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急増する貧困転落女性の地獄…月収20万で2人の子供養育、生活費のためAV女優に
http://biz-journal.jp/2016/04/post_14735.html
2016.04.16 文=谷口京子/清談社 Business Journal
ここ数年、『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新聞出版)や『最貧困女子』(幻冬舎)といった本がベストセラーになるなど、「下流」「貧困」などのキーワードを目にすることが多くなった。
正社員で“人並みの生活”をしていたとしても、突然のリストラや体調不良、親の介護などによって会社を辞めざるを得なくなり、収入が激減する可能性は誰にでもある。
「中流」から転落する人たちの実態について、社会学者で中央大学文学部教授の山田昌弘氏に話を聞いた。
■なぜ中流からの転落者が急増?
かつての日本には、「1億総中流」という言葉があった。また、2014年の内閣府の「国民生活に関する世論調査」によると、「生活の程度は、世間一般からみて、どうか」という質問に対する回答で、最も多かったのが「中の中」の56.6%となっている。
今なお、半数以上の世帯が、自らの生活レベルを「中流」と見なしていることになる。では、そもそも「中流」とは、どのような層なのだろうか。
「中流とは、『人並みの生活』のことを指します。持ち家があり、地方ならクルマを持ち、子供を大学に進学させることができる程度の余裕がある家庭のことです。
また、現状で家やクルマなどを持っていなくても、将来的にそれらの条件が揃い、その状態で老後を迎えられる、という意識を持てることも中流の定義です。高度成長期からバブル景気が終わった1990年頃までは、多くの人が『人並みの生活』をして、将来的にも中流の生活ができると信じていました」(山田氏)
しかし、バブル崩壊以降は長期不況が続き、リーマン・ショックや経済のグローバル化などによって、中流世帯は減少した。その結果、今は収入の二極化が進んでいる。
「私は、ずば抜けて高い収入を得る層が増えることを『上離れ』、収入が低くて生活に困難をきたす人の増加を『底抜け』と呼んでいるのですが、社会的格差が広がる原因が『上離れ』だけにあるのであれば、それほど問題はありません。しかし、現在の日本の格差は『底抜け』の増加によるところが大きく、社会的影響は深刻といえます」(同)
この「底抜け」には、リストラ、離婚、病気やけが、親の介護など、理由はさまざまだが、かつて「人並みの生活」をしていた世帯も多く含まれているという。まさに「中流からの転落」が進行しているのだ。
■子供の教育費のために、熟女AVに出演するシングルマザー
『熟年売春 アラフォー女子の貧困の現実』(ミリオン出版)によると、性風俗業界に身を置く女性たちのなかには、「中流」から転落したケースも少なくないという。
例えば、同書に登場する吉田春奈さん(仮名・47歳)は、10年前まで専業主婦だったが、夫の浮気をきっかけに離婚してシングルマザーとなった。日中は小さな会社で正社員として働き、月に20万円の収入と元夫が振り込む毎月10万円の養育費で、なんとか2人の子供を養っていた。
しかし、3年前から養育費の振り込みが滞るようになり、生活苦から、吉田さんは消費者金融で10万円の借金をしてしまう。
「どうしても生活費が足りなくて、消費者金融で借金したとき、これではいけないってスナックでアルバイトを始めた。水商売も初めてでした。(中略)生活のためにはそれしか手段がなかった」(同書より)
その後、スナックでのアルバイト収入が月9万円ほどになり、家計は元の状態に戻った。しかし、公立の進学校に通う長男に、初年度納入金に150万円ほどかかる有名私立大学に進学したい、という希望を告げられる。
吉田さんは、長男と「お母さんもがんばるから、あなたも勉強をがんばりなさい」と約束を交わし、年齢制限のない熟女AVのプロダクションに応募した。熟女AV女優として、撮影に臨むためである。
このケースのように、離婚や子供の進学などによって生活が一変してしまう可能性は、誰にでもある。山田氏は、次のように語る。
「中流から転落してしまった人は、努力をしなかったのではなく、努力をしても報われなかった『偶然の被害者』であるケースが多いんです。30年前は抱く必要がなかった将来への不安に、多くの人がさいなまれています」(山田氏)
■もはや個人の努力では転落を防げない!
個人の努力とは無関係に「中流」から「下流」に転落してしまう。そんな事態を回避するすべはあるのだろうか。
「非正規雇用が増加し、正社員でも給料が上がらない実情は、もはや個人の努力でどうにかなるレベルではありません。本来なら、社会保障の大改革が必要なのですが、安倍晋三政権には大きな期待はできない。国民の声は政権にも届いていると思いますが、大改革をする気配はないですね」(同)
厚生労働省が14年に発表した「国民生活基礎調査」によれば、一定基準を下回る所得しか得られていない「相対的貧困率」は16.1%に上るという。これは、簡単にいえば、日本人の6人に1人が「下流」ということだ。前述のように、半数以上が自らの生活を「中流」と思っている一方には、そんな現実も広がっている。
将来への希望が持てず、多くの人が「人並みの生活」を送ることが困難になりつつある日本。その終着点を知る者は、誰もいない。
(文=谷口京子/清談社)
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