http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/635.html
Tweet |
なぜマスコミは経済音痴なのか?円高&原油安=悪のデタラメ、支離滅裂な解説だらけ
http://biz-journal.jp/2016/03/post_14288.html
2016.03.18 文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者 Business Journal
「原油安、円高、米国経済の不振により日本経済が不調だ」「アベノミクスの効果がなくなり、日本の株式市場が下落している」といった論が、マスコミによく出てくる。これだけいい加減な理屈がまとまって同時期に出てくるのも珍しい。事実に反していたり、過去の説明と矛盾したり、同じ日の同一のメディアが複数の矛盾する説明をしていたりする。いくつか、典型的な例をあげてみよう。
■原油安
原油安が悪いことのようにいうのは、間違いだ。原油安は、資源のない日本にとってはプラスなのは間違いない。たとえば、イランの経済制裁が解除されて、今後原油が下がるのを問題であるかのようにいうのはおかしい。
少し前の原油高のときに、原油高で「悪いインフレ」が起こり、貿易収支が悪化して日本経済に悪影響が出ていると報じておきながら、今度は原油安で大変だと騒ぐのは、滑稽ですらある。
これは、中国の経済状況という同じ原因で、直接間接にプラスとマイナスの影響が出ている例ともいえる。中国経済の成長鈍化というひとつの原因が、直接的には日本の輸出の低下によりマイナスになる一方で、間接的には原油安を通じて日本経済にプラスの効果をもたらしている。
しかし、その原因結果の構造は、原油安があくまで日本経済にプラスだと示している。付け加えるならば、原油安は、原油輸入国である中国にとってもプラスであって、中国経済を少しでも支えているという意味でも日本経済にプラスに働いている。
原油安によって運用資産が減ってきた産油国が資金を日本の株式市場から引き揚げたことにより、株価が下がる影響が出ている。しかし、そうした外部要因によって株価が下がっていることよりも、原油安が実体経済に好影響を及ぼしていることのほうが大事だ。後述のように、そもそも株価の短期的な変動をもって経済状態をみようとするのは、益より害のほうが多い。
■円安
現在の1ドル110円あたりの「円高」は、日本経済にとって悪くない。そもそも、日本経済の輸出依存度は11%程度で、中国の20%台、韓国の50%近くなどと比べても随分低い。歴史的にも、自国通貨が弱くなって崩壊する国はあっても、自国通貨が強すぎてつぶれた国はない。
円高の時代には、マスコミは円安待望論を叫んでいた。そして、実際に円安になってみると、一部の輸出関連の企業以外、一般の人はみんな恩恵を感じなかった。そうすると、マスコミは「実感できない円安メリット」などと書いていた。
今回、110円程度の円高で、マスコミはまた円高を厄介者のように扱っている。支離滅裂の典型的な例だ。しかし、一般の人は、円高だからといってそんなに悪影響は出ないとすでにわかっているので、そういう報道を見ても首をかしげて反応しなくなっている。
■米国経済不振
今、世界の主要国のなかで一番経済の調子がいいのは、アメリカだろう。米国>日本・欧州>中国>ロシア・ブラジルといった順ではないだろうか。アメリカの新聞は、これまで順調だった状態に比べ、海外の経済不調により自国の経済成長が鈍化することを懸念している。自国のことだから、過去との比較で重くとらえるのは当然だ。しかし、それをそのまま日本の新聞が取り上げて、世界のなかでもアメリカの不調が目立つかのように報道すると、ミスリードしてしまう。
また、米国の利上げによって経済の不振が懸念されるというのは、妙な話だ。アメリカは先進国で唯一利上げを検討する余裕がある、と理解するべきだ。今後、「先行きが懸念される」ような状況なら、利上げもしないだろう。
■株安
今の日本では、短期的な株価の変動は、日本の経済状態を図る指標としては必ずしも適当ではない。日本の株式市場の大きなプレーヤーである外国の投資家は、他国で運用している資金が減ってくると、日本の株を売って資金を手元に引き戻したりする。日本企業の業績先行き予測のみで動いているわけではなく、産油国などの海外投資家の懐事情にも影響を受ける。この短期的な動きは、日本経済の状況と必ずしも連動していない。
