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長期金利、初のマイナス0.1% 国債入札順調で利回り急低下(SankeiBiz)
http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/416.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 3 月 09 日 09:19:00: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

長期金利、初のマイナス0.1% 国債入札順調で利回り急低下
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160308-00000007-fsi-bus_all
SankeiBiz 3月9日(水)8時15分配信


 日銀が導入した「マイナス金利政策」の余波が続いている。8日の債券市場で、長期国債の目安となる新発10年物国債利回りは一時、初めてマイナス0.1%をつけ、日銀が民間銀行から預かる資産の一部に適用している金利と並んだ。終値利回りは、前日比0.05%低いマイナス0.1%だった。

 財務省がこの日実施した30年物国債の入札結果が順調だったことで市場に安心感が広がった。幅広い年限の債券が買われ、利回りが急低下した。

 一方、資産運用会社11社は運用難のため、公社債などで運用する投資信託「MMF(マネー・マネジメント・ファンド)」の運用をやめて顧客に資金を返還する公算となった。

 日興アセットマネジメントなど5社は返還を決定済みで、残る6社も返還の方向で検討している。

 

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1. 2016年3月09日 09:59:37 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[346]
OECD景気先行指数、世界経済の成長鈍化を示唆
経済協力開発機構(OECD)が8日発表した1月の景気先行指数(CLI)は、中国で安定した成長が続く見通しを示した。写真はスポーツ用品「プーマ」の店舗(中国):
By PAUL HANNON
2016 年 3 月 9 日 08:30 JST

 経済協力開発機構(OECD)が8日発表した1月の景気先行指数(CLI)は、世界経済が今後数カ月で減速する見通しを示唆した。中国では安定した成長が続くものの、大半の先進国で鈍化する見込みだ。

 1月のCLIによると、米国、英国、カナダ、ロシアで景気鈍化が続く一方、ドイツとブラジルでも成長が減速に転じるもよう。

 また、これまで成長加速が予想されていたインドとフランスは横ばいの見通しだ。実際には、OECDがCLIを算出している経済大国のうち、1月時点で加速が示唆された国はなかった。ただ、世界第2位の経済規模を誇る中国で安定した成長が続く兆しが示されたのは心強い。

 1月のCLIが世界経済見通しのさらなる悪化を示唆したのはそれほど意外なことではない。中国などの成長見通しをめぐる懸念の再燃で世界の金融市場が混乱し、2016年は厳しい幕開けとなったからだ。今回のCLIからは、金融市場の不安定性そのものが16年の経済成長の下押し要因となった可能性がうかがえる。

 OECDは、景気拡大と縮小の転換点を早期に見極める目的で、経済活動の変化を示すさまざまな統計に基づきCLIを算出している。CLIで示唆される変化は通常、6〜9カ月遅れて経済活動に現れる。

 OECD加盟34カ国のCLIは99.6で、前月の99.7からやや低下した。CLIは100を割り込むと、経済成長ペースが長期平均を下回ることを意味する。

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http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-MY825_oecd03_M_20160308055041.jpg


債券反落か、長期金利マイナス0.10%まで低下で達成感−オペ観測 (1)
2016/03/09 08:04 JST

    (ブルームバーグ):債券相場は反落が予想されている。前日の急激な相場上昇で長期金利がマイナス0.10%と、日銀が当座預金の一部に課すマイナス金利まで達したことで、高値警戒感が出ている。
9日の長期国債先物市場で中心限月3月物は152円台前半での推移が予想されている。夜間取引では152円24銭と前日の日中終値比14銭安で終えた。
東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは、「昨日の10年国債利回りは当面のめどと多くが考えたマイナス0.10%まで低下した。30年債入札の結果が強かったことがきっかけだ。その強さには驚きを隠せないが、今後も逼迫(ひっぱく)する需給も踏まえ、プラス利回りを追う投資家の動きが続くことからすれば、当然と言えるのかもしれない」と指摘。ただ、「今日はカーブのフラット化圧力は残っても、相場の上げは一服とみる」と予想する。
現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の342回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値マイナス0.10%をやや上回っての推移が見込まれている。佐野氏は今日の予想レンジをマイナス0.095%〜マイナス0.065%としている。
前日の国内債市場では、予想を大幅に上回る30年債入札結果を好感し、残存期間の長い債券を中心に買われた。長期金利はマイナス0.10%、新発20年債利回りは0.305%、新発40年債利回りは0.545%と、ともに最低を更新した。
パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は、「年度末までに買えていない人もいて、そういう中でプラス金利のあるゾーンを先回り的に買う投資家もいたということだったのだろう。30年債入札後も需給の良さを確認した価値で超長期が買われたが、オーバーシュートしつつあり、水準観はあまり意味がなくなりつつある」と話した。
国債買い入れオペ
日本銀行は今日午前10時10分の金融調節で、今月3回目となる長期国債買い入れオペの実施を通知する可能性がある。その場合、前日に30年債入札が行われており、残存10年超を対象としたオペなどが実施される見込み。
みずほ証券の辻宏樹マーケットアナリストは、「夜間取引の円債先物は欧米金利が大きく低下する中でも軟調な時間帯が続いた。今日は昨日大きく金利が低下した反動から、いったんは上値の重い展開で始まる公算が大きい」と予想。ただ、「30年入札の翌日なので超長期ゾーンなどを対象とした国債買い入れオペが行われる可能性が高い。超長期ゾーンを中心に金利が大きく低下してきているので、この水準で戻り売り圧力が見られるのかには注目が集まる」と言う。
8日の米国債相場は上昇。米10年債利回りは前日比8ベーシスポイント(bp)低下の1.83%程度で引けた。原油先物相場や米株式相場が軟調に推移したことに加えて、日本国債が上昇した流れも波及した。S&P500種株価指数は同1.1%下落した。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3PLPZ6TTDS901.html



日本株は3日続落へ、円高推移と原油反落−海外景気敏感セクター売り
2016/03/09 07:59 JST

    (ブルームバーグ):9日の東京株式相場は3日続落する見通し。為替の円高進行や原油市況の反落、世界的な株安再燃を警戒し、輸送用機器や電機、機械など輸出株、鉄鋼など素材株、石油や卸売など資源株、海運株といった海外景気敏感セクターが売られそうだ。
SMBC日興証券投資情報部の太田千尋部長は、「昨日の中国貿易統計が震源地となり、グローバル景気への警戒感が出ている。昨日の東京市場は統計の悪さに政策期待が出てきたが、政策期待に大きく反発させるパワーはない」と指摘。現在は先物主導で動いており、「セクターでの濃淡がなくなり、下がるときは全て下がり、上がるときは全て上がる」と言う。
米シカゴ先物市場(CME)の日経平均先物(円建て)の8日清算値は1万6675円と、大阪取引所の通常取引終値(1万6800円)に比べ125円安だった。
8日のニューヨーク為替市場では円が主要対し上昇、ドル・円は一時1ドル=112円43銭と2月24日以来のドル安・円高水準に振れた。中国経済減速の兆候が増え、安全資産を求める動きが強まった。けさの東京市場では112円60銭台と、前日の日本株市場の終値時点113円15銭に対し円高水準で推移している。
また、8日のニューヨーク原油先物は3.7%安の1バレル=36.50ドルと反落。米エネルギー情報局(EIA)の週間統計発表を9日に控え、先週の米原油在庫は80年ぶり高水準に積み上がったとの見方が広がった。
8日の世界株式は軒並み下落。S&P500種株価指数が1.1%安の1979.26と2週間ぶりの下落率で、商品銘柄や銀行株が売られた。ストックス欧州600指数は1%安、MSCI新興市場指数も0.9%安となった。米投資家の恐怖心理を示すシカゴ・ボラティリティ指数(VIX)は7.6%上昇の18.67と3日連続で上がっている。
きょうの日本株は、為替や原油市況、欧米株安の流れを嫌気し、輸出や素材、資源など海外景気敏感セクター中心に売りが先行する見通し。週末の株価指数先物・オプションの特別清算値(SQ)算出をにらんだ先物売買の影響を引き続き受けやすく、日中は値動きの荒い展開も予想される。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3QS6Y6K50Y301.html



Business | 2016年 03月 9日 07:10 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
米株は下落、原油安と中国貿易統計で売られる

[ニューヨーク 8日 ロイター] - 米国株式市場は下落した。引けにかけて売りが優勢となり、主要株価指数がこの日の安値近辺で終了。原油価格の下落を嫌気してエネルギー株が売られたほか、低調だった中国の貿易統計を受け、世界経済情勢の悪化をめぐる不安が再燃した。

米原油先物価格は時間外取引で一時、4%超下落した。原油相場はこのところ持ち直していたが、供給過剰に加え、中国の需要が低調に推移するとの見通しが、市場心理を悪化させた。今年に入り原油相場と主要株価指数は強く連動している。

ダウ工業株30種平均の構成銘柄では、石油のエクソンモービル(XOM.N)とシェブロン(CVX.N)がいずれも2%強の下落となり、S&Pエネルギー株指数.SPNYは4.1%低下した。

中国の2月の貿易統計は、輸出が過去6年超で最大の落ち込みとなるなど、エコノミスト予想よりはるかに弱い内容だった。輸入の減少が続いたことも、素材セクターの株価を圧迫し、S&P素材株指数.SPLRCMは2%低下した。

プラティナム・パートナーズのユリ・ランデスマン社長は「原油相場が本格的に回復するとは、まだ思えない」と述べた。同氏は低調な世界経済の成長を踏まえ、S&P総合500種が依然として低下基調にあるとして、2000ポイント近辺で推移する公算が大きいと予想。今後は1825ポイント近辺の支持線に向かい、その後は昨年5月に記録した過去最高の2100ポイント強の水準を試す展開になるとの見通しを示した。

ハンバーガーチェーンのシェイク・シャック(SHAK.N)は11.8%下落。同社の四半期決算と業績見通しは失望を誘う内容だった。

一方、アパレル小売りのアーバン・アウトフィッターズ(URBN.O)は16.1%急伸。同社のブランド「フリー・ピープル」の売上高が市場予想を上回ったことが好感された。

半導体のマイクロン・テクノロジー(MU.O)は7.9%値下がりし、ナスダック総合指数を押し下げた。

騰落銘柄比率はニューヨーク証券取引所が約1対3.2、ナスダックは約1対3.5だった。トムソン・ロイターのデータによると、米取引所の合計出来高は約85億株で、過去20営業日平均の87億7000万株を下回った。

