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昨夏から暴落に見舞われた上海株。当局が買い支えても伸び悩んでいる(ロイター)
習氏、昨年7月に「株価工作」の極秘指令 米メディア暴露 投資家は総スカン
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160312/frn1603121530001-n1.htm
2016.03.12 夕刊フジ
中国・上海株の暴落が加速していた昨年7月、習近平国家主席が手書きの文書で、株価維持を事実上命じていたことが分かった。異例の指令書で重大な危機感を示したにもかかわらず、国内外の投資家は総スカンで、株価対策も失敗に終わった。一方、人民元の国際通貨化も看板倒れで、当局は買い支えに必死という惨状だ。共産党一党独裁下の市場経済という大いなる矛盾が浮き彫りになっている。
習主席による異例の「株価維持指令」を報じたのは米経済メディアのブルームバーグ。
上海株総合指数がバブル的に暴騰した後、雪崩のような暴落が続いていた昨年7月、株価対策を話し合う会議で、習主席が「個人投資家の利益を確実に保護するように」という内容の指示を調査報告書に走り書きしたという。
「国のトップが株価に危機感を持つこと自体は悪いことではないが、習政権の場合は意味が違う」と語るのは、中国経済に詳しい評論家の上念司氏。
「リーマン・ショック以降、実体経済が悪いことを隠して無理やり相場を支えてきたが、いよいよ隠しきれなくなったことへの危機感という側面が強いのではないか」とみる。
習主席の指令を受けてか、中国当局は空売りの取り締まりや大株主の保有株売却禁止、国内メディアへの報道規制などの株価維持策を矢継ぎ早に打ち出した。そして証券会社などに株を買うよう要求、当局の資金によるとみられる買い支えも続けた。
これでいったん株価は下げ止まったものの、今年に入って再び暴落、株価を安定させるために導入した値幅制限制度「サーキットブレーカー」もかえって下げを加速させた。2月には市場混乱の責任を取る形で、証券当局のトップを事実上更迭してしまった。
習政権は反腐敗運動を大義名分に官僚や企業経営者らを次々摘発しており、同じ手法を市場経済にも持ち込んだ形だが、上念氏は「株価も関係者を取り締まれば維持できると誤解している節があるが、やればやるほど投資する人がいなくなるだけだ」と指摘する。
習政権が昨年までしきりに強調していた「人民元の国際通貨化」についてもにわかに雲行きが怪しくなった。
昨年11月に国際通貨基金(IMF)は人民元を特別引き出し権(SDR)の構成銘柄に採用すると決定した。今年10月には組み入れが始まり、名実ともに国際通貨になる。
しかし、今年の全国人民代表大会(全人代)の政府活動報告で、李克強首相は、人民元について「相場の市場メカニズムを引き続き整備し、合理的な均衡水準での安定を維持する」と言及するにとどめた。前年の報告で「人民元レートの上下方向への変動の柔軟性を高める」「人民元の交換性を徐々に実現し、人民元の国際化を拡大する」として、グローバル決済の充実などの方針を打ち出していたのと比べるとずいぶんそっけない。
「人民元は“自由に取引できない国際通貨”という矛盾した存在になっている。全人代に向けて事実上の人民元切り上げを行っている」と上念氏は実情を明かす。
“経済大国”のメンツを保とうとして裏目に出る習指導部の失政が明らかになった形だ。ブルームバーグの前出の記事では「国有企業改革から人民元取引の一段の自由化容認まで習主席が幅広い課題に取り組む中で、今後もこうした政策上の失敗が起きるリスクがあることも示唆している」と警鐘を鳴らした。
上念氏は、中国の政治体制が根本的な矛盾を抱えているため、事態の打開は困難とみる。
「市場経済は多くの人が自由な活動をすることで発展するもので、国が成長産業や投資先を決めてもうまくゆくはずがない。そもそも経済的な自由は政治的な自由とほぼ同義なので、共産党の一党独裁体制では不可能だ。国有企業改革も共産党内部の利権も絡むので手つかずに終わるところも出てくるだろう」
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