米国の金融当局も、公には雇用情勢やインフレを注視して政策判断をするとしており、株価にあまり言及しない。短期的な変動が激しくて、経済状態を見る指標としては、相応しくないからだ。
一方、安倍首相は政権初期に株価が上がってきた頃に「株価上昇はアベノミクスの成果だ。結果がすべてだ」と威張ってしまった。その頃筆者は、株価ほど不安定な経済指標に、安定している自らの政権の浮沈をかけるなんてセンスのないことだ、と思ったものだ。現在、安倍首相は株価には言及せず、「総雇用者所得が増えた」と主張している。批判者は、「株価は下がりましたよね。以前におっしゃった通り結果をみましょうよ」と言えてしまう。非建設的な議論である。
このみっともなさの反省をして、今後の政権担当者は、株価の上昇を自らの政策の成果だと軽はずみに威張らないようにしてもらいたいものである。
■マスコミ経済学が支離滅裂になる背景
今、世界中のあちこちで目を見張るような大きな経済事象が起こっている。中国経済の停滞、イランの経済制裁解除、ドイツの有力企業の業績不振、アメリカの金利引き上げなどだ。それぞれ、異なる背景と事情があって起こっているそれらの経済事象は、さまざまなベクトルを向いて影響を及ぼしている。日本経済にとって、マイナスの面もあるがプラスの面もある。一部の企業にはプラスだが、他の企業にはマイナスのものもある。当たり前だが、現実の世界経済は多様で複雑だ。
マスコミでは、それらのすべての経済事象が、今報じようとするニュースの背景として同じベクトルに向かっているかのように説明しがちだ。たとえば、そのすべてが日本の株式相場の下落に影響を及ぼしていると説明する。そうしたほうが、わかったような気になるからだろう。
しかし、現実はそう単純ではない。ある経済事象は日本経済にプラスだけれども、それにもかかわらず別のマイナス要因のほうが強くて、日本経済はマイナスに動いているということも多い。そいうことに留意しつつ、マスコミには自社の過去の報道や解説との一致不一致をある程度確認しながら説明することを期待したい。
ちなみに、今回の記事を、2014年12月10日付本連載記事『アベノミクスは経済を動かしていない 景気への影響小、「燃費の悪い」経済政策』(http://biz-journal.jp/2014/12/post_8193.html)と比べて確認してみたい。ほとんどその内容と変わっていないことに、ほっとする。
1年3カ月前に安倍首相が「株高になってアベノミクスが成功している」と言っていた時に、筆者は次のように述べている。
・円安は、たいしてプラスではない
・株高は、それだけで成果ではない
・アベノミクスは、ブレーキとアクセルを同時に踏んだので効率が悪かった
これは、株が下がり円高になった現在書いた本稿の説明と、一貫性がとれていると思うがどうだろうか。
■実際の日本経済の状態
では、日本経済の実態はどうなのだろう。
日本経済にとって、原油安はプラス、米国経済の復調傾向はプラス、そして円高はマイナスではない。株価が下がっているのも、大きな問題ではない。とはいえ、中国経済の不振はマイナスだ。
こうしてみると、世界で起こっている事象は、日本にとってはマイナスの話もあるが、実はそれほど悪い話ばかりではない。確かに、欧州、中国、ロシア、ブラジルなどよりは、不安は少ないといえる。
いいかえると、「それにもかかわらず」人々が将来に不安を持たずに暮らしていけるだけの経済状態を持続できていないとみるべきだろう。端的にいえば、内部構造的な実力値が期待ほどには高くないことを示している。
その意味で、事態はより深刻ではあると受け止めて、一部の人に痛みが伴い、地味で時間がかかるようなことであっても、構造的な実力をつける政策を着実に実行していくしかない。それは、雇用市場を改革して人的資源の流動性を増すことであり、福祉予算総額を削減することであり、女性やシニアの労働参加を増やすことであり、サービス業の新陳代謝を促進することだろう。それらを、今程度の「悪くない」経済状態のうちにやっておきたいものである。
(文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者)
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民106掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。