交信不能のX線天文衛星「ひとみ」の現状 JAXA会見(全文1)分離の可能性2016.04.04 12:30 X線 ブラックホール 投稿を共有 2月17日に打ち上げられたX線天文衛星「ひとみ(ASTRO-H)」の通信が途絶えている問題で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1日、記者会見し、「ひとみ」が2つに分離した可能性を報告した。
【中継録画】交信不能のX線天文衛星「ひとみ」の現状は? JAXAが会見 「ひとみ」の通信異常についての説明 交信不能のX線天文衛星「ひとみ」の現状をJAXAが会見 司会:皆さまこんにちは。時間になりましたので、ASTRO-H、「ひとみ」の状況に関しまして説明会を開催いたします。まず初めに出席者を紹介いたします。中央、JAXA理事、宇宙科学研究所長、常田佐久でございます。皆さま向かって左側、宇宙科学研究所、宇宙科学プログラムディレクター、久保田孝でございます。向かって右側、追跡ネットワーク技術センター長、原田力でございます。 それから、こちらでございますが、説明補助といたしまして、宇宙科学研究所、研究総主幹、満田和久でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。私は本日の司会進行を担当いたします、JAXA広報部長の庄司と申します。よろしくお願いいたします。 それではまず、ASTRO-H、「ひとみ」の現状につきまして報告を申し上げます。まず、理事の常田から説明申し上げます。 常田:皆さんこんにちは。「ひとみ」の通信異常について、大変ご心配を掛けております。今日は前回の記者の方々へのご説明以降の衛星の状況、それから原因についての調査の状況等についてお話しさせていただきたいと思います。 具体的なお話は資料に基づきまして、久保田のほうからさせていただきますのでよろしくお願いいたします。 久保田:久保田でございます。それではお手元の資料に基づきまして、X線天文衛星「ひとみ」の状況についてご説明いたします。資料の中に時刻が出てきますけれども、これは全て日本時間、JSTで記述してありますので、あらかじめご了承いただければと思います。 運用の状況 ページをめくっていただきまして、2ページ目、運用の状況ですけれども、通信不通が判明したのが3月26日土曜日時点でございまして、このときは、2ページ目の下のほうに書いてありますけども、初期機能確認フェーズの段階でございました。いろいろな天体で観測の初期機能の確認をしていたところでございます。 3ページ目にまいりまして、どんなデータが受信できていたかというのが色で分けておりますけれども、3ページ目の下の図に、USCと書いてありますのは内之浦局でデータを受信したもので、3月26日の午前3時2分まではテレメトリ・データを取得しておりまして、非可視、内之浦から見えないときのデータも全て受信しております。黄色のところで書いてありますのがマスパロマス局とミンゲニュー局でございまして、このときは軌道決定するための運用、これ、レンジング運用と言っていますけども、そこで行っておりましたので、リアルでの、リアルタイムでの運用というのは行っておりませんでした。ただし、運用中のデータに関しましてはHKデータとしましてデータを取得して、後日解析するという、そういう予定でございました。右側の赤で書いておりますミンゲニュー局のときに電波が受信できなくなったと、そういう状況でございます。 ページをめくっていただきまして、4ページ目ですけれども、「ひとみ」は、先ほど言いましたように初期機能確認フェーズで、いくつかの天体のほうに衛星が望遠鏡を向けまして観測をしているところです。これはすでに何十回とも行っている運用でございます。追跡管制時付ということで日付が入ってますけども、これは運用開始の時刻を書いておりまして、先ほどのような色分けで状況を書いております。衛星状態ですけども、内之浦局で運用していたときには正常でありまして、黄色の、赤のところで音信不通になりました。その後、4回、内之浦、勝浦局、あるいはサンチアゴ局で電波を受信しております。 データを解析のときに分かったことは、前回の説明会でお話ししましたように、太陽のプレゼンスがなかったこと、発生電力が低下したこと、温度分布が高いはずが、少し低くなっていたり、低いところが上がっていたという温度分布の変化がみられました。その部分の解析をしましたところ、姿勢異常というのが発生したのが、これはそのテレメトリ・データからの逆算で推定になりますけれども、3月26日の午前4時10分ごろに起こったと推定されています。 それから一番下になりますけども、JSpOCの情報から、3月26日の10時42分プラスマイナス11分ごろにブレークアップされた、ブレークアップ推定というのが、情報が来ているのは皆さまご存じのとおりかと思います。これについてはまた後ほど説明したいと思います。 5ページ目に行きまして、繰り返しになりますけども、各局の運用のときに、特に姿勢、電源、通信、データ処理、温度分布についてどういう状態であったかというのを書かせていただいています。赤字が異常と思われるところになります。3月26日3時2分は、全てのデータをチェックしましたけども異常は見られませんでした。3月26日のマスパロマス2つ、それから3月26、ミンゲニュー局で姿勢異常、電源、発生電力低下、それから温度分布の異常というのが見られたというのが表にまとめているものです。 次ページ電波の受信はできている 6ページに行きまして、通信不良と(※判別できず)発生が起こってから国内外のJAXAの追跡局を優先的に割り当てて、推定される「ひとみ」の軌道にアンテナを向けてコマンドを送信続けて、テレメトリの受信を今、試みているところで、その途中に4回の通信機会において電波を受信しています。残念ながらテレメトリの取得には至ってないんですけれども、電波を受信したということは、衛星がオンになって送受信機がオンになっているということだと、今は考えています。 その時刻の詳細を4つ挙げています。電波を受信した時刻と、受信した時間が書かれています。