MUFG平野社長:マイナス金利政策は「残念ながら懸念を増大」 河元伸吾、Gareth Allan 2016年4月14日 12:47 JST 更新日時 2016年4月14日 13:24 JST銀行業界にとって短期的な効果は明らかにネガティブ 日本は既に金利低く、企業の資本支出や個人の投資促すか分からず 三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長は14日、都内の講演で日本銀行のマイナス金利政策について、銀行にとっては「短期的効果は明らかにネガティブだ」と述べた。一方、経済効果としては、企業の資本支出や個人の投資を促すかは分からず「懸念を増大させている」と指摘した。 平野社長は「銀行はマイナス金利を個人や法人顧客に転嫁できないだろうから、資金利ざやはさらに縮小して基礎体力低下をもたらす」と述べ、銀行業界では「体力勝負の持久戦は厳しさを増し長期化することになる」と見通した。 経済効果については、円相場や株価への影響は短期的だったとして「黒田総裁の発言通り、期待される効果がどの程度実現するか見守る必要がある」と指摘。欧州の先行例などを示し、既に金利の低い日本で企業や個人の投資を促すかどうかは分からず「残念ながら懸念を増大させる方向に働いてしまっているようだ」と語った。 その上で平野社長は、現状について「個人も企業も政策効果に懐疑的になってしまっており、将来に対する不確実性が増すにつれて支出や投資計画を凍結している」と述べた。 日銀が12 日公表した貸出・預金動向(速報)によると、3月の国内銀行の貸出金残高は前年同月比2%増と2013年3月(1.9%増)以来の低い伸びにとどまった。2月に導入されたマイナス金利政策のプラス効果はまだ表れていない。 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-14/O5LRSA6KLVRB01 黒田日銀総裁:マイナス金利なければ国内市場はさらに悪化していた 藤岡徹 2016年4月14日 12:52 JST
マイナス金利が裏目に出たとは思わないと訪米中の黒田総裁が発言 日銀は必要ならちゅうちょなく追加的な金融刺激策を実行すると総裁 訪米中の日本銀行の黒田東彦総裁は13日、日銀がマイナス金利を導入していなかったら国内金融市場はもっと悪い状況になっていただろうと述べ、マイナス金利が望ましくない影響をもたらしたとの見方を否定した。 黒田総裁はニューヨークのコロンビア大学での質疑応答で、「マイナス金利の導入が裏目に出たとか、円高・日本株安を引き起こしたとは思っていない。それどころか、マイナス金利付きの質的・量的金融緩和(QQE)を導入していなかったら、日本の金融市場は一層悪くなっていただろう」と語った。 国際通貨基金(IMF)・世界銀行の春季会合や20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議出席のため米国を訪れた黒田総裁は、日銀の現在の金融政策が所期の成果をもたらしており、将来的にインフレ目標2%の達成を促すとの見解をあらためて示し、必要ならちゅうちょなく追加の金融刺激策を実行すると発言。日銀の政策は為替市場をターゲットにしていないという従来の主張を繰り返した。 同総裁はまた、マイナス金利を銀行や資金利用への課税と見なすのは正しくないと反論。マイナス金利が銀行の利益を過度に押し下げることはなく、国内のインフレに寄与するようになれば銀行にとって結局プラスに働くと主張した。 さらに日銀が購入する国債が不足し、金融緩和が続かなくなるのではないかとの懸念について、黒田総裁は現時点で障害はないとの認識を明らかにした。 原題:Kuroda Says Markets Would Have Been Worse Without Negative Rate(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-14/O5LSRY6KLVRB01 【コラム】日銀のマイナス金利政策から得る5つの教訓−エラリアン コラムニスト:Mohamed El-Erian 2016年4月14日 13:25 JST 日本の経済・金融面の沈滞はかつて、他の先進国・地域にはほとんど関係ないと受け止められていた。欧米の著名なエコノミストや政策当局者は「日本と同様の事態は起こり得ない」とまで発言していた。だが近年の動向を踏まえ、過去および現在の日本の経験を理解する重要性を認めるという、従来よりも謙虚な姿勢が広がりつつある。 次に5つの洞察を紹介しよう。 まず、金融バブル崩壊に伴う低成長から決定的に抜け出すのは容易でない。経済の停滞が長引けば長引くほど、景気浮揚を阻む構造的な逆風は一段と力を増す。それは現在の成長軌道だけでなく、将来の潜在的な軌道にも影響を及ぼす。2000年代初頭には、日本の政策当局者が一段と時宜を得た形で刺激的な金融・財政措置を実施していれば、「失われた10年」は簡単に回避できたであろうというのが、欧米での一致した見解だった。そして、世界的な金融危機を受けて欧米がリセッション(景気後退)に陥った際には、こうした見解に後押しされる形で、欧米の金融当局が「必要なら何でもする」という手法を積極的に採用することになった。しかし、予想外かつ異例の金融措置を欧州中央銀行(ECB)と米金融当局が講じたものの、欧米いずれの成長率も脱出速度に達することができずにいる。 第2に、つい最近まで欧米の10大経済リスクにデフレがランクインする可能性は低かった。その結果、物価下落や将来の低インフレ見通しの定着、それに伴う消費や投資への逆風といった問題への数十年にわたる日本の闘いから、欧米が得られる教訓があるとはほとんど誰も考えていなかった。 それでも事態は変わった。物価下落はECBの主要な懸念材料の一つであり、マイナスの名目金利を含め、実験的要素を強める措置の採用を促すケースが増えている。ECBの場合ほどではないが、デフレは米金融当局が配慮するリスクの一つにもなっている。 第3に、人為的に低く抑えられた金利が銀行融資の増加を促進したり、持続的な景気拡大に寄与したりすることができるか、金融当局の大半は疑問を抱いてきたが、同様にその大半が短期的な措置として何度も「ポートフォリオリバランス」に頼ることができると考えてきた。それは低利回りの「安全」な政府債をより高リスクな証券の保有に切り替えるよう、投資家に促すものだ。資産価格が上昇すれば、経済成長にわずかながらも好影響を及ぼし、待望の包括的な政策対応が金融当局による異例の措置に取って代わるまで、少なくとも時間を稼げるはずだった。 異例の金融政策の有効性をめぐっては既に慎重な評価が下されているが、日本の経験はこうした評価にさらなる留保が必要であることを示唆している。日本銀行が予想外のマイナス金利導入に動いたことで一連の意図せぬ結果を招き、日本の成長や金融安定性の見通しを複雑にしている。政府債市場の流動性は低下し、家計は金融システムとの関与を減らし、日銀への政治的監視 は強まってその政策への一般の不満は募っている。政策に付随した被害についての認識が高まりつつあり、一連の措置が逆効果になることなく、金融当局が政策面でこれほど多くの責務を負担し続けることができるかどうか、警戒ムードが生じている。 第4に、システム上重要な金融当局が他国・地域の当局に比べて金利差を拡大すれば、為替相場への影響も大きくなると、大多数の経済学教科書が説明している。当局が一層の金融緩和に踏み切れば、その通貨は下落するというわけだ。 だが、日銀によるマイナス金利導入後に実際に起こったのは円安ではなく、大幅な円高だった。この事実は、内外金利差の効果には限度があることを示唆している。 最後に、日本から得られる最も重要な教訓は、安倍晋三首相が「3つの矢」と呼ぶ金融緩和、政府支出、ビジネスの規制緩和を政策当局者が同時に進める必要性だ。日本のケースで明らかなように、最初の2つの矢だけでは不十分だ。成長への構造的な障害にも対処しなければならない。そうした障害には一部セクターへの非生産的な参入障壁、不十分なインフラ、機能不全の労働市場、一部の過剰債務が挙げられる。 異例の金融政策が効果を失うだけでなく逆効果となり得る状況で、必要とされる取り組みがなければ、政策への失望は例外ではなく常態となるだろう。 (このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません) 原題:Five Lessons From Japan’s Negative Rates: Mohamed A. El-Erian(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-14/O5LUEH6S972E01
マイナス金利、ユーロ圏にとってプラス=ECB副総裁 ECBのコンスタンシオ副総裁 By TOM FAIRLESS 2016 年 4 月 14 日 09:35 JST 欧州中央銀行(ECB)のコンスタンシオ副総裁は13日、マイナス金利を政策手段として使うことには「明確な限界」があるが、人々がマイナス金利を回避するために銀行から現金を引き出し始める時期は「ずっと先」のようだとの見方を示した。 ニューヨークのバード大学で講演したコンスタンシオ副総裁は、ECBが導入したマイナス金利は「ユーロ圏全体で見ればプラス」だとし、マイナス金利によって多くの銀行の資金調達コストが減少し、資産価格が押し上げられたほか、不良債権にかかるコストも減ったからだと述べた。 ECBをはじめ、日本やスウェーデンなどの中央銀行は近年、低位にとどまり続けるインフレ率を押し上げるため、マイナス金利を導入した。ECBは先月、預金ファシリティー金利を0.1%引き下げ、マイナス0.4%とした。 副総裁は、金利をどこまで引き下げられるかについては明確な限界があると強調した。ある時点になれば、人々は銀行に預金手数料を支払うよりもタンス預金の方がましだと思うだろうと述べた。ただ、「現金の保管費用や安全性、保険という観点から(その時が来るのは)ずっと先と思われる」と述べた。 関連記事 ECB、追加刺激策で見解割れる=3月議事録 ECB、刺激策の追加あり得る=プラート専務理事 https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NN852_consta_M_20160413183404.jpg
ドイツ、均衡財政と債務削減をあらためて公約 週次の閣議に臨むドイツのメルケル首相(13日、ベルリン) By ANDREA THOMAS AND TOM FAIRLESS 2016 年 4 月 14 日 07:23 JST 【ベルリン】ドイツ政府は13日、少なくとも2020年までは均衡財政を達成するほか連邦政府債務を削減することを公約し、財政規律を厳格に堅持する姿勢を明確にした。 ドイツのメルケル政権は欧州委員会に対し、今年も予算均衡が達成できる見通しだと報告した。2015年の財政収支は対国内総生産(GDP)比0.7%の黒字だった。政府債務の対GDP比率は今年、15年の71.2%から68.25%に低下し、20年には59.5%に下がる公算が大きいとした。 今回の報告は、難民危機など予想外の課題に直面しながらも、財政健全性の観点から欧州の模範国であり続けようというドイツの心意気を強調するものだ。だが同時に、諸外国では新たな景気刺激策の必要性が重要視されており、政府歳出の抑制や金融緩和策への歯止めを求めるドイツ政府が孤立感を強めているという構図も浮かび上がる。 国際通貨基金(IMF)は12日、世界経済が行き詰まるリスクがますます高まっていると警告し、成長路線を維持するため直ちに景気対策を用意するよう、世界各国に求めた。 財政が健全なドイツは、今週末ワシントンで開かれるIMFおよび世界銀行の春季会合で、減速しつつある欧州経済のてこ入れを支援するようにとの圧力にあらためてさらされる可能性が高い。 だが複数のドイツ財務省高官によれば、同国は世界の経済・財政担当責任者らに対し、各国は新たな刺激策を求めるのでなく合意済みの経済改革の実施に重点を置くべきだと訴える見込みだ。 ドイツ政府は、欧州中央銀行(ECB)による景気刺激策が貯蓄のあるドイツ人に悪影響が及ぶとの批判を強めている。ショイブレ財務相は先週、欧州と米国の政府に対し、中央銀行による刺激策の段階的終了を奨励するべきだと呼びかけた。 独財務省高官の1人は「世界には、成長見通しを受けて何度も一からやり直し、真新しい(成長)戦略をスタートさせたがる人が多い」のに対し、ドイツは「継続性に重点を置いている」と述べた。 だがドイツ国内でも、エコノミストらは政府の緊縮財政策に苛立ち始めている。 エコノミスト7人は先週末、ドイツ政府は収支管理の手綱を緩めるべきだと指摘。ECBの政策を批判する向きは建設的な代替策を何ら提案していないと批判した。 関連記事 米財政赤字が16年度上半期に拡大、基調悪化を示唆 米政府支出の減少、金融・財政当局の対立に拍車 英国財政、低成長の現実に直面 円高を恐れるべきもう一つの理由 https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NN542_gerdeb_M_20160413110840.jpg 米地区連銀景況報告:大多数の地区で経済活動が拡大 ウォルマートの買い物客(アーカンソー州ベントンビル、2015年) PHOTO: DANNY JOHNSTON/ASSOCIATED PRESS By ANNA LOUIE SUSSMAN and ERIC MORATH 2016 年 4 月 14 日 05:48 JST 更新 【ワシントン】米連邦準備制度理事会(FRB)が13日公表した地区連銀景況報告(ベージュブック)によると、労働市場の引き締まりや賃金上昇圧力の高まり、個人消費の緩やかな増加が支えとなり、全米12地区の大多数で景気拡大が確認された。 