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介護離職、年間10万人で社会問題に…会社側の「間違った説明」が原因の場合も
http://biz-journal.jp/2016/04/post_14522.html
2016.04.03 文=鬼塚眞子/一般社団法人介護相続コンシェルジュ代表、保険・介護・医療ジャーナリスト Business Journal
介護や看護を理由とした離職・転職者数は年間10万人を超える(内閣府「平成27年(2015年)版高齢社会白書」)。団塊の世代が後期高齢者に突入する「2025年」には、全人口の3人に1人は65歳以上と見込まれている。必然的に今後、親の介護に携わる働き世代も増えることが予測される。従業員だけでなく、企業にとっても介護離職問題は切実な問題だ。そこで、具体的な防衛策にはどんなものがあり、ポイントは何かを検証していきたい。
■両立のための制度とは
介護離職をした人に理由を聞くと「配偶者の理解が得られない」「自分以外に介護をする人がいない」といった個人的な理由のほか、「会社にこれ以上迷惑をかけられない」「職場で理解が得られない」といった回答をする人が多い。
厚生労働省は、育児・介護休業法により、仕事と介護の両立のための制度として、「介護休業制度」「介護休暇制度」「対象家族の介護のための所定労働時間の短縮等の措置」等を定めている。概要を簡単に紹介したい。
【介護休業制度】
労働者は、事業主に申し出ることにより、要介護状態にある対象家族一人につき、最長93日の休みを取得できるが、原則1回のみに限られた。このため、有給休暇をやりくりする人が多かった。2017年からは対象家族一人につき、要介護状態に至るごとに93日を限度として3回までの分割取得が可能となる予定(現在、国会で審議中)。
【介護休暇制度】
要介護状態にある対象家族の介護および、通院等の付き添い、介護サービスの提供を受けるために必要な手続きの代行等の世話を行う労働者は、事業主に申し出ることにより、要介護状態にある対象家族が一人の場合は年5日、二人以上の場合は年10日を限度として、介護休暇を取得することができる。
【対象家族の介護のための所定労働時間の短縮等の措置】
事業主は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者について、就業しつつ対象家族の介護を行うことを容易にする措置として、対象家族一人につき、介護休業をした日数を合わせて少なくとも93日間利用可能な勤務時間の短縮の措置(注)を講じなければならない。
(注)短時間勤務の短縮等の措置、フレックスタイム制、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ、労働者が利用する介護サービスの費用の助成その他これに準ずる制度のいずれかの措置。この他にも、「時間外労働を制限する制度」「深夜業を制限する制度」を設けている。
■制度はあるというものの
従業員が介護離職をする理由のひとつには、こうした制度が制定されているにもかかわらず、経営者や人事関係者が介護休業や介護休暇などの制度に明るくないことも考えられるのではないか。
実際、筆者が大企業から中小企業までさまざまな企業規模の経営者や人事労務管理関係者に聞いてみたところ、「介護は従業員のプライベート問題。企業には関係ない。がたがた言い出す従業員は辞めさせればいい」と真顔で答えた経営者もいたほどだ。実は、ここに大きな誤解が存在している。
介護休業制度・事業継承分野の労務問題に詳しい社会保険労務士の荒久美子氏は、次のように指摘する。
「介護休業や介護休暇は法律で定められている。これらの休業・休暇を労働者に与えるのは事業主の“義務”となる。“義務”であるため介護休業制度や介護休暇制度を就業規則に規定していない、または就業規則を作成していないからといってこれらの制度が利用できないわけではない」
企業側の誤解はほかにも挙げられる。介護休業や介護休暇の被介護者(介護を受ける人)として認められるのは、従業員の両親だけではない。配偶者(内縁の妻などの「事実婚」を含む)、および配偶者の両親、子、祖父母や兄弟姉妹、孫も対象(祖父母・兄弟姉妹・孫については、現状では“労働者が同居しかつ扶養している”という条件が必要)となることだ。
残念ながら、介護を受ける人の範囲を熟知している企業関係者ばかりではない。こんな実例がある。配偶者の両親の介護休暇を申し出たにもかかわらず、人事労務担当者から「本人の両親が対象で、配偶者の両親の介護による休暇は認められない」と、間違った説明をされた。「介護のためには辞めるしかないのか」と思いあぐね、辞表を提出する寸前に、ふと思い立って制度を調べて間違いに気づき、辞めずに済んだのだ。
この人のように自らアクションを起こす人ばかりではないはずだ。仮に間違った説明を受け、それを鵜呑みにしていたとしたら、どうなっていただろう。簡単に取り返しのつかない事態に陥ってしまうどころか、経済的損失だけでなく、精神的なダメージも計りしれない。
