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昨年、杭打ち不良が発覚し、大騒ぎになった三井不動産のマンション〔PHOTO〕gettyimages
マンション買うなら大手に限る!? 「全棟建て替え」三井と住友にはできるけど…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48153
2016年03月15日(火) 週刊現代 :現代ビジネス
またも横浜の欠陥マンションが全棟建て替えになりそうだ。大手デベロッパーのマンションにも欠陥はある。だが、いざというときに対応できるのが大手であることも事実……物件選びはかくも難しい。
■最初は非を認めなかった
「会社が問題を初めて認めた'14年の段階では、全5棟のうち傾いた1棟だけを建て替えるという話でした。他の棟の住民には、建て替えに伴う騒音などの迷惑料ということで、月に数万円ずつ、合計100万円ほどが支払われました。
その時には、『さすがに住友不動産。大手のデベロッパーは細やかな対応をするものだな』くらいに思っていたのですが、ここにきて次から次に新しい問題が発覚するので、不信感が募るばかりです」
こう語るのは、横浜市西区の「パークスクエア三ツ沢公園」に住む70代の男性。同物件は住友不動産が'03年に分譲したもので、全260戸の大型物件だ。
横浜駅からバスで5分ほどの丘陵地にあり、マンションの目の前にはテニスコートやサッカー場を備える三ツ沢公園が広がる。早春の日差しを受けてジョギングをする人や、梅見を楽しむ人の姿が見られたが、物件の住人たちの心中は穏やかならざるものがあった。
「若い人なら、デベロッパーに買い取ってもらって、新たに別のマンションを買うという選択肢もあるでしょうが、私たち高齢世帯だとローンを組み直すこともできませんから、そういうわけにもいかない。この歳になると引っ越しも億劫になるし、建て替えのあいだ3年も4年も別の場所に住むのは精神的にもつらいですね」(前出の男性)
事の経緯を説明しよう。
このマンションは分譲後しばらくして、住民が手すりのずれを発見。しばらくは施工会社の熊谷組が問題個所を補修するなど応急処置をしてきたが、マンションの傾きは悪化の一途をたどり、'13年に管理組合が住友不動産に対して正式に対応を要求した。
しかし、住友不動産側は「(傾いている)原因は不明」と責任を認めず、管理組合で修繕するように回答した。
住民サイドの再三の要求で'14年にようやく住友が重い腰を上げた。
本格的調査が行われ、4棟で強固な地盤に杭が届いていない施工ミスがあることが判明。それでも住友は傾いた1棟に関しては建て替えるが、他の棟については補修工事で対応するという方針で住民サイドと交渉を続けていた。
ところが、今年2月に行われた調査で、コンクリートの基礎部に通った鉄筋が切断されていることが新たに発覚。さすがに自らの非を認めざるをえなくなった住友不動産は、住民側に全棟建て替えを提案した。50代女性の住民が語る。
「昨年、同じ横浜の三井不動産のマンションで欠陥が発覚した後、三井が300万円の慰謝料と全棟建て替えの提案をしたことが大きかったですね。私たちのマンションの傾きは6cm以上あって、三井のマンションの2pより大きいんです。
昨年来、住民のあいだで『三井があれだけの補償をしているのに、住友は1棟の建て替えだけで逃げ切ろうとしているのではないか』という声が高まってきました」
昨年10月、横浜市都筑区の「パークシティLaLa横浜」で杭が支持基盤に届いていないという問題が発覚したとき、販売会社の三井不動産が提案した補償内容は、前例がないほど手厚いものだった。大手建設会社の幹部が語る。
「三井不動産は交渉が長引いて、住民の反発が大きくなり、三井ブランドが失墜することをなによりも恐れていました。そこで全戸に300万円の慰謝料と引っ越し費用、仮住まいの家賃など、手厚い補償をした。
ただし、彼らは基本的に『自分たちが悪い』とは思っていない。『施工した三井住友建設、旭化成建材のせいでえらい目にあった』と内心は施工会社への怒りで煮えくり返っている。