今回の報告は今年これまでに比べより明るい経済情勢を浮き彫りにした。だが、FRBが4月26・27日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げするとは予想されていない。 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)調査では、エコノミストの約75%が4月のFOMCで金利を据え置き、6月に利上げすると予想した。 直近の地区連銀報告は2月下旬から4月7日にかけての経済活動について事例報告をまとめた。12地区のうち11地区が景気が拡大したとし、大半の地区では企業が今後も同程度のペースで成長を続ける見通しを示した。 雇用情勢はほぼ全地区で強まったが、クリーブランド地区では雇用が減少した。 雇用改善を受け、アトランタ地区以外の各地区で賃金が上昇した。特に建設業や製造業、情報・技術(IT)など熟練労働者が不足している部門で賃金上昇圧力が強かった。 賃金の伸びが大半の地区で個人消費の小幅な伸びを下支えした。一部の地区は低水準のガソリン価格、有利な信用環境、小売業者による販売促進や割引を消費拡大の要因として挙げた。自動車販売は一部の地区で好調で、小売売上高も大部分の地区でわずかに増加した。 だが、いくつか地区はドル高の悪影響を指摘し、4地区は海外からの旅行者が減少したと報告した。サンフランシスコ地区はドル高が農産物の輸出を抑制しているとの見方を示した。 しかし、ドル高の打撃を受けている製造業に楽観の兆候が見られた。5地区で製造業の整備投資が増加し、厳しい1年を経て需要がこの先高まるとの期待が示唆された。 全般に大半の地区で、観光、建設、製薬など様々な業界の企業支出が増加した。 また、建設や不動産業界の成長を報告した地区も多く、住宅産業が引き続き成長を後押しする可能性が明らかになった。集合住宅建設と商業用不動産のいずれも活動が拡大した。 これを受けて、多くの地区では商業用不動産融資の需要が増加した。大半の地区では信用の質が改善したが、巨大エネルギー産業を抱える地区では、一部のエネルギー企業が低価格に苦戦する中、融資の質がやや悪化した。 さらに、暖冬の影響で天然ガスの在庫が増え、価格を圧迫した。石炭、石油、ガス生産は複数の地区で減少したが、生産が近いうちに増加に転じる兆候が見られると報告した地区もいくつかあった。 ディーゼル燃料や肥料など、農業の投入コストは低かったが、綿花や家畜に至る様々な農畜産商品の値下がりの影響は補えなかった。農業環境はまちまちで、5地区は低収益性を指摘した。 連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は最近、海外の成長低迷による米経済への影響を強調しているが、米労働市場の底堅さにも注目している。3月29日の講演では、FRB当局者は中期的に「緩やかな」成長を見込んでいるとし、ドル高や低調な海外経済の影響は徐々に薄れるとの見方を示した。 リッチモンド地区連銀のラッカー総裁は12日、こうした逆風の一部はすでに後退しつつあると指摘した。ドル高の影響は「おそらく過ぎ去った」とし、エネルギー価格も「底入れ」したようだと話した。サンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁もこの日、米経済は堅調で、インフレ率はFRBの目標である2%に向けて回復しているとの認識を示した。FRBが追加利上げを望んでいることは「まったく隠すまでもないことだ」と述べた。 米国の雇用は着実に伸びており、特に内需依存度が高い産業では力強く拡大している。労働省が今月発表した3月の非農業部門就業者数は21万5000人増だった。ドル高と原油安で大きな痛手を被った製造業も好転の兆しを見せており、サプライ管理協会(ISM)が発表した3月の製造業景況指数は昨年7月以来の高水準となる51.8に上昇した。 だが耐久財受注は2月に減少し、新たな設備投資を控える企業の慎重姿勢が浮き彫りとなった。賃金の伸びも鈍く、低いエネルギー価格を背景にインフレは2%を下回り続けている。低調な賃金の伸びと消費者の警戒感が経済成長の主な原動力である個人消費を圧迫している。自動車販売の低迷で米小売売上高は3月に減少し、小売や食品サービスの売上高は2015年半ば以来勢いを失っている。 関連記事 海外の不透明感、慎重な政策判断を正当化=FRB議長 FRBの警戒姿勢、4つの発言から読み解く https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NN088_0413be_M_20160412125615.jpg 海外の不透明感、慎重な政策判断を正当化
By HARRIET TORRY 2016 年 4 月 14 日 00:32 JST 【ワシントン】米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は米誌タイムとのインタビューで、世界的な不透明感が慎重な金融政策設定を正当化しているとの見方をあらためて表明した。 タイム(電子版)に13日掲載された記事によると、中国市場の不安定さや欧州の統合の行方といった海外の不確実要因を踏まえると「大きなミスを特定・回避するためのリスク管理的アプローチを用いることが理にかなう」とイエレン議長は説明。「わたしがこの慎重な手法を支持する理由の一つはそれだ」と話した。 記事によればこのインタビューは「最近」行われたが、具体的な実施日は明らかにしていない。 議長はまた「知りたいことが全て判明していない段階で決断を下さなければならないことも時にはある」とし、「それは仕事の一部だ」と続けた。 FRBは昨年12月にほぼ10年ぶりとなる政策金利の引き上げに踏み切ったが、1月と3月の連邦公開市場委員会(FOMC)ではインフレと海外経済の成長をめぐる懸念から金利を据え置いた。3月15・16日分のFOMC議事録からは、一部の委員が4月FOMCで利上げする可能性を排除する構えだったことが明らかになっている。 FRB議長「段階的利上げ依然適切」 米利上げ、市場の見込み違いに要注意 FRB利上げ、大半のエコノミストが6月と予想=WSJ調査 米FRB特集 http://jp.wsj.com/articles/SB10922328955711303277604581235571475256868
FX Forum | 2016年 04月 14日 17:26 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:ドル105円割れ前倒しも、カギ握る米経済=内田稔氏 三菱東京UFJ銀行 チーフアナリスト [東京 14日] - 昨今の円高を、単なるリスク回避の結果とする見方はいまだに根強い。ただ、3月の相場を振り返れば、そうした見方が適切でないことは明らかだ。
なぜなら増産凍結合意への期待から、3月は原油先物相場が大幅に反発。米S&P500株価指数も連れ高となり、年初来の下げ幅を全て回復した。別名「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数は、昨年8月の中国人民元急落前の水準に低下し、何かと危機の起点とされる人民元も、対ドルでおおむね上昇傾向をたどった。 これだけリスクオンにも似た相場展開の中、ドル円相場の戻り高値は、114円台半ばまで。ドル円下落の背景は、利上げに慎重化した米連邦公開市場委員会(FOMC)を受けたドル安の側面がある。ただ、主要通貨の中で、対ドルで最も上昇したのは円だ。つまり、ドル円急落のもう一方の主役は円高であり、それを強めたのは、日銀の金融緩和によって円安が進むという期待感やテーマが剥落したためだろう。 日本では、折からの経常黒字拡大や対外投資による円安効果の鈍化、期待インフレ率の低下といったファンダメンタルズ面での円高要因も併走しているため、円高基調が今後も続く可能性が高い。 <日銀追加緩和の円安効果が限られる訳> そもそも、日銀の量的質的金融緩和(QQE)に、円を押し下げる効果はあるのだろうか。確かに、国際決済銀行(BIS)などが公表する一般的な円の名目実効相場のチャートをみれば、2012年9月ごろを頂点として、2015年半ばにかけ、ほぼ一貫して円安が進んだ構図となっている。 ただし、ドルの影響を排除するため、ドルを除く主要通貨を対象として算出すると、最も顕著に円安が進んだのは、第2次安倍政権発足前後からQQE開始前後までにおおむね限られており、実際のQQE(マネタリーベースの供給)開始以降は、ほぼ横ばい圏での推移となっている。 2014年10月末のサプライズ緩和を受け、当初こそ改めて円全面安が進んだが、それも1カ月足らずで収束し、その後、反発。そして、昨年半ば以降は、円がほぼ全面高となった経緯にある。このことが示唆するのは、そもそもQQEという政策に、円安効果が必ずしもあるわけではないということだ。 結局、QQEといった金融緩和で円安が進むかどうかのカギは、その政策によって経済が好転し、予想実質金利が低下。それが、円安、株高をもたらすという市場の期待に働きかけることができるかどうかにかかっている。逆に、大胆な金融緩和であっても、その政策効果に、各経済主体や市場が疑念を抱くと、円安を演出する効果が限られるどころか、これまでの反動や失望から円高を招く可能性が高まろう。 これが、マイナス金利政策導入後、かえって円高が進んだ背景と言える。各経済主体や市場参加者の多くは、長期金利がマイナス圏にまで沈んでも、この政策によって、日本経済が好転する道筋を思い描けていないのだろう。 実際、日銀が発表した貸出・預金動向速報でも、マイナス金利政策導入決定後の2月、3月とも、総貸出平残(銀行と信金合計)は前年比でみてそれぞれ2.2%増、2.0%増と1月の2.4%増から勢いが鈍化。期待インフレが一向に盛り上がらない動きと合わせ、予想実質金利の低下による政策波及効果を指摘する日銀の説明に、市場の期待感を突き動かす説得力はないようだ。 日銀は、いずれ追加緩和を講じる可能性が高いが、「日銀の緩和=円安」との期待感が大幅に後退した可能性が高く、円安効果は限定されよう。 <105円割れの時期、2017年より早まる可能性> 一昨年のQQE拡大以降、ドル高円安の持続性を疑問視してきた当方にとって、足元のドル安円高の動きに違和感はない。ただ、速度や値幅は予想以上だ。ここまで、105円割れは2017年以降とみてきたが、その時期が早まる可能性は高まったと言えよう。 前回2月にも指摘した通り、経済協力開発機構(OECD)の購買力平価や実質金利差による推計などに照らし、現在のドル円の適正水準をおよそ105―110円圏とみており、本来ならそろそろ止まってもいい頃合いだ。ただし、75円台から125円台に至る約50円もの上昇をみた後、反落してきた相場だけに、かなりのエネルギーを貯め込んでいる可能性が高く、オーバーシュートも想定せざるを得ないだろう。 相場が大きく変動するのは、期待が裏切られたり、前提が崩れ去る場合だ。その点、ここから改めてドル円がさらに下落するとすれば、それは相対的にみて好調と映る米経済の変調を市場が認知し始める場合だろう。 米アトランタ地区連銀が公表している国内総生産(GDP)成長率のリアルタイム推計「GDPナウ」によると、米国の第1四半期の実質GDPの伸びは、前期比年率換算で0.3%増にとどまる見通しとなっている(13日時点)。労働市場も、まずまずの数字を連発する雇用統計を横目に、幅広い指標から構成される労働市場情勢指数は、年初来3カ月続けてマイナスを記録。これは、2009年7月に今回の景気回復が始まってからでは初めてのことだ。 当方は、米国の景気後退といった極端に弱気の見方をしているわけではないが、米経済が成熟期に差し掛かり、徐々に勢いを失うと予想している。この傾向が一段と鮮明になれば、ドル105円割れの現実味が高まり、レンジはさらに切り下がろう。 *内田稔氏は、三菱東京UFJ銀行グローバルマーケットリサーチのチーフアナリスト。1993年、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、国内外で一貫して外国為替業務に携わる。J-money誌の東京外国為替市場調査ファンダメンタルズ分析部門では2013年から15年まで個人ランキング1位。 http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-minori-uchida-idJPKCN0XB0LF?sp=true アベノミクス「こんなはずでなかった」−新たな景気対策求める声も Enda Curran 2016年4月14日 16:26 JST こんなはずではなかった。安倍晋三首相率いる政権が2013年、思い切った金融・財政刺激策を打ち出した際、ショック療法は経済を浮揚させ、長年にわたるデフレとの闘いにとどめを刺すはずだった。 それから3年余りがたち、「アベノミクス」として呼ばれる政策はこれまでで最悪の様相を呈し、景気てこ入れに向けた取り組み強化を求める声が一部から上がっている。自民党の山本幸三衆院議員は13日、新たな財政刺激策や日本銀行による追加緩和に加え、企業利益の蓄積の活用を促す内部留保課税の検討も呼び掛けた。 日銀の原田泰審議委員は同日、景気回復の弱さは否定できないとして、今月の金融政策決定会合で日銀がマイナス金利の幅を拡大する可能性を排除しなかった。また、政府が先月開いた国際金融経済分析会合では、ノーベル経済学賞受賞者であるジョセフ・スティグリッツ氏やポール・クルーグマン氏らがそれぞれ来年予定されている消費税率引き上げの見送りを提言。実質的に増税延期は決まったも同然と受け止める向きもある。 消費増税の見送り、山本氏が真水で10兆円規模とした財政刺激策、日銀の追加緩和が現実となれば、景気停滞への逆戻りの兆しが色濃くなる中で、安倍政権はトリプルヒットの道具を手にすることになる。 仮にこうした財政拡大策を講じることになれば、安倍首相は5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)開催時に一連の措置に言及することも可能となるわけだ。 原題:With Abenomics Withering, Japan Hears Calls for Fresh Action(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-14/O5M3XH6S974A01 Business | 2016年 04月 14日 15:21 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 3月首都圏マンション発売戸数、前年比39.6%減=不動産経済研究所 [東京 14日 ロイター] - 不動産経済研究所が14日発表したマンション市場動向によると、3月の首都圏マンション発売戸数は前年比39.6%減の2693戸となった。4カ月連続で減少した。 首都圏のマンション契約率は67.6%と、好不調の分かれ目とされる70%を2カ月ぶりに下回った。 1戸当たりの価格は前年比8.7%上昇し、5638万円だった。マンション販売在庫数は前月末比80戸減少し、6039戸となった。 4月の発売戸数について、同研究所は2500戸と見込んでいる。 http://jp.reuters.com/article/condominium-idJPKCN0XB0DJ