電波を受信した方向、時刻ですけども、JAXAの把握する限り、他の衛星が存在しないことを軌道情報などから確認しており、また、周波数等もその妥当性を考えて、この電波は「ひとみ」から発信された可能性が高いと今は考えております。全部の衛星について、情報がないものもありますので、完全というわけではないですけども、今持っている情報では発信された可能性が高いというふうに考えているということです。 電波を受信したというのはどういうことかというのが、7ページ目にちょっと絵を描かせていただきました。左側が正常時で、地上から電波コマンドを送ると、衛星側はそれを受け取って、衛星の状態をテレメトリというデータとして送ってくれると、これが通常行っている運用でございます。今回、4回、電波を受信したというのは、テレメトリ・データは来ませんでしたけれども、衛星側がオンになっていて、地上からのコマンドを受け取っていて、その電波を返していると、そういう状況です。 レーダーおよび望遠鏡での観測状況について 続きまして、8ページ、9ページ目は原田さん、お願いいたします。 原田:追跡ネットワーク技術センター長の原田でございます。8ページ、9ページ目で、レーダーおよび望遠鏡での観測状況について報告いたします。3月26日に通信異常が発生しましたが、それ以降、日本宇宙フォーラム殿が所有しております上斎原スペースガードセンターのレーダー、それから美星スペースガードセンターの光学望遠鏡を使いまして、「ひとみ」の軌道周辺を観測しております。 ご承知のとおり、JSpOCは「ひとみ」周辺に5つの物体があると公表されておりますが、われわれの上斎原および美星の観測によりまして、これまでのところ2つの物体の軌道を把握しております。軌道を把握しているというのは、物体の軌道決定までしているという意味でございます。この把握しました軌道情報を基に時間をさかのぼりますと、3月26日の午前10時37分ごろに、これらの物体は「ひとみ」の当初の軌道上のほぼ同位置にいたということが判明しました。これらの事実により、両物体のどちらかは「ひとみ」から分離した物体なのではないかと、今のところ考えております。先ほど計算しました10時37分というのは、JSpOCがブレークアップを起こしたと公表している時刻、10時42分プラスマイナス11分と公表されていますけども、この時刻とも整合しております。 次のページ、9ページですが、これが光学望遠鏡による観測結果でございます。写真1ですが、ちょっと見にくいかもしれませんが、この写真1の中で一番明るく写っている物体を観測しております。左端のところにある物体がそれであります。このときの、この望遠鏡は1メートル、口径1メートルの望遠鏡で観測しておりまして、測定した明るさというのは、この写真のときには3.2等級でございました。 それから右側の写真、写真2ですが、これは50センチ、0.5メートル、直径が0.5メートルの望遠鏡で撮影したものですが、こちらの物体については、もうこの写真の状態は5.4等級なんですが、何回か観測したところでは5等級から9等級の間で観測されているという状況でございます。 復旧に向けた運用状況、現在の運用状況と要因分析について
久保田:それでは最後のページになりますけども、10ページについてご説明します。復旧に向けた運用状況、現在の運用状況と要因分析についてご説明させていただきます。まず衛星との通信復旧を最優先と考えまして、引き続き国内外のJAXA追跡局を使用した通信機会、これは1日約20回程度行って、衛星に向けて電波およびコマンドを送信して、通信の確立に最善を尽くしているという状況です。先ほどもお話ありましたけども、国内外のさまざまな機関に協力を今、いただいているところでございます。 それから並行しまして、以下の3つの重要事象について作業を進めておりまして、1つは姿勢異常事象。それから、衛星から複数の物体が発生したという事象。それから通信異常事象ということで、これらにつきまして取得済みのテレメトリ・データの解析と、それを基に今後の衛星状態を推定するという検討、それから要因分析等を今、進めて、それらを進めるとともに、それらを反映した対策の検討を今、行っているところです。この姿勢異常、それから衛星から複数物体が発生した事象、通信異常というこの因果関係につきましても今、検討を進めている段階です。 司会:説明は以上でございます。それでは、質疑応答に移ります。ご質問のある方は挙手いただきまして、ご所属、お名前をおっしゃっていただいてからご質問をお願いいたします。マイクをお持ちしますので、マイクを持ってご質問をお願いいたします。ではご質問ある方。はい、じゃあ、マイクをお願いします。こちらから。マイクを、はい。大丈夫ですか。 https://thepage.jp/detail/20160404-00000004-wordleaf?page=3 エックス線天文衛星 「ひとみ」軌道に物体10個 米軍確認「良くない状況」 毎日新聞2016年4月3日 東京朝刊 宇宙 宇宙 科学・技術 紙面掲載記事 すべて表示する 【ワシントン共同】宇宙空間でトラブルが起きたエックス線天文衛星「ひとみ」の軌道に、10個の物体があるのを確認したと米戦略軍統合宇宙運用センターが1日、ツイッターで発表した。 3月27日に確認した際は5個だった。その後に新たなトラブルが発生したわけではなく、物体の数を精査した結果10個と判明したという。戦略軍は衛星が分解した破片とみている。 データを分析している米ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのジョナサン・マクドウェル博士によると、これまで戦略軍が「衛星の主要部分」とみて追跡していた物体は、分離した衛星の一部だったことが判明した。 マクドウェル氏は「主要部分に見えるほど破片が大きかったわけで、良くない状況だ」と指摘した。 新たに主要部分と認定された物体は、トラブル発生後から徐々に高い軌道に移行しているという。マクドウェル氏は「トラブルにより、軌道を押し上げるような力が働いたらしい」とみている。 http://mainichi.jp/articles/20160403/ddm/041/040/072000c
|