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足元の為替市場で円高傾向が進んでいる
日銀の影響力低下が顕著、 追い詰められたアベノミクス
http://diamond.jp/articles/-/89290
2016年4月12日 真壁昭夫 [信州大学教授] ダイヤモンド・オンライン
■市場への影響力が極端に低下 日欧の中央銀行の金融政策
足元の為替市場で円高傾向が進んでいる。4月7日現在、1ドル=108円台に突入し、約1年5ヵ月ぶりの円高水準になっている。
株式市場の投資家の間では、円高進行によって自動車などわが国の輸出企業の業績悪化を懸念する声が強まっており、わが国の株式市場において不安定な展開の最も重要なファクターの一つになっている。
一方、円高とは反対にドル安が進行していることもあり、米国企業の業績回復への期待が盛り上がっている。それに伴い、米国株式市場はしっかりした展開を示している。為替市場の動向によって、日米両国の株式市場は対照的な動向を示している。
今回の為替市場の動向で注目される要因の一つは、日欧の中央銀行によるマイナス金利にまで踏み込んだ金融政策の、為替市場への影響力が極端に低下したことだ。
今年に入って、日銀・ECBともに一段の金融緩和策を実施した。以前であれば、円・ユーロの金利が低下することで、両通貨とも弱含みの展開になるケースが多かった。ところが、今回は円・ユーロともに基軸通貨ドルに対して強含みの展開になっているのだ。
これは、最近の世界経済に先行き不透明な要因が増していることもあり、多くの投資家が単純に表面金利を見て、オペレーションを行うことがやりにくくなっていることが反映されている。
つまり、投資家が表面金利だけ見てオペレーションを行っても、あまりにも経済情勢の変化が大きいため、リスクに見合ったリターンを上げにくくなっていることが背景にある。そのために、ヘッジファンドや為替ディーラーは、経常収支やインフレ率など経済の基本的条件を吟味する方向になっている。
■アベノミクスで一時的な円安・株高 本当の意味での景気回復ならず
今から約4年半前の2011年10月まで、為替市場では超円高と呼ばれる現象が続いていた。1ドル=75円台まで強含みとなった円高によって、わが国の主要輸出企業は大変な逆風にさらされた。
その潮目が変化したのはその年の11月以降だ。リーマンショックで傷んだ米国経済は、FRBの積極的な金融緩和策の効果もあり、2009年6月をボトムに回復への道を歩み始めた。
米国経済の立ち直りを映して、2011年後半以降、ドル・円の為替レートは徐々にドル高・円安方向に変化していった。その円安傾向をさらに加速させたのがアベノミクスだった。安倍首相はアベノミクスを実践すべく、積極金融緩和論者である黒田・元財務官を日銀総裁に据えた。
黒田総裁は安倍首相の意図を裏切らなかった。黒田バズーカ=異次元の金融緩和策を実施し円安・株高を演出した。円は対ドルで一時1ドル=125円台まで下落する一方、日経平均株価は約2万1000円の水準まで上昇した。
円安・株高の傾向が顕著になると、人々の景況感も徐々に明るさを増した。そこで安倍政権は、2014年4月に消費税率の引き上げを断行した。
しかし、賃金の上昇が期待されたほど盛り上がらなかったこともあり、3%の消費税率引き上げの影響は予想外に大きかった。
官邸の肝いりで企業経営者に賃上げの要請を行ったものの、それに対して企業経営者は慎重な姿勢を見せた。特に、収益回復が遅れていた中小企業の賃上げが期待されたほど伸びなかったことに加えて、非正規雇用が4割近くなっていることもあり、家計の収入が伸び悩んだ。
その結果、国内の消費がなかなか盛り上がらず、成長率が水面下に沈むことが多くなっている。結果としてみると、アベノミクスで一時的に円安・株高の状況を作っても、本当の意味での景気回復ができていなかったといえよう。
■中国、中東、欧州 世界経済の三つの大きなリスク
現在の世界経済を鳥瞰すると、三つの大きなリスクがある。一つは中国経済の減速だ。中国経済には、鉄鋼やセメントなど在来工業分野で莫大な過剰生産能力が存在する。それを処理しなければ、次の成長へと移行することは難しい。
そのため、李克強首相は過剰設備の整理に乗り出すと明言している。ただ、実際に整理する際には失業者の増加などの大きな痛みを伴う。それを、過剰債務の負担を抱えた状況下で行なうことは口で言うほど容易なことではない。今後、中国経済が世界の足を引っ張ることは避けられない。
二つ目のリスクは中東だ。原油価格の下落によって、中東の産油国の収入は大きく減少した。サウジアラビアなどでは既に財政は大幅赤字に落ちこんでいる。赤字を埋め合わせるため、過去の蓄積(SWF=ソブリン・ウエルス・ファンド)を取り崩さざるを得ない。
SWFを現金化することは、保有している米国やわが国の株式などを売却することになる。それは世界の資金の流れ=マネーフローを大きく変えることになる。その分だけリスクは高まる。
三つ目は欧州圏の問題だ。中東から押し寄せる難民問題はかなり深刻である。それに加えてテロなどの社会問題が顕在化している。また、不良債権処理の遅れやマイナス金利などの影響で、大手金融機関の業績に不安が露呈している。
そうしたリスク要因の顕在化によって、昨年の夏場以降、米国企業の業績に黄色信号がともり始めた。大手企業の7月以降の業績は前期対比でマイナス圏に落ち込んだ。主な理由はドル高と原油安だ。
大統領選挙を控えたオバマ政権としても、企業業績の落ち込みを静観することはできない。米国政府の本音を言えば、緩やかにドル高が是正され、ドル安への転換を望んでいることだろう。
■一段と苦境に追い込まれる日銀とアベノミクス
緩やかなドル安が好ましい米国の政策当局にとって、足元の為替市場で歓迎すべき現象が発生している。それは、ドルが円やユーロに対して弱含みの展開になっていることだ。
その背景の大きな要因は、為替市場が表面金利に反応しにくくなっていることだ。世界経済の状況が怪しくなっていることもあり、大手投資家は表面上の金利よりも、より確実な安全性を求めて、当該国の経常収支や貯蓄率、さらにはインフレ率などの経済の基礎的な条件を重視し始めている。
その結果、日銀やECBがマイナス金利にまで踏み込んでも、なかなかドル安の流れが止まらない。逆に言えば、今までのように中央銀行が、金融政策の力技で為替市場を動かすことが難しくなっているのである。
そうした状況について経済専門家の中には、「過去数ヵ月の勝利者は米国のFRBだ」と指摘する向きもある。彼の言わんとすることは、FRBのイエレン議長が金利引き上げのペースが極めて緩やかと発言することで、ドル強含みの展開に歯止めをかけているということだ。
つい最近まで米国経済の回復が順調だったため、金融緩和策からの脱却が速かった。その為、ドル金利上昇の思惑が働き、表面金利に反応してドルが上昇する展開になった。
ところが、ドルが強くなったこともあり、肝心な米国企業の業績に伸び悩み感が出た。それを防ぐため、FRBは金利引き上げのペースを緩やかにすると宣言したことで、ドル高への回帰を阻止した。
FRBのイエレン議長がハト派的発言を繰り返すことで、日銀・ECBのマイナス金利に対応することに成功したのである。その効果は米国経済にとって大きい。逆に、日欧にとっては大きな痛手だ。
特に、金融政策頼みの円安・株高が主なセールスポイントだったアベノミクスは、一段と厳しい経済状況に追い込まれることになった。そろそろ本腰を入れて、労働市場の改革や規制緩和など、本当の意味での成長戦略を考えるべき時期に来ている。
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