終値 前日比 % 始値 高値 安値 コード

ダウ工業株30種 16964.10 -109.85 -0.64 17050.67 17072.79 16921.51 .DJI

前営業日終値 17073.95

ナスダック総合 4648.83 -59.43 -1.26 4676.22 4695.04 4642.87 .IXIC

前営業日終値 4708.25

S&P総合500種 1979.26 -22.50 -1.12 1996.88 1996.88 1977.43 .SPX

前営業日終値 2001.76
http://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPKCN0WA2Q6?sp=true





Business | 2016年 03月 9日 08:09 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
リスク回避で円上昇、中国貿易統計で輸出入大幅減=NY市場

[ニューヨーク 8日 ロイター] - 終盤のニューヨーク外為市場では、円が買われた。アジア時間に発表された2月の中国貿易統計で輸出入が大きく落ち込み世界経済減速懸念が高まると、安全資産とされる円やスイスフランが上昇した。また石油や産業用金属価格の下落で、資源国通貨の豪ドルやカナダドルなどが売られた。

ドル/円JPY=は約1週間ぶり安値の112.41円に下落後、終盤は0.8%安の112.56円。ユーロ/円EURJPY=も終盤0.8%安の123.92円となっている。

2月の中国貿易統計で米ドルベースの輸出は前年同月比25.4%減で、2009年5月以来の大幅な落ち込みとなった。輸入も13.8%減で、16カ月連続の減少だった。

エバーコアISI(ニューヨーク)のストラテジスト、スタン・シップリー氏は「中国経済が苦境に陥ってるのなら、足元でリスク回避の動きが起こっていることになる」と述べた。

円とともに安全資産とされるスイスフランも買われドル/スイスフランCHF=は下落したが、その後持ち直して終盤は0.1%安の0.9956スイスフラン。ユーロ/スイスフランEURCHF=も終盤は、ほぼ横ばいの1.0964スイスフランとなっている。

10日開かれる欧州中央銀行(ECB)理事会を前に、ユーロの動きは限定的だった。ユーロ/ドルEUR=は終日小動きで、終盤は0.05%安の1.1005ドルでの取引。

昨年12月の理事会でECBが発表した緩和策が市場の予想を裏切る内容だったため、今回追加緩和策がどの程度のものになるのか見通しが立てづらく、ユーロ弱気の市場参加者は大胆な決定を前提としたユーロ売りのポジション構築には慎重になっている。

中国貿易統計でリスク回避の動きが強まる中、北海ブレント先物は一時約3カ月ぶり高値となる1バレル=41.48ドルに上昇。ただその後は反落し、終盤は3%安の39.61ドル。

ロンドン金属取引所(LME)銅先物3カ月物も先週付けた4カ月ぶり高値水準から下落を続け、2.6%安の1トン=4868ドルでの引けとなっている。

これらを受けて資源国通貨の豪ドルやカナダドルが売られた。

豪ドル/米ドルAUD=D4は7日に昨年7月以来の高値となる0.7486ドルに上昇したが、この日は終盤の取引で0.2%安の0.7455ドル。

ドル/カナダドルCAD=D4も同様に7日に昨年11月以来の安値となる1.3262カナダドルに下落したが、この日の終盤で0.9%高の1.3405ドルとなっている。

ポンド/ドルGBP=D4は終盤0.4%安の1.4215ドルだった。イングランド銀行(中央銀行、BOE)のカーニー総裁が、英国が欧州連合(EU)から離脱すれば英国経済に打撃となるとともに、世界金融市場センターであるロンドンから金融機関が退去する可能性があると警告した。

ドル/円 NY時間終値 112.63/112.66

前営業日終値 113.38

ユーロ/ドル NY時間終値 1.1006/1.1009

前営業日終値 1.1012
http://jp.reuters.com/article/ny-forex-idJPKCN0WA2Q8?sp=true

World | 2016年 03月 9日 08:22 JST 関連トピックス: トップニュース
原油先物3%安、価格上昇は持続不可能とゴールドマンが指摘

[ニューヨーク 8日 ロイター] - 8日の原油先物市場は3%超下落。ゴールドマン・サックスが原油相場の上昇は持続可能でないとの見方を示したことや、週間の米原油在庫統計が過去最高水準を更新するとの見通しが相場を圧迫した。

クウェートのサレハ石油相代行が同日、イランを含めた主要産油国が増産凍結で合意した場合に限り、クウェートも凍結を実施すると述べるなど、増産凍結に向けた産油国の足並みがそろっていないことも懸念を誘った。

北海ブレント原油先物LCOc1は1.19ドル(2.91%)安の39.65ドル、米原油先物LOCc1は1.40ドル(3.69%)安の36.50ドルで清算した。

北海ブレント先物は7営業日ぶりの反落となった。
http://jp.reuters.com/article/global-oil-idJPKCN0WA2PA


NY原油(8日):2カ月ぶり高値から反落、統計控え在庫増を警戒
2016/03/09 05:48 JST
    (ブルームバーグ):8日のニューヨーク原油先物市場ではウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物が反落。米エネルギー情報局(EIA)の週間統計発表を9日に控え、先週の米原油在庫は80年ぶり高水準に積み上がったとの見方が広がった。
エネルギー関連の商品に重点を置くヘッジファンド、アゲイン・キャピタル(ニューヨーク)のパートナー、ジョン・キルダフ氏は「今の上昇局面は内容を伴っていない」と指摘。「需給ファンダメンタルズは大して変わっていない。生産水準の維持をめぐる合意はまだ最終決着していない」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物4月限は前日比1.40ドル(3.69%)安い1バレル=36.50ドルで終了。前日には昨年12月24日以来の高値となる37.90ドルで引けていた。ロンドンICEのブレント原油5月限は1.19ドル下げて39.65ドル。
原題:Oil Falls From Two-Month High as U.S. Supplies Seen Growing(抜粋)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3QM5F6K50YV01.html

World | 2016年 03月 9日 04:14 JST 関連トピックス: トップニュース
2017年の米産油量は日量48万バレル減、落ち込み幅拡大へ=EIA

[ニューヨーク 8日 ロイター] - 米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は短期のエネルギー見通しで、2017年の米国の産油量が日量48万バレル減の同819万バレルになるとの予想を示した。前月時点では日量23万バレル減の同846万バレルとしており、落ち込み幅は従来予想の倍以上の水準に引き上げられた。

2016年については日量76バレル減を見込む。従来予想は同74万バレル減だった。

2017年の米国の石油需要は日量16万バレル増とし、同26万バレル増から引き下げた。16年についても日量11万バレル増から8万バレル増に下方修正した。

世界の石油需要については、2016年が日量9万バレル引き下げ同115万バレル増に、2017年は日量25万バレル引き下げ同121万バレル増とした。
http://jp.reuters.com/article/usa-oil-eia-steo-idJPKCN0WA2GL



金融庁:「2階建て」などハイリスク投信の監視強化−投資家保護徹底
2016/03/09 08:01 JST

    (ブルームバーグ):金融庁は株式や債券に為替などを組み合わせた「2階建て」「3階建て」と言われる複雑なリスク要因を含む投資信託の設計・運用や販売が適切に行われているかどうか、監視を強化する。アベノミクスの下で政府が促す「貯蓄から投資の流れ」に水を差すことのないよう投資家保護を徹底する。
同庁の遠藤俊英監督局長がブルームバーグの取材に答えた。経験の浅い個人投資家や高齢者などへの過度な高リスク商品の販売は、本人が納得していた場合でも「問題がある」などと指摘。監視・監督強化のため運用会社や銀行、証券会社の経営陣にヒアリングを始めており、問題点などを共有する。

日本銀行のマイナス金利も背景に預金からリスク資産への投資が加速する可能性がある。高齢化の進行で年金生活者などの投資も増えている。こうした中、金融庁は金融商品に詳しい知識を持たない一般個人の投資拡大に備え監視強化に動く。運用、販売会社のトップとの対話を通じ顧客の身になった営業を浸透させたい考えだ。
「2階建て」投信は株や債券での運用に為替取引などを乗せて収益拡大を狙うのが特徴で、日本株や米社債などをトルコ・リラなど高金利の新興国通貨建てで運用するものなどがある。野村証券や三菱東京UFJ銀行などの金融機関で広く取り扱っている。昨年は新興国通貨の対円での下落で多くの投資家が損失を被った。

遠藤監督局長は、こうした商品は「長期投資の精神と両立せず、疑問がある」と指摘した。「2階建て」の中でも配当の毎月分配を約束した「毎月分配型」は、運用が振るわずとも配当するため元本が減るリスクがある。局長はこれに関する説明不足を懸念した。同庁の調査によると個人向けでは毎月分配型が7割程度を占める。
「2階建て」など複雑な投信についてMUFG、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、大和証券の広報担当は顧客への適合性に配慮した販売を心掛けていると述べた。野村はコメントを控えた。日本証券業協会の坪倉明生氏は、中長期の資産形成に資する商品提供のあり方を検討課題としていると答えた。

受託者責任

金融庁は2012年、証券会社などが毎月分配型や通貨選択型ファンドを販売する際に投資家に十分な説明を求める規制を強化した。昨年9月にはフィデューシャリーデューティー(受託者責任)として「商品開発、販売、運用、資産管理それぞれに携わる金融機関が徹底を図る」と行政方針に明記した。
遠藤局長はインタビューで、フィデューシャリーデューティーに関する当局の見解を7月ごろに作成するモニタリングレポートで公表する考えを示した。同局長は「われわれが規範を作り押しつけるのではなく、各金融機関が自ら規範を作り出し議論の中で認識を共有するというのがあるべき姿だと思う」と述べた。
金融機関では独自に「フィデューシャリー宣言」を行う動きが拡大している。昨夏以降、HCアセットマネジメント、セゾン投信、東京海上アセットマネジメント、三井住友アセットメント、みずほフィナンシャルグループなどが取り組み指針を公表した。顧客第1主義や利益相反行為の回避、合理的な報酬を掲げる例が多い。

こうした流れの中で、2階建て投信について、三菱UFJ広報担当の高原一暢氏は、顧客への説明に高い能力が必要なため「証券会社からの出向者で作る専門組織での取り扱いに限定している」と述べた。三井住友Fの佐々木隆史氏は「販売に当たっては慎重に対応しており、当行の売れ筋投信には入っていない」と述べた。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O2FKPY6KLVRD01.html



