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東京電力本社(「Wikipedia」より/Theanphibian)
東電と関電等しか選べないという完全独占体制で、日本と国民が絶望的に失ってきたこと
http://biz-journal.jp/2016/03/post_14464.html
2016.03.30 文=横山渉/ジャーナリスト Business Journal
いよいよ4月1日から電力自由化がスタートする。電力自由化は2000年から段階的に行われてきた。大規模工場やデパート、病院といった大口契約の「特別高圧」を皮切りに、04〜05年に中規模契約の「高圧」が自由化された。今回は一般家庭の「低圧」が対象で、これで全面自由化ということになる。
正確にいえば、これまで家庭や商店向けの電気は、東京電力など各地域の大手電力会社だけが販売しており、家庭や商店では電気をどの会社から買うかを選ぶことができなかった。それが、料金メニューやプランを見て、好きな会社から買うことができるというわけである。
家庭によっては、電力会社やプランを変えることにより月々の電気料金引き下げも可能となるため、メディアでは盛んに電気料金の安さを訴えるCMが増えており、雑誌も電力会社ごとのメニューを比較した特集が多い。
ネットでも簡単に電気料金をシミュレーションできるサイトが増えている。「energy navi」の運営会社、セグメントの佐藤洋平氏はこう話す。
「来年はガスの自由化もあるので、電力会社とガス会社は新規顧客開拓というよりも、既存顧客の流出防止という視点で動いています。初年度は希望的観測も含めて、10%くらいの消費者が契約する電力会社を変えるのではないかと思います」
また、電力比較サイト「エネチェンジ」の運営会社、エネチェンジの巻口守男副社長は年間3〜10%(203〜768万件)の切り替え顧客が生まれると見ている。
「02年に電力自由化を行ったイギリスでは、電力比較サイトを参考にして契約するのが一般的になっています。日本でもネットを見て切り替える人が20%程度はいると予測しており、当社はそのネット切り替えシェアの50%(23〜76万件)獲得を目指しています。なお、当社は料金だけの比較ではないというポリシーから、『電気料金比較サイト』ではなく『電力比較サイト』と謳っています」
■電力自由化の意義は料金だけではない
電力の全面自由化に既存の大手電力会社は反対してきたが、状況が大きく動いたのは、11年の東日本大震災がきっかけだ。地域をまたいだ電力の融通ができず計画停電をする事態が相次いだ。それまで効率的といわれてきた大規模集中型発送電システムの脆弱性が露わになったのである。
今回の電力自由化においては、地域に根ざして電力を販売する新しい電力会社が生まれている。電力の「地産地消」だ。福岡県みやま市のみやまスマートエネルギーは、自治体や地元金融機関などの出資で設立された。地産地消を目指している会社は、茨城県の水戸電力、神奈川県の湘南電力、福島県の会津電力など、全国に10社以上ある。
こうした地域新電力のメリットは、地域内で資金を循環させることにより、関連産業への投資や雇用の促進を通じ、地域活性化に貢献できることだ。みやま市の例でいえば、これまでは同市民の電気代はすべて九州電力に徴収されていた。しかし、自由化によって少なくともみやまスマートエネルギーと契約している家庭の電気代は市内に落ちることになる。
地域新電力もそうだが、太陽光や風力など再生可能エネルギーの販売を謳う電力会社も出てきた。会津電力のサイトの設立趣意には「16万人の『原発難民』を生んだ福島に、原発との共存はありえません」とある。福岡に本社を構える「自然電力」は3人の若者が実績ゼロから立ち上げたベンチャーだ。
自分が使う電気がどのようにつくられているのか、すなわち発電方法を基準に電力会社を選びたいという人もいるだろう。ただ、日本では今のところ、電源構成表示が電力会社に義務付けられていないため、わからない部分も多い。とくに東電や関電などの大手電力会社は情報開示を渋っている。
しかしながら、再生可能エネルギーだけ発電しているという電力会社を選んでも、残念ながら「自分の家の電気はクリーンな電気」ということにはならない。既存の送電網を使って送電しているため、送電線の中で火力や原発の電気と“混じって”しまうためだ。100%クリーンな電気を使うには、送電線まで別にしなければならない。
■消費活動の自己決定権
では、電力自由化は再生可能エネルギーの普及にとってなんら影響力がないのかといえば、決してそんなことはない。自由化によって、消費者の各家庭が1票の“投票権”を得たと考えればよい。短期的な利益を追い求めて料金が安い会社を選ぶか、少しくらい高くても長期的な視野に立って選ぶかは消費者次第だ。
たとえば、少しぐらい電気料金が高くなっても、地元経済の活性化に貢献したいという思いから地域新電力を選ぶという選択肢があっていい。要するに、消費者にとって電力自由化の最大のメリットは、電気料金が安くなるかどうかという瑣末なことではなく、「選べること」「選択肢を得ること」自体なのである。「消費活動の自己決定権」の獲得だ。
たとえば、不祥事を起こしたメーカーの売上が落ちることはよくある。企業の不正があまりにひどいと、不買運動だって起きる。大手電力が地域独占の時代は、イヤだなと思っても消費者は何もできなかった。しかし、これからは「契約を変えるよ」という意思表示ができるようになる。電力市場を消費者のものとすることができるのだ。
福島原発事故後、1兆円以上の公的資金を受けた東電は福利厚生施設である「東京電力病院」を継続させようとしていたが、株主総会で東京都の猪瀬直樹副知事(当時)が厳しく追及したため、同病院は14年2月に閉鎖された。このケースでは大株主である東京都の力が働いたために物事が動いたが、一般消費者が何を言ってもムダだっただろう。
■独占インフラだった送配電網
エネルギーの市場改革は今後も続く。都市ガスの小売り全面自由化が17年4月に始まる。これにより、東京ガスなど都市ガス3社には22年4月のガス導管部門の分社化が求められる。
20年4月には発送電が分離される。競争が進めば、国が家庭向けの電気料金を認可する規制も20年以降に撤廃される予定だ。発送電分離は、電力各社が自社の財産として抱え込んでいる送配電網を広く開放して、多くの事業者が使えるようにすることだ。どの事業者にも必要な独占インフラである送配電網を開放しなければ、いくら法令上自由化しても、競争は起きないのである。道路にたとえれば、「私道」を「公道」に変えて、誰でも通れるようにするということだ。
問題は、どのように分離して運用するかだ。大手電力会社の影響が強いまま送配電部門を形だけ切り離しても意味はない。元経済産業省官僚の古賀茂明氏はかつて、筆者の取材にこう話していた。
「たとえば、東京電力を『東京発電』と『東京送電』に分離しても、兄弟会社やグループ会社のような資本関係が残れば、送電網は東京発電に有利な使い方をされてしまい、公正な競争にならない。東京発電をいくつかに分割して売却すれば、東電のDNAを薄めることができるだろう。市場原理や競争原理をきちんと導入するというのが大切だ」
エネルギー市場の自由化、とりわけ電力市場改革からはまだまだ目が離せない。
(文=横山渉/ジャーナリスト)
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