海外勢ことし初の日本株現物買い越す、実需売り一巡も−4月1週需給 長谷川敏郎、北中杏奈 2016年4月14日 16:29 JST
海外投資家が週間ベースでことし初めて日本株現物を買い越した。年初からの大幅な売り越し基調に変化が見えたことは、今後株式需給の好転期待につながり、年初来パフォーマンスが主要国で突出して悪い日本株を見直す動きが広がる可能性もある。 東証が14日午後に発表した投資部門別売買動向(東京・名古屋2市場の1、2部等合計)によると、海外勢は4月1週(4−8日)の日本株市場で現物株を差し引き327億円買い越した。買い越しは2015年12月5週以来で、14週ぶり。3月5週まで海外勢は1998年6月に記録した16週連続以来の連続売り越しとなっており、この間の累計売越額は5兆127億円に達していた。 みずほ証券エクイティ調査部の三浦豊シニアテクニカルアナリストは、「年初から続いていた海外長期投資家の日本株売り、実需売りは峠を越えた。今週は現物、先物とも買い越しとみられ、それが日本株の底打ちにもつながっている」と分析。今後も、為替動向次第でヘッジファンドなどの売買は予想されるが、「世界的にリスクオンの流れの中ではこれ以上日本株を実需で売ることはない、ということだろう」と言う。 一方、大阪取引所が同日公表したデータによると、海外勢は4月1週に先物(ミニ含む日経225、TOPIX)では1672億円を売り越した。 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-14/O5M4TU6KLVR401
FX Forum | 2016年 04月 14日 16:15 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:投機主導の円高は短命、ドル円反発へ=鈴木健吾 みずほ証券 チーフFXストラテジスト [東京 14日] - 新年度入り早々、ドル円は年初来安値を更新し、約1年5カ月ぶりの1ドル=107円台までドル安円高が進む展開となった。この動きについては、3月29日にイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が講演でハト派的な発言を行ったことによって米利上げ期待が大きく後退し、ドル安円高圧力につながったとの解説がよく聞かれる。 確かに同日のイエレン発言をきっかけにドル円の短期トレンドは下落方向に転換しており、これがその後のドル安円高の「きっかけ」となった。しかし、107円台までの下落をみると、必ずしも「米利上げ期待の後退を背景としたドル売り」とは言えないようだ。 上記イエレン発言のあった3月29日から翌週の週末4月8日にかけて、ドル円は113円台後半から一時107円台後半まで急激なドル安円高が進んだが、この間の、当社の主要取り扱い通貨12通貨の騰落率を並べると、面白い結果となった。 ドルよりも英ポンドやメキシコペソの方が下落しており、豪ドルも対ドルでほとんど動いていない。12通貨のなかでドルは、どちらかと言えば弱い通貨であるものの、決して「ドル全面安」という状況ではない。 一方で同期間に群を抜いて上昇した通貨がある。円だ。つまり、113円台から107円台への下落は、「米利上げ期待の後退を材料としたドル売り」ではなく、円買いだ。実際のところは、「米利上げ期待の後退をきっかけに、ドル円が心理的節目110.00円などを下抜いて、約1年5カ月ぶりの安値を断続的に更新する動きとなり、この流れに介入の可能性は低いとみた投機筋が参戦。急激な円高を示現した」という動きだったのではないか。 したがって、米国の金融政策動向は建前やきっかけに過ぎず、実際にはテクニカルなトレンドやそれに便乗した投機筋の動きが直近の急激な円高を演出している可能性が高い。 実際、4月1日の日銀短観の悪化や米雇用統計の良好な内容をほぼ無視してドル安円高が進んだことや、投機筋のポジション動向をみる際によく参照される、シカゴ国際金融市場(IMM)の非商業部門の円買いポジションが過去最高水準に積み上がっていることとも整合的だ。このような動きが主体だとすれば、先行きを占ううえでテクニカルなターゲットを知ることは重要となる。 また、当局にとっては投機的な動きをけん制するうえで、介入というカードを温存する(かに見せかける)ことも重要となるだろう。 <コアレンジは引き続き1ドル=109―119円> テクニカルなサポートポイントとしては105円から106円近辺の水準が非常に重要だ。これらのポイントは2月19日の当コラムでも指摘した通り、ヘッド・アンド・ショルダーやフィボナッチ級数などのテクニカル分析から導かれる。 加えて、年間値幅から考えても妥当な線だ。2000年以降のドル円相場における高値と安値の平均値幅は約15.90円、同かい離率は約14%。今年の高値は今のところ1月29日の121.70円だが、これに値幅を当てはめると、105.80円、下落率を当てはめると104.66円になる。 さらに、経済協力開発機構(OECD)が算出する2015年の購買力平価は106.043円、世界銀行が算出する2014年の購買力平価も104.72円となっており、ファンダメンタルズからも妥当な水準だ。ドル円相場は下落トレンドのなか、上記105―106円水準をターゲットとした動きになっているとみられる。 しかし、日本当局にとってこの水準へ円高を容認することはリスクが大きい。第1に、相場に勢いがつけば、必ずしもこの水準で止まるとは限らない。105円水準を下抜けた場合には、次の心理的節目である1ドル=100.00円近辺を目指す動意が強まる可能性がある。 また、105円で止まったとしても、ダメージは大きい。4月1日に公表された日銀短観によれば、大企業製造業の2016年度の想定為替レートは117.46円。ここから10%円高になった水準が105.71円となる。我々の試算によれば、10%の円高は東証1部上場銘柄の経常利益を6%程度下押し、これを反映して株価も下落するだろう。加えて、円高は輸入物価の下落を通じてデフレ圧力をかける。 日本の現状を確認すると、10―12月期の国内総生産(GDP)はマイナス成長であり、物価も低迷している状況だ。このうえさらに円高、企業業績悪化、株価下落、デフレ圧力となれば、消費増税どころではなくなる。直近では5月の主要国首脳会談(伊勢志摩サミット)に先立ち、安倍首相が米国を訪問してオバマ大統領と会談し、「先進7カ国(G7)が世界経済をけん引していかなければならない」と述べたとされる。サミットのホスト国としての面目も丸つぶれになりかねない。 このような状況下、円高阻止に向けて麻生太郎財務相や菅義偉官房長官などが口先介入を繰り返している。実際にできるかどうかよりも、介入というカードは存在している姿勢を一貫することが投機筋に対する一定の歯止めとなるだろう。4月14日から15日にかけて行われる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも介入を全否定する流れだけは避けたいところだ。 もっとも、前述の通り、直近みられたドル円の急激な下落がファンダメンタルズを反映しているというよりも、テクニカルなトレンドに投機筋が便乗したものだとすれば比較的短命に終わる可能性が高い。 言うまでもないが、上記の通り日本経済の状況は非常に厳しく、日銀が検討しているのはマイナス金利拡大を含む追加緩和。一方で米国は緩やかな景気回復が継続しており、FRBは中国などの外部要因を配慮しつつも、検討しているのは利上げだ。この傾向は目先だけでなく数年単位で続く可能性があり、結果として金利差拡大を通じて中長期的にもドル円をサポートするだろう。 目先も、日銀に対しては4月もしくは7月の追加緩和の有無、FRBに対しては6月の利上げの有無に対する注目度が高い。投機筋のポジションも積み上げ余地が減少するなか、口先介入などによって時間を稼ぎ、過熱感が払しょくされていけば、早晩、ドル円は節目となった1ドル=110円を回復するだろうとみている。 基本的にはこれまで同様、109―119円といったレンジをコアとした見方を継続しており、一時的には投機的な動意の強まりなどによってこのレンジを外れることはあっても、あくまで一時的にとどまるだろうと考えている。 *鈴木健吾氏は、みずほ証券・投資情報部のチーフFXストラテジスト。証券会社や銀行で為替関連業務を経験後、約10年におよぶプロップディーラー業務を経て、2012年より現職。 http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-kengo-suzuki-idJPKCN0XB0GK Column | 2016年 04月 14日 17:27 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:デフレとの戦いに参戦したシンガポール Rahul Jacob [香港 14日 ロイター BREAKINGVIEWS] - シンガポール経済は、これまで度々、混乱とは無縁のアジアのオアシスと思われてきた。ところが、この日、思わぬところから刺激的なニュースが飛び込んできた。 シンガポール金融管理局(中銀)は14日、シンガポールドルの実効為替レートの誘導方針を従来の「緩やかかつ段階的な上昇」から「上昇率ゼロ」に変更。金融政策を緩和する方針を示した。 これは同国が、海外で繰り広げられているデフレとの戦いに参戦したことを意味する。 シンガポールは為替レートを金融政策の手段としている。「上昇率ゼロ」は、2008年の世界的な金融危機の際にも導入された政策で、以前は景気後退をイメージする市場関係者も多かった。 一見すると、シンガポール経済に差し迫った不安材料はない。財政収支は黒字で、失業率は低く、海外の政策当局から見れば、うらやましい限りの状況にみえる。 しかし、一般庶民は数カ月前からデフレを実感している。今年2月には政府が年間の物価上昇率を0─マイナス1%と予測した。中銀が指標とする家賃と輸送費を除くインフレ率も、2%を下回る状況が続いている。 景気にも陰りが見え始めている。第1・四半期の国内総生産(GDP)は、季節調整済みで前期比年率横ばい。国内経済の大半を占めるサービス部門の経済活動は3.8%縮小した。 株式市場の低迷や不動産価格の下落にも見舞われるなか、DBSは今年の経済成長率が1.5%にとどまると予想。下方修正もあり得るとしている。 シンガポール経済は表面上、平静を保っているが、不安材料には事欠かない。 *筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。 http://jp.reuters.com/article/column-singapore-deflation-idJPKCN0XB0OG シンガポール・ショックでアジア通貨が軒並み下落、他国も追随の観測 Netty Ismail、Lilian Karunungan 2016年4月14日 15:19 JST シンガポール当局が予想外の金融緩和に動いたことを受け、14日の外国為替市場ではアジア・太平洋諸国の通貨が軒並み下落。域内の他の国も緩和で追随するとの観測を背景にニュージーランド(NZ)ドルやマレーシア・リンギット、インドネシア・ルピアがシンガポール・ドルと共に安くなった。 シンガポール通貨庁(MAS、中央銀行)は同日、為替管理政策(金融政策)の定期見直しの結果、シンガポール・ドルの為替レートについて、ゼロ%上昇の中立的な政策スタンスに移行すると発表した。 ロンドン時間午前6時51分(日本時間午後2時51分)現在、シンガポール・ドルは米ドルに対して1.2%安の1米ドル=1.3667シンガポール・ドル。