。 TIAAグローバル・アセット・マネジメントでグローバルソブリン債・新興国債リサーチ部門の責任者を務めるジョン・エスピノーサ氏によると、同社はロシアルーブル建て債券を選好している。 緩和策によって、上昇相場に乗り遅れたインドなど一部の新興国市場が反発することに期待している投資家もいる。インド市場は年初来で2%安に沈む。インド準備銀行(中央銀行)は今月初め、消費を促すため6カ月ぶりの利下げに踏み切り、政策金利を0.25%引き下げた。 確かに、インフレ率が高止まりしているナイジェリアや南アフリカといった一部の国々では依然として利上げが見込まれている。 とはいえ、近年はインフレと政治的混乱に苦しんでいるブラジルでさえ、利下げ観測が浮上している。 ブラジルのインフレ率は1月に10.7%まで上昇したが、3月には9.4%に低下した。ブラジルレアルが上昇し、輸入物価が下落したことが背景にある。イタウBBAのチーフエコノミスト、イラン・ゴールドファイン氏は、昨年に対ドルで約33%も下げたレアル相場がやや持ち直したことで「金融政策姿勢をより緩和的にする余地が生まれた」と指摘した。ブラジル株式市場の年初来騰落率は23%高と、新興国でも最大級の上げ幅となっている。 関連記事 インド中銀総裁、FRBの新興国への配慮を歓迎 米利上げに身構える新興諸国 三菱の長期繁栄が映す日本経済の弱み デジタル時代20年、日本は新たな勝ち組企業を生み出せずにいる 三菱のグループ構造と財務力のおかげで、グループ企業は新興企業の手が届かないほどの資本にアクセスできることが多い ENLARGE 三菱のグループ構造と財務力のおかげで、グループ企業は新興企業の手が届かないほどの資本にアクセスできることが多い PHOTO: EUROPEAN PRESSPHOTO AGENCY By ERIC PFANNER AND ATSUKO FUKASE 2016 年 4 月 18 日 18:28 JST
【東京】日本一高いビルを建設し、初の国産ジェット旅客機を生産し、さらにはステルス潜水艦を380億ドル(約4兆1000万円)でオーストラリアに売り込もうとしている。それが三菱グループだ。 三菱グループの傘下企業が手掛ける巨大プロジェクトが国の威信を取り戻してくれることを安倍晋三首相は期待している。150年近くの歴史を持つ同グループの隆盛は、日本の巨大企業グループの安定性だけでなく、戦争や金融危機、技術変革を乗り越える能力を際立たせている。 同時に、資本と人材が単一の企業グループに集中しているという状況は、安倍政権が直面する困難な課題を浮き彫りにしている。つまり日本経済を再び成長軌道に乗せるためのダイナミックで革新的な企業を創り出すという課題だ。インターネット時代に突入して20年がたつが、日本はITやヘルスケアの分野において高収入の仕事が創出されず、新たな勝ち組企業を作り出せずにもがいている。 経済協力開発機構(OECD)が昨年行った調査によると、日本の上位300社のうち1960年代以降に創設されたのは3割以下にとどまった。米国では8割近くだ。安倍氏はこの問題を認識しており、昨年、米スタンフォード大学を訪問した際にシリコンバレーの活力を日本に持ち込みたいと述べ、適合できない企業は市場から退出するべきだと付け加えた。 変化が遅いことの一因は労働市場にある。日本では大学新卒者の多くが終身雇用制度のある企業に入社し、その職を手放したがらない。また長引く景気低迷がリスクの高いベンチャーに逆風となっているため、日本経済の問題が固定されがちになっている。このため日本銀行は最近、融資を積極化させるためマイナス金利の導入に踏み切った。 三菱グループの中核企業:左から三菱商事、三菱重工業、三菱UFJフィナンシャル・グループ ENLARGE 三菱グループの中核企業:左から三菱商事、三菱重工業、三菱UFJフィナンシャル・グループ 米国の起業家で、日本政府にテクノロジー政策を助言する齋藤ウィリアム浩幸氏は「それは必ずしも三菱のせいではないが、三菱が酸素を吸い出しているようなものだ」と話す。 三菱グループの事業は銀行から醸造まで多岐にわたるが、その中核企業20数社の年間売上高は合計5000億ドルほど。これは日本最大の売上高を誇るトヨタ自動車のほぼ2倍だ。 三菱グループの歩み 明治維新(1868年)の2年後に設立された三菱の歴史は、日本の近現代史と歩みを共にしてきた。 1800 1870 岩崎弥太郎が三菱の前身となる海運事業を興す 1880 鉱業、海運、銀行、保険、醸造、製紙、ガラスなどに事業を拡大 1890 皇居周辺に80エーカー(約0.3平方キロメートル)の用地を購入。後に金融街・丸の内地区の中心地となる 1900 1940 旧日本海軍が三菱の開発したゼロ戦を就航。最近、残されたゼロ戦(写真)のテスト飛行が行われた
1946 マッカーサー元帥(左)の率いる米占領軍は財閥解体を命じた(右はドワイト・アイゼンハワー陸軍参謀総長)
1954 三菱商事設立 1964 重工業3社が合併し三菱重工業が誕生 1989 バブル絶頂期に三菱地所がニューヨークのロックフェラーセンターの大部分を購入すると発表 2000 2004 一連のリコール隠しで財務危機に陥った三菱自動車を複数のグループ企業が救済 2006 東京三菱銀行とUFJ銀行が合併し、日本最大となる三菱東京UFJ銀行が誕生