トランプ氏の誇張ではない−米金融政策「メイド・イン・チャイナ」か
2016/03/09 07:01 JST
    (ブルームバーグ):米大統領選の共和党候補の指名獲得争いでトップを走るドナルド・トランプ氏が、痛烈な批判の矛先を向けるもう一つの問題がある。米国の金融政策が古き良きアメリカではなく、中国で決定される「メイド・イン・チャイナ」の様相を強めているというのだ。
これが誇張されているのは確かだが、人を惑わすクリックベイト(バナー広告などのリンク)だと簡単には片付けられない。米連邦準備制度理事会(FRB)がますます受け入れざるを得ない大局的な現実、すなわち世界最強の中央銀行でも世界から切り離された孤島ではあり得ないという現実を暗示しているからだ。グローバル金融市場が相互に結び付きを強める現状では、海外での出来事が直ちに米国に跳ね返ることが多く、その逆も起こり得る。
米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)でグローバル経済アドバイザーを務めるヨアヒム・フェルズ氏が提示した「メイド・イン・チャイナ」の根拠は次のようなものだ。
まずイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長をはじめとする連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーが9月の利上げを準備していると考えられていた昨年半ばにさかのぼってみよう。やがて8月に中国が実質的な人民元切り下げに突然動き、世界中の金融市場が混乱に陥った。
市場の動揺が米経済に与える影響を懸念した連邦準備制度は利上げを先送りしたが、イエレン議長は、9月のFOMCでは「中国をめぐるリスク」が大きな焦点になったと後に記者団に語った。7年間続いた事実上のゼロ金利を解除する利上げがようやく行われたのは、12月になってからだ。
年明け後に話を進めると、FOMC政策担当者の予測で2016年に0.25ポイントの利上げが4回想定されていることが示され、イエレン議長らFOMCメンバーが3月に2回目の利上げを準備していると当初は考えられていた。しかし中国当局が1月に人民元の下落を容認し、再び市場が恐怖で凍りつくことになる。
イエレン議長は中国の意図をめぐる不確実性を指摘し、2月に利上げを遅らす可能性を示唆した。今月15、16日のFOMCで金融政策の変更はないと投資家は今や予想している。
FOMC政策担当者は、金融政策が経済データ次第だと述べているが、フェルズ氏によれば、金融情勢にも左右されることは明らかだ。中国の動きが市場を動揺させ、株安や社債利回りの上昇、ドル高を通じて米国の金融情勢を逼迫(ひっぱく)させることになれば、イエレン議長らは、実体経済への潜在的な影響という意味から、金融政策決定の材料として考慮せざるを得ないだろう。
フェルズ氏は「FOMCは金融情勢を非常に注意深く見守っている。それは米国以外の世界中の出来事と中国の行動の影響を強く受ける」と指摘した。
原題:Trump Take Note: U.S. Monetary Policy Increasingly Made in China(抜粋)

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3PJ6H6KLVRK01.html 


クリントン氏リードもサンダース氏との差縮まる=世論調査

By AARON ZITNER
2016 年 3 月 9 日 03:23 JST

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とNBCニュースが共同で実施した最新の世論調査によると、民主党予備選有権者による支持率でヒラリー・クリントン氏が引き続きバーニー・サンダース氏をリードしているが、両者の差は9ポイントへとやや縮まった。

 予備選有権者の支持率はクリントン氏が53%、サンダース氏が44%。クリントン氏のリードは1月調査では24ポイント、2月調査では11ポイントだった。

 最新の調査は、これまでの予備選および党員集会で両候補が見せた強みを反映した結果となった。クリントン氏の支持基盤には、支持率が73%となっている50歳以上の女性のほか、白人以外の有権者、中道派、保守派が含まれる。

 一方のサンダース氏は若年層に人気で、50歳未満の有権者の間で60%と高い支持を得た。

関連記事

トランプ氏とクリントン氏、市場にプラスなのは?
米民主党討論会、互いを「偽善的」と批判−ミシガン予備選意識
http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-MY239_demdeb_M_20160306205948.jpg

中国、経済より政治優先 影ひそめる現実主義
2代前の中国の首相、朱鎔基氏は1990年代後半に国有企業の改革に乗り出し、3000万人の仕事を一度に奪った。李克強首相も改革を声高に叫んではいるが、経済的目標の追求より政治を優先している。アンドリュー・ブラウン記者がお伝えする (英語音声、英語字幕あり) Photo: Reuters
By ANDREW BROWNE
2016 年 3 月 9 日 06:51 JST

 【上海】今から正確に1年前、中国の李克強首相は困難を伴う産業構造の改革策を打ち出した。その際、李首相は「これは爪を切るようなものではない」とし、「自身の肉にナイフを突きつけるようなものだ」と警告した。

 この発言は李氏の2代前の首相である朱鎔基氏を思い起こさせる。朱氏は1990年代後半に国有企業の改革に乗り出し、3000万人の仕事を一度に奪った人物だ。

 だが、李首相の改革はそれほど徹底していない。1年前に李氏が立ち向かおうとしていた問題は、はるかに悪化している――大きく膨らむ過剰生産能力、企業債務の急増、利益の急減、工場出荷価格の下落などだ。血を流すような改革に二の足を踏む李氏の姿勢は中国の指導部に訪れている重要な変化を物語っている。かつての指導部は冷酷な現実主義で経済的目標を追求することで知られていたが、現在は経済より政治を優先している。

 幹部レベルで行われる経済政策の立案と、以前は首相が率いる国務院の管轄だった実際の政策遂行の両方が、今や習近平国家主席をトップに据える共産党の各委員会の手中に収まりつつある。

全人代開会式でスクリーンに映し出される習国家主席(5日) ENLARGE
全人代開会式でスクリーンに映し出される習国家主席(5日) PHOTO: ASSOCIATED PRESS
 彼らの選択は習氏の政治的な関心事によって形作られている。つまり、基本的には腐敗撲滅キャンペーンを通じた共産党の強化、体制への挑戦の一掃、それに共産党の権力を脅かしかねない社会的不安の回避だ。それが不人気な経済調整の遅れを意味するとしても、それでいいという考えだ。

 先週開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、向こう5年間の年平均成長率目標を6.5%から7%の間に設定すると表明した李氏の政府活動報告(所信表明演説)を読み解くと、こういうことになる。

 この数字を設定したことに、中国政府は何よりも、政府が自信を持っているというメッセージを送ろうとした意図がうかがえる。そうすることで国民の支持を得ようとしているのだ。

 数字自体は長年にわたる政治目標からきている。2020年までに国内総生産(GDP)を2010年の2倍に増やし、1921年に発足した共産党の100周年記念を祝う理由を国民に示したいのだ。

 たが、その目標は新たに多額の融資を行うことによってのみ達成が可能だが、これは朱元首相がかつて完全に抹殺したとみられていた問題の再浮上につながったものだ。つまり、負債まみれの「ゾンビ企業」(多くが国有セクター)のことだ。ゾンビ企業は、中国を破産に追い込みかねず、世界市場を恒常的な不安定感で脅かしている。

 比較的急速な経済成長と産業再編は両立しない。政府は、企業の「デレバレッジ」(債務圧縮)がいつか必ず来るという裏付けのない主張を取り下げた。

 穏やかな言葉を使いながら、李首相は政府活動報告の中で、債務を返済しない企業は「積極的かつ慎重に」扱われるべきだと述べた。

 李氏はその手法には合併、組織改編、債務再編、そして破産が含まれると述べた。できるだけ動揺を避けるため、正確にこの順番で言った。

 李首相は見込まれる解雇者数について具体的な数字には言及しなかったが、過剰生産で最も大きなダメージを受けている鉄鋼産業と石炭産業については、約200万人とされている。絶対数としては大きな数だが、中国の膨大な労働人口からすればほんのわずかだ。鉄鋼の生産能力を最大1億5000万トン減らすという政府の目標は劇的に聞こえるかもしれないが、それでもまだ2億トンの余剰生産能力が残される。これは米国の年間生産総量の2倍を超える。

 習主席のもとでは、「経済目標には政策立案プロセス上の絶対的な優先事項がもはや存在しない」と、清華大学公共管理学院のチェン・リン准教授は戦略国際問題研究所(CSIS)が発行した中国経済に関する最近の研究報告の中に記している。

 確かに、朱氏が冷酷に国の経済を運営していた時代から、全体的な環境は劇的に変化した。朱氏が標的にした国有企業は当時、規模が小さく、国土に点在するだけで、財務面でも弱かった。対照的に、現在の国有企業の一団は銀行の融資で大きく膨らみ、政治的な影響力を新たに手に入れ、以前よりもはるかに処分が困難になっている。

 世界経済の見通しが暗くなると、どこの政治家であれ問題を先送りしたい衝動に駆られるものだ。

 だが、中国の指導部もこうした先延ばし組に加わったという事実は、新たな不安感を呼び起こす。長期的に中国政府を不安定にさせるかもしれないという不安だ。欧米諸国の学術論文の多くは、独裁システムが依って立つ全体的な論拠が変革の促進ではなく、権力の維持に向かうとき、終焉を迎えると論じている。

 ジョージワシントン大学のデービッド・シャンボー教授(政治学)はこうした見方をしている学者の一人だ。シャンボー氏は新著「China’s Future(仮訳:中国の未来)」の中で、中国政府は政治的な変化に耐えることを望まなかった結果として、「衰弱と硬直化」の段階にあると論じている。仮に現在の流れを維持すれば、「経済発展は足踏みか、あるいは失速さえしかねず、すでに深刻な社会問題がさらに悪化し、長期にわたって(共産党の)政治的影響力の低下が続くことになると私は予想する」とも記している。

 今のところ、痛みを伴う選択肢を避けたいという中国指導部の強い願いと、本当に痛みを伴う変化の証しを探している外国の投資家の期待との間には大きな隔たりが広がっている。これまでのところ、私たちが見ているのは爪切りであり、外科用のメスではない。

(筆者のアンドリュー・ブラウンはWSJ中国担当コラムニスト)

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【FRBウォッチ】3月は現状維持、4月以降の利上げ余地残すか

By JON HILSENRATH
2016 年 3 月 9 日 08:01 JST

 米連邦準備制度理事会(FRB)は、金融市場と世界経済をめぐる不透明感を踏まえ3月15・16日の連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利を据え置き、追加利上げ時期については何も決めない公算が大きい。