リンギットは0.9%安の同3.9088リンギット、ルピアは0.4%安の同1万3210ルピア。NZドルは1.2%安の1NZドル=0.6838米ドル。 原題:Singapore Surprise Policy Easing Spurs Asia-Wide Currency Rout(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-14/O5M0X76KLVRK01 シンガポール、ゼロ%通貨上昇に政策を転換−08年の金融危機以来 David Roman 2016年4月14日 09:00 JST 更新日時 2016年4月14日 15:57 JST シンガポール通貨庁(MAS、中央銀行)は14日、為替管理政策(金融政策)の定期見直しの結果、シンガポール・ドルの為替レートについてゼロ%上昇の中立的な政策スタンスに移行すると発表し、予想外の金融緩和に踏み切った。これによりシンガポールは、世界的な金融危機の深刻化でリセッション(景気後退)に見舞われた2008年10月にかつて導入した為替政策に回帰することになる。 同国の1−3月(第1四半期)国内総生産(GDP)が前期比ゼロ成長となったことを受けて、MASは自国通貨上昇を容認する政策を転換した。ブルームバーグが実施したエコノミスト調査では、18人中12人が金融政策の据え置きを予想し、緩和を見込んでいたのは6人にとどまった。シンガポール・ドル相場は、MASの発表を受けて下落した。 MASは発表文で、「昨年10月の金融政策の見直しでの想定と比べると、16年のシンガポールの経済成長はより緩やかなペースになると予想される。コアインフレもこれまでの予測よりも緩やかな上昇になると考えられる」と説明した。 ウエストパック銀行の通貨ストラテジストのショーン・キャロー氏 (シドニー在勤)は「世界的な金融危機後の設定に政策を戻すことによって、MASは強いメッセージを発した。今回のサプライズな動きは、アジア・太平洋地域の通商取引の先行きに対する悲観的な見方を反映している」と電子メールでコメントした。 シンガポールでは昨年10月以降に銀行融資が毎月減少するなど、世界的な景気下降や中国経済の減速に伴う影響が表れ始めている。シンガポール・ドルの対米ドル相場は一時0.9%下落し、現地時間午後0時20分(日本時間同1時20分)時点で1米ドル=1.3633シンガポール・ドル。 シンガポール通産省が14日発表した1−3月のGDP速報値は前期比年率横ばいとなり、ブルームバーグが調査したエコノミスト12人の予想中央値と一致した。前年同期比では1.8%増(予想は1.7%増)。サービス業は前期比年率3.8%減と、15年1−3月以来のマイナスに落ち込んだ。 原題:Singapore Adopts 2008 Crisis Policy as Growth Grinds to Halt (1) Singapore Eases Monetary Policy as Economy Grinds to a Halt(抜粋)
英中銀:全会一致で据え置き決定−「Brexit」問題が成長の重し Scott Hamilton 2016年4月14日 20:16 JST
イングランド銀行(英中央銀行)は14日、政 策金利据え置きを発表した。同時に公表された金融政策委員会 (MPC)の議事録によると、決定は全会一致だった。欧州連合 (EU)離脱(「Brexit」)をめぐる国民投票の予定が既に、成 長の重しとなっている可能性があるとの当局者らの認識を議事録が示し た。 中銀は政策金利を過去最低の0.5%で据え置いた。Brexitに ついては前回に比べ論調を強め、資産価格とポンド相場に「大きな影 響」を与えている公算があるとしている。 原題:BOE Says Brexit May Weigh on Growth as Key Rate Kept at 0.5%(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-14/O5MEX86KLVRG01
ヘッジファンドもロンドン離れ、「Brexit」不安−業界縮小も要因 Jack Sidders、Nishant Kumar 2016年4月14日 17:10 JST
ロンドンの中心部でヘッジファンドとプライベートエクイティ(PE、未公開株)投資会社が使っているオフィス面積が1−3月(第1四半期)に2012年初め以来最小となった。仲介会社のクシュマン・アンド・ウェイクフ ィールドがデータを公表した。 同社のセントラルロンドン調査責任者、エレイン・ロサール氏によれば、ロンドンでは4年にわたりこうした代替投資会社のオフィス需要が増えてきたが、世界の成長鈍化や規制強化でファンドの新規設立が減っていることに加え、英国の欧州連合(EU)離脱(「Brexit」)をめぐる不安がロンドン離れを引き起こしているもようだ。 クシュマンのウェストエンドのオフィス仲介責任者アンドルー・タイラー氏は「現在はある程度の慎重さが見られる。賃借を考えているところもBrexit国民投票などの結果を見極めようとしている」と話した。 1−3月のヘッジファンド・PE投資会社によるロンドンのオフィス専有面積は8万8000平方フィート(8175平方メートル)と前年同期の約16万平方フィートから減っていた。 ユーリカヘッジのデータによれば、欧州のヘッジファンド業界は昨年、少なくとも15年ぶりに縮小した。1−3月は閉鎖ファンド数が新規設立数を約2対1の割合で上回った。 原題:Hedge-Fund Demand for London Offices Drops to Lowest Since 2012(抜粋) 英RBS:消費者向け銀行部門で600人削減と支店閉鎖を計画−労組 Richard Partington 2016年4月14日 19:47 JST 英銀ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)は国内の消費者向け銀行部門で約600人を削減するとともに、一部支店を閉鎖する計画だと、労働組合が明らかにした。 労組のユナイトの発表によると、RBSはロンドンとイングランド南東部で約200人、東部や中部、北部でさらに400人を減らす計画。また32支店前後を閉鎖するという。RBSは顧客の需要の変化に「適応」し、将来にわたり確実に事業を継続できるようにする必要があると、広報担当者が説明した。 ロス・マキューアン最高経営責任者(CEO)は公的支援を受けた2008年以来となる復配を目指し、大規模な人員削減や資産売却を進めている。 RBSの英国とアイルランドの従業員数は昨年末で約8万7800人、そのうち個人向けと法人向けを合わせた銀行部門は約2万7100人。 600人の削減計画についてロイター通信が先に報じていた。 原題:RBS to Cut 600 Retail-Bank Jobs, Close Branches, Union Says (1)(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-14/O5MC6P6KLVRL01
ユーロ圏:3月のインフレ率変わらず−速報値から上方修正 Marcus Bensasson 2016年4月14日 18:42 JST
ユーロ圏では3月の消費者物価が先の見積もりから改定されて横ばいとなった。域内の物価下落が一時的だったことを裏付ける形となった。 欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)が14日発表した3月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)改定値は前年同月比横ばい。速報値は0.1%低下だった。2月は0.2%低下していた。 ユーロ圏のインフレ率は2013年以来、欧州中央銀行(ECB)が目安とする2%弱を下回り続け、原油安による物価下落の影響を打ち消すほどの景気回復を果たせていない状況にある。ECBは先月発表した追加利下げなど新たな政策パッケージの一環として、今月から月間の資産購入額を800億ユーロとし、これまでの600億ユーロから拡大した。 変動幅の大きい食料品やエネルギーなどを除いた3月のコアインフレ率改定値は1%と、速報値から変わらず。2月の0.8%からは加速した。 原題:Euro-Area Prices Unexpectedly Stagnate in March After Revision(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-14/O5M9W06S972E01 謎に包まれた中国株式市場の「キング」−政府系巨人の取引明らかに Fox Hu 2016年4月14日 12:18 JST 中国企業各社の年次報告書で実態が見えてきた 銀行や国有企業、消費関連銘柄を選好−小型株は避ける
中国金融界は政府系の巨大投資主体、中国証券金融を「王(キング)」と呼ぶ。この中国証券金融は、世界2位の中国株式市場を動かすとてつもない力を持つ。 中国当局は昨夏の株式相場急落を受けて4800億ドル(現行レートで約52兆5000億円)超の資金を中国証券金融に注入したが、その投資方針は謎に包まれていたため、その戦略に追随しようとする投資家や空売り投資家の間で臆測が飛び交っていた。しかし、中国企業の年次報告書で開示を義務付けられた株主情報をまとめたところ、中国証券金融の取引実態に関してこれまでで最も詳細な姿が明らかになった。 各社の届け出は、中国証券金融に付いた「キング」のニックネームが決して大げさではないことを示している。証券金融は中国の大企業ほぼ全てを含む600社余りで、上位10位以内の株主となっている。ベンチマークにおけるウエートが高い銀行や国有企業、消費関連銘柄を多く保有する一方、相対的に市場への影響力が小さい小型株は避けている。証券金融が規律ある投資家であることも分かった。収益性が平均を上回る企業を対象とし、どの企業に対しても投資比率を発行済み株式総数の約3%にとどめている。 ピクテ・アセット・マネジメントの中華圏株式責任者ポーリーン・ダン氏(香港在勤)は「これで中国政府の戦略をもう少し深く知ることができる」と述べた。 原題:China’s Mysterious Stock-Market King Reveals Its Trading Secrets(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-14/O5LPSL6JTSFK01
中国株:続伸、国内経済安定化の兆しで−テクノロジーや消費関連高い Bloomberg News 2016年4月14日 13:30 JST 更新日時 2016年4月14日 18:01 JST 上海総合指数は約3カ月ぶり高値で終了 香港市場ではH株が0.5%高、ハンセン指数は0.9%高 14日の中国株式相場は続伸。上海総合指数は約3カ月ぶりの高値で取引を終了した。中国経済が安定化しつつあるとの楽観的な見方が広がった。 上海総合指数は前日比0.5%高の3082.36で終了。この日の大半は前日終値を挟んでもみ合いの展開となった。CSI300指数は0.4%高で引けた。 ソフトウエアメーカーの北京神州泰岳軟件(300002 CH)と調味料メーカーの佛山市海天調味食品(603288 CH)がそれぞれテクノロジー株と消費関連株の上昇を主導した。金属・原油相場の下落に伴い、素材株とエネルギー銘柄の回復は足踏みした。 華西証券の魏?アナリスト(上海在勤)は、「中国経済は現在回復モードにあるため、株価の反発にはファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)の支えがある。ただ、今後は若干相場の反転があるだろう」と指摘。「商品株とエネルギー銘柄はここ数年は低迷していたため、経済の安定化や過剰生産能力抑制に向けた政府の取り組みをめぐるニュースは、これらの銘柄のバリュエーション回復を最初に後押しするだろう」と述べた。 香港市場ではハンセン中国企業株(H株)指数が0.5%高で終了し、ハンセン指数は0.9%高で引けた。 原題:China’s Stocks Rise for Second Day on Signs of Economic Recovery(抜粋) China Stocks Rise to Three-Month High on Signs of Growth Pickup(抜粋) 最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-14/O5LW2Q6JTSEJ01
