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「長生き」がリスクになる社会 〜すぐそこにある「老後破産」の危機 100歳まで生きると、お金はこんなにかかります
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48046
2016年03月02日(水) 週刊現代 :現代ビジネス
長生きすることが、逆に人生のリスクになる――なんとも皮肉な話だが、それが現実だ。おカネの知識をきちんと身につけ、ことあるごとに資産内容を見直さないと、「老後破産」は他人事ではなくなる。
■2000万円では足りない
神奈川県川崎市に住む寺島健三さん(83歳、仮名)が、生活資金について深刻に悩み出したのは1年前のことである。
「退職後は取り立てて贅沢をしてこなかったし、定年時にはそれまでの貯えと退職金で2400万円はあったので、それを切り崩していけば老後の生活資金としては十分だと考えていました。
ところが昨年来、妻の認知症が進んでこれまでいた施設を出なければならなくなった。結局、より料金の高い施設に入ることになり、年金だけでは入居費が払えないので毎年の赤字額は100万円近くになっている。幸いにして私はまだ健康ですが、このままいくとあと5年もすれば貯金が底をつく。たいした稼ぎもなかったが40年間まじめに働いてきた末に、こんな老後が待っているとは思ってもみなかった」
65歳まで生きた女性の半数、男性の3割近くが90歳以上生きる時代。今後の医療の進歩を考えると近いうちに高齢男性の4割、女性の6割が90歳以上、100歳近くまで生きる日が来る。
長生きがリスクになる。本来、幸せなはずの長寿が、不安の材料になってしまうのはとても悲しいことだ。冒頭の寺島さんのような辛い状況に陥らないためには、まずは自分の人生でこれからどれくらいの出費が待っているかを確かめておく必要がある。
「月々20万円程度の年金と2000万円の貯金では100歳まで生きることなど、とても不可能」と言い切るのは平賀ファイナンシャルサービシズの平賀初惠氏だ。
「長く生活していく上で、どうしてもおカネは出ていく。たとえ3000万円、4000万円の貯蓄があっても、赤字家計であれば、いつか貯えが底をつくに決まっている」
一体どれくらいのカネが老後資金として必要なのか。ファイナンシャル・プランナーの紀平正幸氏が解説する。
「夫婦二人の生活であれば、切り詰めれば月に12万〜13万円の出費でも最低限の生活は営めます。ただ、それだけですと海外旅行はもちろん、おカネのかかる趣味を楽しむことはできません。少しは余裕のある生活がしたければ25万〜26万円くらいの出費を覚悟しなければなりません」
■90歳で貯金がなくなる
一方で、収入となる年金の受給額はどうだろうか。
「厚生労働省が1月29日に発表した平成28年度の年金額を見ると、夫が元サラリーマンで妻が専業主婦という平均的な世帯は、厚生年金が月額22万1507円となっています」(紀平氏)
仮に毎月の出費が26万円、受け取る年金が22万円として計算してみよう。毎月の赤字額は4万円。年額にして48万円だ。年金が満額支給される65歳から100歳まで生きるとして、35年間、毎年この額の赤字が出れば、合計で1680万円の赤字になる。
ただし、これは病気で入院したり、想定外のアクシデントが起きたりしなかった場合。30年もの長い老後生活、不測の事態が起きずに、寿命を全うすることのほうがむしろ稀だろう。例えば足腰が弱ってきても自宅に住み続けることになれば、バリアフリーにするためのリフォームが必要になる。一般的な改修費用は約300万円だ。
加えていざというときの介護費用として、少なくとも500万円の予備費を用意しておきたい。合計すると赤字の総額は2480万円—。
80歳で死ぬなら、足りていたかもしれない。しかし、100歳まで生きるには足りない。そんな人は、この国にゴマンといるはずだ。いやむしろ、足りないほうが、多数派だろう。
サラリーマンであれば、退職金が大きな老後の資産となる。従業員が100人以上の企業に勤務していた人の退職金と企業年金の合計金額の平均は、約2200万円。実際は税金もかかってくるので、受け取る額が2000万円だと考えると、100歳まで生きる場合の収支は、やはりマイナス480万円にも上る。
このケースだと仮に85歳に亡くなっていれば、240万円の遺産を遺せるはずだった。長生きしたばかりに破産してしまう典型的なパターンだ。
■小金持ちが危ない
年金の支給額が多い「小金持ち」家庭こそが、老後破産の予備軍と言われているのをご存知だろうか。
渡辺健司さん(77歳、仮名)は現役時代は大手メーカーに勤め、年収は700万円あった。夫婦合わせた年金も32万円と、それなりの生活を送るのに十分な額を受け取っている。
「それでも、家計は火の車ですよ。中途半端に余裕があるから、妻は友達としょっちゅう韓国や台湾に旅行に出かけていますし、私もしばしば息子の家族が住む九州へ遊びに行く。最近は孫の教育資金として100万円を譲渡しました。