 FRBのイエレン議長にとってこれは、あるメッセージの発信を意味するだろう。経済指標が期待はずれだったり新たな市場の混乱が生じたりした場合の対応は約束せず、今後数週間の景気動向が良好ならば、4月か6月に利上げする柔軟性をFRBに与えるものだ。

 FRBは12月に翌日物フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25〜0.50%に引き上げ、2016年中に追加利上げする見通しを示した。次のFOMCを控え、FRBは8日、今後の政策運営について非公開の議論を始めた。

 最近のFRB当局者発言は、世界的な成長減速と金融市場の混乱からの逆風を米経済が切り抜けていることに安心した様子をうかがわせている。当局者らは最新の見通しを3月会合の前に明らかにするが、小幅な経済成長と雇用増が続くとのこれまでの見通しを維持しているようだ。12月には、失業率が16年末までに4.7%に低下し、16年の米経済は2.4%成長するとの見通しを示した。2月の失業率は4.9%だった。

 一方、当局者はFRBが目標とする2%を4年近く下回り続けているインフレ率が発するまちまちなシグナルを検討している。さらに、弱々しい世界経済の成長や、米経済が弱まった場合に打ち出す支援策の余地が限られていることを踏まえ、時期尚早な利上げをしないよう慎重になっている。

 ブレイナード理事は7日、「リスク管理の観点から、見通しがより明確になるまで忍耐強さが求められる」と述べた。

 同理事は、米経済・インフレはさえない展開となるリスクがあり、見通しをめぐる不確実性は通常より高いとみる慎重派の1人。慎重派は利上げを慎重に進めることを望んでいる。

 サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁など積極派は、経済は堅調で、段階的に利上げする軌道から外れるべきではないとの立場だ。

 同総裁は先週の講演で、「全体的構図は根本から変わっていない」と語った。直近の情勢で「利上げするかしないか、その時期が今かどうかがずれる」かもしれないが、「大本の質的動向は変わっていない」と述べた。

 イエレン議長は、慎重派と積極派が歩み寄れるよう腐心している。

 12月のFOMC以降、市場が織り込む利上げ確率は低下している。先物市場のトレーダーが予想するFF金利の平均は今年12月時点で0.6%、来年末時点で0.9%と、FRB当局者の予想中央値(16年末は1.375%、17年末は2.375%)をいずれも下回る。FRBが利上げを先送りするにつれ、こうした予想は下方修正されそうだ。

 FRBが利上げの進め方を検討する際、いくつかの議論に決着を付けなければならない。

 一つは、経済見通しに対するリスクをめぐる議論だ。FRBは1月、国内総生産(GDP)、雇用、インフレが見通しを下回るリスクの有無について意見を集約できなかった。当局者からは、こうしたリスクが高まりつつあるとの意見や、判断を下すのは早すぎるとの意見が出た。最終的にリスク評価について判断を見送ったが、これは、追加利上げ時期をめぐる議論が行き詰まったことを示唆している。

 現在は金融状況が改善していることもあり、成長と雇用に対するリスクがそれほど差し迫っているようには見えない。1月から2月初めにかけて下落した株価はいくらか持ち直している。対照的に、長期金利は低下した。投資家がFRBは金利を思ったよりも低い水準で維持するとの見方に傾いたことが一因だ。

 最近発表された景気指標は、まずまず安定した内容に見える。アトランタ連銀の予測モデルによると、1-3月期は年率2.2%成長が見込まれる。これはFRBの16年通年の予想に近い。

 ニューヨーク連銀のダドリー総裁は先週の講演で、「今年の米経済は長期平均をやや上回るペースで成長するとの見方を維持している。このペースであれば、失業率をあともう少し押し下げ、労働資源のフル活用に近づく上で十分だろう」と述べた。

 もっとも、インフレ動向は強弱まちまちだ。FRBがインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)価格指数は1月に小幅上昇したが、当局者らは上昇が続くと確信していない。一方、調査や相場に基づくインフレ期待は低調だ。こうしたインフレ期待は原油価格との連動性が高く、最近は原油価格の反発を受けて上昇しているが、一部当局者は今のところ警戒姿勢を崩していない。

 インフレ率はFRBが目標とする2%を3年9カ月連続で下回っているため、一部のFRB当局者は、インフレ率が目標達成に向けて順調に上昇しているという確信が高まるまで、利上げを急ぐ必要はあまりないと感じている。

 セントルイス連銀のブラード総裁はウォール・ストリート・ジャーナルが先月行ったインタビューで、3月のFOMCでは「このインフレ期待の問題を懸念することになるだろう」と述べた。

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【FRBウォッチ】理事、「忍耐」訴えブラックアウト入り
By JON HILSENRATH
2016 年 3 月 9 日 01:10 JST

 3月15・16日の連邦公開市場委員会(FOMC)を1週間後に控え、米連邦準備制度理事会(FRB)当局者が金融政策に関する公式発言を自粛するブラックアウト期間に入ったが、ブレイナード理事はその直前に決めの一言を発した。

 米経済の最近の状況に関するブレイナード理事の発言には、幾分かの安堵(あんど)がにじみ出ている。ワシントンで講演した同理事の見解によると、消費支出が回復して雇用市場も力強く改善し、コアのインフレ指標は今のところ上向く兆しを見せている。さらに、年初に引き締まりつつあった金融環境もここ数週間で改善してきた。

 一部の当局者にとって、こうした動向は今後数カ月の追加利上げへ向け用意を進める理由となり得る。米経済は目下、海外の低成長と大荒れの金融市場という逆風を切り抜けているようだ。

 ただし、ブレイナード理事や他の当局者にとっては、まだ一件落着というわけではない。

 ブレイナード理事は「外需が弱く、さらに鈍化していることを踏まえれば、政策軌道の慎重な調整を通じて国内の進展を慎重に守り維持することが重要だ」との認識を示した。金融環境の引き締まりとインフレ期待の軟化はインフレと生産活動に下振れリスクとなるとし、「リスク管理の観点から、見通しがより明確になるまで忍耐強さが求められる」と語った。

 同理事の姿勢は、FRBが来週の会合で利上げ時期に関し強力なシグナルを発しない可能性を示唆するものだ。当局者の中には、より楽観的な見方をする向きもある。だが、先行き不透明感が残る中、多くの当局者はFRBの政策行動が世界のぜい弱な経済成長を腰折れさせないとの確信を深めるまで、追加利上げを急ぐつもりはない。

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欧州のマイナス金利、その本当の意味とは
By PAUL J. DAVIES AND RICHARD BARLEY
2016 年 3 月 9 日 07:44 JST

 銀行や保険会社には嫌われ、資金の借り手にはほとんど、あるいは全く利益がなく、貯蓄者と年金受給者には受け取る資金が減ると恐れられるマイナス金利政策。不人気なだけでなく、不可解な存在だ。

 欧州中央銀行(ECB)は今週、既にマイナス圏にある中銀預金金利をさらに引き下げるとみられている。ただ、それがどのように役立つかは誰も正確には分かっていない。

 一般的に言えば、マイナス金利の目的は現在マイナス0.2%にあるインフレ率をECBが目標とするプラス2%弱へ押し上げることにある、ということになるだろう。しかし、マイナス金利の最も重要な目的はインフレだ、という回答は、マイナス金利が融資の拡大とユーロ安による競争力向上を通じて経済成長を促進できるわけではない証拠がある場合であってもなお成立する。

欧州各国の新規融資金利【単位:パーセント】

 インフレは、欧州経済が抱える重債務を軽減する上で重要な役割を持つ。これは、財政状況が特に厳しく、また何かあれば悪影響を受けやすい南欧だけでなく、フランスやベルギー、オランダなど、民間債務比率の比較的高い国々にも言えることだ。

 簡単に表現すれば、債務は将来の経済活動で返済していくものだ。つまり、物価が上昇すれば、将来的に働く時間や販売する製品の数が同じでも債務をより多く減らせることになる。こうなれば消費や投資に回せる資金が増えるはずだ。

 物価の上昇ペースが鈍く、特にそうした状況が長期化すれば、債務は借り手が期待していたほど減らないことになる。その場合、レバレッジ解消に資金を使わざるを得なくなり、成長に悪影響が及ぶ。

 つまり、少なくも短期的に見れば、インフレ率や名目成長率は実質成長率よりも重要になり得るのだ。

 融資が伸びれば実質成長率が刺激される可能性はある。だが実際は、マイナス金利が銀行の利益をむしばみ、貸し出しは増えていない。

 北欧の大半を見る限り、マイナス金利が借り入れコストの抑制につながっている様子はない。銀行がマイナス金利の負担を預金者に転嫁することに消極的だったり、転嫁が不可能だったりする場合が多いためだ。バークレイズによると、スイスではマイナス金利にもかかわらず住宅ローンに掛かるコストが既に上昇しつつあり、ドイツ、フランス、オランダでも借り入れコストの上昇が続く可能性がある。

 マイナス金利が長期化するほど、銀行の利益への悪影響は大きくなる公算が大きい。債券ポートフォリオではリターンの落ち込みにとどまらず、コストすら発生し得る。投資家が配当金やクーポンの支払いに懸念を強めた場合、ジュニア債などを通じた資金調達に必要なコストが膨らみかねない。

 明白なマイナス金利の利点は、政府の借り入れコスト低下だ。スペインやイタリアですら2年債の利回りがマイナスとなり、ドイツの国債利払い費は急激に縮小した。

 こうした中でもユーロ圏の財政出動はドイツの反対に遭い、実現しそうもない。国債利払い費が減った各国政府が、長期的な経済成長を促すような改革という難しい決断を一時的に避けて通れる可能性もある。

 欧州は苦境に立たされ、マイナス金利は伸び悩む成長の糧になっていない。だがマイナス金利は、家計や企業の消費を促して貨幣の流通速度を上げたり、インフレ期待を醸成したりする形で物価の上昇に寄与できる可能性がある。ECBが何も行動を起こさないことを選ぶとすれば、金融の引き締めが発生し、インフレ目標の達成はさらに難しくなるだろう。

 はっきりしているのは、短期的にインフレが加速しなければ、欧州が債務負担という重荷から逃れる方法を見つけるのは難しいということだ。

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ECB理事会、為替市場にはすでに失望感も
ECBのマイナス金利拡大を警戒する投資家
http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-MY836_eurolo_G_20160308071221.jpg


World | 2016年 03月 9日 08:07 JST
スウェーデン中銀副総裁が緩和批判に反論、「経済に多大な寄与」
[ストックホルム 8日 ロイター] - スウェーデン国立銀行(中央銀行)のペール・ヤンソン副総裁は8日、超緩和的な金融政策に一部で批判が出ていることについて、経済に大いに寄与したことを考慮していないと強調、批判は不当だとして反論した。

