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4Kテレビブームもいつまで続くかわからない〔PHOTO〕gettyimages
あの超有名企業も「即死」リスク大 〜ニッポン経済はすでに「新型不況」に突入している これが消費激減の実態だ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48152
2016年03月14日(月) 週刊現代 :現代ビジネス
トヨタもパナソニックもユニクロもアップルも、誰もが知る超有名企業が続々と罠にはまってきた。企業を即死させるほど恐ろしい、「新型不況」という罠に。
■なぜかテレビが売れ始めた
株も為替も想定外が続くニッポン経済にあって、経営トップたちがなによりも「読めない」と頭を抱えているのが最近の消費者行動である。
新商品に熱中したかと思ったら、次の瞬間には別の新商品へと殺到する。
日本のGDPの6割を占める巨大な購買力を持つ消費者のそうした想定外の行動が、大手企業の「生死」に直結するようになり、経営者たちは頭を抱え出した。
たとえば、テレビ離れをした人がスマホへ殺到したと思ったら、今度はスマホに飽きてテレビに大挙して戻ってくる—。
誰も想像すらできなかったそんな光景が、いま日本全土で広がり始めていることをご存じだろうか。
かつては日本の花形産業といわれながら、すっかり不況業種の代名詞となったテレビ産業。その現場ではいま、大復活に沸く歓喜の声があちこちから上がっている。
まず、パナソニック幹部が言う。
「昨年から4Kテレビがバカ売れするテレビブームが起きています。しかも、テレビは1万円以下にまで買い叩かれる格安商品となっていたのが、いまは10万~40万円の高価格帯から売れていく。うちは昨年5月から販売している『ビエラ』の新シリーズがヒットしていて、今年度のテレビ事業はリーマン・ショック時から8年ぶりに黒字化する見通しも立ってきた」
家電量販店大手のヤマダ電機がこの2月に発表した'15年4-12月期決算は、業界内に大きな波紋を広げた。
というのも、本業の儲けを示す営業利益が前年同期比で2・4倍と激増。しかも、決算資料には、「4Kテレビの需要増加により単価の上昇が見られ好調に推移」と記され、テレビ販売が好業績の牽引役だったことが明らかになったからである。
少し前までは普通のテレビより数十万円も高い価格で不人気商品と揶揄されてきた4Kテレビ。それが突然変異したようにヒット商品に化けてきたから、関係者は「嬉しい誤算」に戸惑いながらも喜びを隠せない。
ヤマダ電機社員が言う。
「実は経営再建中のシャープさんも、4Kテレビ事業は絶好調。台湾の鴻海精密工業による買収観測で行く末が懸念されている栃木県の矢板工場では、慌てて生産台数を倍増させて対応しているほどです。4Kテレビ市場はここ1年で一気に3倍ほどに膨れ上がり、薄型テレビ全体の販売額も昨年は前年増となった。量販店ではスマホに席巻されていた1階のメイン売り場をテレビが奪い返す日も近いというほどに、現場は盛り上がっている」
そんなテレビ復活の流れに乗って、テレビにつなぐ家庭用ゲーム機も「V字回復」してきた。
任天堂では家庭用ゲーム機『Wii U』の販売が絶好調。100万本以上が売れる大ヒットソフトまで登場し、つい最近までの絶不調が嘘だったかのようである。
「任天堂社長の君島達己氏はよほどうれしかったのか、2月の決算会見に登壇すると、『さらなる広がりの可能性が見える』『良い循環に入っている』と胸を張っていた」(業界アナリスト)
■消費者の気持ちが読めない
そんなテレビ勢を横目で見ながら、沈鬱ムードなのがスマホ業界である。
実はここへきて市場の成長が完全にストップ。市場規模が前年割れして、シュリンク(市場縮小)が始まった。
KDDI幹部が言う。
「象徴的なのは米アップルのiPhoneが、日本進出した'08年以来初めて国内出荷台数が前年割れしてしまったこと。京セラ、ファナックなどの関連メーカーはさっそく減益や下方修正に追い込まれ、ミツミ電機やホシデンは3月決算で赤字に落ちそうです。通信キャリアも、限られた顧客を各社で奪い合う価格競争に巻き込まれている」
