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日銀の次の一手は、民間企業への「異次元関与」か(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/640.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 3 月 18 日 08:00:20: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

日銀の次の一手は、民間企業への「異次元関与」か
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48218
2016年03月18日(金) 山崎 元「ニュースの深層」 現代ビジネス


■「筋が悪い」株式の買い入れ

日本銀行は、金融緩和政策の一環として、現在年間3兆円を超えるペースで、ETF(上場型投資信託)の形で上場株式を買い入れている。同行の営業旬報によるとETFの残高は3月10日現在で7兆5千億円に迫っており、かつて民間銀行から買い入れた株式と合わせると9兆円近い株式の保有残高がある。

日銀は、今や三菱東京UFJ銀行や日本生命といった民間会社を抜き去って、GPIFに続く日本第2位の上場企業の大株主だ。

また、投資家としても年間ざっと3兆円の買い入れ額は小さくない。取引所の稼働日で割り算するとしても、一日平均100億円以上の買い入れ額になる。株式取引に詳しい向きには、「100億円以上の募集額の日本株投信が『毎日』」設定されているのだ」と言うと、感じが伝わるだろう。「将来、これが無くなったら、ずいぶん様子が変わるだろうな」ということも含めて、無視できない影響力だ。

金融政策としては、民間経済から株式を吸収して、その代わりに現金が増える(実際には市中銀行が持つ日銀当座預金残高が増えるのだが)ことで「ポートフォリオ効果」を通じた金融緩和の作用があり、買い入れがもたらすかもしれない株価の押し上げ効果は、資産効果を通じてモノの需要を拡大する効果があるはずだ。「デフレ脱却」に向けた金融緩和政策の一環として、何らかのプラス効果を持っている政策だとは評価できる。

但し、筆者は株式市場に近い場所で仕事をしてきたこともあり、日銀が大株主・大投資家として株式市場で存在感を増すことに関して、幾つかの懸念を持っている。

一言で言うなら、株式の買い入れは日銀の政策手段として「筋が悪い」のだ。理由は複数ある。

■アベノミクスに全面協力

日銀は、3月15日に発表した「『設備投資および人材投資に積極的に取り組んでいる企業を支援するための指数連動型上場投資信託受益権買入等にかかる適格とする指数に関する基準等の細目』の制定について」という長い題名の文書を発表した。

この文書は、筆者の懸念の一つに深く関わるものだが、日銀が今後、設備投資や人材投資に積極的な企業にETFを通じて投資する際に、ETFが連動を目指す株価指数の細目を定めたものだと受け止められている。

簡単に言うと、日銀は、(1)設備投資(または研究開発費)について何らかの定量情報(平たく言うと公開数量データ)に基づく指標が銘柄選択に反映し、(2)人材投資についても構成銘柄の選択に加味し、さらに(3)これらと当該企業の成長の関係について定量開示情報又はその他の情報で確認し(この条件には、厳密にはかなり「無理」があるが、指数構成側で体裁を整えることは容易だろう)、構成銘柄の選定、除外又は加重の方法に反映させる、株価指数を作り、これによって運用するETFを組成することを求めている。

「簡単に」と言ったつもりが、全く簡単になっていなくて申し訳ないが、「設備投資」と「人材投資」による企業選別に客観性を持たせることを気にしつつ、運用としての妥当性も意識した、ずいぶん欲張りな条件設定だ。日銀が、このETFの投資対象企業の収益性についても気にしていることが分かる。

加えて、投資対象企業が債務超過や赤字でないことに関する条件や、当該銘柄の株式が十分な流動性を持つことなどを意識しており、この種のアクティブ運用的要素を持った株価指数の作成経験者のアドバイスを得て策定したことを伺わせる文書だ。

尚、議論の本筋とは関係ないが、株価指数の作成者に対して、「指数の算出主体が、当該指数並びに当該指数の算出方法、構成銘柄および構成比率を無償で公表していること」という条件を付けている点が、金融業界的にはなかなか面白い。指数に関連するデータを有償で販売して収入を得ている一部のデータ・ベンダー(新聞社やシンクタンクなど)は、この条件を嫌な気分で読んだに違いない。

さて、この新種のETFは、株価指数の構成銘柄の形で、アベノミクスに協力的な企業を認定して、株式を買ってやるという、いわば「アベノミクス協力企業株価指数」のインデックスファンドへの日銀の投資宣言だ。

単に企業を認定するだけでなく、そこに影響力を行使しようとしている日銀の意図が、文書タイトルの「…積極的に取り組んでいる企業を支援するための」という部分に、隠すことなく示されている点が大胆である。

日銀は、金融緩和だけではなく、民間企業経営への影響力行使にあっても、「異次元」の段階に入ろうとしているようだ。

■論点1.日銀は民間企業の経営に影響力を行使するつもりか?

