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鉄鋼の急速な需要落ち込みでピンチ!新日鉄住金は「守りの戦い」に勝てるか 舞台はブラジル
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48408
2016年04月12日(火) 町田 徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
■新日鉄住金「守りの戦い」
中国発の世界的な供給過剰の暴風雨の中で、新日鉄住金のブラジル拠点「ウジミナス」(2014年の粗鋼生産量で世界62位)を守る闘いが大詰めを迎えている。
ウジミナスの前身は、ブラジル政府が1958年に設立した国営企業だ。設立には、日本が国家プロジエクトとして協力した。紆余曲折の末、旧新日鉄が2006年に持ち分法適用会社として傘下に収めた、特別な会社である。南米向けの供給拠点となっており、新日鉄住金のグローバル戦略に無くてはならない企業だ。
しかし、このところは中国勢の過剰供給に圧されて業績が大きく落ち込んでいる。テコ入れするにも、第2位の大株主であるアルゼンチン企業との確執が響いて、思うように立て直しが進んでいなかった。
そこでウジミナスは、月内にも臨時の株主総会を開催し、アルゼンチン側の協力も得たい考えだ。これが不調に終わった際に、新日鉄住金は、単独で必要な増資を引き受けて、本格的な再建をリードするという。「守りの闘い」に勝算があるのか探ってみた。
鉄鋼市場は依然として、土砂降り状態だ。中国など新興国の経済バブルの崩壊によって需要が減る中で、過剰な生産設備を抱えた中国からのダンピング紛いの輸出が後を絶たないからだ。
世界鉄鋼協会が集計した2015年の粗鋼生産量は、前年比2.8%減の16億2280万トンに減少した。これは6年ぶりの前年割れだ。5割近いシェアを占める中国が34年ぶりにマイナスとなったほか、日米欧の3極もそろって前年の生産実績を下回った。
今年に入ってからも、低迷は続いている。1月の粗鋼生産量が前年同月比7.1%減の1億2800万トン、2月が同3.3%減の1億2000万トンにとどまった。
それでも、なお鉄鋼市場の供給過剰感は強く、ダンピング輸出やそれに伴う経済摩擦が勃発しかねないと関係者は警戒を強めている。
■不思議な記載
新日鉄住金がここ数回の中期計画で生き残りのため掲げてきたのは、「技術」「コスト」「グローバル」の3本柱で優位性を保ち、国内と海外の事業を両輪に成長することだ。
今年に入ってからの主な案件を見ると、米国で冷間圧造用鋼線(自動車用ボルトなどの製造に使う)製造・販売子会社を設立、子会社の大阪製鉄による東京鋼鉄の連結子会社化、新日鉄住金による日新製鋼の子会社化、仏鉄鋼大手バローレックへの追加出資など、矢継ぎ早に荒業を繰り出している。
新日鉄住金の経営戦略には、日本の近代製鉄発祥の地・釜石製鉄所の高炉を1989年に休止し人員整理を迫られたことが、大きな影響を与えたと聞く。地元の人口を上回る反対署名が寄せられる中で、非情な選択をせざるを得ない状況に直面し、次の景気後退期に解雇しなければならないような安易な拡大策をとって、従業員を苦しめたくないという哲学を経営に根付かせたというのだ。
それ以降、海外などでの新規需要への対応は自ら直接進出するのではなく、現地の企業と提携してライセンス生産のライセンス料や出資による配当収入の確保を図るのが、同社の基本戦略になっていた。
最近は、内外の提携先にも配慮して、関係強化を前提に緊密な情報交換ができることが前提だが、相手が競争力さえ保持していれば、生産拠点として提携先の設備を温存してグループ全体で大規模な合理化を目指すケースが増えている。昨年末、旧新日鉄の本丸とでも言うべき千葉県の君津製鉄所の3号高炉を休止して高炉2基体制にしたのも、その象徴的な動きらしい。
新日鉄住金の進藤孝生社長は今月1日、新入社員向けのメッセージで、「経営学の教科書は『企業経営とは事業環境変化への対応である』と教えています。まさにその通りであります。10年、20年の単位で事業環境は必ず変わります。事業環境が変われば企業の経営戦略も変えていかなければなりません。これからの長い会社生活において、皆さんにもそういう判断をすべき時が必ず来ます」と語っている。