同中銀は先月、主要政策金利をマイナス0.50%に設定。予想を上回る幅の利下げを実施した。そのうえで、インフレ押し上げのために一段の措置をとる用意があるとの姿勢を示した。同国のインフレ率は1月時点で前年比0.8%と、ターゲットの2%を大幅に下回っている。

ただメディアや一部エコノミストの間では、経済が力強く成長し、家計の借り入れも増えるなかでの政策緩和に批判の声も上がっている。

ヤンソン副総裁は、経済紙ダーゲンス・インダストリィに寄稿し「当中銀は独立性が与えられている代わりに、オープンであることが要求されている」「しかし、金融政策は問題を解決しておらず、むしろ問題を作り出しているとする批判には、私は同意できない」と主張した。

副総裁は、こうした批判について、力強い成長と労働市場のトレンドが金融政策のお蔭であることを考慮していない、との見方を示した。
http://jp.reuters.com/article/sweden-riksbank-idJPKCN0WA2SF


World | 2016年 03月 9日 06:56 JST 関連トピックス: トップニュース
欧州委、仏伊など5カ国の過度な経済不均衡を指摘 是正を勧告

[ブリュッセル 8日 ロイター] - 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は8日、フランス、イタリア、ポルトガルを含む加盟国5カ国で経済的不均衡が過度に高まっているとし、是正を勧告した。

経済的不均衡が過度に高まっていると指摘されたのは他にクロアチアとブルガリア。欧州委は背景に大幅な債務、高い失業率、銀行システムのぜい弱性などがあるとしている。前年も同じ5カ国が指摘されていた。

欧州委はこのほか、フィンランド、ドイツ、アイルランド、オランダ、スペイン、スウェーデン、スロベニアの7カ国で不均衡が見られると指摘。ただ過度ではないとした。

欧州委は加盟国の公的財政を監視し、不均衡を指摘された国が是正しなければ罰金を科すことができるが、これまでこうした制裁が発動されたことはない。

今年は不均衡が指摘された国は合計で12カ国。ベルギー、ハンガリー、ルーマニア、英国がはずれたため、前年の16カ国から減少した。

ギリシャとキプロスについては支援措置を通して監視されているため、欧州委の監査には含まれていない。
http://jp.reuters.com/article/eu-idJPKCN0WA2PE




World | 2016年 03月 9日 01:42 JST 関連トピックス: トップニュース
キプロス、ECB資産買い入れ対象外も 国際支援脱却で

[フランクフルト 8日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)の報道官は、資産買い入れプログラムの対象からキプロス国債が除外される可能性があると明らかにした。同国が月内にも支援プログラムを脱却する見通しであることに加え、同国国債の格付けが投資適格級を下回っているためと説明している。

ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のデイセルブルム議長(オランダ財務相)はこれに先立ち、キプロスが3年にわたる支援プログラムから月内に脱却するとの見通しを示した。

ECBはキプロスに対し、格付けの最低基準適用を免除してきたが、これは同国が財政再建を伴う支援プログラムを受けていることが条件だった。そのため支援脱却は、皮肉にもECBの資産買い入れ対象からの除外につながる見通しだ。

ただ関係筋によると、キプロスの銀行は財務基盤を強化しており、影響は軽微にとどまるもようだ。
http://jp.reuters.com/article/ecb-cyprus-idJPKCN0WA25O


Business | 2016年 03月 9日 07:15 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
英中銀、利下げより利上げ確率高い=ウィール委員

[ノッティンガム(英国) 8日 ロイター] - イングランド銀行(英中銀)金融政策委員会(MPC)のウィール委員は8日、英中銀が向こう2年間に利上げする確率は依然として利下げする確率より高いとの見方を示すとともに、必要に応じて景気刺激策を導入する余地は大幅に残されていると述べた。

同委員はノッティンガム大学で行った講演で、英中銀は必要なら政策金利を0.5%を下回る水準まで引き下げられると指摘。

さらに、自身の調査に基づくと2009─12年に実施された3750億ポンド(5300億ドル)の量的緩和策(QE)に続き新たな量的緩和策を実施してもなお効果を発揮する公算が大きいとし、買い入れの対象を国債に加え、長期保有型の民間部門資産に拡大することもできるとの見方を示した。

そのうえで、他の金融政策委員と同様、英中銀の次の動きは利下げではなく利上げになるとの見通しを表明。中銀が必要に応じて一段の刺激策を導入できる能力を有していることで、利上げ開始に伴う危険性は低下していると述べた。ただ利上げの具体的な時期などについては言及しなかった。

ウィール委員は講演後、最近の原油や商品価格の回復により、今年初めの金融市場の急落は投機が要因とする自身の見方が確認されたと語った。一部の投資家はこの急落を世界経済への警報とみていた。

委員は、英国の賃金の伸びは依然弱いものの、今年の伸びは昨年を上回る可能性が高い、と指摘。

また、購買担当者景気指数(PMI)の低水準が続いていることは生産の低迷にはつながらない可能性がある、と述べた。
http://jp.reuters.com/article/boe-weale-idJPKCN0WA2G6

【インサイト】パリがロンドンのバンカーらに秋波、EU離脱なら歓迎
2016/03/08 07:18 JST

    (ブルームバーグ):英国が国民投票で欧州連合(EU)離脱を選び単一市場から閉め出された場合、金融関係者はロンドンを逃れてパリへどうぞ−。これがフランスのマクロン経済・産業・デジタル相が先週に英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)とのインタビューで示したビジョンだ。
現実味のあるビジョンではある。英銀HSBCホールディングスは、英国がEUを離脱するなら投資銀行部門のバンカー1000人をパリに異動させる方針を示した。しかしロンドンのバンカーらはマクロン経済相の歓迎に応える前に、考えるべきことがある。
一見するとパリは魅力的だ。マーサ−の生活水準ランキングでパリは37位と、ロンドンの39位より少しだけ高い。生活費もパリの方が安い。住居費とオフィス賃貸費用を合わせて比較するサビルズの調査によると、ロンドンで働き生活する費用は世界一高い。
しかしフランスではバンカーの報酬も少ない。給料比較サイトのエモルメントによれば、ロンドン在勤のマネジングディレクターはパリ在勤者のほぼ2倍を稼ぐ。ロンドンのバンカーが報酬減を受け入れるだろうか。
また、パリは世界的影響力もそれほどないし、ウェルスマネジメントの中心地としてのチューリヒやファンドに有利なルクセンブルクのようなネットワーク効果もない。融資とトレーディングはロンドンとフランクフルトが中心で、パリには十分な規模がない。コンサルティング会社Z/Yenが規制や税制、人材の厚み、評判、インフラ、金融セクターの全体的発達度などでランク付けした世界の金融センター番付で、パリは37位。モントリオールやメルボルン、アムステルダムより低い。ロンドンはトップだ。
英国の世論調査はEU残留を示唆しており「Brexit(EU離脱)」の確率は低いが、もしそうなった場合も、パリはフランクフルトやアムステルダムからの競争にさらされるだろう。
原題:Paris Starts Unlikely Brexit Romance with U.K. Bankers: Gadfly(抜粋)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3O1W56K50YE01.html


「金ではなく誇り」か−解雇された為替トレーダーが銀行を訴える理由
2016/03/09 08:31 JST

    (ブルームバーグ):米銀シティグループを訴えたのは金のためではないと、解雇された元為替トレーダー、ペリー・スティンプソン氏は語った。多少の金をシティからもぎ取ることに実際は成功したとしてもだ。
ロンドンの雇用審判所の先週の決定で、シティによる不当解雇が認定され、5万8774ポンド(約940万円)のスティンプソン氏への支払いが命じられた。為替レートの不正操作疑惑の調査の過程でトレーダーの解雇が相次ぎ、過去数カ月の間に十数人の元バンカーらが元の雇用主を訴えたが、幾らかの支払いを勝ち取ったのはスティンプソン氏が2人目だ。
スティンプソン氏にとっては、元上司らに自分たちの言動の説明責任を負わせる意味が大きかった。2年間続いた法廷闘争の末に手にする小切手の金額は、かつての年収の半分にも満たない。
スティンプソン氏は雇用審判所の決定に先立ち、「やり遂げなかったら永遠にくよくよ悩み続けただろう。そのままにしておけなかった。言いたいことを言う機会が欲しかった」と胸中を打ち明けた。
だが、一連の審判所での争いの勝者を見つけることは難しい。
為替市場の不正操作をめぐり各国の主要銀行は当局から合計100億ドル(現在の為替レートで約1兆1300億円)もの支払いを求められた。これまで公表された3件の決定では、監督当局の調査でパニックに陥った金融機関が雇用法を無視し、拙速にトレーダーを解雇した様子をうかがい知ることができる。それは普通なら犠牲者への共感と大金の支払いを意味するだろうが、誰にもその資格はないというのが、これまでの審判所の見解だ。
スティンプソン氏は審判所での争いを、元上司らと対決し自らの汚名をそそぐ機会と捉えていたが、甚だしい違反行為への関与という嫌疑を覆すために訴えを起こした多くの元トレーダーの間でも、この考え方は共通している。しかし実際には、これまでの全てのケースで判事は元バンカーらの無分別ぶりを叱責し、支払いを完全に退けることさえあった。
シティの広報担当者は電子メールで、トレーダーを解雇した決定に変更はないとした上で、「個別の説明責任がわれわれにとって重要であり、これらのケースを争い続けるのはその理由からだ。われわれは行員が最高の倫理基準を順守することを期待し、行動規範への違反を容認することはない」と決定後にコメントした。
原題:London Traders Suing Banks Must Settle for Pride Over Money (1)(抜粋)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3Q2M86JIJUV01.html


シティ、1−3月の株・債券トレーディング収入は15%減へ−CFO
2016/03/09 03:38 JST
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    (ブルームバーグ):米銀シティグループの1−3月(第1四半期)の株式・債券トレーディング収入は、前年同期比15%減少する見通しだ。ジョン・ガースパッチ最高財務責任者(CFO)が明らかにした。この発言で、同行株価は下落した。
ガースパッチCFOは8日の投資家向け説明会で、同四半期の投資銀行部門の収入は25%減るとの見方を示した。
同CFOは債券では社債やエージェンシー債、資産担保証券など国債以外の債券が「引き続き圧迫されている」と説明し、「これは過去1年半を通じて変わっていない」と続けた。
ニューヨーク時間午後0時53分(日本時間9日午前2時53分)現在、シティ株価は3.2%安の41.24ドルと大幅安。
原題:Citigroup Says Markets Revenue to Drop 15% in First Quarter (1)(抜粋)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3QGGL6K50Y801.html




