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やっぱり派遣社員はこんなに搾取されていた!正社員と同じ仕事でも給料安
http://biz-journal.jp/2016/03/post_14344.html
2016.03.22 文=編集部 Business Journal
現代の日本では、長時間労働やサービス残業、正社員と非正規社員との待遇格差などが大きな社会問題となり、非正規労働者の待遇改善が国家的な課題となっている。
「一億総活躍社会」を掲げる安倍晋三首相は、2月5日の衆院予算委員会で初めて「同一労働同一賃金」法制化の可能性について言及した。正社員と非正規社員が同じ仕事をしていても、正社員のほうが高い賃金を得ることをなくすためのものだが、法制化すると働く人にはどのように影響するのだろうか。労働問題に詳しい佐藤宏和弁護士は、次のように解説する。
「実は、契約社員やパートタイマーに関し、同一労働同一賃金の法制化は一定程度実現しています。また2015年9月、すでに『同一労働同一賃金推進法』が施行されています。この法律は同一労働同一賃金の基本理念や調査研究の推進に加え、労働者派遣法上での派遣社員と直接雇用社員との待遇の均等化・均衡化を目指すものです」
すでに類似する法律がつくられていたのであれば、今回安倍首相が言及した法制化はどのような意味があるのか。
「同一労働同一賃金推進法は、同一労働同一賃金の基本理念や調査研究の推進を一般的に定めたもので、具体的な権利保護について定めた法律ではありません。労働者派遣法上の派遣社員と直接雇用社員との待遇の均等化・均衡化を目指す規定がありますが、この法律では派遣社員の待遇について、『三年以内に法制上の措置を含む必要な措置を講ずる』(6条2項)とされていました。法制化に至らなくても『必要な措置』を講ずればよいとしていたため、国会での法案成立時に『骨抜き』との激しい批判を浴びました。今回は、これを法制化するというものですから、派遣社員に関しても同一労働同一賃金の実現に向けて大きく前進することになるでしょう」(佐藤弁護士)
派遣以外の非正規社員には、すでに待遇の均等化・均衡化を定めた法制化が一定程度行われているから、派遣社員について法制化が実現すれば、すべての非正規社員について同一労働同一賃金が法制化されることになる。これで、正社員と非正規社員の待遇に差はなくなるのだろうか。
同一労働同一賃金を文字通りとらえれば、同じ仕事であれば正社員でも非正規社員でも同じ賃金が実現するようにも考えられる。しかし、「同一賃金の前提として、何を同一労働と見るかが問題となる」と佐藤弁護士は指摘する。
「契約社員やパートタイマーなど、すでに法制化された分野では、業務や職務の内容が同一でも責任の程度や配置転換の範囲などに違いがあれば同一労働ではないとされているので、法律上同一賃金にする必要はありません」(同)
■“適度に”差のついた賃金は認められる
労働契約法やパートタイム労働法を見ると、「業務の内容」だけで同一かどうかが決まることはなく、「責任の程度」「配置の変更の範囲」「その他の事情」を考慮して、不合理でなければよいとされているのだ。
「同一労働同一賃金推進法でも、派遣社員に関し『業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度その他の事情に応じた均等な待遇』だけでなく『均衡のとれた待遇』(6条2項)、つまり適度に差のついた賃金でもよいことになっています。したがって、結局、無期雇用と有期雇用、フルタイムと短時間労働では、責任の程度や配置転換の範囲による合理的な差異が認められるのと同様に、直接雇用と派遣との間では、責任の程度に応じて適度に差のついた賃金が認められることになります」(同)
これは一見すると常識にかなったルールにも思える。しかし、佐藤弁護士は問題が生じる可能性を指摘する。
「実際には仕事に違いがなくても、書類上で責任の程度や配置転換の範囲などに形式的な違いを設けるだけで賃金に差をつけることができてしまいます。そうなると制度が骨抜きにされてしまい、法律が実質的に機能しなくなる可能性があるのです」(同)
つまり、表向きは正社員と非正規社員の差をなくすための法律ではあるが、実際に差があっても何も機能しないということか。
「当局の指導による是正はあり得ますが、制度に魂を入れるか否かは個別企業の判断ですから、ブラック企業を直ちにホワイト企業に変身させるほどの効果はありません。ただ、今回の法制化により、責任の程度等にあまり違いがないなど労働条件の違いに合理性を認めにくい場合に、非正規社員の待遇改善を促す可能性はあります」(同)
13年施行の改正労働契約法の影響で、実際に大手銀行や大手保険会社などで契約社員の無期雇用化や福利厚生向上などの待遇改善が進んだことは事実だ。待遇改善によって人材確保が引き合うということが明らかになってくれば、法制化の効果として待遇改善が進むことは期待できるだろう。
「マスメディアを通じてこの種の問題が国民に浸透すれば、労働者の権利意識向上を通じて法律を基準とした待遇改善に進むことが期待されます。かつては泣き寝入りしていた非正規社員にも、法律を根拠に使用者と交渉する機会が与えられることになり、従来に比べて少額の労働紛争がいっそう増加すると予想されます。また、少額の労働紛争は短期間かつ効率的に処理されなければならないため、迅速に解決するための労働審判制度の重要性が高まっていくと考えられます」(同)
法制化によって非正規社員の待遇が直ちに改善されるわけではないが、多少なりとも社会に変革をもたらすきっかけにはなる可能性がある。
(文=編集部)
【取材協力】
弁護士 佐藤宏和
事業再生、M&A分野に強いセンチュリー法律事務所の所属弁護士。弁護士登録以前に、ソフトバンク、SBIホールディングス等で子会社の上場や、代表者として子会社を経営した経験を持つ。ソフトバンク在籍中に米国公認会計士試験に合格するなど、会計実務にも通じる。
労働法無料法律相談サイト「解雇・残業代トラブル法律相談サイト」運営責任者。
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