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池袋駅前の家電量販店(「Thinkstock」より)
池袋駅前に密集する家電量販店、なぜ共倒れにならない?奇妙な共存共栄の謎
http://biz-journal.jp/2016/03/post_14235.html
2016.03.15 解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio Business Journal
東京・秋葉原には大小さまざまな電気店が軒を連ね、表参道にはファッションビル群が、また池袋駅前には多くの大手家電量販チェーン店が密集している。こうした同じ分野の専門店がひとつの街やエリアに局地的に集まる現象は全国各地に散見される。
一見すると、あえて競争の激しい場所に出店して顧客の奪い合いをするよりも、競合相手のいないエリアに出店したほうがいいように思える。だが、専門店が一カ所に集中したからといって、店舗が次々と潰れることもなく、奇妙にも共存共栄が成立しているようにもみえる。そこで、マーケティングの専門家である立教大学経営学部教授、有馬賢治氏にこの現象について解説をしてもらった。
■消費者が求めているのは比較購買
「秋葉原の電気街だけでなく、調理器具店が密集する合羽橋道具街など、同業種が一カ所に集まるエリアはたくさんあります。これらのエリアでは、ある分野の専門家が利便性を理由に集まってひとつのジャンルに特化して街が出来上がったという発生史があります。一方で、池袋のように大手チェーン店が戦略的に出店して同業種が群雄割拠している街も増えてきました。これらの街はそれぞれの特徴を活かしつつ、常に進化しながら活気を維持しています」
現代は“待つ”ことさえできれば、アマゾンをはじめ多くのネットショッピングサイトを利用して、ほとんどの商品は購入することができる。なかには当日配送なども登場してきた。それでも、人々がわざわざこういった街に集まるのはなぜなのか。
「理由は2つあります。ひとつは、比較購買ができることです。一般消費者が買い物を目的に外出すれば、通常複数の店舗を回ることが多いかと思います。ただその際に、わざわざ電車などで別の街に行ってまで比較をしようとは思いません。通常、ひとつのエリアで完結させようと考える人が多いでしょう。消費者は、値段の比較だけならネットでもできますが、買い物に出かけることで実際に商品に触れることができますし、さらに店員の話を聞いて納得のいく買い物ができる可能性が高まります。それを期待して消費者は当該エリアに赴くのです」(同)
■チャンス・ロスをいかになくすか
ネットショッピングで注文したものが自宅に届いて、「想像したものと違う」と嘆いた経験のある人は多いだろう。ネットに親しみを持っている世代でも、やはり現物を見て購入したいというニーズは根強い。さらに、もうひとつの理由とはなんであろうか。
「消費者にとって、欠品のリスクが低いということです。わざわざ出かけた以上は目当てのものを手に入れて帰りたいと誰もが考えます。ひとつのエリアで複数のよく似た専門店が出店していれば、仮に最初に入った店舗に探している商品がなかったとしても、別の店舗に行けば見つかる可能性は十分にあります。反対に、少ししか店舗のないエリアでは、そこに探しているものがなければ、『あのエリアに○○を買いに行くのはもうやめよう』と考えるでしょう。ところで、店舗が密集していれば、店舗同士の競争は当然激しくなります。ですが、店舗が多いほどそのエリアをショッピングの目的地として選択する消費者も多くなります。訪れる顧客が多ければ多いほど、店舗側も購買客を逃す機会を減らすことができるのです」(同)
消費者側にとっても、店舗側にとってもチャンス・ロス(機会損失)を低下させられるため、マーケティング的にもこのように店舗が密集する現象は非常にメリットが大きいようだ。また、これは何も都心に限ったことではないという。
「地方のショッピングセンターやアウトレットなどの商業施設が大型化していますが、これは、周辺地域は勿論のこと、遠方からの集客も期待しての施策です。また、倉敷市の児島ジーンズストリートなど、特色を持たせて情報を発信することで全国から消費者を呼び込む試みも活発になってきました。財政に苦しむ地方都市も少なくないですが、特徴を上手く押し出すことで、地元以外の消費者を呼び込むことが期待できるのです。また、規模が大きければ大きいほど、比較の幅が広がるのでリピーターが増えやすくなります。都心にしても同じで、どれだけ消費者に街に出ることが“楽しい”と思わせ、“また来たい”と思わせることができるのかが集客のカギとなってきますね」(同)
買い物本来の“楽しさ”を十二分に楽しめる施設やエリアが育ってくれば、実店舗が「価格.com」など低価格至上の相手に勝利する機会も増えてきそうだ。街づくりというものは、本来そうあるべきなのかもしれない。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio)
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