2016年3月9日 上原 修 [日本サプライマネジメント協会代表理事]
大震災後、日本企業のサプライチェーンは強靭化したか(上)
東日本大震災では、サプライチェーンが寸断され、日本経済と国民生活、さらには世界経済にも大きな影響を及ぼした。企業にとっても「サプライチェーン防衛」は火急の課題となった。大震災を受けて変化はあったのか。現在の課題は何か。この問題の第一人者である上原修・日本サプライマネジメント協会代表理事の解説・提言を2回連続でお送りする。
東日本大震災で思い知らされた
「サプライチェーン防衛」の重要性
東日本大震災では、サプライチェーン(供給網)の寸断が大きな問題となった
Photo:NEXCO/AFLO
 東日本大震災は、日本のみならず世界中に甚大な被害をもたらした。極めて多くの製造業、部品メーカーが被災したため、当然入ってくるべき原材料や部材が急停止し、国内はもちろん、海外の企業の事業にまで影響が及んだのである。
 日本の持つモノづくりパワーが世界に証明された一方で、日本の産業なしでは世界の産業が立ち行かなくなる現実を露呈したのも事実である。同時に日本に依存していては世界が危ないことに気づき、日本離れも加速した。
 逆に言うと、この震災で日本の経営者は、サプライチェーン、つまり供給網の寸断がいかに企業経営に痛手となるかを思い知ったとされる。サプライチェーンの上流を守り、円滑な部材の調達、原材料の仕入れを安定化させるのは、本来、購買調達部門の仕事であるが、大きくマインドセット(思考様式)を変え、全社を挙げて支援しなければならないという、事の重要性、重大性が社内で共有されたと考えられる。
 戦後、経済成長を確実に進めてきた日本経済は、原材料や資材・機材などは、お金さえ払えば当たり前のように入ってくるという長い経験から、その逆(入ってこないこと)は、許される状況ではなかった。一方で、自然災害は不可抗力という言葉を使えば何となく許される環境にもあった。
 しかし、企業を取り巻く経営環境が激変し、経営者がリスクを取る姿勢に変わってきた頃から、危機管理はリスクマネジメント(RM)という表現に変わり、昭和40年代後半から日本でもリスクマネジメントの専門書が企業経営という視点から相次いで出版されてきた経緯がある。不可抗力であっても予期し被害を最小限に食い止め、最短の時間で復旧する経営姿勢に変わってきたのである。
 それは現在にも通じるが、実は、このリスク管理の概念は、顧客志向の多様化・複雑化とグローバル化、製品ライフサイクルの短縮化、地球環境保護、さらには企業の社会的責任といった現代の経営課題とも大いに関連するのである。つまり、経営環境の急激な変化が様々なリスクを伴って企業に襲いかかってくるというわけだ。
 自然災害を単なる不可抗力として逃げるのではなく、自らサプライチェーンを防御・防衛し、自社の顧客に迷惑をかけず、持続的に満足してもらうという姿勢が、リスクをも包含した、企業体の本来の社会的責任でもある。
 日系企業にとって、サプライチェーン寸断にどう対処するかは、喫緊の課題なのだ。
 そこで、サプライチェーンの上流における部材等の安定調達・仕入れという視点から行った調査・研究の結果に基づき、サプライチェーン防衛の考え方を解説する。その主旨は、サプライチェーン・物流・調達の実務者が実行面でどうすれば円滑に継続的に、また持続可能な安定調達を続けることができるか、すなわち「SCP(Supply Continuity Planning:調達継続計画)」を具現化することである。
SCP=調達継続計画あってこそのBCP
欧米の対応は数段先を行っている
 BCP(事業継続計画)に関しては、日本人が東日本大震災を経験した現在では、多くの企業内に浸透しているようだ。BCPは、競争優位と価値体系の完全性を維持し、組織が内外の脅威にさらされる事態を識別、防止策と組織回復策を提供するため経営資産を統合する計画のことと言われている。
 一方、SCPすなわち調達継続計画については、国内では、あまり聞きなれず知名度がないようだが、一歩国外に目を向ければ事情は100%異なることを知るべきだ。東日本大震災時、欧米各社の情報網は日本企業より数段上のものがあり、人海戦術を駆使して、現地の生の情報と実態を細かく収集した企業もある。これらはベストプラクティスとして留意すべきで、また検証すべきであろう。
 下図はBCPとSCPの関係をわかりやすく示したものだが、これで見るとSCPあってこそのBCPと映らないだろうか。
◆BCPとSCPの関係

 ここで、復習の意味でBCPと災害復旧(DR:Disaster Recovery)の差異を確認しておく。後者は、危機が組織体に重大な影響を及ぼす時に備えて適切に準備されていることである。
 事業継続と災害復旧はどちらも、事業の継続を妨げる可能性のある事態が発生した際に強制的に執行される行動計画を意味する。つまり、災害への備えという点では同じだが、異なるのは着眼点と内容だ。
 災害復旧は、企業内であっても、人命安全と資産保全に焦点が置かれるため、安否確認と備蓄、避難訓練が中核となる。一方で、BCPは、上述の対策に加え、優先的に復旧する業務を策定、目標復旧レベルを設定することで、中核としてビジネス視点から災害を復旧させ事業を続けることを目指す。
 BCPでは、発生場所でなく、あくまで事業の中心である製品・サービス面から取り組む。災害復旧の後に最も重要な業務を考えると、顧客に自社製品をサプライし続ける視点が重要だからだ。
 製造業では、製品を作るためのサプライチェーン対策が必要だ。そして、供給継続とは、正常なサプライチェーン及び生産事業を続行させるために、必要な原材料や資材を操業現場に安定的に供給し続けることと言える。
サプライチェーン運営継続計画の要点
想定外の事故に対する想定外の処方箋とは
 弊研究チームでは、次の通り6つの視点から調達継続の切り口を調査した。それは、(1)サプライヤー、(2)代替品、(3)内製、(4)物流、(5)在庫、(6)レジリエンス(復旧力)の視点である。
 経営者に対してSCP(調達継続計画)を提案するためには、調達専門職また実務者が現実面で経営と事業継続に貢献できるかを、正面から調査、分析する必要がある。これら6つの視点は調達経営の基本課題でもある。さらに研究では、サプライチェーンの寸断という未曽有の危機に、日本企業の調達購買部門は以下にどう対応すべきかを探ることを目的とした。
1.何に多くのエネルギーやリソースを注ぐべきか
2.経営サイドはそれらの行動をどう支援することができるのか
3.それらの支援体制は全社で共有されているのか
4.それらは日本企業独特のものなのか
5.または自社の企業戦略までさかのぼるタイプの課題なのか
 先に述べたように、東日本大震災は未曽有、まさに通常の想定を超える大きな事故であった。このような想定外の事故には、従来の発想でなく、それこそ想定外の処方箋が必要だろう。それは、旧来の発想の転換、つまり、サプライチェーン上のイノベーションを起こすことに他ならない。さらに企業の社会的責任(CSR)としての顧客への供給責任を考える時、調達継続計画の重要性が浮き彫りとなる。
 SCP実現には、前述の6視点を基礎に各対策を再検討することを提案するが、これらは簡単に言えば、仕入れや調達の基本に返ることに他ならない。同時に6視点を検証することが、実は“素人の発想”を転換することにつながり、課題解決が可能になるのではないかと考えた。
効率化の影で忘れられた“基本”
購買・調達の複線化
(1)のサプライヤー対策、サプライチェーンの複線化などは、いわば購買職の基本であろう。
 15年前に日産自動車に降り立ったゴーン社長が言い張ったことが思い出される。同社長の各種の改革処方箋の中での「サプライヤーの数を半減しろ」である。鉄鋼または鋼材の調達先を大手1社にするという思い切った政策の一言で、2つの巨大企業が合併せざるを得なくなり、新会社が生まれたことはあまりにも有名である。
 当時これは、素人の発想と私には思えた。つまり、購買・調達の基本は「複数購買、複線化」にあるからだ。ところがその後、同社は瞬く間にV字回復したため、同業の各社がそれに倣い、基本を忘れてしまったようだった。また当時、カンバン方式を生み出したトヨタ自動車は「自分たちは間違っていなかった」とコメントしていたが、後述する在庫の持ち方については後日、考えを変えたようである。
 この視点での取り組みを具体化するには、次の質問を投げ掛け、答えさせるのが最良であると考える。

政府が部品の標準化・共通化を呼びかけ
自動車・部品メーカーは変われるか
(2)の代替品及び標準化については、古くから議論されてきた経営上の重要項目である。実は最初の複数購買とも重なるところがある。同じ資材を複数から調達できなければそれに替わる代用品を探すほかないという意味だ。そして特殊部材の使用を避けて、なるべく標準品を使おうという動きもある。
 東日本大震災では、自動車メーカー等において、部品メーカーが被災して供給が滞り、1ヵ月以上も操業を止める工場も出た。自動車の生産に使う部品は1台あたり2万〜3万点。エンジンやトランスミッションといった基幹部品でなくても、完成車メーカーごと、車種ごとに異なる部品を使うことが多かった。独自性にこだわってきた自動車づくりが、先の震災を機に変わる可能性がある。
 興味深いことに、この傾向に反応して政府、経済産業省が動き出した。同震災で寸断された自動車部品の供給網を強化しようと、経済産業省が部品の共通化の検討に入った。経産省は業界の首脳らを集めた戦略研究会を2011年5月中旬に設立し、生産を少しでも滞らせない方策を検討してきた(下図参照)。

 経産省が呼びかけた部品仕様共通化について、一般論で言えば、リスク分散やコストが下がり顧客にとって有利となる一方、標準化が進めば差別化されにくいため、サプライヤーにとっては厳しくなる。同時に、より海外生産が進み、産業の空洞化に拍車をかける可能性もある。

