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生涯現役のための「40歳定年」のススメ…会社を辞めても通用する人の共通点
http://biz-journal.jp/2016/03/post_14351.html
2016.03.23 構成=小野貴史/経済ジャーナリスト Business Journal
「35歳転職限界説」なども囁かれ、独立や転職をためらっている人も多いはず。さらに、年金支給開始年齢の引き上げや「老後破綻」などがクローズアップされ、「より長く現役として働きたい」と願う人も少なくない。
そこで今回は、『会社に頼らないで一生働き続ける技術 ―「生涯現役」40歳定年のススメ』の著者で、自身も年収1300万円の大企業を飛び出し現在はフリーのジャーナリストとして活躍する井上久男氏に、「会社に頼らないで一生働き続ける技術」について聞いた。
『会社に頼らないで一生働き続ける技術』(井上久男/プレジデント社)
――この本のテーマには、多くのサラリーマンが向きあうと思います。
井上久男氏(以下、井上) 本のタイトルは『会社に頼らないで一生働き続ける技術』ですが、書いたことは技術ではなく思考方法です。40歳からのキャリアをどうするかについて、正解はないと思います。自分から現場に入り込んで課題にぶち当たって、考えていくしかありません。
この本のサブタイトルは『「生涯現役」四〇歳定年のススメ』ですが、40歳で退職せよという趣旨ではありません。自分がプロフェッショナルであり続けたいという思いを遂げるには、人生の折り返し地点で、キャリアの棚卸しをしたらどうでしょうかと問いかけたのです。
――キャリアの棚卸しには、キャリアをイノベーションするぐらいのつもりで取り組んだほうがよいのでしょうか。
井上 人との関係や世の中の見方は、どんな仕事に就いていても同じなんだろうなと思います。つまり仕事の基本はどこでも同じで、特別なものはないと思います。でも、今の人たちは、生き残っていくためには、何か特別なものがあるんじゃないかと考えているのではないでしょうか。
この本に登場する20人のなかには華々しいキャリアの人もいますが、皆さん、当たり前のことをちゃんとやっている人たちばかりです。会社に居場所がなくなって新天地を求めた人もいますが、当たり前のことをちゃんとやってきたから、新しい仕事でも通用するんだなと思います。
たとえば同僚や上司、社外との人間関係の構築の仕方とか、どれに対しても基本に忠実です。
――特別なノウハウではありませんね。
井上 決してハウツーありきではありません。会社を辞めても通用する人には、自分の経験を積み重ねて、そこから経験則を見いだした人が多いのだろうなと思います。
キャリア研究の世界には「計画的偶発性」という言葉があります。自分がこうなりたい、こうしたいと考えておかなければならないのですが、考え通りになるとは限りません。では、どうしたらよいのかといえば、計画性をもって普段の仕事を愚直にやるしかありません。そういう人にチャンスがやってくるというのが、計画的偶発性の意味です。
――この概念はキャリアを開発する上で、たいへん重要だと思います。
井上 それから仕事の報酬としてお金は大切ですが、仕事をして知識が増えたとか、人脈が増えたとか、誇りを持てたと、そうしたお金の価値に換算できないものを報酬と考えて仕事をすることが、大事なんだろうと私は思います。
誤解を恐れずに言えば、あまり悩んで、苦しんで、ぶち当たっていないのに自分探しをしている人が多いような気がします。まず場数を踏んで苦しむことから始めないといけないと思います。
■キャリアの転換にノウハウはない
――独立を考える場合、仕事を獲得するために、まず自分のブランディングが問われると思います。どう臨むべきなのでしょうか。
井上 ブランドはあとからついてくるものなので、最初に得た仕事で確実に成果を出すことです。私のようなモノ書きなら、最初の読者である編集者がなるほどと思ったり、おもしろいと思ってくれたりる原稿を出すことだと思います。職人と同じです。職人の評価はつくったものがすべてで、それが評価されれば「あの職人さんは良いよ」と伝わって、ほかのお客さんも増えてくると思います。
最初の仕事でいかにチャンスをつかむか。そのためには、睡眠を取らなくてもやり切る覚悟や根性が必要でしょう。
――それはノウハウとは違いますね。本書はノウハウ書ではなく、気づきの書として読ませていただきました。
井上 20人のケーススタディを書いたのであって、ノウハウは書いていません。そもそも独立だけでなく、キャリアの転換にノウハウはありません。安易にキャリアコンサルタントに相談しても、埒が明かないテーマです。
自分の人生なのですから、自分で気づくしかありません。私が大学院時代に会社経営者23人に起業の動機、経営のスキルなどを詳細にインタビューしたところ、名をなした創業経営者には気づく力を強調した人がいました。パナソニック創業者の松下幸之助氏が、市電が走る光景を見て電気の時代がくることを悟ったのも、気づく力です。
――独立や転職には、社内価値とは別に自分の市場価値を把握することが大切だと思います。
井上 他流試合をやれば自分の市場価値はわかります。勉強会に参加して他社の人たちと関わることも、ひとつの方法です。独立してから慌てて勉強会に参加しても何も得られないことが多いため、私自身出席していませんが、在職中は他社の仕事を知る上で意味があると思います。
――誰でも参加できるような経営者の勉強会は、皆、営業先を探すために参加しているようにみえます。
井上 そうだと思います。役に立つ人脈は時間をかけなければできません。私は独立する時に、ある人から「仕事で売り上げに貢献してくれる人は30人ぐらいだから、1年間に30人以上と付き合うな」「30人のうち毎年10人を入れ替えろ」と助言されました。
この助言を意識しているわけではありませんが、結果として、毎年30人ぐらいと付き合い、何名かが入れ替わる状況が続いています。
■他流試合
――ところで、最近は副業を許可する会社が増えていますが、真意はなんなのでしょうか。
井上 ひとつは、会社で支払える給料はこのぐらいしかないから、足りない分は副業で補ってほしいという趣旨でしょう。もうひとつは、他流試合を経験して、会社を辞めても通用する専門性を身につけてほしいという趣旨だと思います。
トヨタ自動車は人材育成の指針に「トヨタを辞めても1000万円」というキャッチフレーズを掲げています。トヨタを辞めても年収1000万円を得られるだけの専門性を磨いておけという意味です。
――会社員は現在勤める会社にこの先も長く勤め続けるにせよ、会社から精神的に独立する必要があるのでしょうか。
井上 会社は社員を選ぶという人事権を持っていて、一方の社員には、会社を選ぶ「キャリア権」があります。キャリア権は法政大学名誉教授の諏訪康雄氏が提唱した概念です。キャリア権を行使するには、仕事がうまくいかない理由を時代に、お客さんや他人のせいにしたりしないで、すべて自己責任として受け止めることが第一歩です。
――ありがとうございました。
(構成=小野貴史/経済ジャーナリスト)
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