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【お金は知っている】中国の軍拡阻止策は金融自由化 日本は元のSDR化を逆手にとれ
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20160311/ecn1603111550001-n1.htm
2016.03.11 夕刊フジ
今年の中国の軍事費は前年比7〜8%増の見通しで、国際批判はどこ吹く風だ。どうすれば習近平政権による軍拡を止められるのか。
中国で軍事とカネは建国前から一体となっている。中国共産党が1949年の建国前に真っ先に創設したのが人民解放軍と、占拠した「辺区」と呼ばれる解放区ごとの発券銀行である。中央銀行である中国人民銀行は48年12月、乱立していた辺区銀行を統合して発足した。
今では人民銀行が元を1追加供給すれば現預金はその5倍以上の規模で増える。この乗数は、異次元金融緩和の日本の場合、0・4に満たない。米国でも量的緩和期で1程度だった。
グラフを見ると、このマネー増殖が軍事費の膨張と密接に関連していることが見て取れる。中でも、人民銀行の資金供給が加速したのが2008年以降である。それを支えたのが同年9月の「リーマン・ショック」後に米連邦準備制度理事会(FRB)による量的緩和政策である。大量に刷られたドルとほぼ同額が中国に流れこんだ。人民銀行は外貨を買い上げて外貨準備(外準)とする一方で、人民元を刷る。
ところが、15年にはマネー変調が起きた。主因は前年秋の米量的緩和打ち止めである。15年からはドルの米国へのUターンが始まった。人民銀行は資金供給を減らさざるをえない。外に逃げる元を買い支えないと、元相場は暴落する。人民銀行は外準を取り崩すしかない。軍拡を支えるマネー膨張の方程式はもはや成り立たない。どうするか。 習政権が取ったのは、元の国際通貨化である。国際的に受け入れられ、通用するカネになれば、北京は元を刷って軍事技術をロシアなどから入手できる。中国に武器を売りたい欧州各国は人民元決済受け入れに積極的だ。
元国際化を決定的にするのが、国際通貨基金(IMF)による元の特別引き出し権(SDR)構成通貨組み込みだ。IMF理事会は昨年11月、今年10月からの元SDR化を決めた。元は円を押しのけてドル、ユーロに次ぐ世界第3位の主要国際通貨の座をつかもうとしている。
北京はSDR化の条件として、金融自由化を約束しているが、逆に市場統制を強化している。国際公約違反も甚だしい。元にSDR通貨の資格がないことは明らかだが、親中派のラガルドIMF専務理事が白紙に戻すとは考えにくい。
とすれば、日本は逆手に取ればよい。北京に約束通りの為替を含む金融市場自由化を迫ることだ。自由化すれば、中国からの資本逃避が加速し、元は暴落不安が高まる。価値が不安定な元を受け取る国はなくなり、国際通貨化は画餅に終わるだろう。人民銀行は元を乱発できず、軍拡にブレーキがかかる。
問題は財務官僚だ。本欄で既報したように、北京による資本規制を率先して唱え、習政権を喜ばせている。安倍晋三政権は通貨戦略を財務官僚から取り上げるべきだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)
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