中国ハイテク業界を揺り動かす「ポスト90年世代」 天津大学で開かれた就職説明会に集まった女子学生(3月7日、天津市) By LI YUAN 2016 年 4 月 14 日 13:53 JST 昨年9月にお見合いサイトの「マリーユー(MarryU)」に入社したフー・ヨンガンさん(26)は、その後間もなく行われた商品開発会議で、同社の創業者であるファン・ジェン最高経営責任者(CEO、38)と衝突した。 ファン氏が、ユーザー(Aさん)が他のユーザー(Bさん)のプロフィールのページにある「チャット」ボタンをクリックすると自動的にBさんにあいさつが送られるシステムを提案したのに対し、フーさんは、その機能は会話を始めた側のAさんを不誠実に見せる恐れがあると考えた。その結果、AさんがBさんから返事をもらえる可能性を低くしてしまいかねないと言うのだ。2人の言い争いは、大声を上げ机をたたいたりする事態にまで発展した。 ふたりはフーさんが入社して以降、10回以上このような言い争いをしている。ファン氏は杭州のシリアルアントレプレナー(連続起業家)だ。同氏は、最初はフーさんがあまりにもぶっきらぼうで頑固だと思ったが、その率直さと情熱を高く評価するようになった。ファン氏はフーさんをプロジェクト管理の責任者にし、何度も昇給した。 ファン氏は「わたしは、自分が命令を出す人間だと考えるのをやめた」と話している。そして、ある従業員を最近解雇したことを明かした。あまりにも「イエスマン」であることが分かったからだという。 フーさんは、ファン氏との言い合いのときにプレッシャーを全く感じなかったわけではないという。だが、自分がファン氏よりも問題をよく理解していると思い、意見を言わないといけないと思ったと述べた。 ミレニアル世代(一般的に1980年代および90年代に生まれた人と定義される)は、米国などで企業文化を揺り動かしている。だが、中国では、過去数十年の間に社会が急激に変化しただけに、世代間の違いが一段と大きい。 中国では、多くの変化のきっかけになっている層は、1990年ないし同年より後に生まれた「ポスト90年」世代だ。この世代は一人っ子政策のおかげで、ほぼ全員、家族に唯一の子供として育った。彼らは1989年の天安門事件の後に生まれた世代であり、インターネットの普及とともに成長してきた世代でもある。 ポスト90年世代は、貧困や厳しい社会統制に苦しんでいた親たちの世代よりずっと居心地のいい環境で育った。「China’s Millennials: The Want Generation(仮訳「中国のミレニアルズ:要求する世代」)」の著者であるエリック・フィッシュ氏によると、彼らは前の世代よりオープンで、反抗的かつ個人主義的であるほか、権威者に挑みたがる傾向がある。 同氏によると、彼らは80年代生まれの人と比べても、かなり違うという。中国では、90年代に急速に生活水準が向上しハイテク製品が普及したからだ。例えば1995年生まれは、1985年に比べ経済規模が2倍以上になった国に生まれたのだ。彼らの親の世代の育った世界とは「全くかけ離れている」と同氏は指摘する。 中国企業には総じて厳格なヒエラルキー(ピラミッド型階層)構造と企業文化があった。上司が部下から異論を唱えられることはまれで、職業的な成功は命令を遂行するか否かによって決まるという文化だ。フーさんのように公然と上司に挑むことは、旧世代の中国人従業員には考えられないことだっただろう。 年かさのハイテク企業幹部の中には、若い従業員に対して伝統的なアプローチ、つまり上意下達が使えないことを認識し始めている向きもいる。こういった若い従業員は意見を聞いてもらいたがるし、上司からの評価より個人的な達成感を重視する。 ベンチャー投資会社、創新工場(China’s Innovation Works)が中国のハイテク新興企業22社の従業員160人を対象に実施した調査によると、ポスト90年世代の従業員は、5歳ないし10歳年上の人々よりも、ユーザーの満足度や個人的な能力開発を自らの原動力にしている部分がはるかに大きいという。 同社が新興企業のCEO30人を対象に実施した調査によると、CEOたちは若い従業員が「天使」であると同時に、「モンスター」でもあると考えている。つまり、若い従業員は破壊的なイノベーションのけん引役になり得るが、他方でマネジメント上の大きな難題をもたらすという。若い従業員は残業をしたがらず、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)を重視するほか、仕事への熱意が持続しないことが多いからだ。 関連記事 中国の一人っ子政策廃止5つのポイント 中国で進む高齢化、生産性の伸び鈍化も顕著 労働力確保に苦しむ中国の製造業、若者はサービス業に http://jp.wsj.com/articles/SB10650221970313844862704582005071526622602 中国、世界の金融システムを今も脅かす理由 最近の中国市場の落ち着きは長続きしない 中国国旗(手前)、新しい100元札のデザインを説明するポスター(1月、北京の銀行) By KEN BROWN 2016 年 4 月 14 日 13:52 JST 中国の金融市場はここ数カ月落ち着いているが、今後もその状態が続く公算は小さい。中国市場の混乱が、いまだに脆弱(ぜいじゃく)な世界の金融システムに飛び火する可能性はかつてなく高まっている。 昨夏まで、世界の大半の人々は中国の市場や銀行のことをあまり気にかけていなかった。重視されていたのは、中国の工場の生産量や、銅や鉄鉱石の輸入量だった。 こうした状況は、中国政府が人民元の切り下げに失敗した昨年8月に変わった。今年1月には中国株が急落し、世界中に影響を及ぼした。 国際通貨基金(IMF)が先週公表した国際金融安定性報告書を監修したガストン・ジェロス氏は「このような事態がもっと起きる可能性が高い」と述べた。IMFは中国と世界の金融システムの関連性が今後、大いに強まると予想している。 もっとも気掛かりなのは、中国が世界の市場で引き起こした大混乱を投資家がすぐに忘れることだ。中国は今も成長エンジンで巨額の利益を生み出すことができるという考えは、投資家にとって危険である。 中国は国内市場が落ち着いている間に、M&A(合併・買収)と巨大な債券市場の開放を通じて世界の金融システムへの影響力を強めた。投資家も中国のワイルドな株式市場に再び目を向けている。一方、中国にとって極めて重要な経済改革はなかなか進んでおらず、さらなる金融市場(特に人民元相場)の大変動に見舞われる可能性が高まっている。 M&Aについては、中国企業が今年になって合意した海外買収案件の取引額は967億ドル(約10兆5700億円)と、昨年1年間の合計額(1069億ドル)に迫っている。今年の最大規模は、中国の安邦保険集団が米ホテルチェーン大手スターウッド・ホテルズ・アンド・リゾーツ・ワールドワイドを買収しようとした案件だったが、安邦は買収を断念した。 中国企業がホテルチェーンを買収することに大きな危険はない。だが安邦は保険会社を次々と買収しており、下手をすると夜によく眠れないどころではすまなくなる恐れがある。スターウッド買収のネックの一つは、安邦の財務の透明性が欠如していたことで、格付け会社が同じ懸念を表明した。 安邦は昨年11月、米国の指数連動型年金販売大手フィデリティ・アンド・ギャランティー・ライフを15億7000万ドルで買収することで合意。先週は韓国の保険会社の買収で合意した。 (グラフ左上から時計まわりに)上海総合指数、人民元の対ドルレート、海外からの中国向け銀行融資額(緑:融資と預金、青:負債、黄:その他)=単位:兆ドル、中国の債券市場の規模 (緑:国債、青:社債、黄:商業銀行債券)=単位:兆ドル 安邦は現在、複合企業の復星集団に代わって中国の海外買収の担い手となっている。復星は昨年までの2年間、計100億ドルを投じて海外企業を相次いで買収したが、今年に入ると会長が中国当局による取り調べで一時姿を消したこともあってM&Aから手を引いた。会長が行方不明になったことを受けて、復星関連の債券と株式の価格が下落し、同社はその直後に2件の海外買収を中止した。 中国の株式・債券・為替市場は長年、海外投資家に門戸をほぼ閉ざしていた。これが防火壁となって中国市場の浮き沈みから世界の他の地域を守っていた。 この防火壁もなくなりつつある。中国は信用膨張がもたらすリスクを分散させるために、6兆7000億ドル規模の世界3位の債券市場を開放した。 中国では格付けと破産保護体制が当てにならないものの、利回りを追い求める多くの欧米投資家はチャンスがあれば債券を購入すると話す。チャンスはこれからいくらでもありそうだ。IMFによると、中国の債券市場は過去5年間、年22%のペースで成長している。 中国は債券市場を開放する前に、海外投資家による株式購入と人民元取引を条件付きながら解禁した。資本市場の自由化に向けた取り組みの一環だった。だが債券市場の開放には別の目的がある。膨大な債務への対処を海外投資家に手伝ってもらうことだ。 中国と世界の金融システムの関わりが深まっている中で、これは問題だ。中国では安定と政治的目標が長年、金融市場の実態を見えにくくしてきた。中国は国内市場のリスクを世界に分散させたいと考えている。しかし中国市場はわれわれが知っている市場とは違い、中央政府のための政治ツールである。 中国の金融市場を抜きにしても、世界の金融システムは銀行を通じて中国に対する多大なエクスポージャーを抱えている。IMFによると、中国向けの銀行融資額は昨年1兆ドルに達し、2010年の5倍に増加した。 エクスポージャーがこれほど大きいため、中国経済が混乱に陥れば世界の銀行は巨額の損失を被る可能性がある。 人民元の問題もある。元相場が上昇していた時、投資家は元建て債券に殺到し、企業は元建て貿易決済を増やした。元相場の下落で、そうした状況は終わった。 中国は経済成長を維持する必要があることが分かっているが、有効な手段は今のところ借り入れを増やすことだけだ。これは、債券市場のほか、海外に投資している企業、中国国内で融資している銀行にリスクをもたらす。 景気てこ入れ策の一つは元の切り下げだ。もし追加切り下げこそが中国の最大の望みと政府が判断すれば、昨夏の出来事が再現されるだろう。 関連記事 中国政治のもろさ、経済を損なうリスク 中国に迫り来る通貨危機 中国経済、ようやく安定化の兆し https://si.wsj.net/public/resources/images/MI-CP148_UNHEDG_16U_20160413140609.jpg IMF、中国など新興国の企業債務リスクに警鐘
IMFは、中国の1兆3000億ドルに上る社債の発行企業が利払いを利益で賄えないと指摘した PHOTO: BLOOMBERG NEWS By WILLIAM MAULDIN 2016 年 4 月 14 日 07:07 JST 国際通貨基金(IMF)は13日公表した世界金融安定性報告書(GFSR)で、中国や新興国の大企業が抱える債務は国際的な問題に発展し、世界の金融システムを圧迫する恐れがあると警告した。 IMFによると、中国の企業債務総額の7分の1に当たる1兆3000億ドル(約141兆円)分は、利払いを利益で賄えない企業のもので、この問題に対処しなければ銀行は国内総生産(GDP)の7%相当の損失を被りかねない。 IMFのホセ・ビニャルス金融顧問兼金融資本市場局長は、「経済リバランス(再均衡)の進展にもかかわらず、中国では成長減速と収益性低下で企業の健全性が弱まっている」と指摘した。 同時に、ブラジルやロシアの国営企業は資源安と景気後退で打撃を受けている。 ビニャルス氏は「資源価格の急激な下落が企業財務と国家財政の不安定性を増しているため、経済および金融リスクは引き続き高い」と述べた。 新興国の債務拡大と成長鈍化を受け、IMFが示す新興国市場のリスクは2008〜09年の過去最高水準に近づいたうえ、世界の金融安定性に対する総合的なリスクは7年ぶり高水準にあるとみられる。 IMFはさらに、先進国の銀行が事業モデルや低金利もしくはマイナス金利、資金調達能力を損ないかねない企業評価の低迷といった問題で、収益性が下がり苦境に立たされていると指摘。劣化した事業モデルを持つ銀行は特に欧州でみられるが、こうした銀行が先進国の銀行資産総額の15%を占めていると述べた。 急激な資源安が先進国経済の一部に重しとなっているが、原油生産と鉱業に大きく偏り多様化していない新興国の経済では、影響が一段と鮮明だ。 IMFは「民間の債務水準の高さが与信と銀行に対するリスクを高め、資源関連企業は設備投資を大幅に削減している」と述べた。 また、「価格圧力や過剰生産能力、財務基盤の弱まりに苦しむ業界、すなわち不動産、鉱業および製造業では、債券発行額が高くなっている」と指摘した。 こうした債券により銀行にリスクが及んでいる可能性がある。決済サービスの中国債券信息網のデータによると、商業銀行や保険会社、ファンドは昨年末時点で発行済社債の3分の2を保有していた。 ビニャルス氏は「中国当局はこうしたぜい弱性を認識しており、過剰債務を抱える企業への対応策を導入している」とし、「それでも、このぜい弱性の程度からして積極的な政策対応が求められる」と語った。 関連記事 米地区連銀景況報告:大多数の地区で経済活動が拡大 英国のEU離脱、世界経済に深刻な打撃=IMF FRBのインフレ目標、想定以上に達成近いか ロシア、原油価格上昇で景気回復に期待 https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NN354_0413im_M_20160412193749.jpg
世界経済、リスク山積だが基本的には順調=IMF 国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事(13日) ENLARGE 国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事(13日) PHOTO: YURI GRIPAS/REUTERS By SIMON NIXON 2016 年 4 月 14 日 12:42 JST
