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セブン&アイHD鈴木会長が引退表明(「ロイター/アフロ」より)
老害化した天才経営者・鈴木セブン&アイ会長、なぜ退任に?一介の雇われ経営者の末路
http://biz-journal.jp/2016/04/post_14671.html
2016.04.13 文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント Business Journal
セブン&アイ・ホールディングス(HD)の鈴木敏文会長兼CEO(最高経営責任者)が退任するというニュースは、大きな驚きをもって受け止められた。84歳という高齢になっていたとはいえ、日本にコンビニエンスストアという業態を導入して社会インフラにまで育て上げた。今日に至るまでグループの総帥としてセブン&アイ・グループはおろか、業界全体の発展に尽力してきた。
流通業界における鈴木氏の功績は、ダイエー創業者でGMS(総合スーパー)を確立した故・中内功氏に勝るとも劣らないだろう。企業としてのダイエーが消滅してしまった現在、「残った唯一の巨星墜つ」という感慨が深い。
■井阪社長の反乱
鈴木氏の退任は、4月7日にセブン&アイHD取締役会でコンビニ事業を担当する井阪隆一セブン−イレブン・ジャパン社長(58歳)を交代させる人事案が採択されなかったことにある。
同日の退任会見で鈴木氏自身が井阪氏の人事案をめぐる経緯を説明した。それによると、井阪氏に退任の内示を出したのは2月15日。その時点では従順に通告を聞いた井阪氏が、2日後に「納得できない」と強硬に異議を唱え出し、それ以降コミュニケーションが取れない状態となったという。井阪氏は「相談する人がいる」と鈴木氏側に伝えたそうだ。その相手というのが、創業者である伊藤雅俊名誉会長(92歳)だったという。
3月以降に開かれた指名・報酬委員会を前に、鈴木氏は伊藤氏を訪ね、井阪社長の処遇についての同意を求めた。すると、伊藤氏ははっきりとそれを断ったことを会見で鈴木会長が明らかにして、「こうしたことは初めてで驚きました」と、述べている。それまで伊藤家は経営に関してすべて鈴木氏に一任してきており、両者の信頼関係はとても強かった。
■潮時だった鈴木氏
しかし私に言わせれば、大経営者の鈴木氏といえど齢80を越え、近年はその采配に疑問符がつくようになっていた。たとえば、2015年1月31日付本連載記事『セブン&アイ、株価下落の元凶“お荷物”ヨーカ堂を即刻売却すべき 超優良グループに変身』http://biz-journal.jp/2015/01/post_8770.htmlで私は、不調となっていたイトーヨーカ堂の売却を提言したが、その後に大株主となった米ファンド、サード・ポイントは同年末になって同様の主張の手紙をセブン&アイHDに送りつけている。また鈴木氏は「イトーヨーカ堂を立て直すまでは引退できない」としていると伝えられていたが、それに対しても「老害への警鐘」としての見解を同記事で示した。
幹部人事についても迷走し始めていた。鈴木氏の次男・鈴木康弘執行役員(51歳)がセブン&アイHD取締役になったことについて、15年4月18日付本連載記事『セブン&アイ、鈴木会長の“逸脱”行為 次男が取締役就任、世襲のような人事の違和感http://biz-journal.jp/2015/04/post_9645.html』で次のように疑問を呈していた。
「セブン&アイ・グループのように売り上げ規模10兆円を超える大企業で、世襲のような役員就任があるのは極めて珍しい。オーナー企業や創業家が存在する企業であれば、経営者の係累が役員になるのは珍しくないし、受け入れられることだろう」
今年に入ると、年明けの1月8日にはイトーヨーカ堂社長だった戸井和久氏(61歳)が鈴木氏に辞表をたたきつけている。戸井氏は昨年社長に就任したばかりで、GMS部門を立て直すエースとして囑望された経営者だ。同氏は鈴木会長からの要求、叱責があまりに熾烈だというので耐えられなくなったとされる。
■経営者と資本家の関係
今回、井阪氏の更迭案について創業者でもある伊藤氏が、「イトーヨーカ堂の社長に続いて、今度はセブン−イレブンの社長を外に出してしまうのか」と思ったとしても無理がない成り行きだったろう。しかも、セブン−イレブン事業は伊阪氏の指揮の下、5年連続で増収増益を達成している。これでは、伊藤氏どころか2人の外部委員がいる指名・報酬委員会でも支持される役員案とはならなかった。
鈴木氏は委員会で支持されなかった更迭案をあえて4月7日の取締役会に提出したが、無記名投票により承認されることはなかった。ここでも社外取締役が見識を示して影響力を発揮した。事ここに至って、無理筋を追おうとした鈴木氏は自らが退任するという事態に追い込まれたのである。
30年以上にわたってセブン&アイ・グループで強権をほしいままにして天皇経営者となり、そしてそのまま老境に入ってしまい最後でバランス感覚を失ってしまったとしかいいようがない。
私は、鈴木氏は稀有な経営者だと思っている。その実績・功績は流通業界において比肩できる者はいない。平成の大経営者の一人として、高く評価している。
しかし今回の鈴木氏退任劇でつくづく感じたのは、経営者と資本家の関係だ。伊藤氏が保有する株式の数は、持ち株会社のものも含めるとセブン&アイHDの9.66%(2月29日現在)に上る。筆頭株主である。鈴木氏の名前はセブン&アイHDの上位株主リストに見当たらない。鈴木会長がいかなる功労者、大経営者、グループの総帥だったとしても、株主資本主義の会社では「一介の雇われ経営者」にすぎない。
つい最近も、LIXILではプロ経営者として招聘された藤森義明社長が創業家の潮田洋一郎氏の主導で更迭され、クックパッド社では穐田誉輝(あきたよしてる)氏が年商を6割も伸ばしたあげくオーナーの佐野陽光氏により社長交代させられた。鈴木氏も「資本と経営の分離」を唱導していたが、結局は「店を任されていた大番頭」としての立場を出られたわけではなかった。
巨星墜ちたセブン&アイ・グループはどこへ行くのか。単身で鈴木氏に代わることができる経営者などそうはいないだろう。セブン−イレブンは好調なのでこのまま井阪体制で進むのが自然な成り行きだろう。結果として伊藤家の信任を得たかたちとなっているので、当面は安定して経営を進めていくことができる。
伊藤氏が今回、このような「創業家の意思」を明示したことにより、イトーヨーカ堂の分離は当面なくなった。といっても、それは伊藤氏の目の黒いうちは、という時間的な限定が留保される。一部で鈴木氏の次男・康弘氏をセブン&アイHD会長へ据える動きもあるなどと報道されたが、前述のような資本構造と資本家の意思の発動という成り行きを見ると、そんな動きは「烏滸の沙汰(おこのさた)」としかいいようがない。
日本の流通業の最大プレーヤー、セブン&アイ・グループの経営の舵を握るのは誰になるのだろうか。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)
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