2015 日本初の国産ジェット旅客機「MRJ」の初飛行
2100 三菱グループ企業は制度的には独立しており、持ち株会社はひとつもない。ただ、グループ企業は株式の持ち合いや伝統的な関係で緩やかなつながりを持っている。三菱の名前とロゴの使用を管理しているのは、グループ企業の代表者で構成される委員会だ。 三菱のグループ構造と財務力のおかげで、不振のグループ企業でも確実に生き残れるようになっており、重大な決断が先延ばしされることもある。三菱自動車が一連のリコール隠しで財務危機に陥った2004年には、複数のグループ企業が40億ドルの救済策に乗り出した。これは、中小メーカーがひしめき合う日本の自動車業界の構図が維持される一因にもなった。 一般的に言えば、日本の大企業が新興企業にはじき出される心配はほとんどない。帝国データバンクによると、2015年に倒産した上場企業は3社にとどまり、全体の0.1%に満たなかったという。米国では毎年数十社が倒産している。倒産自体は良いことではないが、それが日本で極度に少ないことは、大手企業を追い越す新たな技術を持った新興企業がほとんど出ていないことを示唆する。 カリフォルニア大学サンディエゴ校で日本型経営論を研究しているウリケ・シェーデ教授は、そのような実態が、日本が動きの速い経済についていくのを難しくしていると指摘する。「現代を戦い抜くために必要なのは保険でなく、イノベーションと収益力だ」 専門家や三菱の従業員らによると、グループが繁栄できる理由のひとつは「お上の意向をくむ」ことにたけているからだ。安倍政権下では、それは工業製品の輸出を押し上げられる産業に焦点を当てることを意味する。三菱グループの広報担当者はコメントを控えた。 最近の例を挙げると、独仏勢と競り合っているオーストラリア海軍向けの潜水艦建造で、日本の官民連合を率いているのが三菱重工業だ。この取引が実現すれば、戦後に定められた武器輸出規制を安倍氏が緩和して以降で初めての大型案件になる。 三菱重工の宮永俊一社長はインタビューで、日本が受注を勝ち取れれば、他の三菱グループ会社や提携先からのオーストラリア投資にパイプを築くことができると指摘。「当社が非常に効率的な仲介役になれる」と述べた。 三菱重工は日本初の国産ジェット旅客機「MRJ」を生産するメーカーの筆頭株主だ。MRJは70〜90席クラスの旅客機。再三延期されているが、向こう数年内に米国や日本などの航空会社に納入される見通しだ。 昨年秋にMRJが初飛行に成功したのを受け、菅義偉官房長官は「日本の航空機産業の新たな時代の幕開け」と話し、MRJを全世界に売り込む三菱の努力を政府が支援することを約束した。 三菱地所は1989年にニューヨークのロックフェラーセンターを買収したが、売却する時には損失を被った。同社は2020年の東京五輪開催までに、高さ390メートルの日本一の超高層ビルを建設する計画だ。 第2次世界大戦前、三菱は巨大財閥のひとつだった。戦後の占領下で、占領軍最高司令官のダグラス・マッカーサー元帥は三菱財閥を解体した。占領終結後には緩やかなつながりを持つ企業グループが再び結成された。グループ企業は5%以下の株式を相互に持ち合うことが多い。 三菱グループ企業の最高経営責任者(CEO)らは、毎月非公開で開かれる「金曜会」に出席するため丸の内に集結する。三菱地所は丸の内に40以上の不動産物件を保有する。金曜会メンバーによると、会議では弁当やカレーといった簡単な昼食を取ることが多く、話題は具体的な事業話ではなく雑談が中心になるという。 シェーデ氏は「問題の核心に入る必要はない。最も優先されるのは『額に冷や汗をかいている人がいないか確認する』ことだ」と述べた。 それより下のランクでも三菱の従業員の団結を促す組織がある。グループ企業の社員が三菱を去らずに生涯のパートナーを見つけ出す手助けをする結婚紹介センターもその一つだ。従業員の結婚式にはグループ企業のキリンホールディングスからビールが差し入れられるのがしきたりとなっている。 三菱重工の宮永氏はグループ企業同士のつながりが誇張される場合があると指摘。発電機器では日立と提携するなど、三菱重工はグループ外の企業とも重要な取引関係を持っていると述べた。 宮永氏は、グループ企業は「ビジネス上の倫理みたいなものを共有している。もちろん、協力、協業する非常によい機会があれば、こうした倫理やブランドを共有するため提携関係は少しだけ強くなる」と述べた。 関連記事 起業家に託される日本「再起動」への望み アベノミクス行き詰まり招く労働市場の問題 2050年の日本:高齢化を逆手に世界リード 日独仏、豪への潜水艦売り込みに躍起 http://jp.wsj.com/articles/SB12626246813375924472204582013153533935924?mod=wsj_nview_latest
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