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「西武信用金庫 HP」より
銀行が預金「押し付け合い」の暴挙!実質金利マイナスの預金口座で手数料徴収も
http://biz-journal.jp/2016/04/post_14571.html
2016.04.06 文=編集部 Business Journal
マイナス金利は、信用金庫にとってのビジネスチャンスとなった。メガバンクは預金金利を限りなくゼロに近づけて、これ以上預金が膨らまないように厳重にガードしているからだ。
銀行間では預金の押しつけ合いが激しくなっている。大手企業などの普通預金に口座手数料を導入し、次は個人の預金にも適用するつもりだ。
一方で信用金庫は、預金金利の引き上げに動く。西武信用金庫は3月から定期預金の金利を引き上げた。3、4年物は店頭金利に0.01ポイント、5年物は0.02ポイント上乗せした。
西武信金は、そのものズバリ「マイナス金利対応融資」も始めた。日本銀行のマイナス金利政策に合わせ、中小企業に従来の金利の半分程度の低金利で融資するというものだ。マイナス金利の適用を受ける日銀への任意の預け金300億円を引き出して、これを融資に振り向ける。西武信金は預金と融資の両面で優遇策を採っている。
全国の信用金庫にも預金金利引き上げの動きが広がってきた。信金が高い金利(利息)をつけられるのには、こんなカラクリがあるからだ。信金の上部組織である信金中央金庫に預金すれば、利息をもらえるという安心感がある。
信金中金は預金金利を公表していないが、「日銀の当座預金にこれまでついていた0.1%を上回っている」(関係筋)という。信金はマイナス金利分を部分的にカバーできるサイフを持っていることになる。
全国にある260の信金で預金金利を引き上げる動きが広がれば、個人や中小企業の預金が銀行から流出する可能性が高い。大手信金の中には、地方銀行(特に第二地銀)より経営規模が大きいところもかなりある。第二地銀の顧客を奪い取る、またとないチャンスなのだ。
■タンス預金用に金庫を購入
マイナス金利が導入されてから売れ行きが伸びているものがある。それは、個人向け金庫だ。銀行に預金していては金利や手数料を取られるとの懸念から、タンス預金する人が増えている。
マイナンバーの通知カードが配布され始めた2015年10月から、カードの保管場所として個人向け金庫の需要が高まり、出荷が倍増した。さらにマイナス金利の導入が発表されてから、売れ行きに拍車がかかった。
「ホームセンターの売れ筋は重さ50キログラムの金庫で、価格は2万円程度」(流通アナリスト)だという。
金庫の国内シェア1位のメーカーはエーコーで、同社は「個人向けのものがこれほど売れるとは予想していなかった」と語っている。
株式市場では一時、金庫を手がける銘柄が買われた。耐火金庫を製造しているジャスダック上場の日本アイ・エス・ケイの株価は、2月の終値から3月7日の344円まで44%高くなった。ただ、その後は200円台に逆戻りし、3月25日の終値は291円だった。それでも、昨年8月25日につけた昨年来安値(100円)と比較すると3倍近い水準だ。日銀のマイナス金利施行後、タンス預金が増えるという見方が増え、思惑買いにつながった。
金庫はもともと、金融機関やオフィスで重要書類を保管するための業務用が大半だった。経済産業省の「生産動態統計調査 繊維・生活用品統計編」によると、ここ10年間で耐火金庫の出荷台数は05年の23.1万台から14年は11.1万台へと半減していた。
それが15年10月以降は単月ベースで、前年同月比2割増の勢いで増加している。マイナンバーとマイナス金利のダブル特需である。
■定期預金代わりに百貨店の「友の会」を利用
また、百貨店各社の「友の会」が主婦に人気である。毎月一定額を積み立てると、1年後に1カ月分が上乗せされるという仕組みを取っている百貨店が多い。
友の会は顧客を囲い込むために古くからあったが、14年4月の消費増税後、積み立てる人が増えた。さらにマイナス金利時代になり、利回りの高さが俄然注目された。
毎月1万円を積み立てて12カ月を満期とした場合、1万円を上乗せした13万円の買い物ができる。単純計算で年率8.3%と、限りなくゼロ金利に近くなった定期預金よりはるかに有利だ。
高島屋友の会「ローズサークル」(会員数48万人)は、月3万円や5万円といった高額の積み立てが増えている。15年3〜8月中間決算によると、3万円を積み立てる新規の口数は前期比81%増、5万円は94%増と倍増に近い。
大丸松坂屋百貨店の「JOY CLASS」は2月の新規入会数が2倍に増えた。小田急百貨店の「レディスクラブ」も2倍増の勢いだという。
各百貨店は「百貨店をあまり利用しない若者や男性客にも友の会の認知度が広がれば、百貨店全体の売り上げも増える」と取らぬ狸の皮算用をしている。
今年、友の会の積み立ては爆発的に増えることが確実視されている。だが、友の会はあくまで買い物で得をするためのマネー商品。当該百貨店で使える商品券や買い物カードがもらえるだけで、現金が戻るわけではない。定期預金代わりに百貨店の積み立てを活用する動きは、マイナス金利狂騒曲の一コマにすぎない。
■リスクが低く、高利回りの個人向け社債に殺到
三菱UFJフィナンシャル・グループは2月29日、個人向け社債を発行した。個人向け社債は5年目以降に銀行が期限前償還できる条項が付いた10年物で、利回りは年0.15〜0.55%、発行総額は1000億円。三菱UFJの傘下の銀行や証券会社において、1口100万円で販売している。
個人向け社債とは、会社が発行する債券(社債)を個人向けに設計して販売しているものの総称だ。普通社債より投資家への元本や利息の支払いの順位が低い分だけ、普通社債より金利が高く設定されている。会社が潰れなければ、満期時に元本と利子が戻ってくる。
今年は、オリックス(5年物で利率0.415%)やクレディセゾン(5年物で利率0.42%)が個人向け社債を発行した。
高利回り・低リスクの個人向け社債は人気の高い金融商品になっており、申し込みが殺到し買えない場合も多い。だが、リスクが低いとはいえ、社債は元本が保証されている商品ではない。売却したい時に売れない可能性がまったくゼロではない。年限を見て、償還期限まで発行体(発行している会社)が安全かどうかを見極める必要がある。
タンス預金用金庫、百貨店友の会、個人向け社債――。これがマイナス金利時代の3点セットだ。
マイナス金利は、労働や投資意欲をかき立てず、かえって生活の不安を煽る結果となった。つまり、庶民の生活実感とは別の次元で決定されたという意味で失敗だったといえそうだ。
(文=編集部)
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