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リーマンショック以上の危機!? 〜中国の外貨準備高3兆ドル割れ目前
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48118
2016年03月08日(火) 町田 徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
■市場の信頼回復に失敗した李克強首相
世界の金融・資本市場は先週、ようやく小康状態を取り戻した。とりあえず、G20(20ヵ国)財務大臣・中央銀行総裁会議が先月(2月)27日、「あらゆる政策手段を導入する」「通貨の競争的な切り下げを回避する」といった言葉を連ねた共同声明をまとめたことを評価した格好だ。主要株式市場の先週末の終値は、日経平均株価が1万7014円、NYダウが1万7006ドルとそろって大台を回復した。
しかし、これで危機が去ったと安堵するのは大きな間違いだろう。G20の声明は経済協調の一般論を記しただけで、経済危機の患部に対する処方箋になっていない。換言すれば、目先の時間稼ぎに成功したに過ぎないのだ。
一方、世界的な経済危機の元凶になっている中国では、外貨準備高の減少が今なおハイペースで続いている。近く外貨準備高が3兆ドルの節目を割り込むのは確実で、そうなれば昨年夏や今年初めを上回る国際的な信用不安を誘発しかねない危機である。
肝心の中国当局は、先週土曜日(5日)に開幕した全国人民代表大会(国会に相当)で李克強首相が市場の不信を買った。具体策がないまま、過剰生産の象徴であるゾンビ企業の整理と、6.5%を超す高めの成長という相反する目標を両立させると強弁し、市場の信頼回復に失敗したのだ。
残された時間は少ない。国際社会は、経済政策で後手に回る中国当局に軌道修正を迫り、信用不安を払しょくするための処方箋を示させることができるのか――。世界経済は歴史的な岐路に直面している。
中国の外貨準備高は2014年6月末に3兆9900億ドルとピークに達した。が、その後、減少に転じ、今年1月末には3兆2309億ドル(約378兆円)と、ピークから2割も減少した。特に最近は減少が顕著で、昨年12月に前月比1079億ドル減と過去最大の減少を記録、今年1月も同995億ドル減と、月1000億ドルペースの減少が続いている。
■市場に蔓延する「甘い考え」
もちろん、絶対額を見れば、中国の1月末の外貨準備高は、依然として世界最大の規模を誇る。世界2位の日本のおよそ2.6倍だ。中国当局は、十分な外貨準備を保有しているとし、この主張を支持する向きがあるのは事実である。
しかし、中国は、そもそも輸入の規模が大きく対外債務も多いため、巨額の外貨準備高を確保する必要がある。
加えて、万事に秘密主義の中国は、外貨準備の構成を国家機密とし公表していない。このため、流動性の低い資産で保有している外貨準備が多く、必要な流動性を確保するには、他国とは比べ物にならない規模の外貨準備高を維持する必要があるのではないかとの見方も根強い。
その中には、中国主導で設立した新たな国際金融機関「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」への出資金や、日本などと競合したインフラ輸出案件の獲得の際に公約した国際援助が含まれるとの指摘もある。
結果として、中国の外貨準備高の安全水準として「2兆8000億ドル以上が必要ではないか」と分析する外銀もあるのだ。
外貨準備高の急減の背景にあるのは、海外からの投機売りや中国国内からの資本逃避の膨張だ。市場の中国への信用不安の表れであり、憂慮すべき問題と言わざるを得ない。こうした“中国売り”への対策として、中国人民銀行が多額の人民元買い介入を行い、外貨準備高の減少に拍車がかかっているのだ。
中国のエコノミストの間では、外貨準備高が3兆ドルを割れば、当局が資本流出規制に乗り出すので、問題は生じないと楽観視する向きがある。
だが、こうした見方こそ、資本主義の経験が乏しい中国ならではの甘い考えではないだろうか。すでに信用不安が起きているところへ規制を導入すれば、経済の深刻さを裏付ける証拠と受け止められて、信用不安が増幅するリスクが高まりかねない。そうした信用不安のメカニズムを、中国の当局やエコノミストたちは理解できていないのである。
■リーマンショック以上の危機が待っている
現状では、不安の払しょくが最優先だ。外貨準備高の構成を機密にせず、きちんと詳細を開示したうえで、万が一にも不足する場合に備えて、日本を含むG7諸国やIMF(国際通貨基金)などの国際機関との間で、緊急時に外貨を融通してもらう体制をあらかじめ作り、その体制ができたことを内外に周知することこそ重要なのだ。
米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが今月2日のタイミングで、中国の長期債務格付けの見通しを従来の「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げたことは、そうした対応の必要性を裏付けている。見通し変更の理由として、ムーディーズは、「政府債務の増加」などと並んで、「資本流出に対応するための外貨準備高などの減少」を理由に挙げているのである。
だが、外貨準備高の問題に限らず、中国の経済政策には、透明性の確保を通じて市場の信頼を得るという哲学が根本的に欠如している。信頼性が乏しいとされるGDP統計の改善を放置していること、過剰生産設備や不良債権の処理についてタイムスケジュールを含む明確な道筋を示していないことは、その典型例だ。
折しも、5日から始まった全人代で、透明性の確保を打ち出さなかったことは、中国当局が危機管理能力を欠いている証左と受けとめざるを得ない。
5月下旬のG7の伊勢志摩サミットへ向けて、安倍晋三首相は今月(3月)1日の衆院予算委員会で、日本が主導して世界経済の安定化策を話し合うため、国内外の有識者から話を聞く協議会を立ち上げる方針を表明した。海外からはノーベル経済学賞受賞者級の学者を招き、来週にも初会合を開催して、具体策を探っていくという。
本コラムで何度も指摘してきたように、日本が、世界的な経済危機の克服に指導力を発揮しようとするのは、G7議長国としての使命であり、正しい判断だ。
最大の問題が、世界的な信用不安に対する中国の透明性を欠いた対応にあることはすでにはっきりしている。
安倍政権には、この問題に切り込んで、中国に方針転換を促すため、有識者協議会や伊勢志摩サミットをしっかりとリードしてもらいたい。さもないと、世界経済はリーマン・ショック以上の危機に陥りかねない。
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