国際通貨基金(IMF)が12日公表した最新の「世界経済見通し」には、数々の難局が差し迫っているとの警告、世界にくすぶるさまざまな政治リスク、今ではお決まりとなってしまった見通し下方修正など、悪材料がてんこ盛りだが、根底にあるのは世界経済は順調というメッセージだ。 もっとも、IMFは2016年の世界経済の予想成長率を1月時点での3.4%から3.2%に引き下げた。 これは過去10年の好景気のときに見慣れた水準には届かないものの、2015年の水準よりは少し高い。また、2017年の成長率は3.5%と予想している。IMFの基本見通しによれば、世界経済は新たな危機に見舞われる一歩手前という状況にはない。 ブラジルを筆頭に一部の新興大国は間違いなく今年、深刻なリセッション(景気後退)に見舞われる公算が大きいが、どの国の場合も国内の政治的要因やコモディティー(国際商品)価格の下落が景気悪化の原因であることを踏まえると、あまり影響の波及を心配する必要はないだろう。 一方、米国を中心に英国、ドイツなどいくつかの先進大国では景気は比較的良好で、潜在成長率を上回る成長が続く中、失業率は低くインフレは抑えられている。 事実、ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長によると、米国は今年、「ゴルディロックス(適温経済)」の段階に入る可能性が高い。 何年もの間たびたび心配の種とされてきたユーロ圏でさえ、原油安や低金利を追い風に緩やかな景気回復が続いている。 だからといってIMFが指摘するリスクが現実に存在しないわけではない。 年初に市場が大荒れとなったことで、投資家心理が脆弱(ぜいじゃく)であることがあらためて思い起こされた。今後もちょっとしたきっかけで再び相場が大きく崩れる可能性はある。 債券安と株安が進むと、金融市場が引き締まり借り入れコストは上昇する。そうなれば、経済成長とインフレは自然と減速に向かい、デフレリスクが高まるとともに世界経済は長期停滞に陥りやすくなる。 低インフレからの脱却に向けた各国中央銀行の政策は限界に達しつつある、というIMFの警告は明らかに正しい。 政治的、地政学的リスクが拡大しているとの警告ももっともだ。「内向きの国家主義」や遅い賃上げペースおよび所得格差拡大に対する不満を背景に、世界中で自由貿易への反発が高まっていることについてもIMFは懸念を示している。 政治的リスクが特に目立つのは欧州だ。ドイツのショイブレ財務相は先週、反欧州連合(EU)政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が突然勢力を増してきたことについて、責任の半分は欧州中央銀行(ECB)の金融緩和政策にあるとまで発言した。 こうしたドイツの態度は、ECBが責務遂行を放棄していた場合にドイツとユーロ圏に及んでいたはずの影響を考慮していないという点で不当と言えるかもしれない。 一方、世界見通しにとってもっと大きなリスクとなりかねないのが欧州の移民危機や「ブレグジット(英国のEU離脱)」だ。 とはいえ、常に物事を冷静に見ることが重要だ。世界にはさまざまなリスクが存在しているものの、必ずしもリスクが現実のものとなるわけではない。 年初の金融市場の混乱は収まり、中国経済がハードランディング(硬着陸)に向かっているとの懸念も和らいだ。原油相場は落ち着き、13日の米株式市場ではダウ工業株30種平均とナスダック総合指数が年初来高値を更新した。 さらに、不法移民送還に関するEU・トルコ間の合意は今のところ順調に実行されており、欧州に流入する難民・移民の数は急減した。ドイツのメルケル首相の支持率も上昇傾向にある。また、ギリシャと債権団との支援交渉は前進を見せている。 そうは言うものの、IMFの警告の根底にあるのは、世界全体で現在のような緩慢な成長が続けば、長期的に持続可能な景気回復を実現する上で必要な設備投資を加速させることはできないという懸念だ。 ただこうした懸念については、最終的に鍵を握るのは企業や金融市場の姿勢であって、政策担当者らが払拭(ふっしょく)できるものではないかもしれない。 関連記事 IMF、中国など新興国の企業債務リスクに警鐘 英国のEU離脱、世界経済に深刻な打撃=IMF IMF、今年の世界成長率見通しを3.2%に下方修正 https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NN687_EUROFI_M_20160413142848.jpg 株と債券の同時高、警戒すべき理由とは 中央銀行の政策のため歪んでしまった世界で、株と債券の関係は複雑なものとなっているPHOTO: REUTERS By RICHARD BARLEY 2016 年 4 月 14 日 11:13 JST 中央銀行の政策のため歪んでしまった世界で、株と債券の関係は複雑なものとなっている。だが、それにしても今年に入ってからの両者のパフォーマンスには疑問が浮上している。 年初から6週間にわたり株価が下落する一方、債券価格は上昇した。リスク回避志向と世界経済への懸念が強まったうえ、投資家の持ち高がこうした状況に対応するものとなっていなかったことが背景とみられる。2月11日までにS&P500種株価指数は年初と比べ10.5%下落する一方、バークレイズの指数によると米国債価格は平均3.7%上昇、特に長期の25年超の価格は10.75%も上昇した。 しかし、株価はこれが底値だった。S&P500種指数はそれ以来13.9%上昇し、年初を上回る水準へ回復した。にもかかわらず債券価格は依然高止まりしている。米国債は全体で平均3.3%高、長期債も9.1%高にとどまっている。10年債の利回りは年初と比べ0.5%低い。株と債券が連動していないことは明白だ。 確かにこの間、中央銀行の追加策が実施されていた。特に欧州中央銀行(ECB)は金利引き下げ、新たな銀行向け融資の開始、量的緩和の拡大を実施した。ユーロ圏の債券利回りは過去最低付近にあり、これが米国債の利回りを低水準に押しとどめているとみられる。さらに、米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げを急いでいない。 このように株価と債券価格がいずれも上昇している状態は不安をかき立てる。しかし、どちらが正しいか判断するのは難しい。債券利回りは著しく低いが、今後利回りが上昇すると予想した投資家は何回も裏切られている。リスク選好は脆弱なままだ。その一方、インフレは投資家が期待するほど低調ではなく、とりわけ長期債にとっては懸念材料だ。 市場は時にすべての投資家を幸福にする。ただ、それは長続きしないものだ。 ENLARGE 米国株と債券の年初来パフォーマンス(青緑:S&P500種、緑:米国債、灰:残存25年超の米国債) 関連記事 • 市場の気まぐれに悩まされるECB • 米利上げ、年内2回がFOMC投票メンバー大半の予想 https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NN477_bondhe_G_20160413073117.jpg ドルから金に流れるマネー(近藤雅世) 最近の世界の動きで特徴的なのは、ドル安/円・ユーロ高と、それに伴う金・原油高であろう。今年の1月4日を100とした指数では、NY金が4月11日までに+16.9%上昇し、原油価格も+9.8%上昇しているのに対し、ドルインデックスは▲5%と下落している。 株価との比較では金が+16.9%上昇しているのに対しDow平均株価は+2.4%の上昇、上海B株は▲5.2%と下落、日経平均株価は▲14.6%で下落となっている。 先進国通貨は、ドル円が+9.6%円高になり、ユーロ/ドルが+5.3%ユーロ高、英ポンドは▲3.2%安、スイスフランは▲4.8%安である。 BRICS諸国他の主要通貨は、ブラジルレアルが+13.6%、ロシアルーブルが+8.4%、カナダドルが+7.7%、豪ドルが+5.6%、人民元が+1.2%、インドルピーが+0.4%で、ドルの▲4.0%に反比例して、2014年以来のドル高各国通貨安が反転している。 ドル安の主な原因は利上げが見送られたことにあろう。3人の米国地方連銀理事が4月の利上げもあり得ると述べた後で、イエレン議長が、今年は4回の利上げを2回にすると、利上げへの慎重姿勢を示したため、今では4月の利上げはなく、6月以降になるだろうとの見方となっている。ドル安は金や原油高を招く。 金については、World Gold Councilからマイナス金利になると金投資に有利に働くというレポートが出ている。その理由は、 @マイナス金利によって債券価格の上限が限られ、リスクを回避する動きとしての債券投資の妙味が薄れるため、金のセーフヘブンとしての役割が際立つようになる。 A外貨準備を運用する各国政府の運用責任者や、株式投資等で運用するファンドマネジャーにとって、現金化するとマイナス金利が発生する恐れがあり、金の小さなリターンでも良しとし、ましてや価格が上昇するならなお良しとなっている。 B金の保有コストが金利の低下により限定されている。 Cマイナス金利により通貨への投資は、通貨戦争や通貨介入の可能性によりボラティリティーが高くなるため回避され、金投資に資金が向かう。 D中央銀行によるインフレやデフレを制御し、あるいは経済成長を促進するために効果のある選択肢が限られてくるので、債券よりも金を外貨準備として保有する動きが加速する。 などを挙げている。ファンドマネジャーのポートフォリオに占める金の割合は、7.6%?15.7%になるだろうという。(詳細は株式会社コモディティーインテリジェンスの週刊ゴールド4月11日号参照) 一方原油価格は、4月17日に予定されているカタールのドーハにおける産油国会議で1月の生産量をもって生産量を凍結するという決議がなされるかどうかが焦点となっている。三通りの解釈があり、一つはサウジアラビアのムハンマド副皇太子が述べているように、イランが生産凍結に参加しないなら会議には出席しないという会議そのものが流れる可能性。もう一つは、イランに対して参加国が少し譲歩することで会議が成立して、凍結が実施される可能性、この場合イランの生産量をどの水準で妥協するかが問題となる。 三つ目は、会議が成立して生産量が凍結されても、緩和している世界の原油需給に対しての効果は小さく、一時的に価格は上昇するとしても、いずれ供給過剰の重みにより価格は下落するだろうというもの。どの場合も今後原油価格が45ドルを超えて上昇するというムードにはなっていない。むしろ反落がどの程度で収まるか、あるいは少し反発するかという点が議論の的となり、ゴールドマンサックスなどは、弱気に傾いている。 金価格も原油価格も、今後の米国景気次第で6月14〜15日のFOMCにおいて利上げされる環境が整って来れば、ドルは反転上昇し、各国通貨は弱くなり、商品価格の反落する可能性がある。 中国経済の行方 中国については、4月4日発売の週刊エコノミストでその危機的状況が描かれているが、(株式会社コモディティーインテリジェンスの週刊経済指標4月12日号参照)新しくて古い話題ではあるが、いずれ恐ろしいバブル崩壊の嵐が日本企業を襲うものと思われる。 かって旧ソ連邦時代のゴルバチョフは共産主義体制下の非効率な生産活動により、資金的な行き詰まりから国家運営が難しくなり、戦略核兵器削減交渉や、軍備縮小により出費を抑えてペレストロイカ(改革)とグラスノスチ(公開)によって経済・政治体制を立て直そうとしたが、結局旧ソ連邦の崩壊という事態に至った。 習近平国家主席は懸命に言論統制を行い、反対人脈を汚職の名の下に排除して中央集権化を図っているが、経済運営は彼独りではできない。まして昨年8月に青瓦台における会合で長老から輸出の減少を指摘されるや、人民銀行にそれまでの流れの正反対の元安を指示し、その後再び人民元買い支えに戻り、貴重な外貨準備を半年間で▲4000億ドル(約12%)以上減らしている。習近平は経済音痴であると思われ、頭の中は自己の保身、政敵の排除が大半を占めているのであろう。 社会主義の場合競争原理が働かず、共産党の幹部の指示通りに経済が運営される。鉄鋼やトウモロコシの過剰在庫を挙げるまでもなく、人間が予め需要と供給を計画して生産を指示するということは不可能なことに違いない。その対極にあるのが商品先物取引であり、需給や人々の思惑が、生産者の憤りも容赦なく、価格を決めていく。 毛沢東は大躍進政策で2千万人以上の餓死者を出して失敗したが、その轍を踏まないようにケ小平は市場開放を行い、黒猫でも白猫でもネズミを捕る猫は良い猫だとたとえ、先行して裕福になる人々を容認した。その結果貧富の差が極端につき、その収益の分配はスムーズにできていない。こうした状況下で数百万人の失業者が出るとしたら、混乱は想像に難くない。 ただ、いつまで持ちこたえるか、どのような結末を迎えるのかは定かではなく、カタストロフィーは順送りに先延ばしされ、延ばせば延ばすほどその破裂時のダメージは大きくなるものと思われる。 講師紹介 ビジネス・ブレークスルー大学 資産形成力養成講座 講師 株式会社コモディティーインテリジェンス 代表取締役社長 近藤 雅世 講師より寄稿いただいた内容をご紹介しております。 詳しくはこちら その他の記事を読む 中国不良債権残高拡大!問題の規模を探る(大前研一) http://www.ohmae.ac.jp/ex/asset/column/backnumber/20160413-2/ News | 2016年 04月 14日 15:40 JST 関連トピックス: トップニュース
