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ロック解除をめぐり、論争が続いている。このことから見えてくるものとは?(撮影:尾形文繁)
あなたはiPhone「ロック解除」で丸裸になる 本当に怖いことが起こるのはこれからだ
http://toyokeizai.net/articles/-/109378
2016年03月16日 The New York Times 東洋経済
テロリストが所有していたスマートフォンのロック解除をめぐり、アップルとFBI(米連邦捜査局)との間で論争が続いている。ここから見えてくるのは、テクノロジー業界の未来の姿だ。
この件に関して、ひとつ確かなことがある。それは、デジタル技術はつねにより多くの個人情報を獲得しようとしており、ユーザーである私たちは、たいていの場合その求めに応じている、ということだ。今日のスマートフォンには、大量の個人データが入っている。通信の記録、写真、現在の居場所――。だが、今後はさらに多くの情報が入ることになるだろう。そして、そうした機器の原型が、すでに私たちの周囲に存在している。
■秘密を持てない世界が築かれつつある?
私たちが「あったらいい」と思っているテクノロジーについて考えてみよう。単に、より便利な電話だけでなく、自動運転の車や、音声で操作できる機器、あるいは遠隔地から管理やモニターができる家電製品などだ。その多くにはカメラやマイクやセンサーが搭載されて、たくさんのデータを集めるだろう。さらには、最先端のデータ・マイニングが行われ、集められたデータを解析しようとする。すべの機器が、あなたのすべての発言と行動を記録し、分析するようになるのだ。
ここから、なぜテクノロジー企業が、そして言うまでもなく私たちユーザーが、アップルのケースの影響を恐れる必要があるのかがわかる。
捜査当局やその支持者らは、有効な裁判所命令がある時には、調査において重要かもしれない端末を警察が調べられないという事態があってはならないと主張する。しかし、もしアップルが自社のセキュリティを破ることを強いられ、アップルがスマートフォンの中に侵入すれば、ユーザーに約束された安全性は崩壊し始める。
仮に、すべての端末がユーザーをモニターでき、捜査当局が裁判所命令の下にすべての端末の中を見られるのであれば、真にプライベートな会話は成り立たなくなるのではないだろうか。私たちは、もはや秘密を持つことができない世界を築いているのではないだろうか。
■自由な思考もできなくなる?
ワシントン大学法学部のニール・リチャーズ教授は言う。「これは一度きりの問題ではない。これは将来についての問題だ」。
リチャーズ教授は『知的プライバシー(Intellectual Privacy)』という本を執筆している。同書は、社会において監視の恐れなく思考できる可能性が、テクノロジーと法律が共謀することにより消し去られる、という危険性について検証する。リチャーズ教授によると、知的創造性はプライバシーという基盤の上に成り立っているが、このプライバシーが、私たち自らが周囲に設置しているカメラやマイクやセンサーにより崩壊しつつあるという。
「私たちがつねにモニターされ、監視され、記録されているなら、物議をかもすような考え方や、エキセントリックでおかしい、風変わりな考えを試すことに尻込みするようになるだろう。だが、私たちが今とても大切にしている考え方は、かつては物議をかもすようなものだったのだ」。
リチャーズ教授の言葉は、心配が過ぎるように聞こえるかもしれない。特に、FBIがスマートフォンへの侵入をアップルに求めるのは今回だけだ、というFBIの主張を信じる人たちにとっては。
FBIのジェームズ・B・コミー長官は、2月21日に投稿したブログで次のように述べた。「今回の法的問題は、実際は非常に限定的なものだ。われわれは単純に、テロリストのスマートフォンを自己破壊させることなく、パスコードを解明したいと願っているだけだ。10年間もかけることなく解明したい。ただそれだけだ」。
■機器が正常に動く限り盗聴できる
だが、市民の自由に関する活動家らは、コミー長官の言葉をなかなか信じられないようだ。なぜなら、政府がこれまで長い間、新たな技術への対応の仕方を、古い技術の訴訟事例を基に判断してきたという事実があるからだ。1960年代と1970年代に、裁判所はアナログの電話を盗聴するためのルールをつくった。そのルールが、のちにインターネットを監視するための基盤として適用された。