そうこうするうちに、退職時には3000万円あった貯金も、気づいてみたら700万円くらいになっている。
夫婦ともに健康なのはいいのですが、このままお互い100歳まで生きるとなると、どこかで破産することは目に見えています。いざ、老人ホームなどの施設に入るということになっても、妻がそれなりのグレードのところでないと納得しないでしょう。財布の紐を締めようと思うのですが、長年の浪費癖はなかなか直せなくて……」
実は渡辺さんのような比較的恵まれた家庭でも、老後資金が底をつくケースは多い。自分が長生きするかもしれないとぼんやりとはイメージしていても、実際に自分が100歳まで生きた場合の収支を試算している家庭は意外に少ないのだ。
千葉県勝浦市に住む水口靖さん(71歳、仮名)とその妻は、「月12万〜13万円もあれば十分」だという。水口家は自営業だったので、基本の年金は国民年金の13万円。これに共済年金の5万円を加えて月18万円だが、毎月貯金ができるという。
「10日分の献立を考えてまとめて食材を買うので無駄もなく、食費は一日1000円くらい。出ていくおカネで大きいのは自動車の維持費くらいのものですかね」
年金の受給額が少なくても水口さんのように赤字を出さない生活をしていれば、長寿はリスクにならない。むしろ預金額は増えていくので、病気になったときの不安も軽くなっていく。
気をつけさえすれば、老後の生活は現役時代よりおカネがかからないものだ。100歳まで生きることを前提に、夫婦で老後のマネープランを見直してみよう。そうすれば長生きすることへの不安は薄らいでいく。
思わぬ出費、認知症にどう対応するか
■認知症保険に入るべき?
予想外の出費は老後の収支を大きく狂わせる。なかでも最も予想しにくいのが介護費用だ。とりわけ認知症の場合は金銭面・精神面共に負担が大きい。
もし親や配偶者が認知症になった場合、どうするか。認知症の患者をいちばん安く介護する方法は、もちろん在宅での介護だ。民間の見守りサービスなどを利用しても月額3万〜5万円で収まるので、年金で賄える。
ただし言うまでもなく、介護する側の負担はとてつもなく大きい。息子や娘夫婦など、近くに手伝ってくれる人手があればまだいい。しかし周りに助けてくれる人もおらず、介護の負担で共倒れになってしまえば、元も子もない。
では、介護施設を利用する場合はどうか。高齢者住宅・老人ホームに詳しい経営コンサルタントの濱田孝一氏が語る。
「入居一時金のない介護付き有料老人ホームに入った場合、毎月の支払額は20万円を超えるケースが多い。さらに介護食などを頼むと月1万5000円程度の追加料金を取られる。他にも個別の外出や指定回数以上の入浴を希望すれば、追加料金が発生します」
前章で見た通り平均的な年金の受給額は22万円程度。介護付き有料老人ホームに配偶者を入れたら、追加料金を支払わないとしてもそれだけで年金が吹っ飛ぶことになる。濱田氏が続ける。
「一方、入居一時金を払う有料老人ホームの場合、入居時に保証金と一緒に償却期間分の家賃を前払いすることになります。もし長生きをして、償却期間が過ぎてもその施設に住み続ける場合、家賃は払わなくて構わないので結果としてお得だとはいえる」
ただし、入居後3ヵ月以上経ってからホームが気に入らなくなって退去した場合、一時金の保証金部分は戻ってこないから注意したい。また一概には言えないが、入居一時金を払う施設は比較的高級な施設が多い。さらに認知症の問題行動が目立つようになると退去させられる場合もある。
認知症の親や妻を抱えて長生きしても比較的安心できる施設が、特別養護老人ホームだ。だが、こちらは全国で50万人もの高齢者が入居待ちをしている「狭き門」。介護保険料の自己負担と家賃を合わせて実質負担は7万〜15万円くらいで有料老人ホームよりは割安だが、入居待ちしているあいだにも、認知症は進行していく。
そしてもちろん、「自分自身が認知症になる」という可能性も、考えなければならない。そこで登場したのが、認知症保険である。これは民間の介護保険の一種で、所定の要介護状態になった場合に給付金が下りたり、1ヵ月の介護サービス費が一定額を超えるとおカネが戻ったりする仕組みである。
認知症患者の介護費用は、同じ要介護度でも非認知症患者のそれと比べて高額になる傾向がある。そのような高額負担に耐えられないのではないか、という不安に応える保険だが、加入する価値はあるのだろうか?ファイナンシャル・アソシエイツ代表の藤井泰輔氏が解説する。
「最近やたらとテレビや新聞で、シニア世代に狙いを定めた保険商品を宣伝していますが、私は入る必要はないと考えています。親や周囲に認知症の人がいると心配になる気持ちもわかりますが、そもそも公的な介護保険の条件も頻繁に変更されているような状況で、保険会社も介護保険に関しては試行錯誤の段階です。それならば、払うことになる保険料を現金で貯金しておいて、できるだけ健康的な生活を送るよう心がけるほうが現実的でしょう」