だから補償内容についても三井不動産が独自に決めておいて、相応の負担をさせる建設2社には住民説明会の始まる5分前まで知らせなかった。そこで初めて手厚い補償案を知らされた2社の役員は驚きのあまり目を白黒させていたそうです」
三井の素早い対応を見て、住友不動産は焦ったに違いない。2年前から問題を認めているのに、いまだに住民との話し合いが進まないようでは、住友ブランドが毀損されるばかりだ。同じ財閥系デベロッパーの三井に顧客が流れる前に、早めに手を打たなければ、と。
■中小なら会社が潰れる
住友不動産といえば、'14年、'15年と連続でマンション供給戸数1位を誇るデベロッパー最大手。戸数のみならず、値下げをしないことで高い利益率を確保してきた優良企業だ。
豪華な仕様を売りにしている住友がマンション傾斜問題の対応で三井の後塵を拝せば、ブランド価値は低下し、これまでのような値下げをしない強気の販売戦略が通用しなくなる——そう経営陣が判断しただろうことは想像に難くない。
本誌は住友不動産に対して、パークスクエア三ツ沢公園の建て替えに関して取材を申し入れた。しかし、広報部は「この件に関しては、個人の方々の財産に関することなので、個別のマスコミの取材はお断りしている。そもそも、当件に関して本社から情報を出したことは一度もなく、報道が先行している」と回答するだけだった。住民説明会を前に下手なことを話したくないというわけだろう。
さらに「過去に建て替えにいたった物件」「再施工になったケース」「住民から建て替えの要求があって現在調停中の物件」についてFAXによる取材も試みたが、期日になって「回答はしない」と電話で伝えてきた。
本誌は同様のアンケートを三井不動産に対しても行ったが、「個別の案件については、基本的に回答を控えさせていただきますが、施工中、完成後にかかわらず、万が一不具合があれば、その内容や程度に応じて、適切に対応しております」との回答だった。
言うまでもなく、デベロッパーにとって建て替えになるような欠陥マンションの販売は、最も触れられてほしくない汚点だろう。だが、住民からの建て替え要求に応じられるのもデベロッパーが大手で、施工した建設会社に対して強い態度に出られるからだ。
マンション業界には「メジャー・セブン」と呼ばれる大手デベロッパー7社が存在する。三井、住友の他に三菱地所、野村不動産、東京建物、東急不動産、大京の5社だ。
例えば、'14年には三菱地所による港区の高級物件「ザ・パークハウスグラン南青山高樹町」で大規模な施工不良が発覚し、引き渡し直前に「手付け金3倍返し」という異例の条件で契約解除を行った。この物件のゼネコンは鹿島建設。このような手厚い補償ができたのも、三菱、鹿島が共に最大手だったからだ。不動産コンサルティング会社オラガ総研の牧野知弘氏が語る。
「中小のデベロッパーにしてみれば、最近大手デベロッパーが行っている手厚い対応を見て『大変な先例ができた』という思いでしょう。
中小のなかには開発する物件数が少ないため、その分、大手より丁寧に開発をしているデベロッパーもあります。しかし、いざ施工不良が見つかって、大規模な建て替えが必要となると、中小では十分な対応ができないのも事実です」
マンションという、多くの人にとって「一生に一度の買い物」をするにあたって、どのデベロッパーから購入するかというのは重要問題だ。
メジャー・セブンのような会社は「大手だから安心」という客の信用をベースにしてビジネスを展開している。だから、信用が傷つくようなケースを極端に恐れるし、なにかあったときには手厚い対応をせざるをえない。
一方、中小はミスを認めて建て直しということになれば、経営自体が危うくなる。一級建築士の碓井民朗氏が語る。
「何か問題があったときに対応してくれるのは、メジャー・セブンのような大手だけです。姉歯事件のときのヒューザーのような独立系の会社だと、倒産してしまう。そうなれば何の補償も受けられません」
■大手のメリット、デメリット
今後、施工ミスの問題が起きたときの補償が高額化したり、建て替えの基準が緩くなったりした場合、中小デベロッパーがミスをひた隠しにしたり、かたくなに責任を否定するという可能性も出てくる。
横浜のマンション2軒は最大手のデベロッパーだったためマスコミも大きく報道した。だがもし、問題が発覚したのが中小の開発分譲した物件だったならこれほど世間の注目を集めただろうか?