米国自由人権協会のプリンシパル・テクノロジストであるクリストファー・ソゴイアンは言う。「第三者が保管したデータに関しては、憲法上の保護はほとんど受けられない。これには、1960年代の最高裁の判決が大きく影響している」。
ソゴイアンは、政府がすでに接続機器を監視用の機械に変えていると指摘する。10年以上前の犯罪組織による事件では、車のダッシュボードにつけるロードサイド・アシスタンス機器のメーカー対して、FBIは自動車内の私的な会話を秘密裏に録音するよう依頼した(ここで対象となった機器は、車載テレマティクスの「オンスター」のようなもので、オンスターは緊急の場合に携帯電話でオペレーターに自動連絡などを行う)。裁判所はFBIの依頼に否定的な判決を下した。ただし、車内の盗聴がその機器の正常な稼働を妨げる場合には、という非常に限定的な条件をつけた。
「裁判所は、その機器の基本的な機能が損なわれない限りは監視ができるという道筋を残した」とソゴイアンは言う。「だから、この判例から推測されるのは、アマゾンの(音声アシスタント端末)「エコー(Echo)」が現在の気温を教えられる限り、あるいは音楽をかけられる限り、政府はアマゾンに対して、ユーザーをスパイするよう命じることができるかもしれない、ということだ」。
■アマゾンの「エコー」は秘密を守るか
ソゴイアンが例に挙げた「エコー」は、あなたの家庭内での会話をいつも聞いており、親切に手伝いを申し出る。エコーはその呼び名である「アレクサ」という言葉が発せられないか耳を傾けており、その言葉が聞こえると、あなたの声をアマゾンのサーバーにストリーミングし、解析を始める。アマゾンは、今回のアップルの件がエコーのユーザープライバシーにどう影響するかについてはコメントしなかった。しかし、エコーはつねに会話を録音しているのではなく、録音を留めておくのは、システムがユーザーの言葉をよりよく理解するために学習しようとするときだけだという。
しかし、こうした約束も、アップルの事例により脅かされる。もし、裁判所がiPhoneに侵入するようアップルに命じることができるなら、アマゾンに対して、エコーのセキュリティ・モデルを変えて、エコーがすべての会話を録音するように強いることも可能なのではないか? ソゴイアンは、アップルのケースが先例をつくると考えている。
読者の中には、この問題に対する簡単な解決策として、「自分をスパイできるような機器は使わない」と言う人もいるかもしれない。エコーは買わない。家の中にカメラは設置しない。インターネットに接続でき、在宅の時も不在の時もモニターできるようなサーモスタットは使わない、といった具合だ。
この意見にも一理ある。しかし、テクノロジーは私たちが意識的に選択しなくても、私たちの生活に入り込んでくる。スマートフォンやパソコンは、以前は道楽のようなものだったが、大勢が使うようになるにつれ、今では逃れられないものになっている。
「モノのインターネット」も同じような道筋をたどるだろう。雇用主や保険会社は、健康状態を追跡する機器を装着するよう、あなたに求めてくるかもしれない。カメラやセンサーがついていない自動車は存在しなくなるかもしれない。どの冷蔵庫にも、あなたが好むと好まざるとにかかわらず、カメラが内蔵されているかもしれない。
■私たちはどんな世界を望むのか
「私たちはまったく新しい時代に突入しつつある」。こう話すのは、スタンフォード大学インターネット・社会センターのジェニファー・グラニックだ。少し前までは、私たちは監視が難しい世界にいた。「過去には、二人だけの秘密の会話をすることができた。会話の記録も残らず、誰かが記録にアクセスすることはなかった。書きたいことは紙に書いた。それを暖炉で燃やせば、永遠に消え去った」。
だが、技術的・法的な保護がなければ、テクノロジーによりこうした前提は壊される。
「今、私たちがいるのは、監視可能な世界だ」と、グラニックは言う。「監視は安価で、簡単でもある。社会が問うべきことは、私たちは本当にそんな世界を望んでいるのか、ということだ」。
(執筆:コラムニストFarhad Manjoo、翻訳:東方雅美)
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