ファイナンシャル・プランナーの紀平正幸氏も認知症保険の加入には反対の立場だ。
「保険料が割高なうえ、介護認定の基準が官民で異なっており、公的な介護認定を受けていても保険金がもらえないケースがあります。そんな保険に入る意味はない」
今後、ますます認知症患者の増加が見込まれる日本で、患者にとってお得な認知症保険が発売されれば、保険会社のほうが潰れるのが道理だ。
高齢化社会では、もはや避けられない病、認知症—この病に備えるには、気休めに保険に入るよりも、いざというときのために資金を確保しておくことが肝要なのだ。
年金だけではど貧乏に!持ってる資産どうするか
■国債はリスクが少ない
年金の不足を補うための貯金や退職金は、老後生活の大切な虎の子。それをどのように扱うかによって、晩年の資金計画は変わってくる。平賀ファイナンシャルサービシズの平賀初惠氏が語る。
「大きな貯蓄を持っていなくても、100歳まで安心して生きるための工夫はできる。リスクを取りすぎず、うまく運用すれば資産は『枯渇しない財布』になります」
定年退職するまで大きな資産を運用したことがなかったという人も多いだろう。そういう人が一番に気をつけたいのは、証券会社の「無料相談」に近づかないことだ。経済評論家の山崎元氏が忠告する。
「退職後の高齢者に近づいてくる証券マンには必ず下心があります。彼らにとって大切なのは客にいかに儲けを上げさせるかではなく、客からどれだけ手数料をむしりとれるか。高齢者にありがちな落とし穴は、暇で寂しいから話し相手になってくれる証券会社の相談員を、『この人はいい人だ』と信頼してしまうケースです。
しかし金融商品を買うときは、購入窓口と相談相手は別にするというのが鉄則。退職金が振り込まれた銀行の窓口で資産運用を相談するなんて、もっての外です」
現役時代にバリバリと働いていた人ほど、「自分はメーカー出身だから、シャープの技術力はわかっている。底値で株を買ってみせるよ」などと相談相手に見栄をはって、大損をする場合も多い。くれぐれも金融商品を買うときには、金融業界に詳しい親戚や友人など、売り主ではない人の意見を聞くようにしよう。
では、定期預金、外貨預金、株、投資信託、終身年金保険、金、不動産など金融商品は無数にあるが、どのような基準で選べばいいのだろうか。
「なにか一つの商品やサービスで老後の不安を解消できると考えてはいけません。一ヵ所に資金を集中させてしまえば、不測の事態が起きた場合、取り返しのつかないことになります」(山崎氏)
老後の資産運用で大切なのはリスクをできるだけ抑えること。マイナス金利で定期金利にしてもほとんど利子がつかない時代には、個人向け国債の「変動10」がオススメ。
「1万円から購入でき、半年ごとに利息が受け取れる。金利は変動しますが、下限が0・05%に設定されているので銀行の定期預金よりおトクです。しかも元本割れがないので、こんなに安全な商品はない」(山崎氏)
当面使う予定の資金は普通預金で銀行に入れておき、残りの資産の大半は国債にして持っておくのが得策だ。
■堅実に長期投資を
まだ75歳以下で10年以上運用する時間的余裕がある人は、資産の一部をリスクのある商品にしてリターンを追求するという選択肢もある。
「オススメできる商品は主に2つです。日経平均に連動するインデックス・ファンドと先進国の株価に連動するインデックス・ファンドの2本です。国債を買った残りの資産を半分ずつにして、これらの投資信託を買えばいい。インデックス・ファンドは購入手数料や信託報酬が低く抑えられているので、長期投資に向いています」(山崎氏)
年金生活者にとって怖いのは円安やそれに伴うインフレである。現役世代であればインフレになると給料が上がるが、年金の上昇スピードは比較的遅いからだ。
しかし日本株やドル建ての投資信託を持っていれば、円安にも対応できる。円安になれば日本企業の業績が上がるし、外貨建ての先進国株の価値も上がる。為替リスクをヘッジする上でも上記のインデックス・ファンドはオススメだ。これらの金融商品は証券会社の窓口で扱っている。
持ち家がある人は、それを資金に換える方法もある。家を担保に融資を受ける「リバース・モーゲッジ」という仕組みだ。住み慣れた家に住みながら、現金を得られるので、家を遺す必要のない人にはうってつけだが、融資を受けられる年齢制限があるので確認が必要。最悪の場合、家を取り上げられ、住むところを失う可能性もある。
100歳まで生きると考えるなら、むしろ家は売ってしまい、コストのかからない小さなマンションに引っ越して、残りのおカネは投資に回すほうが賢明かもしれない。
100歳まで生きるとなると、投資の複利効果も大きなものになる。資産が枯渇するリスクを回避するためには、堅実に長期投資するのが、ベストの選択だろう。
「週刊現代」2016年3月5日号より
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