 報告書では、自動車会社特有の系列(ケイレツ)の垣根を越えて仕様・ 部品の整理・共通化を進め、コスト競争力向上とリスク分散を図ると明記されていた。共通化によって工程・設備の種類等が削減され、リスク発生時の代替策がとれるとも指摘し、さらに品番数の整理が進み製品品番単位の生産ロットが大きくなれば、複数工場での生産など社内生産拠点の分散化に向けた投資が相対的に行いやすくなる可能性もあるとされた。
 一方で、部品共通化は、独自性の強い部品を供給しているサプライヤーにとっては自社製品の付加価値を失いかねない問題でもある。つまり、部品共通化は短所と長所の両面があるのだ。
 委員会では、ムダで余計なスペックや伝統的に陳腐な仕様・規格を整理するなど自動車会社側でも努力できるところもあり、適度に標準化できる点もあるなどといったことが議論された。 メーカー、サプライヤー、ユーザー全員がウィンウィンとなる取り組みであり、全関係者間でできるところから考えようということになった。
 これは要するに何もしないということであり、政府省庁の案に対しご機嫌を取ることで事態を収拾させようということだ。従って、経産省の委員会報告書には、共通化を進める具体的な部品が明示されなかった。
 ある新聞記事では、当面の例として、ゴムパッキンやホース、ネジ、シート留め具を挙げている。ただ不思議なのは、同報告書を公表した研究会のメンバーである。自動車会社を除くと、一次サプライヤーしか参加していない。多数ある二次や三次サプライヤーの会社は、部外者ということになった形だ。経産省が真剣に、震災時のサプライチェーン寸断を検討するなら、供給連鎖の上流から下流まで関係者の考えを吸いあげて、日本の産業全体にとって実益のあるリーダーシップをとるべきだろう
 もっとも、各企業としても対策は必要である。大災害から時がだいぶ経過したが、(1)と同様に次の質問を用意したので考えてほしい。

>>後編『大震災後、日本企業のサプライチェーンは強靭化したか(下)』に続きます。

http://diamond.jp/articles/-/87578
大震災後、日本企業のサプライチェーンは強靭化したか(下)
>>。ハ上)より続く
効率化のための安易な外注から
内製を再検討する時が来た
(3)は内製化への取り組みである。
 内製か購入か?という短期の意思決定問題は、一部のサービス業務または一部の部品製造を社内で行なうのか、あるいは一部他社に外注して購入するのかを判断するものである。近年では、このような一部業務の外部委託をアウトソーシングと呼び、経営効率化の手段の一つとして注目されている。また、内外作計画は欧米においては、古くから“make-or-buy”として論じられてきたもので、特に米国では内外作の基本方針が企業の経営戦略の最上位にランクされ、最高機密として扱われる傾向があった。
 震災を機にあらためて、安易に外部に依存するのではなく、調達戦略の基本に戻り、内製を経営トップ主導で再検討する時が来たと考えている。調査では、地域共同体、コンビナート内での内製化について企業関係者から、全く考慮外との回答が多くあったが、オール日本で意識を変えることはできないだろうか。そこで以下の質問を考えてみた。

物流の途絶にどう対応するか
「共同化」でも一歩進むべき
(4)は物流体制の充実である。道路遮断や鉄道寸断では物が運べないのは当然だが、東日本大震災当時は、阪神淡路大震災を経験していたにもかかわらず、復旧に至るまで紆余曲折であった。
 多くの企業人からは、自社便、代替物流手段、海外物流ルートなど検討外と言われたが、欧米では「サプライチェーン」イコール「物流」と捉える人も多く、日本と彼我の差が大きく感じられた。それは、取引慣習(持込み渡し[DDP]と工場渡し[Ex-Work])に依存すると考えられる。
 今後、BCPを調達方針に含める場合、マインドセットの転換が必要だ。物流業界では現下、共同配送と物流の共同化が業務の効率化や環境対応、コスト削減の面から大きなテーマとして浮上しているが、一歩進んで、地域共同体・コンビナート地帯での水平的、また垂直的物流共同化を目指すべきと考える。従って、次の質問を用意した。

迫られる在庫の見直し
業界・地域で共同の備えも必要
(5)では、在庫の見直しを挙げている。
 調達継続計画における在庫の定義を再確認すると、在庫とは自社あるいはサプライヤー等が保有する自社製品の製造に必要な素材、部品である。多くの企業は、震災によるサプライチェーンの寸断により、自社の生産活動に大きな影響を受けた。サプライチェーン寸断リスクに対して、在庫についてどのような対応をとっているのか、次の5つの観点から見直してみてほしい。
1.サプライヤーの在庫把握
2.サプライヤー在庫場所の分散程度
3.自社安全在庫水準の把握
4.流通在庫の把握
5.共同在庫の可能性
 共同在庫というテーマで、同一コンビナート内、同一地域・同一業界内で在庫を増やす、または共同で一個所に在庫を集めることができるかについて、関係者と議論したが、ほとんどが「全く考えていない」となった。全体として共同在庫は考えられていないようであった。
 例えば、戦時下の日本では当然のように共同社会で自衛(自己防衛)が進んだと聞いている。そういうマインドセットの転換が必要なのかもしれない。日本には業界団体という強い横の連携組織があり、市場競争を越えた意識改革で災害に備えなければならない時期に来ている。これは地域としての共同の社会的責任の実現であると捉える。従って、次の質問は有効と思われる。

産業界でにわかに注目の
レジリエンス(復旧力)とは
 最後の(6)はサプライチェーンの回復力、レジリエンスである。「レジリエンス」は、産業界においてにわかに市民権を得てきた用語である。ただし同語の持つ意味の奥行きは広く深い。言葉通り捉えると回復力、復旧力、反発力となるが、これらは急に備わるものでなく、普段からの地味な訓練や教育が欠かせないとわかってきた経営トップも多い。
 非常時、同一地域、工業団地、コンビナートなど、産業集積コミュニティー内で部品や資材を相互に融通し合う地域ネットワークには概して「考慮外」と回答されたが、逆に言うと、将来のレジリエンスを図り、発揮する上での重要な証言と考えたい。柔軟なリソースを投入できること、またサプライチェーンのステークホルダー全体を掌握できることも今後ますます必要となってくるだろう。

>>第2回「海外の災害・テロに日本企業は無防備すぎる」は3月10日掲載予定です。

http://diamond.jp/articles/-/87629



【第67回】 2016年3月9日 安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
銀行が痛みを負わないシャープ再建策について考える
シャープの舵取りは、株主の利益を代表しない銀行が実質的に担ってきた
 経営不振に陥ったシャープの再建にあたっては、スポンサーの座をめぐって、台湾の鴻海精密工業(以下「鴻海」)と産業革新機構(以下「機構」)の競争になったが、2月25日、シャープの取締役会は全会一致で鴻海の支援を仰ぐことを決議した。
 その後も潜在的債務をめぐって協議が続いており、鴻海の再建案に修正が加えられる可能性があるほか、最終的に増資が実現するかどうかは株主総会で承認されるまで予断を許さないが、本稿では、「鴻海と機構の両案における受益者の違い」に焦点を当てて、その妥当性を検証してみたい。
株主利益を代表しない銀行が
シャープの舵取りを担ってきた
 シャープが数年前から経営危機に陥った直接の原因は、主として堺と亀山のディスプレイ工場への巨額な投資にあると考えられる。だが、経営の混乱の裏には元社長同士の確執があったと言われており、同社のコーポレートガバナンスに弱さがあったことは否めない。
 そこに、2013年6月、メインバンクであるみずほコーポレート銀行と三菱東京UFJ銀行が取締役を送り込んでいる。その後、人選は変化したものの、現在に至るまで銀行出身の取締役が2名いる状態に変わりはない。しかも、銀行から送られた取締役は常勤で経営管理・経営企画を担当する執行役員も兼ねており、経営の中枢を担うポジションを占めている。
 さらに、メガ3行が実質的に支配するジャパン・インダストリアル・ソリューション(JIS)からも現状2名の取締役が送られているので、13人の取締役のうち実に4人が銀行関係者ということになる。それに加え、銀行は長年、同社に部長級の人材も送っていたとされており、シャープの経営方針は銀行が決めていたと言っても過言ではない。
 もちろん13人中4人では多数を取ることはできないのだが、シャープはかつてのように資本市場から資金調達ができる状態ではなく、銀行からの融資で資金繰りを付けている状況にあるため、実態的には取締役会で銀行出身取締役の意に反する決議は取りにくい構造になっていたことは否めない。
 ところで、連載第54回で指摘したように、取締役は本来、株主の利益を代理するのが基本的な役割である。すなわち、取締役は株主から経営を付託された者(エージェント)としての責任(受託者責任)を負っている(エージェンシー理論)。したがって、取締役が会社をどのように経営するかということは、この受託者責任を十全に果たせるかどうかという観点から検討されなければならない。
 ところが、銀行出身取締役は、銀行の利害を代弁すると考えるのが自然であり、一義的には株主の利益より銀行の利益を優先することになる。ここにシャープの取締役会が抱えている根本的な利益相反構造がある。すなわち、シャープの舵取りは、株主の利益を代表しない銀行が実質的に担ってきたのである。
「メインバンク責任」という名の亡霊
銀行は今、株主として説明責任を負う
 しかし、筆者は、このことについて、シャープのメインバンクをあからさまに批判するつもりはない。なぜかと言えば、日本においては、日本全体が資金不足だった高度成長期以降、資金提供者として強い立場を保っていたメインバンクが企業のガバナンスを綿々と担ってきたからだ。融資先企業と株式を持ち合い、銀行OBを企業に再就職させることなどは当然のように行われてきた。
 そのことの是非は横に置き、数年前までの日本では、「銀行ガバナンス」とでもいうべきものが企業の経営陣に緊張感を与えてきたことは事実として認めなければなるまい。それは、日本において株主がグローバル化しておらず、「物言わぬ」のが当たり前だった時代の名残である。
 その反面、企業が経営不振に陥った場合には、メインバンクは徹底的に経営責任を担うのが当然と考えられてきた。他行の貸付をメインバンクが肩代わりするいわゆる「メイン寄せ」、融資先企業に取締役・監査役・部長級の幹部を派遣するなどの経営支援は、そういう背景の中で頻繁に行われてきた。大手銀行の審査所管部は、恐らくいまだに「メインバンク責任」を標榜し、融資先に問題が起きれば銀行が経営介入して立て直すのが当たり前という意識が強い。
 そんなカルチャーを踏まえてシャープのケースを考えると、銀行が実質経営してきたこと自体について、銀行は批判される覚えはないと思うだろう。筆者もその点については極めて同情的である。
 しかし、時代は変わった。安倍政権下で、コーポレートガバナンス・コードが制定されたことにより(連載第54回)、企業の取締役は株主に対する受託者責任に基づく説明責任を負い、一方で、スチュワードシップ・コードの導入により(連載第43回)、機関投資家など大口の株主は、株主価値向上に向けて企業経営陣と対話することが求められている。
 特にスチュワードシップ・コードでは「原則2」として、投資家と投資先企業の利益相反に関する説明責任が求められている。銀行はシャープの株主であり、銀行が支配するファンドも同様であるから、仮に利益相反がある場合には説明責任を負うことになる。「メインバンク責任」というのは、古い時代の亡霊のようなものと言っても過言ではない。
 筆者は、民間でできることは民間でしなければ資本市場の規律が効かないとして、一貫して「官民ファンド」の活動には批判的であった(連載第51回)。今回も、シャープの救済に機構が乗り出すことに賛成しているわけではない。しかし、ここではそのことは横に置き、株主利益を代理すべきシャープの取締役会の意思決定がどうあるべきだったのかに絞って考えてみたい。
実は鴻海案より機構案の方が
株主の利益にはかなっていた
 鴻海案は既にシャープから開示されているが、機構の案は詳細には開示されていない。筆者は、あくまでこれまでに報道された範囲の情報しか持っていないが、報道内容がおおむね正しいと仮定して議論を進めることにする。また、鴻海案も開示されたものから変化する可能性が指摘されているが、大筋において変わらないものと思われるので、ここでは開示された案に基づいて論じることにする。
 まず鴻海案は、普通株で約3873億円、優先株で約1017億円の合計4890億円を第三者割当増資で鴻海並びに関係会社が引き受け、議決権ベースで66.07%を掌握する。そのほか、メインバンク2行が保有する優先株の半分に相当する1000億円分を簿価で買い取る。また、銀行支配下にあるJISが保有する優先株250億円分も双方が合意する価格で買い取ることになっている。今回鴻海が引き受けた優先株も銀行等から買い取る優先株も、一定期間後に普通株式に転換される見込みなので、鴻海関係各社の議決権比率はさらに高まることが予想される。
 さらに、液晶の堺工場の土地も500億円で買い取るという。これらを合計すると、鴻海は最大で総額約6600億円の支援をすることになる。
 ただし、鴻海への第三者割当増資の発行価格は118円(優先株の転換価格も同様)と、この情報が開示された直前日の株価174円に対して約32%のディスカウント、半年間の平均株価140円に対しても約16%のディスカウントとなる(図参照)。このように有利な価格による発行(有利発行)であるため、6月の定時株主総会で、議決権の3分の2の賛同を得ないと成立しない特別決議を経る必要がある。
◆図:シャープ株価の推移(3月8日終値時点)

