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社内で渦巻く「プロ経営者」への不快感 資生堂、武田薬品、マクドナルド…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48179
2016年03月15日(火) 週刊現代 :現代ビジネス
「プロ経営者」と呼ばれる人々が日本で持て囃されるようになったのはいつごろからだろうか。ある日突然やってきて、横文字の経営理論を並べ立てる。戸惑う社員の声は、彼らの耳には届かない。
■社員の顔も知らない
「'15年は成長軌道に乗った。'16年度はこれを一気に加速させて、徹底的な改革を進める」
2月上旬に行われた資生堂の'15年度決算会見。魚谷雅彦社長は堂々とした口調で自信をのぞかせた。
トラベルリテールの増加、センター・オブ・エクセレンスの確立、グローバルサプライチェーンの構築……コロンビア大学で経営学修士を取得した「国際派」らしく、カタカナ語を多用し、終始自信たっぷりに持論をぶった魚谷氏だが、社員の反応は冷ややかだ。
「耳触りはいいですが、具体性のない話ばかり。一番具体的に数字を語っていたのが、3年で600億を削減するというコストカットの話で、『やっぱり削ることしか考えてないんだな』と思わざるを得なかった」
営業担当社員も言う。
「会見では『マーケティングや営業体制を一層強化する』と言っていましたが、昨年行われた全国化粧品小売協同組合連合会の大会に、魚谷さんの姿はありませんでした。
ここは、各メーカーの営業担当者がしのぎを削って小売経営者に商品の売り込みをかける、いわば決戦の地。歴代社長は欠かさず出席してきたから『魚谷さんは小売りを軽視している』と、業界で噂になりました。
そういう積み重ねを蔑ろにして、『マーケティング』の大号令を出しても、誰もついて行きません」
140年以上続く老舗企業・資生堂の歴史の中で、外部から登用された社長は、魚谷氏を含めてわずかに二人。しかも、社内での役員経験がないいきなりの抜擢は魚谷氏が初めてだ。
前任の日本コカ・コーラ社長時代に缶コーヒー『ジョージア』や『爽健美茶』など、数々のヒット商品を生み出してきた魚谷氏を、「リーダーシップを持ち、グローバル感覚にも長けた人」とベタ褒めし、資生堂にヘッドハンティングしてきたのは前任の前田新造社長(現相談役)だった。
「資生堂は、創業家の福原義春名誉会長が人事権を持ち、『院制』を敷いている。前田氏はこの旧態依然とした社風にほとほと嫌気がさしていて、それを改革するために、全く違うカラーの魚谷氏を登用したといわれています。魚谷氏自身も、『日本だけではなく、グローバルな視点で成長を実現したい』と意気軒昂だった。
ところが、いざ就任してみると、課題の中国事業は低迷から抜け出せず、国内でも、数が多すぎるブランドの整理が、遅々として進んでいない。威勢の良い発言とは裏腹に、大きな成果はいまだ挙げられていないのが現実です」(業界紙記者)
'14年度、魚谷氏が得た報酬は6300万円。
「結局、プロ経営者はヨソから来た人だから、責任は取らない。自分は高い給料をもらいながら、リストラだって平気でできる。社員の顔も知らないんだから、当たり前ですよね」(中堅社員)
■年間報酬8億円
資生堂を超える230年以上の歴史の中で初めて外国人プロ経営者の登用を行い、社員から不満が噴出しているのが、武田薬品工業だ。
「社員たちにグローバルマネジメントのあり方を学んでほしい」
「人材の多様性」を訴え、長谷川閑史社長(現会長)が、ライバル製薬企業のグラクソ・スミスクラインからクリストフ・ウェバー氏を新社長に抜擢したのは'14年のこと。以来、ウェバー氏により経営幹部や管理職の多国籍化が進んでいる。
社員が自嘲気味に言う。
「経営の最高執行機関として、役員の他に『タケダ・エグゼクティブ・チーム』という11人のメンバーがいるのですが、なんと、そのうちの9人が外国人。もはやどこの国の会社で働いているのかわからない(笑)。プロパー社員の出世は絶望的という声まであります」
日産のカルロス・ゴーン氏、元ソニーのハワード・ストリンガー氏など外国人が日本企業のトップを務めるのは、もはや珍しいことではない。
しかし、武田のように主要ポストの多くが多国籍化されているのは、異例のケースだ。
そのうえ、武田の外国人幹部たちには軒並み莫大な報酬が支払われ、'14年度のウェバー社長の報酬は5億700万円。欧州子会社で社長を務めたフランク・モリッヒ氏は8億円以上を得ている。
しかも、モリッヒ氏を筆頭にこうした外国人役員たちは短期間で次々と武田を辞めている。最高財務責任者(CFO)だったフランソワ・ロジェ氏にいたっては、就任からわずか2年足らずでスイスの食品メーカー・ネスレにヘッドハントされ、武田を去った。
現役社員がこう憤る。
「結果を出す前から、我々の生涯賃金を遥かに上回る金額を年収として約束され、好きなときに辞められる。日本に、バカンス代わりで来られるのではたまりません。高額の報酬を受け取るのならせめてきちんと結果を出してから辞めて欲しいと思うのは当然でしょう」
マイクロソフト日本法人で社長を務めた成毛眞氏が言う。
「日本企業は、外国人プロ経営者を招聘する際の、高額報酬に対する考え方が甘すぎます。
