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マンションは'03年に分譲された〔PHOTO〕gettyimages
飛び交う怒号! 住友不動産「全棟建て替え」住民説明会・完全中継
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48268
2016年03月30日(水) 週刊現代 :現代ビジネス
住民説明会はマスコミを締め出して行われた。部屋の外には部外者の出入りを監視するようにスーツ姿が立ち並んだ。本誌はその会場内の一部始終を入手した。関係者が語る内幕とともに紹介しよう。
■200万円? 安すぎるよ!
「聞こえねーよ!」
「返事しろよ、返事を!」
会場には怒号が響き渡った。
横浜駅西口から徒歩5分ほど、オフィス街の中心部にあるホテルプラム。3月5日、住友不動産と熊谷組は「傾きマンション」の全棟建て替え方針を伝えるため、ここで住民に対する説明会を開催していた。
住友不動産からは伊藤公二取締役、熊谷組からは樋口靖社長らが出席。ホテル3階の会場に集まった150人以上の住民に対して、全棟建て替えにともなう住民への補償内容を説明する段に入った時だった。
会場に設置されたスライドに補償内容の詳細が映し出されると、住民たちは次々と写真を撮り始めた。
「慰謝料200万円」の文字が出てくると、会場はざわついた。
「安いな、と思った」(出席した住民の一人)
仮住まい家賃はマンションの解体着工までは30万円以内の実費に加えて、現在の管理費、駐車場代などもすべて負担する。解体着工後の仮住まい家賃については一律月額40万円を支給する。部屋を売却したい住民には、購入時の価格の1・2倍の価格で買い取る……。
住友不動産の担当者が補償内容を説明する中、住民からはため息が漏れる。
質疑応答に入ると、最初に質問に立った住民がさっそく、住友不動産のこれまでの不誠実な対応に怒りを露にした。それに答えようと伊藤取締役がマイクを握り、話し始めた時のことである。
「聞こえねーよ!」
冒頭のように会場は一気に怒号に包まれたのだ。
住民たちは畳みかけるように伊藤取締役に詰め寄っていく。
「私の代から含めて理事会は本当に煮え湯を飲まされてきているんですよ、その結果がこの慰謝料200万なのか」
「ららぽーとのほうは慰謝料300万円と聞いていますが」
「ららぽーと」とは、同じく「傾きマンション」として昨年騒がれた三井不動産と旭化成が手掛けた横浜のマンションのこと。そこでは三井不動産から住民に慰謝料として300万円が提示されていたため、なぜ住友不動産はそれより少ない額なのかと問い詰めたわけである。
伊藤取締役が「過去の判例などを勘案しまして……」などと答えると、会場からは、「なんで200万円なのかわかんないんだけど!」「安すぎるよ!」とヤジが飛び交う。
一人の女性住民は突然、切実な実情すら語り出した。
「うちの場合は、毎日毎日ヒビが増えていく。毎日バッツン、バッツンとすごい音がして、昨日なんかはバーンって音が3回くらいした。私はそれを2年間も我慢してるんだよ。私は2年前から本当に大丈夫なのってずっと聞いている。それで、この金額ってなに? あなたは私の家族がどんなに辛い思いをしたかはまったく興味がないってこと?」
■なめるのもいい加減にしろ
本誌の取材に、住民の一人は言う。
「200万円というのは住友不動産の誠意がまったく感じられませんでした。'03年にこのマンションが分譲された1~2年後から、われわれは渡り廊下部分のずれなどを指摘し続けてきたが、『問題ない』の一点張りで押し通されてきた。'14年に杭が堅い地盤に未達であることがわかった際も、住友不動産は南棟だけを建て直して、残りの東棟とA棟は補修すれば済むと言い続けてきた。
われわれは不安の中で何年もこの欠陥マンションに住み続けてきたのに、いまさら『全棟建て替えるので、200万円払うから許して』は通らないでしょう。
しかも、住友不動産は説明会に社長すら出てこないんだから、はなから誠意を示すつもりがない。だから会場では、『なめるのもいい加減にしろ』という住民たちの怒りが爆発した」
再び会場の様子に戻ろう。
怒りが収まらない住民が、次第にめいめいに思いのたけを話し出すようになると、会場は収拾がつかない事態に陥っていく。ついには住民同士の間で、「黙れって言ってんだろ」「あんたはどこの誰だ」などと怒声が飛び交い、「仲間割れ」の応酬に突入していく。
「南棟ではわからないと思います、残っている人の2年間の気持ちは」
「すぐ出て行けって言われた私たちの気持ちを、あなたたちもちっともわかっていません」
'14年に傾きが確認されて建て替えが決まった南棟の住民は、いち早く仮住まいするなどマンションの外に出ていた。残りの棟の住民は建て替えをしてもらえず、安全が確保されないマンションに住み続けた。
また、南棟の住民は'14年から補償金などを受け取ってきたが、ほかの住民はほとんど受け取っていない。そんな両者の立場の違いが、ここへきて一気に不満となって噴出したのである。
南棟と別の棟。二分された意見対立はヒートアップするばかりで、南棟の住民が語れば同じ南棟住民から拍手が起こる。すると別の棟の住民は、「黙れ!」と喧嘩腰で突っかかるという始末である。見るに見かねた住民の一人は叫んだ。