スマホの普及で爆発的に拡大してきたスマホゲーム市場では、急激な客離れすら始まった。
業界の不安を表すように、この2月には、スマホゲーム業界で急成長を謳歌してきたガンホー・オンライン・エンターテイメント会長の孫泰蔵氏が、「一身上の都合」として突如、会長退任を発表する「事件」が勃発。
ガンホーの売上高約1500億円の過半を稼ぎ出すゲームの人気に陰りが出始めた矢先での退任発表。そのうえ、泰蔵氏はあのソフトバンクグループ総帥の孫正義氏の実弟であることから、泰蔵氏はスマホ業界が沈没する前兆を見抜いて、いち早く沈む船から逃げ出したのではないかとの憶測が流れた。
グリー社員は言う。
「そうした声が上がるほどに、業界全体が自分たちの商売に逃げ腰になっている。うちの売上高も3~4年前は1500億円以上あったのが、今期は720億円まで半減する。
業界ではDeNAが自動運転、ミクシィがチケット売買仲介の事業に乗り出すなど、異業種のビジネスへ進出する姿も目立ってきた。各社ともスマホゲームバブルの破裂を視野に入れ、早めに次の稼ぎ頭を探そうと焦りまくっている」
昨日まで爆発的に売れていた商品の需要が「瞬間蒸発」したようにパタリと消えて、今度はまったく別の商品が爆発的に売れ始める。そんな商品のブームも一瞬で終わり、消費者はまた次の新商品へ……。
企業側の想定を大きく超える猛スピードでブームが起きては、弾けていくから、経営者たちは準備も対応もできない。4Kテレビも数ヵ月後にはブームが終わって、在庫が大量に積み上がっているかもしれないから、浮かれていれば足をすくわれかねない。現在のニッポン経済を覆い出しているのは、そんな消費の激変現象なのだ。
「言い換えるならば、消費の『コンビニ化』が顕著になってきた」と、法政大学大学院教授の並木雄二氏は言う。
「いま消費者にとって最も身近な買い物の場所はコンビニですが、そのコンビニは毎週新商品を100アイテムほど投入するほどの改廃を行っています。新商品を常に入れ続けないと消費者に飽きられるからですが、消費者はこのコンビニ消費に日常的に触れる中で、新しい刺激がないと満足しなくなってきた。
コンビニが与える新鮮さがほかの商品やサービスにも求められるようになり、各社は熱しやすく冷めやすい消費者の行動に揺さぶられるようになった」
■そして「共食い」が始まった
すでに消費の「コンビニ化」はあらゆる業界・業種に侵食し始めている。それがライバル企業間にこれまでは考えられなかったような優勝劣敗劇を巻き起こしている。
たとえば、アパレル業界で話題になっているのはライトオンの大復活。
カジュアルウェアの専門店として一世を風靡したライトオンは、ユニクロ(ファーストリテイリング)などの新興勢力に顧客を奪われて、'10年に創業来初の最終赤字に転落。以降、経営不振から抜け出せないでいたが、ここへきて既存店売上高が13ヵ月連続前年比プラスと大躍進している。
「ユニクロに飽きた消費者が、ライトオンに一気に流れてきた。実際、ライトオンが伸びたのと同時に、ユニクロは既存店客数の前年割れが常態化している。ユニクロ離れした客はしまむらにも押し寄せていて、2期連続で減益に苦しんでいた同社は今期増益が見えてきた」(ユニクロOB)
自動車業界では、軽自動車が昨年15%以上も販売台数が激減する大不振に陥り、「アメ車」の米フォードは販売不振で日本撤退。最近ではマツダがミニバンから撤退するとの情報が駆け巡るなど客離れが進んでいるかと思いきや、意外なことに超高級車には客が猛烈な勢いで流れ込んでいる。
'15年の販売台数を見ると、ランボルギーニ=86%増、フェラーリ=28%増、ジャガー=25%増、ベントレー=16%増と、名だたる超高級車が驚くほどに販売を伸ばしているのである。
トヨタ社員は言う。