「そもそもマンションの施工ミスを売り主に認めさせるのは非常に難しいのです。問題が生じて管理組合が声を上げれば、マンションの管理会社を通じて売り主に伝わるのですが、管理会社は売り主の子会社であることがほとんど。管理会社は住民の味方をするふりをしますが、実は親会社の売り主の負担になるような工事は進めたがらない」(不動産ジャーナリストの榊淳司氏)
問題が紛糾してくると管理会社の担当者が、管理組合の理事会で囁く「お決まりの言葉」がある。「問題を大きくし過ぎると、欠陥マンションだという噂が広がって、資産価値が落ちてしまいますよ」と圧力をかけるのだ。自宅の価値を「人質」に取られた管理組合は、ゼネコンによる欠陥工事を強く主張できず、泣く泣く自費で改修工事を行うはめになる。
「このように欠陥工事が放置されているケースは無数にある」(榊氏)
大手の物件が必ずしも信用に足る品質であるかどうかわからないという事実は、今回の三井、住友の欠陥マンションの件でも明らかになった。
「大手が手掛ける大規模マンションは販売効率が良く、一度に販売戸数を稼ぐことができます。その一方で、限られた工期やコストの制約が厳しいなかで工事を急ぐ事例も散見される。
戸数で50~100戸くらい、階数で7~8階くらいのマンションが、売り手、建設側の工期やコストのプレッシャーも少なく、買う側にとっても品質の見極めがしやすい、バランスのいい物件が多いと思います」(前出の牧野氏)
■「安心代」は高くつく
施工したのが大手ゼネコンだからといって、マンションの品質に保証はない。大手ゼネコンの社員が現場に顔を見せるのは、週に1~2回あればいいほうだ。
「スーパーゼネコンが建てているから安心だと思ったら大間違い。マンションの建設現場は多重構造で、実際に現場で作業しているのは5次下請けの人くらいなのです。スーパーゼネコンは、工事費の2割をピンハネして、下請けに丸投げです。
そもそも公共事業やオフィスビルに比べるとマンションの建設は儲からないのです。同じ床面積でも細かく仕切って、水回りや電気工事をしなければいけない。手間がかかって面倒な上に、なにかあればすぐにクレームが来る。だから『マンション建設なんかにかかわりたくない』というのが、ゼネコンのホンネですよ」(前出の碓井氏)
このように考えると、いくら補償がしっかりしているからといって、手放しで大手の物件に飛びつくのもお勧めできない。
「結局、マンションにブランドなど存在しない」というのが前出の榊氏の意見。
「服や鞄と違って、マンションは均一な品質を保証できません。デベロッパーが同じでも施工は物件によって違うし、その時現場にいる職人の腕一つで質が大きく変わってくる面もある。ひどい場合は建設の途中でデベロッパーが入れ替わり、ブランド名が変更になるというパターンもあります」
冒頭の「パークスクエア三ツ沢公園」に住む80代の女性が語る。
「私がこのマンションを選んだのは住友を信用していたから。今回の問題が出てくるまでは、とても快適に過ごせましたよ。以前はローカルに展開している小さい会社のマンションに住んだこともありましたが、雨漏りで大変だったんです。だから、次こそはと大手を選んだ。
問題が起きてからの住友さんの対応にもそれなりに満足していますよ。どのみち私たちは、ここに住み続けるしかないんですから、やはり終の棲家に大手を選んでよかったと思います」
マンションの品質が同じなら、中小より大手の物件の方が値段が高くなる。何かあったときの「安心代」が加算されている、と考えて大手を選ぶかどうか。「マンション神話」が崩れた今、買う側はこれから、より頭を悩ませることになるだろう。
「週刊現代」2016年3月19日号より
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