「違うんだよ。そういう分断をした住友不動産、あんたらに責任があるんですよ!」
■「全棟建て替え」のワナ
住民説明会を仕切った住友不動産関係者は言う。
「会場はひどい荒れ模様だった。われわれはこうした事態を見越して、最初に住民に謝罪する際に頭を下げる時間は何秒にするか。そうしたことまで事前に準備していた。質疑応答に入った際には、あらかじめ文句を言いそうな住民にはたくさん当てないということまで話し合っていた。だから、なんとか乱闘騒ぎのような危険状態になることは避けられた」
なにより、と住友不動産関係者は続けて明かす。
「われわれが一番恐れていたのは、実は住民の管理組合理事会と決裂することだった。理事会に突っぱねられて、『住友不動産が勝手に全住民一人一人と交渉してください』となれば、こちらがいくら人手と時間を割くことになるか。ましてや住民の間でも意見がバラバラなので、想像するだけでもぞっとする。その最悪のシナリオが避けられたのが一番の収穫だった」
全棟建て替えには全所有者の5分の4の賛成が必要になるが、それを取りまとめていくのは住友不動産ではなく、住民による管理組合になる。
住友不動産は「全棟建て替え」や「手厚い補償」を提案して誠意を見せているつもりだが、最も大変な調整作業は住民側に「丸投げ」したというのが実情なのである。
「マンションは約260戸と住民が多い。管理組合はこれから全住民へのアンケートをもとに意見を集約していくことになるが、住民が分断されている中で意見をまとめるのは容易ではない。意見集約が長引くほど、問題が長期化して住民はどんどん疲弊していく。
住民説明会後に行われたマンション管理組合による記者会見で組合理事が、『いまになって全棟建て替えになって、どうしてくれるんだという思いが強い』と語っていたが、これが本音でしょう。全棟建て替え方針が出てきたことで、むしろ住民の混乱は深まってしまった」(現場を取材した記者)
■誠意が微塵も感じられない
問題はそれだけではない。
今後、マンションを全棟建て替えする際には熊谷組が施工を担当する予定なのだが、住民の熊谷組に対する反発は大きい。
実際、説明会では住民から、「熊谷にこれ以上、建物に指一本触れさせないでください」「おたく(熊谷組)の方針に、まったく信用ができないんです」といった声が上がっていた。
弁明するように、樋口社長が「できればもう一回チャンスをいただきたい」と語っても、住民からは「もう一回のチャンスとか、そんなに悠長なことを言っている暇はないんですよ」と、断固拒絶する声が上がったほどである。
杭はきちんと打っていないし、基礎のコンクリート部分にも杜撰な工事を行っていたのだから、熊谷組に任せたくないという住民の気持ちは理解できる。しかし、そんな住民の願いはかなえられそうにない。
前出の住友不動産関係者が言う。
「実は南棟だけの建て替えが決まった'14年段階から、住友不動産は工事や補修について大手中小の建設会社10社以上にあたってきた。が、どこも受けてくれなかったというのが現実。
今回改めて全棟建て替えということになったので、また各社に当たることになるが、どこも受けてくれないのは目に見えている。結局、熊谷組にやらせるけれど、きちんと第三者機関にチェックさせながらやるというところに落ち着かざるを得ない」
問題なのはその熊谷組に、今回の「欠陥問題」をめぐって反省の色がうかがえないことである。
「熊谷組はいまでも全棟建て替えせずに、補修するだけでも安全上は大丈夫と思っている。しかも全棟建て替えとなれば費用負担はほぼ全額を熊谷組が負うことになるから、本音では納得がいっていない。
しかし、技術論をいくら主張し続けても、ブランドイメージが毀損していくだけ。一方で、全棟建て替えの建築コストは、一戸毎に2000万~3000万円と考えれば、全262戸で70億~80億円。目下、熊谷組の業績は絶好調なのでそのくらいの負担は吸収できると踏んで、全棟建て替えに渋々応じた」(熊谷組関係者)
説明会は終了予定時刻近くになっても、住民の怒りが収まらず、とめどなく怒りの声がステージに向かって飛び続けた。
「どうしてくれるんだよ!」
「誠心誠意が微塵も感じられませんね」
「形で示してください!」
「住友不動産が開設する相談窓口も17時で終了じゃなくて、24時間にしてください。17時なんて、仕事をしていたら(電話を)かけられないですよ」
出席した住民の一人は説明会後、本誌記者に次のように漏らした。
「住友不動産や熊谷組の居並んだ幹部たちは最初から最後まで、われわれの声に真摯に答えようとはしなかった。誠実なふりだけの売り主と反省をしないゼネコンを相手に、長い交渉がこれから始まると思うと、それだけで気分が悪くなる。いまは怒りと不安しかない」
全棟建て替えに向けて、住民たちはいまそのスタートラインに立たされた。住民たちがこの難局を乗り越えて「普通の生活」を取り戻せるまでに、一体これからどれだけの長い時間が費やされることになるのだろうか。
「週刊現代」2016年3月26日・4月2日合併号より
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