多くの人は介護保険制度や介護休業制度、介護休暇制度に詳しくはない。そんななかでいざ介護となると、介護保険の手続きや親族の連絡などで忙殺され、心身ともに疲れ切ってしまうのが現状だ。冷静な判断ができなくなってしまうのも無理からぬ話だ。
そんな介護初期段階のためにあるのが介護休業だ。
「従業員が直接的な介護に専念するための休業と誤解されている方は非常に多い。だが、本来の目的は、要介護者が必要な介護サービスを得ることができ、なおかつ自分自身が仕事と介護を両立して、仕事を継続できるようにその準備を行うためのものだ。具体的には、介護保険の認定手続きやケアマネージャーやサービス事業者の選定、要介護度によっては住宅改修や施設探し、親族間の役割分担の相談などを行う。介護休業の上限が93日である根拠は、こうした点にある」(荒久美子氏)
企業にとって、介護休業や介護休暇は制度上の義務であり、従業員に理解を示したいと思っていても、介護休業などの制度だけで介護離職問題のすべてが解決するわけではないことも忘れずにいたい。
従業員の親族が介護保険制度の適用となり、その従業員が医師や行政、介護関係者の窓口となるキーパーソンともなると、さまざまなシーンで介護に関する決断や選択が求められるようになる。だが、介護休業制度や介護休暇制度は、企業の実務問題に言及してはいない。そのため従業員が休んだり、早退したり、職場に連絡が来るようになり、次第に従業員の生産性が低下していくなどの現実に直面すると、「企業が実務的にどこまで踏み込めばいいのか」という命題を叩き付けられることになる。
当然のこととして、企業は介護休業制度や介護休暇制度をフォローする独自の制度の制定が急務となる。
「企業は従業員が柔軟な働き方ができるように、独自の時間勤務制度の採用や介護休業制度などの制度の構築が必要となる。ただし、こうした場合には就業規則などに記載される必要がある」(同)
では、従業員が介護休業を取得した場合、企業としてフォローすべきことは何か。企業が従業員と定期的に連絡を取り、場合によっては、企業関係者と面談するだけでなく、専門家への相談を促す、相談窓口の設置も不可欠となる。
介護休業以上に重要になるのが、復職問題だ。必要に応じて半日や時間単位などの年休をとれるようにしたり、時間短縮となる場合は、短時間だけでなく短日勤務の選択肢を設けるなど社内で仕事と介護の両立制度を見直し、すぐに活用できるようにすることも忘れずにいたい。
■助成金制度発足の可能性も
介護休業制度の企業独自の規定の必要性はわかっていても、中小企業は、まだまだ十分とはいえないのが現状だ。「厚生労働省 雇用均等基本調査」によれば、介護休業制度の規定整備状況は、500人以上の企業は平成26年度では99.2%であるのに対し、30人以上は88.0%、5人以上の企業は66.7%だ。規模と規定整備は比例しているというべきか。
こうした要因を鑑みると、人手不足ということもあるが、それ以上に切実な問題が資金面だ。中小企業にとって、目先の資金づくりや商品開発や施設充実に少しでも資金を回したいのが本音だろう。
しかし、朗報を紹介したい。厚生労働省で作成している「介護離職を予防するための両立支援対応モデル」(厚生労働省のHPで公開)に基づく取り組みを行う企業に対して、平成28年度から「介護支援取り組み助成金(仮称)」が創設される予定だ(現在、国会で審議中)。申請要件は以下のすべての取り組みを行った場合に支給対象を想定するもの。
(1)社内アンケートなどで従業員の仕事と介護の両立に関する実態把握
(2)社内研修の実施、リーフレットの配布等で介護に直面する前の従業員への支援
(3)相談窓口の設置及び周知といった介護に直面した従業員への支援
企業の規模にかかわらず、1企業1回のみ60万円を給付する見込みだ。このほかに、育児介護支援プランコース(対象は中小企業のみ)の創設も検討されている。こうした制度が新設され、企業が活用することで、介護離職に歯止めが多少なりともかかることを期待したい。
とはいえ、企業も従業員も安易な自己判断は禁物だ。新設される助成金以外にも活用できそうな助成金がある。その申請および就業規則の策定には、介護労務問題に明るい専門家との連携が、今後不可欠になることは間違いないだろう。
また従業員も「介護になったら、会社がなんとかしてくれる」と勤務先に依存するのではなく、第三者機関に相談するなどの自助努力も必要になってくる。企業も従業員も介護問題を先延ばしにするのではなく、まずは意識を持ち、経験者の話を人ごとでなく、自分に置き換えて話を聞いてみるだけでも、介護離職防止の第一歩になるはずだ。
(文=鬼塚眞子/一般社団法人介護相続コンシェルジュ代表、保険・介護・医療ジャーナリスト)
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