3ヵ月チャートと5年チャート。赤線は本稿作成時点(3月8日)のシャープの終値
 次に、機構の案については、ディスプレイデバイス事業を分社化してジャパンディスプレイと統合することや、社長の退任を前提に3000億円の増資の申し入れがあったことが開示されている。これに加えて、機構は、メインバンクに対して1500億円程度の債権放棄と、2000億円の優先株の償還請求権放棄を求めていたと報道されている。
 これらを合計すると、機構案では、増資と金融支援の合計で6500億円の支援が想定されていたものと思われる。すなわち、金額的には、鴻海案と機構案は表面上、ほぼ互角であったと言える。
 しかし、よく考えてみればわかることだが、この両者の支援は金額が同じでも、受益者が全く異なる。
 まず、鴻海案には金融支援が含まれていない。約6600億円という支援額のうち、最大1250億円は銀行および銀行が支配するファンドの優先株の買い取りに充当される。また500億円は土地の売買だ。これを差し引くと、シャープに対する実質的な支援額は4890億円の第三者割当増資分だけということになる。また、シャープは多額の債務を抱えたままとなる。
 一方の機構案の場合、銀行は3500億円の金融支援を求められる。シャープは、3000億円の増資資金の他に、3500億円の債務免除等が与えられるため、同社の財務は6500億円改善する。債務免除等による3500億円の金融支援は、その分だけ普通株主の取り分が増えたことを意味する。
 要するに、鴻海案は銀行が大きな受益者であるのに対し、機構案は株主が大きな受益者なのだ。もちろん機構の増資がどの程度の条件だったのかによって普通株主の受ける利益は若干変わるかもしれないが、大筋においては変わるまい。
 以上の通り、今回のシャープの再建案は、鴻海案より機構案の方が株主利益には合致していたと思われる。そうなると、株主の利益を代理するはずの取締役会が鴻海案を選択する場合、株主にどう説明するのかという問題が発生する。
鴻海案を選んだことを
取締役会は株主にどう説明するのか
 鴻海案を実現するためには、株主総会で特別決議を通さなくてはならない。それには議決権ベースで株主の3分の2の賛同が必要だ。株主にとっては不利とも思われる鴻海案を選択したことについて、取締役会は合理的な説明をして株主の賛同を得る必要がある。では、どのような説明が可能なのだろうか。
 まず考えられるのは、「シャープは3月末の借入返済が不可能な状態だったのだから、法的整理になるリスクがあった。したがって、どんな案であろうと銀行が再建案に同意してくれることこそが株主にとっての利益だ」という説明だろう。あるいは、「シャープは実態的には債務超過であるから、もともと株主に帰属する持ち分はない」という開き直った言い方もできるだろう。
 商法502条は、「清算株式会社は,当該清算株式会社の債務を弁済した後でなければ、その財産を株主に分配することができない」と定めており、その限りにおいて株主は、銀行や社債権者などの債権者に全額を支払った後の残余財産のみを受け取れる立場だ。上記のような開き直った説明をする場合は、このことを根拠としている。
 つまり、会社が清算される場合には、まず銀行など債権者が優先的に弁済を受け、もし残余財産があれば株主に清算配当が来るということであるから、仮にシャープの負債が資産を上回る債務超過の状態だとしたら、法的整理になった場合には株主の取り分はないということを意味する。そのロジックを貫徹すれば、「銀行がまず債権を保全するのは当然であり、株主はもともと権利の主張などできない」ということになる。
「メインバンク責任」を標榜しながら
一切責任を取らないというのは自己矛盾
 しかし、本当にそれでいいのだろうか。
 商法は会社清算時の清算方法について規定するが、そこに至る前のことまでを規定しているものではない。取引先を多数持つシャープのような会社が、いきなり法的整理になり、清算されることは稀である。法的整理の場合は、原則として債権者平等の原則に従い、商取引債権者も債権カットを要請されるので、信用力が一気に落ちてしまい、経営を続けることが困難になりかねないためだ。
 逆の言い方をするならば、銀行は、法の定めに従って機械的に株主の権利を奪い、自らの債権だけを回収したければ企業の存続可能性など無視して法的整理にすればいいのであって、その権利は常に銀行の掌中にある。それができないのは、銀行に経営責任と社会的責任があるからだ。
 冒頭に述べたように、シャープの経営は実質的には銀行が担っていた。法的整理にして株主の取り分をゼロにすることは、銀行にとってシャープの株主から訴訟を起こされるリスクさえ孕むものだと言ってよいだろう。
 メインバンクが経営責任を自覚して企業を再建する際には、法的整理ではなく私的整理が用いられることが多い。裁判所を通さずに銀行間だけの話し合いで、債務の弁済方法や債務免除などを協議するのだ。
 なお、私的整理は日本特有のものではなく、世界各国の商業銀行で同様の仕組みが構築されている。世界的には英国で伝統的に用いられていた「ロンドン・アプローチ」という紳士協定を源流として、INSOL原則という私的整理の大原則が定められており、日本でもそれを下敷きに「私的整理のガイドライン」が公表されている。
 私的整理のガイドラインでは、全銀行の合意の下で返済の一時猶予を認めた上で、全銀行が合意することを条件に、銀行の債務免除等を含む経営再建計画が承認されることになる。その場合、経営陣の退任による経営責任の明確化や、支配株主の消滅と増減資等による株主の負担が前提とされる。
 今回のシャープのケースは、債務返済が困難になっていたので、まさに私的整理のガイドラインが適用されるべき事例であり、経営陣の退任や一定の株主責任(たとえば大幅な希薄化)を前提にした上でのメインバンクの債権放棄という、機構案の採択も十分合理的であった。そして、シャープの状況に鑑みれば、銀行は既に貸付債権に十分な引当金を積んでいたはずであり、債権放棄をしても追加的な与信関連費用はそれほど発生しなかったはずだ。
 やや時代遅れな「メインバンク責任」を標榜して取締役を送りながら、再建策においては一転してメインバンクが一切責任を取らないというのは自己矛盾だ。鴻海案では、経営陣の退任も条件とされていない。つまり、大幅な希薄化を受ける株主以外は誰も痛みを取らないということになる。
 これは、商業銀行の矜持に関わる問題だ。メインバンク責任があると言うのであれば、必要に応じて自らも痛みを取って長期的な企業の存続可能性を高めるという社会的責任を果たすのが商業銀行であり、それが目先の利益を追う投資銀行と違うところなのではないか。
鴻海案の価値が株主の不利益3500億円を
上回ることを証明しなければならない
 一部には、債権放棄がある案を選択したら銀行が株主代表訴訟を受けるなどという意見があったようだが、それは筋違いだ。両案の可否を検討するのはシャープの株主の付託を受けたシャープの取締役会であり、銀行ではない。もし銀行がそれを拒否したら法的整理になり、銀行は債権を回収できるかもしれないが、恐らくシャープの株主から銀行が訴訟を受けるだろう。
 逆に、銀行が商業銀行の矜持を通し融資先の再建に尽力した結果について、自分の株主から株主代表訴訟を受け、敗訴することなど絶対にあり得ない。なぜならば、それこそが商業銀行の仕事であり、長期的に自らのレピュテーションを上げ、株主に報いることになるからだ。
 このように、シャープの取締役会が、株主総会において、鴻海案を選択した理由を株主に合理的に説明するのは決して易しいことではない。したがって、シャープの取締役会としては、機構案ではなく鴻海案を選択したことによって株主が不利益を被った、債権放棄等分に相当する3500億円という価値を、鴻海とのシナジー効果が上回ることを証明する必要がある。
 そして、実際、それこそがこれから取締役が鴻海との間で懸命に詰めるべき事項であり、再建の鍵を握っているということになろう。近く最終合意が発表され、再建が成功することを祈りたい。

http://diamond.jp/articles/-/87604 


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