外資系企業では、プロ野球選手のように、何勝していくら、ホームラン何本でいくら、という成果に応じた報酬の綿密な規定があり、事前に充分に交渉するのが当たり前。日本企業はこれをやらずに、最初から高いカネだけ払って、あっさり逃げられてしまう。こんな状態では、他の社員から不満の声が上がるのも無理もありません」
■目先の利益だけ追求する
関係のないところから土足で踏み込み、周囲を腹心で固め、巨額の報酬を得る「プロ経営者」。
日本における「プロ経営者」の先駆けと言えば、ベネッセホールディングスの代表取締役会長兼社長・原田泳幸氏だろう。
'14年7月。原田氏は就任後初会見で、「国内に約350拠点で展開している学習塾を、フランチャイズ(FC)の手法を駆使して'20年までに1000拠点に広げる」と発表し、大きな話題になった。
「会見を見て、ああ、この人は昔の失敗から何も学んでないのだなと思いましたよ」
苦笑いするのは日本マクドナルドの社員だ。
原田氏といえば、アップルコンピュータの社長からマクドナルド社長に転身し、業績をV字回復させ、注目を浴びた。メディア露出も積極的で一躍、時代の寵児となった。
ところが、原田氏がマクドナルド時代に築きあげた名声は、今やすっかり色あせている。小売業界に詳しいアナリストが言う。
「原田さんは社長時代に、直営店舗を減らし、逆にフランチャイズ(FC)の店舗を急激に増やしました。このことで本部のリストラが進み、目先の利益は出やすくなって8年連続の増収を達成した。
ところが、FCの売り上げが頭打ちになってからが大変。減らしたくても直営ではないので、リストラはできない。大胆な改革を打ち出すにもいちいちFCオーナーの許可が必要になる。
しかも、売り上げが下がり始めると、オーナー達のモチベーションが下がり、店舗が汚くなり、しっかりしたサービスが提供できなくなった。まさに負のスパイラルに陥ってしまったのです」
原田氏は業績に陰りが見えはじめた'13年に退任し、後任のサラ・カサノバ氏に社長の座を譲った。その後のマクドナルドの業績不振は誰もが知るところだ。
「カサノバの時代になり、異物混入などの問題が次々起きましたが、すべて原田さんが業績嵩上げのために無理やりFCを増やしたことによる弊害ですよ。我々はいまだに業績回復のきっかけをつかめず、原田時代の『後遺症』に悩まされている。
にもかかわらず、原田さんは泥船が沈む前に逃げ出して、マックでの業績を掲げベネッセに移った。自分さえ良ければ、残される社員はどうでもいいのかと言いたくもなる」(前出の社員)
原田氏と同じく、前職時代の実績を引っさげて、新天地に迎えられたのが、サントリーHDの新浪剛史社長だ。サントリーは'15年の通期決算が売上高、営業利益ともに過去最高を記録。新浪社長の評判もさぞ上々なのだろうと思いきや、意外にも社員からは不満の声が聞こえてくる。
「とにかく目立とうとしすぎます。最高益はあくまで佐治信忠前社長(現会長)時代に買収した米・ビーム社の売り上げが加わったというだけの話で、新浪氏の実績ではないのに、会見では自信満々。しかも、政府の経済財政諮問会議のメンバーとしてせっせと活動している。
本人は、次を見据えた『就職活動』のつもりかもしれませんが、社員からすれば、まずは社業に専念してほしい」(サントリー社員)
その新浪氏に去られた古巣のローソンは、後任としてまたもや「プロ経営者」を起用している。
「現社長の玉塚元一氏は、IBM勤務時代にユニクロ・柳井正会長に引きぬかれ、ユニクロで社長を務めた人物。そして、今度新しくファミリーマートの社長に就任することが内定している澤田貴司氏も、実は玉塚氏と同時期にユニクロで副社長を務めていて、旧知の間柄です」(業界担当記者)
■カリスマにはなりえない
手の内を知り尽くしたライバル同士の対決に注目が集まるが、現場からの評価は手厳しい。
「我々の仕事は、全国のFCオーナーたちをいかに束ねコントロールするかにかかっている。それには、経営トップの『カリスマ性』が一番重要です。その点、この二人は長年業界トップに君臨してきたセブン-イレブンの鈴木敏文会長の足元にも及ばない。このままでは、ますますセブン-イレブンの一人勝ちになるのではないかと危惧が広がっています」(ローソン社員)
彼らのように新たなポストを得るプロ経営者もいれば、去る者もいる。
昨年末、突然の退任発表で話題になったのはLIXILの藤森義明社長だ。ゼネラル・エレクトリック日本法人から転身、巨大グループ全体の取りまとめを任されていたが、買収した中国企業の巨額粉飾決算が発覚。LIXILが被った損害は660億円にのぼり、詰め腹を切らされた格好で改革は果たせなかった。
去る時は突然。でも、もらうものはすでにもらっている。次の就職先を探すだけだ。本当の意味での「責任」は取らないし、取りようもない。
「結局、プロ社長は外様の存在。会社の風土を心底理解したうえで、抜本的な改革のために新たな何かを創造したり、社員一人ひとりを鼓舞するという、本当の意味で経営者が果たすべき役割を担うことは、彼らにとってあまりにも荷が重すぎるのです」(成毛氏)
最新の経営理論を振りかざし、必要とあれば大量のリストラも辞さない。彼らプロ経営者を登用すれば、一時的に業績は上向くかもしれない。
だが、社員の士気が低下した武田や、長い低迷から抜け出せないマクドナルドの例を見れば、プロ経営者を連れてくるという選択は、時に大きなリスクと代償をともなうことがよくわかる。
「週刊現代」2016年3月19日号より
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