新日鉄住金が懸案のウジミナスを巡って、先月(3月)12日に公表したプレスリリースがちょっと変わっている。それは、新株引受権を通じた株主割り当て増資によって10億レアル(約300億円)の資本を調達するという、ウジミナス取締役会決議への対応策を説明した資料だ。
株主割り当ての場合、どの株主にいくら割り当てるのか示すのが普通だが、今回は、そうしたリストが存在しなかった。「他の株主による新株引受権の行使状況如何では、最大10億レアルの普通株式による増資引き受けに応じる考えです」と記されているだけなのだ。
なぜ、こんな不思議な記載になったのか、疑問を感じずにはいられない内容である。
■アルゼンチン鉄鋼大手との確執
その根底にあるのが、ウジミナスの経営で新日鉄住金のパートナーの立場にあるアルゼンチンの鉄鋼大手テルニウムとの確執だ。
テルニウムは、既存株主だったブラジルの非鉄鋼業系企業がウジミナス株売却を希望したことを受け、2012年に株式を取得して、新日鉄住金に次ぐ株主になった。ウジミナスによると、普通株の保有比率は、新日鉄住金が29.45%、テルニウムが27.66%だ。ただ、ブラジルでは、「株主間協定」という特殊な制度があり、一部の大株主が取締役人事や株式売買に関して優先的に決定権を持つ。
この協定は2031年まで有効で、それに基づく持ち株比率は、新日鉄住金グループが46.1%、テルニウムが43.3%となっている。
新日鉄住金とテルニウムの蜜月は、長くは続かなかった。2014年、会計監査で、テルニウムが派遣した役員3人が不正なボーナスを受け取っていたことが確認されたとして、解任されたのだ。新日鉄派遣の役員も解任決議に賛成票を投じた。
この決定を不服として、テルニウムが裁判所に仮処分を求めたり、同社が普通株を買い増したりする騒ぎが起きた。これを機に、新日鉄住金とテルニウムの関係が冷え込み、ウジミナスの経営を巡って正常な協議ができない状態が続いているという。
一方、世界的な鉄鋼供給過剰とブラジル経済の冷え込みで、肝心のウジミナスの経営は青息吐息だ。同社の2015年の連結最終損益は36億8500万レアル(約1200億円)の赤字。すでに主力製鉄所2カ所の5基の高炉のうち2基を休止、さらに1基の休止を準備するなど、生産調整に躍起である。しかし、市況の落ち込みに追い付かず、資金繰りは細っている模様だ。
ウジミナスの生産縮小に伴い、新日鉄住金は、別の製造拠点を買収して米国のトヨタ自動車向けの鋼板の材料を手当てするなどの対策を打ってきた。ブラジルの通貨レアルの高騰で輸出が難しくなっているとはいえ、これ以上の生産縮小は、南米市場への供給に齟齬をきたしかねない。避けなければならない問題なのだ。
■再建は容易ではない
しかし、テルニウムは頑なだ。資産売却による資金の確保を主張し、トップ会談でも事態を打開できなかったらしい。もはや、感情的対立だけでなく、テルニウムのキャッシュフローが影を落としているとの見方もある。
とはいえ、ウジミナスの主力取引銀行は、返済猶予の条件に、ウジミナスの資本増強を掲げている。新日鉄住金は、テルニウムが増資の引き受けを拒んだ場合、その分も引き受ける方針を表明している。これが、前述の内容のプレスリリースが公表されることになった背景なのだ。
世界的な鉄鋼不況は、粗鋼生産量で世界2位の新日鉄住金の収益さえ、大きく圧迫している。同社は第3四半期が終わった段階で、2015年度の経常利益が約2000億円と前年度(4517億円)の半分以下に落ち込むとの見通しを公表している。
粗鋼生産量で世界62位(2014年)と体力が乏しいうえ、マザーマーケットのブラジル経済の極端な冷え込みに見舞われているウジミナスを、再建軌道に乗せるのは容易なことではない。逆風下にある新日鉄住金自身が骨身を削って、繰り返し手を差し伸べなければならないリスクは消えていない。
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