日銀は、政府から独立して専門的に運営されるべき組織だとの存在上の建前を持っているが、公的機関であり、事実上は政府の一部だ。だが、これまでには「株式を保有はしても、民間企業の経営には影響力を行使しない」という態度を取ってきた。

ところが、先の新型EFTに関わる文書を見る限り、これまでの態度を放棄し、民間企業の経営に、積極的に関与しようとしているようだ。そして、その影響力は、現在の金融緩和政策が続く限り、株主としても、投資家としても、着々と大きくなって行く。

この点の良し悪しには賛否両論があるだろうが、それ以前に、日銀自身がどう考えているのか、態度を明確にすべきだろう。

筆者は、公的機関であり、また銀行業界側の利害に深く関わる日銀が、株式の保有や売買を通じて民間企業の経営に関与することは、少なくとも「余計」であり、同時に「有害」でもある可能性があると思っている。政府の民間企業株式保有、あるいは銀行の株式保有で一般に指摘される利益相反の問題は、日銀の株式投資にも存在する。

また、投資価値の判断からではなく、金融緩和を目的に株式市場に資金を流入させることは、情報と投資家の判断を反映して自然に形成されるべき株価を歪めて、「自然な株価」を分からなくさせてしまう弊害がある。

株式投資は、民間の投資家がやればいいことだし、民間の投資家の方が上手くできることでもある、と筆者は考える。

尚、日銀の株式保有は、日銀のオーナーが政府であり、政府のオーナーが国民であることを考えれば、納税者にとって間接的な株式投資の強制である。この理屈が分かると、「余計なお節介だ」と言いたい人もいるのではないだろうか。

■論点2.日銀は持ち株の議決権行使をどうするのか?

日銀は、既に日本の上場企業の大株主であり、その大きさは今後拡大すると見込まれる。日銀が、保有株式の議決権行使にどう関わるのか、関わらないのかは、日本の企業のガバナンスと、ひいてはパフォーマンスにとって重要な問題だ。

大株主である日銀が、議決権行使に積極的に関わるなら、それは当然のことながら、民間企業の経営へ介入するということだ。一方、議決権行使には関わらないと決めるとするなら、それは議決権の空洞化となる。

また、TOB(株式公開買い付け)のような事態が起こった場合に、日銀は自らの持ち株について、どう行動するのだろうか。

もちろん、ETFを通じてなので、自由に手を出し、口を出せるわけでもないのだが、運用者の行動をどうチェックするのか(しないのか)は重要な問題だ。

日銀が、民間企業の経営・ガバナンスに積極的に関わるつもりなら、「日本版スチュワードシップ・コード」にも参加の手を上げて、投資先企業に積極的に関わることを宣言しないと中途半端だ。

一方、「何もしない株主」が大量の株式を抱えていることも、健全な状態ではない。筆者は、そもそも日銀が民間企業の株式を持つべきではないという意見だが、日銀は、現実に株式を抱えているのだから、どちらかの方針をはっきり打ち出すべきだろう。

■論点3.日銀は持ち株の出口戦略をどうするのか?

日銀が保有する株式の将来の売却も、なかなか悩ましい問題だ。

債券は、長期債であっても、満期があるので、償還を待っていると、日銀自身が市場で売却しなくても債券の保有残高は減っていく。一方、株式の場合は、日銀自身が行動を起こさないと、保有株式が減らない。

株式を市場で売却すると、現在の「ETFによる買い支え」の反対の現象が起こるので、株価に対してはネガティブな影響が及ぶ公算が大きい。政府との関係や他の経済政策との関係もあり、「いつならば、株式を売ってもいい」という判断は難しいものになりそうだ。

株式保有は一時的なもので、日銀が、何れはこれを売りたいのだとすると、その「出口戦略」は、債券の場合よりも格段に難しいものになりそうだ。

或いは、日銀は、むしろ民間企業の経営に対して影響力を持つために、大量の株式を抱え続ける積もりなのだろうか。

前述の通り、国民は日銀の間接的な(且つ最終的な)オーナーであり、日銀を通じて株式保有を強制されているのだから、日銀は、保有株式に関する「出口戦略」についても、将来の方針を説明すべきだろう。

筆者は、日銀が、株式を買入対象にしたことの「筋の悪さ」があれこれの不都合の根本的な原因だと考えるのだが、日銀の考えをはっきりと聞きたいものだ。

 

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コメント
 
1. 2016年3月18日 18:21:34 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[1097]

中央銀行が個別企業の経営に関わるようになったら

もう自由経済ではなく、計画経済の世界

QEとマイナス金利による資産課税に加え、共産化(国家資本主義)もここまできたかw


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