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[大機小機]インバウンド観光は持続するか
海外観光客の増加は日本経済にとって数少ない明るい材料だ。2015年の訪日客数は1974万人で、12年の約2.4倍、旅行消費額は約3.5兆円で同じく約3.2倍となった。政府も自治体もこうしたインバウンド観光を今後の成長の柱と位置づけている。
期待に応えてインバウンド観光は増え続けるのか。その持続性を点検してみよう。訪日客の国内消費は観光サービスの輸出である。これが急増した理由として次の3つが考えられる。
第1は円安による価格効果だ。12年末に1ドル=80円程度だった円レートは、15年秋には同125円近くになった。3割を超える円安である。
為替レートの変化分がどの程度、輸出価格に転嫁されたかを示すのがパススルー率である。今回の円安過程では日本の輸出品の価格はあまり下がらなかった。つまりパススルー率が低かったことが知られている。円安でも輸出数量が増えなかったのはこのためだ。
しかし、観光サービスの輸出ではパススルー率はほぼ100%だった。円安でも国内価格は変わらなかったためで、これによって輸出数量に相当する観光客数が大幅に増加した。
第2は消費者の所得が増えたという所得効果だ。近年の中国、東アジア諸国の成長で消費者の可処分所得が大幅に増え、それが日本からの観光サービスの輸出を増やしたのである。
第3は裁定効果だ。近年の訪日外国人消費の中心は中国で、その消費金額は外国人観光客全体の約4割にも達している。その多くは大量のお土産を持ち帰る「爆買い」である。これは中国の消費者が購入したい商品が、中国の国内では制度的に購入できないことを補う裁定行動だといえる。
こうして考えるとインバウンド観光の持続性には疑問符が付く。円安が一段落すれば価格効果はなくなり、円高に動けばマイナス要因となる。中国や東アジアの今後の成長には不透明な面があるから、所得効果が続く保証はない。いずれ中国での販売体制の整備や製品輸入の増大などが進めば裁定効果も薄らぐ。
インバウンド観光を持続的な成長の柱としていくには、一時的な価格や所得、裁定効果に頼らない、付加価値の高い安定的な観光需要を創出していく必要がある。
(隅田川)
[日経新聞4月15日朝刊P.17]
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