アングル:米レポ市場、3月に「フェイル」多発の意味 [ニューヨーク 13日 ロイター] - 米国のレポ市場で3月に期日までに担保証券の受け渡しができない「フェイル」が急増したため、米金融システム全体に関して何か問題が生じているのではないかとの懸念が高まった。だが、実際は金融危機後の「ニューノーマル(新たな正常状態)」という側面が強そうだ。 米機関投資家やヘッジファンド、不動産投資信託などは日々の取引の資金調達先として5兆ドル規模のレポ市場を頼りにしており、レポ市場が円滑に回らない事態を心配している。支障が起きれば、債券や株式の持ち高削減を余儀なくされてしまうからだ。 フェイルの多発で、世界金融危機の記憶が蘇った市場参加者もいる。当時フェイルの急増は、サブプライムローン問題を受けて信用市場がひっ迫し、金融システムの機能がまひしつつある兆しの1つだと受け止められた。 ニューヨーク連銀や業界のデータによると、3月9日に終わった週のフェイルは総額4560億ドルで、金融危機時の2兆6000億ドル以来の大きさになった。 米国債を担保とするレポ取引は3月初め段階でフェイル件数が全体の約10分の1、金融危機時はこの比率が3分の1だった。 今回は、不振のエネルギーセクターへの与信が過大になっているとみられる一部の金融機関が手元資金に窮している表れではないか、などといった不安がトレーダーの間からは出ている。 しかし今のところ、フェイルが金融システム全体の問題を反映しているという証拠は乏しい。むしろ、一時的な要因と規制強化の動き、流動性低下が絡み合った結果と言える。 キャピタル・アドバイザーズ・グループの調査ディレクター、ランス・パン氏は「懸念されるとはいえ、描き出されているのはレポ市場の特殊な部分だ」と述べた。 3月はいくつかの異例な要素が資金需給の引き締まりをもたらした。例えば外国の中央銀行が比較的発行から日時が経過した米国債を大量に売却し、これらの買い手となった金融機関はいつもよりも多くの資金が必要になった。 ところがこうした古い米国債は新発銘柄に比べて担保価値が低い。一方で短期国債(Tビル)を除いた3月の米国債の新規発行額は前年同月の2640億ドルから1920億ドルに減少し、使い勝手のよい担保玉の不足につながった。 <普段の光景> 3月末時点のフェイルの総額はおよそ1000億ドルとなり、最近の平均並みに落ち着いた。 今月11日の米国債担保の翌日物レポレートは0.45%とやはりこのところの平均水準で、フェデラルファンド(FF)金利の日次平均を0.08%ポイント上回っている。 JPモルガン証券の米金利戦略責任者、アレックス・ローバー氏は「より普通の状態に戻ってきた」と指摘する。 ただし思い出したようにボラティリティが高まり、フェイルが増えるのがまた、規制強化と米国債の供給減少に見舞われている今のレポ市場の姿でもある。 金融機関にとって新たな規制導入でレポ取引のコストは高まった。金融規制改革法(ドッド=フランク法)と新銀行自己資本規制バーゼルIIIを順守するには、より多くの資本を手当てしなければならない。 その結果、米大手金融機関はレポ取引を減らし、市場における活動を圧縮した。総負債に占めるレポ取引残高の割合はピークだった2007年の32%から、15年初めまでに13%に下がった。 つまり「以前のような流動性はなくなっている」(TCWグループのポートフォリオマネジャー、ブレット・ベーカー氏)という。 (Richard Leong記者) http://jp.reuters.com/article/usa-markets-repos-idJPKCN0XB0FZ?sp=true Business | 2016年 04月 14日 17:24 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 米処方箋薬支出、2020年までに最大4000億ドルに達する見込み [14日 ロイター] - 米ヘルスケア情報会社IMSヘルス・ホールディングス(IMS.N)が14日に公表したリポートによると、米国では2020年までに処方箋薬に対する年間支出が22%増加し、4000億ドルに達すると予想されている。年間では4─7%の増加となる。卸売価格では、2020年までに46%増加し、6400億ドルに達する見込みという。 2020年までの5年間の処方箋薬支出の伸びは、2015年までの5年間を上回るペースになるとみられている。14─15年に関しては、C型肝炎治療の新薬が発売されたことから、2020年までを上回るペースの増加が見られた。 さらに、研究段階の新薬が目白押しなことから、2020年までに高額な抗がん剤を筆頭に多数の新薬が発売されるとみられている。 ただ、アストラゼネカ(AZN.L)のクレストールやファイザー(PFE.N)のリリカとバイアグラの特許が切れることや、バイオシミラーと呼ばれるより安価な後発生物製剤の登場で競争が激化し、価格上昇ペースが抑制されることから、IMSのリポート担当者は支出は「制御可能」との見方を示している。 http://jp.reuters.com/article/health-usa-drugspending-idJPKCN0XB0OK IEA:石油供給過剰は今年下期にほぼ解消、シェール生産減少で Grant Smith 2016年4月14日 18:19 JST
国際エネルギー機関(IEA)は、世界の石油市場は7−12月(下期)に「均衡に近づく」との見通しを示した。原油安で石油輸出国機構(OPEC)非加盟国の生産が減少するためだと説明した。 IEAは14日公表の報告で、世界の供給過剰は下期に日量20万バレルと、1−6月(上期)の150万バレルから縮小すると予想した。米国のシェールブームが下火になることにより、OPEC外の生産量は1992年以降で最大の落ち込みを記録すると見込んでいる。制裁解除後のイランの輸出は金融面がネックとなり緩やかにしか回復しないことも過剰解消の要因になるという。 今年のOPEC外からの供給は日量約70万バレル減り5700万バレルとなる見通し。IEAは引き続き、世界の石油消費が今年、日量120万バレル増えるとみている。IEAのリポートによると、OPEC加盟国は上期の1日平均必要量を約120万バレル上回るペースでの生産を続けている。 原題:IEA Sees Oil Oversupply Almost Gone in Second Half on Shale Drop(抜粋) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-14/O5M7AW6KLVRK01 沈むブラジル経済、政局混乱で改革に遅れ ブラジルでは政局の混乱でルセフ体制後の状況も不透明だ By PAUL KIERNAN 2016 年 4 月 14 日 15:42 JST 【リオデジャネイロ】ブラジルでは経済が危機的に悪化しているにもかかわらず、金融市場はジルマ・ルセフ大統領退陣の観測を受け、この2カ月で大幅に反発した。 ルセフ氏は政府予算を不正に操作した疑いがもたれており、下院では17日にもルセフ氏の弾劾をめぐる投票が行われる見通しで、新大統領を求める投資家の願いは近くかなえられるかもしれない。下院議員の3分の2が賛成すれば、ルセフ氏は少なくとも一時的に大統領職から退かなければならない。 市場は歓迎ムードだが、ルセフ氏の後任がビジネス重視派だったとしても経済の立ち直りは期待できそうにない。 米野村証券のエコノミスト、ジョアン・ペドロ・リベイロ氏はブラジルの潜在成長率が現段階では他の発展途上国と比べて「非常に低い」と述べた。 反大統領派はルセフ氏が経済運営に失敗し、議会の支持を取り付けて改革を断行する政治手腕もないと主張している。ブラジル経済はルセフ氏が大統領に選出された2010年には7.5%拡大したが、15年には3.8%減となり、四半世紀で最大の落ち込みを記録した。 ただ、政府が対策を取ろうにも既に打てる手はなく、誰が次期大統領に就任しても歯止めはかからない可能性が高い。経済が長年停滞していることに加え、医療、教育、年金などへの支出が憲法で規定されているため、公的部門は国内総生産(GDP)比11%の赤字だ。 アバディーン・アセット・マネジメントのエドウィン・グティエレス氏は「ブラジルでは予算の90%が義務的経費であり、裁量的経費はない」と指摘した。グティエレス氏は新興市場債で110億ドル(約1兆2000億円)を運用している。 必要な政策を実施するには、労働関連法の緩和や自動的に引き上げられる最低賃金の削減など国民受けしない決定が必要だ。ただ、世論はどの政治家にも不利な状況となっている。リスクコンサルタント会社ユーラシア・グループのアナリスト、クリストファー・ガーマン氏によると、ルセフ氏の後任として有力視されているミシェル・テメル副大統領は市場重視の政策を示唆しているものの、政策実行のための「ハネムーン期間」はごく短くなりそうだ。 政府は今後、1988年制定の憲法に明記されている問題に取り組まなければならない。憲法の規定によって、政府は事実上、公務員を解雇することはできず、労働者は平均54歳から公的年金を受給できる。憲法改正には議会で3分の2の賛成が必要だ。 最低賃金と年金をインフレにリンクさせる法律も財政の足を引っ張っている。この法律は議会で過半数の賛成を得られれば廃止できる。 ブラジルはこうした財政問題に加え、官僚主義のまん延やインフラ整備の遅れなどの経済成長を阻害する問題を抱えていたが、03年から11年にかけて商品(コモディティ)価格が上昇したおかげで、表面化することはなかった。ルセフ政権第1期に商品価格が下がり始めると、大統領は人気取り政策を実施して経済に介入。消費者の支出は一時的に下支えされたが、結局、大きな財政赤字が残された。 ルセフ氏は14年の再選後、財政立て直しに向けて銀行出身のジョアキン・レビ氏を財務相に任命、緊縮財政策の実施を託した。レビ氏任命を受けて株価も通貨レアルも上昇したが、議会の猛反発で最重要政策は失敗に終わり、レビ氏は昨年12月に退任した。 テメル氏が所属するブラジル民主運動党(PMDB)は年金制度の見直しや無駄な政府支出の削減、民間投資の促進を約束しているが、テメル氏の前途はレビ氏同様、厳しそうだ。 リスクコンサルタント会社ベリスク・メープルクロフトのアナリスト、マイケル・ヘンダーソン氏は「レビ氏が政権に参加したときブラジルは正しい方向に進むと思ったが、政権には無気力が充満している。こうした構造的問題の多くはなかなか排除できない。多くの既得権が存在する」と語った。 一方、議会でルセフ氏に対する弾劾手続きが進むと市場には楽観ムードが漂った。2月中旬以降、株式市場の指標であるボベスパ指数が30%近く急騰し、通貨レアルも約15%上昇した。調査会社エコノマティカによると、3月には1営業日当たりの株式売買代金が過去最高に迫る82億7000万レアルとなった。 多額の負債を抱え、巨額汚職スキャンダルに巻き込まれている国営石油会社ペトロブラスは支払い能力に改善が見られず、先月22日には四半期ベースで過去最大の赤字を発表したにもかかわらず、株価はこの2カ月でほぼ2倍になった。投資家はルセフ氏の後任が石油部門を開放し、ペトロブラスに民間企業のような経営を認めるとみている。 キャピタル・エコノミクスの新興市場担当チーフエコノミスト、ニール・シアリング氏は、騒ぎが収まれば市場を重視する政権が登場する可能性があると述べる一方で、政界全体への不満から、「より大衆迎合的な運動」が台頭しやすくなるだろうとしたうえで、「現在の環境では、ルセフ体制後の状況は極めて不透明だ」と述べた。 左上:ボベスパ指数、右上:レアル相場(対ドル)、左下:GDP比財政赤字、右下:2016年GDP見通しの推移 ENLARGE 左上:ボベスパ指数、右上:レアル相場(対ドル)、左下:GDP比財政赤字、右下:2016年GDP見通しの推移 関連記事 世界経済、リスク山積だが基本的には順調=IMF ブラジル大統領の弾劾手続き、下院特別委が可決 https://si.wsj.net/public/resources/images/WO-BA001_BRAZEC_16U_20160413140625.jpg
米銀、大規模であることのメリットとは JPモルガン・チェースの規模は規制当局にとって悩みの種だが、チェース銀行のネットワークは顧客に多くのメリットをもたらしている ENLARGE JPモルガン・チェースの規模は規制当局にとって悩みの種だが、チェース銀行のネットワークは顧客に多くのメリットをもたらしている PHOTO: MARK LENNIHAN/ASSOCIATED PRESS By GREG IP 2016 年 4 月 14 日 15:05 JST
