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コラム:ドル100円割れのカギ握る米金融政策=上野泰也氏
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yasunari-ueno-idJPKCN0WD0KT
2016年 03月 11日 18:24 JST
上野泰也みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
3月11日、みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は、年内の米利上げはあるとしても6月に1回であり、ドル円は年後半に向けて利下げ観測が高まれば108円、仮に量的緩和再開ともなれば100円割れまで下落する可能性があると指摘。提供写真(2016年 ロイター)
[東京 11日] - 今年のドル円相場をどうみるかに関して市場参加者は、年初の時点で2つに分かれていた。昨年12月時点で米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者が提示した見通しに沿って年内の米追加利上げが4回になると考えた円安派と、半年1回程度のスローペース(年内に2回以内)にとどまると考えた筆者を含む円高派だ。
一時110.99円をつける場面もあった1―2月の相場動向から、円高派が勝利したことは自明だろう。
3月入りしてから発表された米景気指標の中には、3月の供給管理協会(ISM)製造業景況指数、1月の建設支出、2月の雇用統計・非農業部門雇用者数など、市場予想比で上振れとなったものがいくつかあり、米国経済が近い将来にリセッション入りするのではないかという警戒感を薄めるのに一役買った。
また、中国当局が財政政策を活用することによって今年の経済成長を6.5%以上に保つとコミットしたこと、原油生産量を凍結する方向で産油国の協議がある程度進展したことから、「中国」「原油」という市場が注視している2つの「リスクオフ」材料について、一定の安心感が漂った。
このため、ニューヨークダウ工業株30種平均は3月1日から5営業日続伸。7日の終値である1万7073.95ドルは1月5日以来の水準となった。市場全般の「リスクオン」「リスクオフ」のインディケーターである米国の主要な株価指数が、「リスクオフ」の動きが広がった1―2月の動乱期に区切りをつけ、年初の「振り出し」まで、この時点でいったん戻ったと判断される。米原油先物も、3月6日の終値は1月5日以来の水準だった。
だが、同じ1月5日時点の米国債の各年限の利回りやドル円の水準を3月7日と比べると、金利や為替の世界では市場参加者の「目線」がこの間大きく変わり、レンジがシフトしたことが確認される。
1月5日の米国債利回りは、2年債が1.01%、5年債が1.71%、10年債が2.23%、30年債が2.99%。これに対し3月7日は、2年債が0.91%、5年債が1.41%、10年債が1.90%、30年債が2.70%である。
また、1月5日のドル円相場のニューヨーク市場終値は119.05円で、3月7日は113.46円だ。
日銀が1月29日にマイナス金利を導入したことで、国境を超えた「イールドハント」の動きに拍車がかかり、米国や欧州の長期金利が押し下げられた。米10年債利回りのコアレンジは、マイナス金利導入前の2.0―2.5%から1.5―2.0%に下方シフトしたと、筆者は判断している。このことは、対円でドルの上値を重くする要因である。
そして、日銀のマイナス金利は株価対策としては逆効果だった。金融機関の収益減少見通しを通じて銀行株が急落し、株安が円高につながった。また、マイナス金利が適用される「政策金利残高」が日銀当座預金のごく一部分であることが市場参加者の知るところとなったこともあり、円高阻止という日銀の目論見はあっさり潰えた。ドル円のコアレンジは115―120円から110―115円に、5円幅で円高方向にシフトした。
<年後半に108円、米量的緩和再開なら100円割れも>
米国で昨年12月に行われた約9年半ぶりの利上げは、2000年8月に日銀が実施したものの失敗したゼロ金利解除と、類似点がかなり多い。では、米国の経済・企業収益の「足場が弱い」中で、しかも差し迫ったインフレ懸念が見当たらない中で行われた米国のこの利上げが失敗だったことが誰の目にも明らかになり、イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が利下げへの転換を決断するケースを想定する場合、それはいつ頃になるのだろうか。
むろん、これは米国内外の経済情勢やマーケットの展開に左右されるため一概に言えない話である。イエレン議長は2月10日に行った議会証言の中で、海外経済のリスクなどから今後の利上げペースが当初想定よりもスローになる可能性が高まったという認識をにじませつつも、労働市場の改善が続いていることや、インフレ抑制要因の多くが一時的なものだとみていることを根拠として、「近く利下げを行う必要に直面するとは想定していない」と述べていた。
そうした中ではあるが、試みに米国の金融政策が「Uターン」した近年のパターンから、インターバルの大まかなイメージの把握をすると、どうなるか。1)ITバブル崩壊時、2)住宅バブル崩壊時、それぞれのケースは下記の通りだ。インターバルは7カ月から13カ月程度といったイメージが浮かび上がる。
1)2000―01年のITバブル崩壊時
・00年5月16日に利上げ。フェデラルファンド(FF)レートは0.5%引き上げられて6.5%に。
・01年1月3日に利下げ。FFレートは0.5%引き下げられて6.0%に。
――インターバルは約7カ月半。
2)2006―07年の住宅バブル崩壊時
・06年6月29日に利上げ。FFレートは0.25%引き上げられて5.25%に。
・07年8月17日に公定歩合引き下げ。0.5%引き下げられて5.75%に。
・07年9月18日に利下げ。FFレートは0.5%引き下げられて4.75%に。
――インターバルは約13カ月半。
筆者が現時点で抱いている基本シナリオは、追加利上げはおそらく6月に1回だけ、辛うじて行われるものの、そこから先は追加利上げができなくなり、FFレート誘導レンジの上限が1%に達することのないまま、金利据え置きが長引くというものである。
そして、今年の後半には、雇用統計を含む広範な米景気指標に減速感が出てくる中で、「次は利下げだ」という見方が市場で広がるだろう。ドル円はこの局面において110円を下回り、108円前後に達すると予想している。
なお、仮定の話になるが、米国が近い将来にリセッション入りする場合、FRBは実際に金融緩和へと舵を切ることだろう。利下げだけで済めば、ドル円は100円前後までの円高ドル安にとどまるとみる。
だが、仮に「量的緩和第4弾(QE4)」に直行するようなら、ドル円は100円を割り込む水準まで円高になり、「力強く持続的な景気のけん引役」が不在であるためショックに対して脆弱な日本の経済もまた、後退局面入りする可能性が高い。
*上野泰也氏は、みずほ証券のチーフマーケットエコノミスト。会計検査院を経て、1988年富士銀行に入行。為替ディーラーとして勤務した後、為替、資金、債券各セクションにてマーケットエコノミストを歴任。2000年から現職。
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