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カルビー会長兼CEO 松本晃 まつもと・あきら/1947年生まれ。72年、京都大学大学院農学研究科修士課程を修了し、伊藤忠商事に入社。同社関連医療機器輸入販売会社役員を経て、93年にジョンソン・エンド・ジョンソンへ。99年、同日本法人社長。2009年にカルビー会長兼CEOに就任(撮影/今村拓馬)
「報告せよ!」「ウソをつくな!」カルビー社員基本の“10か条”〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160415-00000003-sasahi-bus_all
AERA 2016年4月11日号より抜粋
世に「名経営者」と言われる人たちは、日々何を思いながら仕事をしているのだろう。「ブレない判断」を支えるものは何なのか。カルビー会長兼CEOの松本晃氏に「哲学」を聞いた。
カルビー社員が仕事の基本に据える「松本の10の考え方」。これは、松本が長いビジネス経験から導いたものを短く明快に示したものだ。すべてをここに書き出す。
(1) Commitment & Accountability(仕事は全て約束。その結果に責任をとる)
(2)人の評価はFairに
(3)会社は「厳しく」「暖かく」(会社は甘いだけのところではない)
(4)現状維持是即脱落(現状に満足しない)
(5)正しいことを正しく
(6)No Meeting, No Memo(無駄な会議や資料づくりをやめる)
(7) One Dollar -OUT( 会社の金は1円たりとも私用流用しない)
(8)全てのコストは顧客が負担(コスト意識を持つ)
(9)報告の3原則(トラブルはすぐ報告せよ! 悪いことから報告せよ! ウソをつくな!)
(10)業務の3原則(簡素化・透明化・分権化)
企業のコンプライアンスが厳しく取り沙汰される時代だが、松本は倫理観とコンプライアンスはその性質が異なると言う。
「テニスのシャラポワのドーピング違反は、禁止薬物リストの変更が原因。コンプライアンスや法律は時代とともに変化するが、倫理観は普遍」
例えば、同じ業務を担当している正社員と契約社員で、健康診断での検診範囲に差異があるといった待遇格差について。
「人にお金をかけるのはコストではなく投資。企業にとっていちばん大事なのは人。Our Business Is People Businessです」
「正しいことを正しく」なのだ。
若い頃の松本は、モーレツ商社マン。新卒で入社した伊藤忠商事では、ベトナムの石炭輸出設備工事の10社コンペを勝ち抜き、アメリカでの農業機械販売のビジネスモデル開発でも圧倒的な売り上げ記録を持つ。
「カネのことばかり考えとったから、倫理観なんてあるとかないとかの問題じゃなくて意識の外だった」(松本)
転機は39歳のとき。医療機器輸入販売会社に営業本部長として出向すると、現場主義の松本は手術室にも頻繁に足を運んだ。患者の家族から直接お礼を言われたり、中にはわざわざ礼状を送ってくる患者がいたり。
商社の営業では味わうことのなかった「人に喜ばれる体験」が、松本の中に眠っていた「人の役に立ちたい」という感情を目覚めさせた。
45 歳で伊藤忠を辞めたとき、松本はスカウトのあった23社から、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)を選ぶ。同社の「クレド(我が信条)」に惹かれたからだ。
クレドは、J&Jの成長ストーリーと共にビジネススクールでケーススタディーの対象となるなど、優れた社是としてすでに知られていた。企業が責任を果たすべきは「第1が顧客、第2が社員、第3に地域社会、そして最後に株主」とし、各対象にどう責任を果たすべきかについても過不足なく示す。松本は言う。
「これほど完璧な社是はない。出会っていなければ自分はプロ経営者になっていなかった」
他の経営者から「うちもクレドを作りたい」と相談されると「このまま使ったら」と応じるほどだ。(ライター・三宅玲子)
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