一部の企業はこの10年で規模や事業範囲が驚異的な水準へ拡大したため、そのどの企業が破綻しても米経済に壊滅的な打撃が及ぶだろう。これらの企業はその規模に見合った利益や政治力を築き上げ、時には米国民の安全を維持するという連邦政府の取り組みにあらがうこともあった。 これはもちろん、アップル、グーグル、フェイスブック、アマゾンといった企業の話だ。 ただ、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴ、シティグループについても同じ事が言えそうだ。 これら二つのグループには、一つめのグループは誰も解体したいとは思わないが、二つめのグループは恐らく誰もが解体を望んでいる、という違いがある。米大統領選挙で民主党からの指名獲得を目指しているバーニー・サンダース氏は先週ニューヨーク・デイリーニューズに対し、「アップルは米国の基本構造を破壊してはいない」が、「JPモルガン・チェースとそれ以外のほぼ全ての主要銀行」はそれを破壊していると語った。 米規制当局は、大手銀を解体する方向に動いていないとはいえ、13日には大手銀5行に対し、生前遺言(破綻時清算計画書)に不備があるとして大幅な改定を命じた。生前遺言が承認されなければ、銀行は一連の罰則の対象となり、最終的に解体に追い込まれる可能性もある。 銀行の規模が俎上(そじょう)に載せられているのには十分な理由がある。大手銀は資金を低利で借り入れ、その規模をさらに大きくすることができるが、それは大手銀が破綻した場合の混乱の大きさから米政府がそれを容認することはないと考えられているからだ。 それでも、テクノロジーと同様、規模の大きさは銀行業界に特有のメリットをもたらしている。具体的には、技術革新やブランドの確立、リスク管理といった面での「規模の経済」、顧客を引き寄せるネットワーク効果、地理的・事業的な多様性の広さが挙げられよう。 規制当局がこうした特性を無視し、規模が大きいことの危険性ばかりに目を向ければ、米経済を上向かせるどころか悪化させる恐れがある。 米連邦地方裁判所の先月の判決(同地裁のコルヤー判事の所見が先週公表された)には、こうしたメッセージが言外に含まれていた。連邦政府は保険大手メットライフについて、厳格な監督下に置き、より高い資本基準を課す必要から「システム上重要な金融機関(SIFI)」に指定したが、同地裁はこれを無効とした。 同地裁がやり玉に挙げたのは、連邦規制当局で構成され、財務長官が長を務める米金融安定監視評議会(FSOC)だった。メットライフが破綻すれば経済に打撃が及びかねないと指摘しながら、どのような場合に同社が破綻するかについては詳細を明らかにしなかったことを理由に挙げた。また、メットライフを銀行と同じように規制するコストについても検討していなかったとし、こうした検討は「理にかなった規則策定にとって不可欠」なものと述べた。 この判決により連邦政府は窮地に追い込まれた。金融危機の教訓の一つは、保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)などの企業が、銀行と同じくらい金融システムと結びつきを深めることはあり得るということだ。規制強化対象が銀行だけなら、リスクの高い事業はこうしたノンバンクに移る可能性が高い。だからこそ、ドッド・フランク法(金融規制改革法)はノンバンクをシステム上重要な金融機関に指定する権限をFSOCに与えたのだ。今回の判決は(上訴審で支持されれば)、危機防止策の一つであるこの重要な武器の効果を脅かしかねない。 それでも、有益な示唆もある。金融危機はテロ攻撃や感染症の大流行と同様、非常に予測しづらいため、それを防ぐ価値を定量化するのは容易ではない。だがこれは、人権であれ経済成長であれ、あらゆる代償を無視する口実へと、いとも簡単に姿を変える。 大手銀のケースでは、規制当局は「大きすぎてつぶせない」銀行になるリスクと、規模のメリットを天秤(てんびん)にかける必要がある。シンクタンクの超党派政策センター(BPC)が2014年のリポートで指摘したように、こうしたメリットは決して小さくない。 大企業の取引銀行は、国際展開している大手銀である場合が圧倒的に多い。これら企業の最高経営責任者(CEO)は、現金管理、外国為替業務、海外送金といった大手銀のサービスが不可欠だと考えている。 ハリウッドスターやサンダース氏といった旬な著名人からの人気という点では、大手銀はアップルにかなわないが、ある層からの人気は大手銀の方が上のようだ。それは消費者だ。米調査会社JDパワーによると、2010年以降、消費者の大手銀に対する満足度は着実に上昇しており、足元では地方銀行に対する満足度を上回った。バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン・チェース、シティバンク、ウェルズ・ファーゴ、USバンクの5行は、個人預金口座の新規開設件数が2010年〜14年に2500万件近くに達した。同じ期間に資産規模が100億ドル未満の銀行の口座数は3500万件減った。 JDパワー顧客満足度合指数(左は時系列データ、中央は世代別、右は人種別)【(赤)地方銀行、(黄)中堅銀行、(緑)大手銀行】 ENLARGE JDパワー顧客満足度合指数(左は時系列データ、中央は世代別、右は人種別)【(赤)地方銀行、(黄)中堅銀行、(緑)大手銀行】 このような大手銀の預金の大部分は連邦預金保険制度で保護される上限の25万ドルを下回っていたため、顧客が上限を超える分の預金について政府に暗黙の保証を求めることはなかったようだ。各種調査ではむしろ、顧客が大手銀の支店網や現金自動預払機(ATM)網に魅力を感じていることが示されている。 テクノロジーへの投資は固定費が巨額なのに対し限界費用(産出量の一単位の増加によって生ずる総生産量の増加分)は小さいため、規模のメリットの方が優勢だ。超党派政策センターはリポートで、ATMやオンラインでの請求書支払い、小規模企業の信用度点数化といったサービスを最初に提供したのは大手銀だったと指摘している。「規模の経済」はリスク管理や規制にも当てはまるかもしれない。JPモルガン・チェースでは現在、こうした管理を担当する従業員数が4万3000人に上る。総従業員の18%に当たる規模で、2011年の2万4000人から大きく増えている。 大手銀は大きな間違いも犯すものだが、だからといって自動的に大手銀は破綻しやすいという意味にはならない。その規模の大きさゆえに、事業展開する地域や業界・業種の多様性も広く、結果として収益が振れにくくなっている。ある研究では、銀行の支店業務に地理的な制約が生じた場合、より効率性の高い銀行が市場シェアを獲得し、貸し倒れは減少し、顧客が恩恵を受けたことが明らかになっている。 大手銀の破綻が米経済に与える被害を中和するとともに、大手銀が「大きすぎてつぶせない」地位を利して得ている「補助金」を取り上げるため、大手銀を対象とした規制や資本要件を厳格化する必要がある。独占禁止当局は大手銀がその規模を利用して競合相手を駆逐するのを禁じるべきだ。もっとも、最終的に大手銀が一掃されるというわけではない。そうした決定を下すことができるのは顧客と株主だ。 関連記事 「大きすぎてつぶせない」銀行批判は的外れ 「大きすぎてつぶせない」は銀行だけの問題か メットライフの「システム上重要」指定は無効=米連邦地裁 https://si.wsj.net/public/resources/images/NA-CJ797C_CAPAC_16U_20160413190611.jpg JPモルガンの決算が示す、大きいことは悪くない ENLARGE JPモルガンのダイモンCEOは、米国の銀行が大きく、多角化されたことには利点があると長らく主張してきた PHOTO: MICHAEL REYNOLDS/EUROPEAN PRESSPHOTO AGENCY By AARON BACK 2016 年 4 月 14 日 17:52 JST 最高の守備は時に優れた攻撃になる。大銀行の分割を求める声が高まる中、しばらく前には米国の銀行の健全性をめぐる市場の不安が極めて広がったものの、JPモルガン・チェースは1-3月期(第1四半期)に堅調な業績を示した。 総資産で米国最大の銀行、JPモルガンの1-3月期の純利益は7%減の55億ドル(約6000億円)となったものの、市場予想を大幅に上回った。投資銀行、トレーディング業務の低迷がおおむね織り込まれていた中、融資の堅調な伸びが悪影響を一部相殺した。 これによって大統領選の年に「大きすぎてつぶせない」銀行をめぐる政治的議論が収まるわけではないものの、この決算は銀行が「大きく、多角化されたことには利点がある」というJPモルガンのジェームズ・ダイモン最高経営責任者(CEO)の長きにわたる主張を裏付けるものだった。市場の弱さの一部は他の業務によって埋め合わせることができるという発想だ。 またこの結果は、年初に危機の醸成感やこれが各社に及ぼす打撃への懸念から、投資家が大手銀行に対して過度に悲観的になっていたとの主張を後押しするものでもある。大手銀行の株価はウェルズ・ファーゴを除き、いずれも簿価を割り込む水準まで下落した。特にシティグループとバンク・オブ・アメリカの割安感は際立っていた。 ENLARGE JPモルガンの貸倒引当金を除く合計融資額(単位:十億ドル) コップの水は半分しかないとの見方はここ数週間で逆転し始めた。JPモルガンの業績はポジティブな勢いに加わるものだ。 ただ、投資家にとって浮かれすぎは禁物だ。年初の極めて厳しい時期をしのいだことは好況であるということと同義ではない。銀行は今後も超低金利や世界経済の低成長に対処する必要がある。 引き続き規制面の課題もある。JPモルガンは昨年、バランスシートを縮小し、資本サーチャージ(自己資本比率の上乗せ)の負担を軽減したものの、それでも厳しい基準を満たさなくてはならないことに変わりはない。投資家は、何らかの逆境によってこれがふくらむ可能性を認識しなければならない。 米当局が13日発表した、大手銀行のいわゆる「生前遺言(破綻時清算計画書)」に関する反応も、課題を浮き彫りにすることとなった。JPモルガンの計画は信頼のおけないものと判断された。同社は10月1日までに一部を改定した計画を提出する必要がある。これに従わない場合は自己資本基準の引き上げや他の処分の対象になりかねない。 こうした状況の中、JPモルガンの1-3月期の株主資本利益率(ROE)は9%にとどまり、理論上の資本コストを割り込んでいる。確かに今後のトレーディングや投資の環境好転からリターンが増加する可能性もある。しかし、過去6四半期の平均ROEはわずか10.2%であり、バリュエーション面で大幅なプレミアムを認める理由にはならない。 それでも、JPモルガンの13日の株価上昇はこうした状況によって正当化され、今後の上昇余地にも含みがもたらされた。 株価上昇の一因には、JPモルガンが一部業務の低迷を他の業務の強さで補ったことが挙げられる。1-3月期の投資銀行収入は株式・債券引受業務が低調で24%減となった。また、債券トレーディング収入は13%減だったものの、予想よりは善戦した。 しかし、地道な銀行業務は好調だった。合計融資額は11%増となった。商工ローンは9%増と前四半期からは減速したものの、健全な伸びを保った。消費者ローンは12%増に加速したほか、商業用不動産ローンは18%増だった。 純金利マージンもやや上昇したが、これは米連邦準備制度理事会(FRB)の昨年12月の利上げの効果を示す可能性がある。年内に追加利上げが行われない場合でも、JPモルガンは純金利収入が融資の伸びから20億ドル増加すると見込んでいる。 こうした状況は、同社が可能なものに対応することで厳しい局面をしのぎ続けていることを示す。JPモルガンはこうした環境下でホームランを狙うべきではないだろう。出塁するだけで十分だ。 関連記事 • JPモルガン、1-3月期は減益−トレーディング収入は11%減 • 1-3月期の米銀行決算、注目すべき5つの点 • 米当局、JPモルガンなど5行の生前遺言却下−大幅改定命じる • FRB、JPモルガンの生前遺言でもジレンマ • 【寄稿】大手と中小銀行は敵ではなく仲間=JPモルガンのダイモンCEO https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NN528_JPMHER_M_20160413104851.jpg 米経済、成長の一方で貧困層の支援需要高まる 救世軍の食糧支援を手配するボランティア(カリフォルニア州) By PAUL OVERBERG 2016 年 4 月 14 日 14:25 JST 昨年は米国経済指標が幅広く改善したが、貧困層の切実なニーズを測るある指標が悪化した。 これは景気回復が二極化していることを示す新たな例だ。富裕層が発展する一方、中・低所得世帯は苦しんでいる。これは今年の大統領選挙のテーマでもある。 その指標とは、インディアナ大学フィランソロピー・スクールと慈善団体の救世軍が開発した「ヒューマンニーズ指数」で、全米7500に上る同団体の支所で提供された7種類の貧困支援を測るもの。これが昨年上昇し、13〜14年に見られた大幅な改善から一転した。 救世軍の13日の発表によると、同指数は12年に3.00でピークを付けた後、14年に1.97まで低下したが、15年は2.28へ上昇した。 同指数の対象には、食糧や衣料品、家具の支援のほか、医療費や光熱費、家賃の支払い支援などが含まれる。インディアナ大と救世軍は昨年提携してこの指数を立ち上げ、04年までさかのぼって月次のデータを集計している。 救世軍のロン・バスロー中佐によると、この指数の反転上昇が示しているのは、多くの世帯が今なおリセッション(景気後退)の余波に苦しんでいるということだ。景気回復で食料品や住居費が値上がりし、ぎりぎりの世帯は支援を求めざるを得ないという。 政府が15年の貧困率を公表するのは今秋だ。だが、米国勢調査局によると、14年の貧困者数は4700万人だった。同年の貧困率は14.8%と前年から横ばいだったが、リセッション前の07年に比べると2.3ポイント高かった。 米労働省によると、昨年末の失業者数は800万人に上った。そして正社員の職が見つからずパートライムの仕事をしている人は600万人だった。 救世軍の指数によると、昨年最も支援が必要とされた地域はノースダコタ、ネバダ、ペンシルベニア、マサチューセッツ、コロラドの各州。前年からの指数の伸びが大きかった州はアーカンソー、アラバマ、コロラド、サウスカロライナ、ウェストバージニアだった。これらの州の一部では、原油安で採掘や探査活動が減速し、エネルギー部門に人員削減の動きが広がった。他の地域では、洪水などの自然災害で支援需要が高まった。 救世軍は今年は四半期ごとに同指数の発表を予定している。 関連記事 米経済のけん引役はミレニアル世代と低所得者層 米個人消費、増え続けるには雇用・所得・貯蓄率の伸び必要 貧困家庭に生まれた男子、女子より高い失業率 http://jp.wsj.com/articles/SB12495755728542884874804581630351374773460
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