「自動車は快適に走れれば、安くて手頃なほうがいいということで軽自動車ブームが起こった。が、いまはユーザーが自動車本来の運転の楽しみを求めるようになり、本格的な高級車へ乗り替え出した。次に流行る車種を読むのはどんどん難しくなる中で、メーカー側の対応策といえば強力な多車種をフルラインナップすることで待ち受けるしかない。うちがダイハツを完全子会社化したのにはそんな狙いもある」
消費市場では、「共食い化」という新現象も猛威を振るっている。
「共食い化」とは、ヒット商品が生まれると、それが自社のほかの商品の売り上げを喰い出してしまうこと。キリンビール幹部は言う。
「うちでは第3のビール『澄みきり』が大ヒットしたとき、同じ第3のビールの『のどごし〈生〉』の販売が急減した。焦って『のどごし〈生〉』に集中的に宣伝費をかけたのですが販売は思うように伸びず、さらに最悪なことに『澄みきり』まで売り上げが急減して大慌てになった」
共食い化が恐ろしいのは、対処を誤れば商品の「共倒れ」を招きかねないということにある。
小売業界も「共食い化」の直撃を受けている。
「セブン&アイHDの鈴木敏文会長がいま頭を悩ましているのが、傘下の総合スーパー・イトーヨーカ堂の再建。近隣にあるヨーカ堂とコンビニのセブン-イレブンが『共食い』しているから、どうにも対処がしづらい。イオンも傘下のダイエーの再建に苦しんでいるが、事情は同じ。いまダイエーの店舗を次々とイオンの看板に掛け替えているが、これは共食いを避ける苦肉の策といえる」(イトーヨーカ堂幹部OB)
日本の消費者は世界で最も熱しやすく、冷めやすい、そして世界一厳しい目を持った消費者と化してきた。
企業がカネと時間をかけて新商品を開発しても、ヒットは長く続かないから利幅は当然薄くなる。それでも消費者が飽きるのを先回りして、より速く、新しいヒット商品を次々と生み続けることでしか生き残れない時代に突入してきたのである。
■出口のない負の連鎖
ここで右のグラフをご覧いただきたい。
これは'00年からの家計の実質消費支出の推移を示したものである。
一目でわかる通り、消費はここ十数年ずっと右肩下がり。さらに、リーマン・ショック時よりも、東日本大震災による買い控えが起きた時よりも、現在は消費が減っている実態が浮かび上がる。
三越伊勢丹HD社長の大西洋氏は言う。
「われわれはプライスラインといって、中間層の方が買われる価格帯の動きを見ているのですが、これが前年比で10~15%も落ちている。これまでのクオリティの商品を出しても売れないのは当然で、新しい価値観や質を提供しながらそれに合った価格の商品にしなければ買ってはもらえない。デフレ化の兆しが見えてきた中で、企業はいままで以上に厳しい闘いを強いられることになる」
東京では昨秋から、企業の倒産件数が増加してきた。縮み続けるパイを奪い合う企業間競争が熾烈になり、体力を奪われた企業から順に退場を迫られるようになっている。
企業数が減ることは、消費者からすれば商品の選択肢が減るのと同じだから、消費者はさらにモノを買わなくなる。それが景気を冷え込ませ、企業はますます体力を奪われる。そんな出口のない負の連鎖は、すでに回り出している。
ジャパネットたかた創業者の田明氏も言う。
「消費者はスマホやテレビなど様々なところから情報を仕入れ、敏感にそれに反応しながら、嗜好を日々変化させている。実際、ビジネスの環境は一日で変わるし、商品のサイクルはどんどん短くなっている。いまほど経営者が消費者から問われている時代はない。経営者には、みずから動いて新しい消費を創り出すことが求められている。常にそれをやり続けられるところしか生き残れない」
ひとつヒット商品が出れば、そこから持続的に上がる利益を次の新商品の開発に回して、新しいヒットを生んでいく。そんな従来の勝利の方程式はもう通用しない。
商品の寿命が短くなるにつれ、企業の寿命もどんどん短くなっていく。ひいてはそれが、経済全体の寿命を蝕んでいく。ニッポン経済はそんな「新型不況」に足を踏み入れたのだ。
これからいったい、どれだけの企業が生き残っていられるだろうか。
「週刊現代」2016年3月19日号より
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